暁 7
本日は久しぶりすぎる『暁』です!
最近、このお話しの続きをお願いしま~すというメッセージを立て続けに頂いて
(ありがとうございます🎵)
まずお話しを読み返して復習するところから始めました!(笑)
本当に久しぶりですが楽しんでいただければ幸いです。
それではどうぞ~😊
私信です。
☆様
こんばんは~🌙
コメントありがとうございます。🎵
返事が遅くなってごめんなさい。m(__)m
司君はしたくてした結婚では無かったのですが・・
つくしちゃんが一人で生きてきたのも事実なので
女は強いんです!ってところを表現したかったんだと思います!(笑)
あの日、店で再会した牧野は俺が来ている事を知らされていなかったようで
買い物袋を手に店に入って来た瞬間俺の姿を見つけその足を止めた
あの頃から歳は取っているが
印象的な大きな瞳や艶のある黒髪は
記憶の中にいる彼女のままだった
だけどその顔には驚きと大きな戸惑いが浮かんでいた
驚き戸惑ったまま入口付近で立ち尽くしていた牧野に
軽い感じで声を掛けた天草は気をきかせたのだろう
子供を保育園に迎えに行ってくると言ってそのまま店を出て行ってしまった
思いがけず二人っきりの店内
牧野は入口付近に立ち尽くしたままで
戸惑いの表情を浮かべたまま
俺も言葉が浮かんでこない
言うべき言葉は沢山あるはずなのに
声に出してしまうと軽く感じられて
この心の内の半分も伝えられないような気がして
腰を下ろしたままだった椅子から立ち上がり
まだ立ち尽くしたままの彼女の方へと向き直り深々と頭を下げた
「すまなかった。優一郎を産んで育ててくれてありがとう。
お前と天草には本当に感謝している」
そう言って頭を下げた俺の横を無言で通り抜けた彼女は
裏から何かを持ち出て来た
「・・・謝らなくていいから・・これ・・返しておきます」
そう言ってカウンターの上に置かれたのは銀行の通帳と印鑑
「これは・・」
「それは・・あの時、あなたが手切れ金だって言って
家の両親に渡したお金です・・私は受け取るつもりはありません・・」
カウンターテーブルの上に置かれた通帳と印鑑
俺はそれを手に取ることは出来なかった
俺の過ちがまた一つ
目の前に突き付けられ
その禍々しさに息が出来ない
「・・これは・・雄一郎の為に使ってくれないか・・?
今さら何を言っても言い訳にしかならないけれど・・
この金を雄一郎の養育費として受け取ってくれないか?」
「・・雄の事を気に掛けてくれているのは嬉しいけど・・
あなたから雄の養育費をもらう理由は無いから・・
私はもう・・あなたとは関わり合いになりたくないの・・
あの人の考えは違うかもしれないけど・・少なくとも私はもう・・
だから・・ごめんなさい・・もうここには来ないで・・」
俯きながらもはっきりとそう話した彼女
予想していた言葉だった
だけど
彼女の口から直接言われた言葉に
ショックを受けている俺
俺にはショックを受ける権利さえないと分かっているが
思いがけず彼女と再会出来て
俺は心のどこかでもしかしたらという
淡い思いを抱いていた
だけど
はっきりと彼女の口から伝えられた拒絶の言葉
ショックを受けている事を悟られないように
「分かっている・・だけどこれは・・俺の誠意だから・・
雄一郎の将来の為に使えってもらえればと思っている・・
それから・・俺は邪魔するつもりはないから・・
もう会いに来たりはしないから・・悪かったな・・
お前の気持ちも考えずにのこのこ出向いてしまって・・」
そう告げただけで店を後にした俺
それ以降、天草にも彼女にも会ってはいない
事件を知らせる新聞を持ったまま思い出していたあの時の事
今の俺は天草には本当に感謝している
そして彼女と雄一郎の幸せを願いながら
失ってしまった信頼を取り戻すべく頑張っている
「司様」
新聞を持ったまま思いを巡らせていた俺に秘書が声をかけてきた
「そろそろお時間でございます」
「あぁ、すぐに行く」
牧野と雄一郎の事は心配だったが
仕事に向かうべく迎えの車に乗り込んだ
「司様、天草様の事件のことは?」
「あぁ、知っている」
「どのように対応いたしましょうか?」
「俺が出向くわけにはいかないから
道明寺名義で香典だけ出しておけ」
「畏まりました」
その時はそれだけで終わった会話だったが
その日の夜遅くになって秘書が伝えてきた事によると
天草の葬儀は天草の父親が喪主を勤め
天草の先祖代々の菩提寺で執り行われる事になったと伝えてきた
本来であれば喪主は妻である牧野のはず
それなのに今頃になって父親がしゃしゃり出てきて
葬儀を執り行われる事に嫌な予感がする
「天草は勘当されてたんじゃねぇのか?」
「はい、確かに天草氏は御父上様から勘当されていて
跡は弟の道幸様が継がれておりましたが
やはり天草氏はご長男でございますし
お亡くなりになられた経緯が経緯でございますので
マスコミ対応など色々とお考えの末、御父上様が喪主を勤められることになったようでございます。
道明寺からは高橋常務と林専務が葬儀に参列される予定になっております」
「分かった。下がれ」
秘書の言葉に納得したわけじゃない
確かに今回の事件の経緯は世間の目を引き
マスコミ対応も必要だろうがそれならば
マスコミ対応だけを天草の本家ですればいい話しで
わざわざ父親が喪主となり葬儀を取り仕切る必要はないはず
それなのに・・
何かがおかしい
一抹の不安を抱きながらも
俺に出来る事は何も無い
諦めにも似た感情を抱きながらモヤモヤは晴れないまま
あっという間に四十九日が過ぎたある日
仕事を終え屋敷に帰り着くと
普段はNYにいるババァが出迎えた
ババァが帰国している事は聞いていなかった
突然の帰国に加え
わざわざ俺を出迎えるようにエントランスへと現れたババァは
俺の顔を見ると
”着替えて書斎へいらっしゃい”
とだけ告げた
ババァの書斎に入ると
ババァは読んでいた書類から顔を上げ
掛けていたメガネを外し
俺をデスク前に置かれているソファーへと座るよう促した
大人しくババァに従い腰を下ろした俺
「まだどこも掴んでいない極秘情報です。
どんな手を使ってもかまいません。
今度は貴方が守りなさい」
そう言って一冊のファイルを俺へと差し出してきた
その言葉に差し出されたファイルを受け取り中を確認すると・・
「これは本当の事か?」
「えぇ、牧野さんは連日、天草を訪ねてらしているようだけど
お子さん達には会わせてもらっていないようよ」
ファイルには天草が亡くなって以降の天草の父親の動きが記されていた
天草家には清之助の他に弟が一人いた
現在、この弟が親父さんの地盤を受け継ぎ政治家をしているが
数年前に結婚した地元有力者の娘との間に子供はいない
恐らくこの先もこの夫婦の間に子供は期待出来ない
何故なら弟は同性愛者で現在の第一秘書が奴の恋人で
親の言いなりに地元有力者の娘と結婚はしたが完全なる仮面夫婦
そこで問題になるのが跡継ぎ
弟夫婦に子供が望めない以上どこからか養子を迎え入れてとなる
以前から天草と牧野の間に生まれた次男を
弟夫婦の養子にと話しが出ていたようだったが
天草が断っていた経緯があって実現していなかったらしい
その話しが天草が亡くなった事によって
亡霊のように蘇ってきたらしいが
天草の父親のやり方がかなり汚い
牧野は当然、養子の話しは断り続けていた
だが天草の父親は天草と牧野の間に生まれた二人の子供を強引に連れ帰り
天草が残した借金を盾に養子縁組を迫っている
牧野は連日、天草家に出向き子供を返すように交渉しているようだったが
相手には弁護士も付き警察も民事不介入を理由に動こうとしていない
そして牧野は天草が店を出す時に
銀行から借り入れた借金がありその返済を迫られている
開店資金なら天草の保険金で相殺されるはずなのに
何故かそれがなされておらず
それどころか保険会社が保険金の支払いを渋っていて
未だに保険金が支払われておらず
牧野は現在、銀行から借り入れ金の一括返済を迫られている
気に入らねぇ
作為的な物を感じる
天草家は天草と血が繋がっている下の二人を弟夫婦の養子にし
牧野と雄一郎は天草から籍を抜く代わりに
天草が残した借金を肩代わりすると要求しやがる
大方、あの父親が銀行や警察に圧力をかけているのだろう
俺が言えた義理じゃねぇーが
汚いやり方だ

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