Untouchable 1
昨日は本当に失礼しました・・<(_ _)>
そしておバカな管理人を励ますように沢山の拍手をありがとうごいます。
本日は突然降臨されたブラックな坊ちゃん話です!
タイトルは『Untouchable』です。
え~相変わらずの記憶喪失ネタですがお楽しみいただければ幸いです。🎵
それではどうぞ~❤
都内に於いて
恐らく個人の邸宅としては
一番の敷地面積を誇る
道明寺家の邸の一室
ここはその主であり
世界にその名を轟かせている道明寺財閥の
唯一にして正統な後継者である
道明寺司様の自室
この部屋に入れるのは屋敷でも数人のみ
執事と使用人頭のタマ様と古参の使用人と
そしてわたくし秘書の西田のみ
室内は落ち着いたモノトーンで配色されており
置かれている調度品は全て
イタリアの名匠により一点物ばかりだったそのお部屋を
司様は壁紙を淡いアイボリーへと変え
調度品も全て明るい色へと変えられ
隣の部屋との壁を取り除き
そこにキッチンとダイニングに変えられ
お部屋に面しているお庭の一画を
家庭菜園が出来るよう変えられてしまわれ
あの方をお迎えする準備は万端整っております
後は無事にお迎えするのみでございます
ここに至るまで
思い起こせば長い道のりでございました
その万感の意も込めて
司様の自室のドアをノックいたしました
コンコンコンと三回ノックすると
中からすぐに
”入れ”
と短く鋭い声が返ってまいりました
その声から約五秒程
ゆっくりと間を空けてから入室すると
司様はアイボリーのゆったりとしたセーターに
ダメージの入ったジーンズ姿といったラフなお姿で
先日、イタリアから届いたばかりのソファーに
足を投げ出すような体勢で書類に目を通しておられました
室内に入ったわたくしは
ドア付近で立ち止まり
先程、届いたばかりの情報をお伝えいたしました
「副社長、牧野様のジェットが後10分程で到着されるとの報告がありました」
「分かった」
そうお答えになられた司様は
ソファーからゆっくりとお立ち上がりなられると
わたくしに向かって来られすれ違いざまに
手にしておられた書類を投げるように手渡され
“お前に臨時ボーナスだ”
とおっしゃいました
書類を確認するとそこにはNYにございます
司様が所有されている高級アパート一棟を
丸ごとわたくしに譲渡するという内容が記載されておりました
先を行かれている司様に追いつき
「畏れ多いことでございます」
「遠慮すんな。
あいつが手に入らなかったら
お前をミンチにしてフカの餌にしてやるつもりだったんだからな」
高らかに笑いながらそうお答えになられた司様
司様は笑いながらでございましたが
恐らく今のお言葉は本心でございます
ミンチにしてフカの餌
上手くいって良かった
心底そう思っております
受け取った書類を脇に挟むように持っていたホルダーに挟み
司様に付き従い長い廊下を歩いております
先程、ここに至るまで長い道のりだと申しましたが
その理由は一年程前まで遡ります
NY
マンハッタンにあるアパートメントのペントハウス
まだ朝の6時前だが
開け放たれた窓からは
パトカーや救急車のサイレンが
ひっきりなしに鳴り響いてきて
頭上ではヘリが飛び交っている
ある意味
安定の日常
いつもと変わらない朝だった
俺は道明寺司
今年30歳になった
高等部の卒業を待たずに渡米し早12年
大学を卒業後は既定路線
ババァの元で実績を積み
30歳になったのを機に副社長へと肩書きを変え
順調にキャリアを積み上げている
シャワーを浴び水で渇いた喉を潤しながら
サイドボードに置かれたままだったタブレットで
秘書の西田が送ってきた今日のスケジュールを確認する
朝一のブレックファーストミーティングに始まり
昼には下院議員とのランチ
そして夜にはパーティと
内容的にはいつもと同じ
代わり映えしない
いつもと同じ
日常のはずだった
その日は朝から取り立てて
体調が悪いとかも無く
順調にスケジュールを熟し
予定通り夜にはパーティに出席していた
ニューヨーク郊外の邸宅で開かれていたそのパーティに
少し遅れて出席した俺は
挨拶を済ませるとある一人の女に目が止まった
ブロンドの髪にスレンダーなボディライン
ワンショルダーの黒のドレス姿で
その女は俺と目が合うと妖艶な笑みを浮かべながら
俺に近付いてきた
遊び相手としてはこれぐらいがちょうどいい
女なんて面倒臭いだけ
だけど俺だって中身は普通の男
それなりに欲だってある
時たまその欲を吐き出す相手が必要
俺にとっては女なんてそれぐらいの存在
ババァはそろそろ身を固めろだとか
ゴチャゴチャうるせぇけど
特定の相手となんて・・
想像しただけで吐き気がしてくる
だからこんな夜は
これぐらいの女で十分
その女の手を取りパーティ会場を出る
行き先はいつも同じ
メープルホテルにリザーブしてある部屋に
その女を連れ込んだ所までは
いつもと変わらない日常だった
だがこの女
俺のワイングラスに薬を仕込みやがった
ワインを口に含んだ時には違和感は感じなかったが
いざという段階になって
少しずつ感じ始めた自身の体調の変化
瞬間的にヤラれたと思い
女の顔を見ると
女の顔には勝ち誇ったような笑みが浮かんでいた
俺へと腕を伸ばしてくる女を突き飛ばし
なんとかソファーから立ち上がったが
グラリと視界が歪み足が縺れ声を出そうにも
息が上がり声が出ず部屋の外で待機している
SPを呼ぶ事も出来ない
だから朦朧とする意識のまま
近くにあった花瓶を力一杯
壁へと投げつけた
ガシャーン!!!
と大きな音と共に花瓶が粉々に割れ
その音に気付いたSPが部屋へと入ってきて
なんとか難を逃れた
その時
俺は
歪む視界に縺れる足
混濁する意識の淵で
遠い昔に置き去りにしてしまっていた
大切な記憶を思い出した

応援ありがとうございます。