続・かりゆしの島 1
本日、先日、本宅よりお引越しをしてきたお話し『かりゆしの島』の続編です。🎶
先日、『かりゆしの島』をこちらにUpした際に
これの続きってどうなるんですか?というメッセージを沢山いただき
妄想してみました。♥
それほど長くならない事(5~6話ぐらい)を目標にUpしていきたいと
思っておりますので最後までお付き合い頂ければ幸いです。
それではどうぞ~✴
私信です
☆様
こんにちは👋😃
コメントありがとうございます。❤
返事が遅くなってごめんなさいm(__)m
『恋は‥』の司君は本当に情けない男に仕上がってしまっていますが
これをあきら君目線でなるべく軽やかに❗バカな男だなぁ~的にサラリと読んで
もらえればいいなぁと思っていたお話しです。
あきら君の立ち位置としては基本、つかつくの善き理解者です。
ですが私の妄想に登場するあきら君は何気に扱いが酷いような気もします‥😅
お話しによって微妙に変化していますがあきら君はつかつくにとって
常識の最後の砦?かなぁ~✴
声を掛けてきた少女は俺の返事を待つ事なく
家の軒先に無造作に自転車を立て掛けると
中へと向かって”ママ~お客さんだよ~”と叫びながら家の中へと入って行った
初対面の人間に対して全く警戒心など見せず
”ママ~いないの~?”とまた大声を出している
その声が届いたのか奥の方から聞き覚えのある懐かしい声が返ってきた
”千尋?帰ったの?”
”また出かける~!”
少女は母親の問いかけにそう返すと
隣の部屋からアイスクリームが入った袋を2つ手に俺が立ち尽くす玄関へと出てきた
「おじさん、ママは裏に居るみたいだから
そこから裏に回って!あたしアイス取りに戻っただけだから~!
じゃあね~バイバイ~!」
千尋と呼ばれた少女は再び玄関先に立て掛けてあった自転車に跨がると
勢いよく飛び出して行ってしまった
少女の指さした通り玄関から真っ直ぐに土間が通っていて
家に上がらずに裏庭へと出られるようになっている
真っ直ぐに伸びた土間を抜けた先からは眩しい程の陽の光が差し込んでいる
その光の射す方へゆっくりと一歩を踏み出す
建物から一歩、裏庭へと足を踏み出すと
一瞬、光の洪水に飲み込まれるような感覚に陥ったけれど
すぐに目が慣れると目の前には青い青い海が広がっていた
周囲より少し高台になっているので果てしなく広がる海しか見えない
しばらくその光景に見とれ立ち尽くしていたが
横から聞こえてきた懐かしい声に引き戻された
「司…?」
懐かしい声
彼女が俺を呼ぶ声だ
ゆっくりと声のした方を向くと
そこには当たり前だけど少し歳を取った彼女が手に洗濯物を持ったまま立っていた
突然現れた俺を見た彼女の表情は…
いや…それよりも俺はどんな表情をしているのだろうか?
あの夜の約束をすっぽかして以来
彼女には会っていない
それどころか声さえ聞いていない
気が狂いそうな程の長い時間を
後悔と自責の念にかられながら一人で過ごしてきた
もう俺を名前で呼ぶ奴なんてほとんどいない
長い付き合いのあいつらぐらいで
俺が他の女と婚約した時点で滋も三条も着信拒否で
姉貴に至ってはいつも何かあるとすぐに暴力に訴えていたのに
あの夜以来、口も聞いてくれなくなってしまった
姉貴と久々に再会したのはお袋が危篤だと駆け付けた病室で…
その時も姉貴の目には俺に対する不信感は消えてはいなかった
俺は取り返しのつかない間違いを犯し
多くの人を傷つけてきた
挽回する方法は未だ見つかってはいないけれど
お袋が最後に残してくれたラストチャンスに賭けてみたくて俺は遥々ここまでやって来た
「よぉ…いいとこだな」
ここまで来たけれどいざとなると正直、何て声を掛ければいいのか分からなくて
ただ素直に頭に浮かんできた言葉を声にした
俺の言葉を聞いた彼女は一瞬だけ怪訝そうに左の眉を動かしただけで
俺から発せられる次の言葉を待っているようだった
「東京からここまで7時間もかかったぞ」
視線は海の方に向けたまま
気配だけで彼女の様子を伺う
「座れば」
彼女からの第一声はこの言葉だった
もしかしたら否応なしに追い返されるかもしれないと考えていたから
とりあえずは第一関門は突破だな
座ればと言われた縁側にゆっくりと彼女と並んで腰を下ろす
座ればとだけ言葉を発した彼女はその以降は俺の次の言葉待っているように感じられた
「元気だったか?」
「うん…」
短い返事の後に少し間を空けて
”あんたは?”と続けた
「あぁ…俺はなんとかな…」
「そっか…よかった」
そう言った彼女は少しだけ微笑んだ
彼女が俺の為に笑ってくれている
それだけで心が少しだけ軽くなったような気がした
「俺がここへ来た理由分かるか?」
「なんとなくね」
「そうか…それなら単刀直入に言う」
そう言ってから彼女の反応を見る為に彼女の方へと向き直った
彼女も早く話せとかばかりに真っすぐに俺を見つめてくれている
そんな彼女に気付かれないように小さく深呼吸してから
今更ながらここへ来た訳を話し始める
「実は半年程前にお袋が亡くなったんだ」
「知ってる。お母さん残念だったね」
「あぁ…けどもう仕事もほとんど引退したような状態だったし、
本人も病気の事は分かってたみたいだったから覚悟は出来てたと思う」
「うん…知ってた」
小さくそれだけ答えた彼女の視線はずっと目の前に広がる海に向けられていた
「お袋が死んで葬式とか済んだ後に弁護士がお袋の遺言を出してきたんだけれど
その中にお前に宛てた物があった」
「私に?」
ジャケットの内ポケットから取り出した白い封筒を彼女に手渡す
「あぁ、それがこれだ。
それからこっちが俺に宛てた物だ」
そう言ってから俺は内ポケットに入っていたもう一枚の封筒も彼女に手渡した
「読んでいいの?」
「あぁ…」
二通の遺言状を受け取った彼女は少しの間
手にした封筒を眺めてからゆっくりとまず自分に宛てた方の封を切った
彼女が遺言に目を通している間
しばらく静かな時間が流れた
海からの風と波の音が耳に心地よく届くだけの時間
俺はずっと目の前に広がる広い海を見つめていた
やがて読み終えた彼女は小さくため息を零すと同時に”楓さんたら…”と呟いた
俺はさっきから彼女の言葉に違和感を感じていたが
それを解消出来ないままに話しを進めていた
彼女は俺のそんな違和感には気付かないようで
自分の遺言状を封筒に戻すと
続いて俺に宛てた遺言状を読み始めた
俺への遺言はいたって簡単で
読むほどの物なんて入ってはいない
俺も封を開けた時にはあまりの薄さに驚いたが
お袋らしい余計な事は一切書かれていない遺言と言うよりは命令書みたいな物だった
「何これ?」
俺宛てへの遺言状を開いた瞬間に彼女が発した言葉
「何これってそのまんまだ」
「いや…だから何これってって聞いてるのよ」
「俺に聞くなよ…俺だって驚いたんだから…」
彼女が驚くのも無理はない
お袋から俺に宛てた遺言状ってのは便箋が一枚と
牧野と娘が写っている写真が一枚入っていただけで
便箋には前置きなど無しにただ”この二人の今後は貴方に一任します”とだけ書かれていて
写真の裏に住所が書かれていただけだった
「なんであんたに一任されなきゃいけないわけ?」
「それは…お前が牧野つくしで千尋が俺の娘だからだろ」
俺の娘…この言葉を口にするのに俺がどれほど緊張していたか…
「だからって…」
牧野はそこのところはあまり気にしていないようで反論も否定もしなかったが
俺は緊張を悟られないように手にしたままの写真を眺めている彼女の表情を伺っていた
彼女は手の中の写真を眺めたままで
小さく”ズルイよ楓さん…”と呟いた
まただ…
またお袋を名前で呼んだ…
さっきから感じている違和感を解消するために思い切って聞いてみる
「なぁ…お袋とお前ってどんな関係だったんだよ?」
ストレートに投げ掛けた質問に彼女は少しだけ考えるような仕草を見せた
「楓さんはね…ずっと私と千尋の側に居てくれた恩人かな…」
あのお袋が恩人?
恨みを買うことはあっても感謝される事なんてないと思っていた
そのお袋の事を牧野は恩人だと言った
「恩人ってどういうことだ?
お袋は俺の知らないところで何をしてたんだよ?」
たった一言…恩人という言葉に彼女とお袋の間に俺には立ち入れない絆のような物を感じ
軽く苛立ちを覚えた俺はついつい責めるような口調になってしまった
「私に八つ当たりしないでよ」
「わりぃ…けど…なんか長い間、俺だけ置いてけぼりにされてたみたいで…」
「置いてけぼりにしたのはあんたの方じゃない…
あっ!ごめん…別に責めてるわけじゃないんだけどね」
「あやまんな!本当の事だろ…」
「いや…ごめん。別にいまさらあんたにこんな事言うつもりはなかったんだけど。
私と楓さんの関係は一言では言い表せないのよね…
親子でもないしだからって赤の他人ってわけでもなくて…
とにかく楓さんは私と千尋にとっては大切な存在だったの」
大切な存在…そう言った彼女は視線を手の中にある写真に移した
「教えてくれないか?お袋とお前達がどんな時間を過ごしてたのか…」
切実に知りたいと思った…
「私がこの島に移り住んだのはね、千尋が2歳の頃なの…
その当時の私は看護婦って仕事と子育てとでいっぱいいっぱいになってて
逃げ出したいって思ってたの…
そんな時に当時勤めてた病院の病棟の婦長さんが
この島の診療所が看護士を探してるから行ってみる気はないかって薦めてくれたの…」
「ここは婦長さんの出身地で何もない小さな島だって聞いてたんだけど
初めてこの島に来た時はほんと何もなくて…びっくりしちゃった…
けどね…すぐに気に入ったの…都会みたいに便利な物は何もないけど
この海と空と…それに人も親切だし…今はここに来て良かったって思ってる。」
あの日
ドタキャンされた夜
私は彼に子供が出来たと告げるつもりだった

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