万有引力のススメ 11

目の前で言い争い？じゃれ合い？中の母さんと父さん(仮)を眺めながら考えていた事‥

止めた方がいいのかな？

でも殴ってる方も

殴られてる方も

どっちも

なんだか楽しそうだから

まっ、いっか

そのままで

どうやら父さん(仮)は近々(仮)が取れそうな流れだし

そうなったら名字とか家とか学校とか
色々と変わるんだろうか？

なんて漠然とだけど考えながら
投げ渡された封筒の中の物を
膝の上に出した

入ってたのは

英徳学園の学生証にマイナンバーカードにパスポートに
アメリカのＩＤカード

そのどれも名義は

道明寺 樹

なかなかいいんじゃねぇ？

響きもしっくりきてるし‥って

ん？

もしかして？

母さん‥

俺の名前を付ける時

こうなる事を見越してたのか？

なぁ～んだ

父さんは死んだとか言っときながら
母さんこそ未練タラタラじゃん！

パスポートの中で笑ってるのはいつ撮ったのか分からないけれど
まるでずっと道明寺樹だったかのような俺の顔写真
用意周到過ぎて笑ってしまう

「どうだ？気に入ったか？」

母さんの動きを封じ込めながらの父さん(仮)の問いかけに笑顔で応える

「やっと笑ったな！」

「えっ？あっ‥う、うん」

「こら！樹！手懐けられてんじゃないわよ！」

「うるせぇ！お前もいい加減素直になれ！」

「あたしはずっと素直だっつーの！
あんたこそいい加減にしなさいよね！
さっさと車停めてよ！あたしと樹は自分ん家に帰るんだから！」

「お前ん家ってあのボロアパートか？」

「ボロは余計なのよ！」

「あのアパートなら今頃、ダンプカーが突っ込んでんじゃねぇーか？
お前らの荷物は運び出しといてやったから無事だから安心しろ！
良かった、間一髪間に合って！
俺に感謝しろよ！」

ダンプカー？

さもなんて事ないような
普通の口調で
サラリと放たれた言葉に
母さんも俺も動きが止まった

「ダ、ダンプカーって！あ、あんたなにしたの？！
荷物運び出したって‥どういう事よ？！」

「別になんもしてねぇーよ！」

「う、嘘つくな！
他にも住人がいるんだからね！」

「いねぇーよ！」

「ん？どういう事よ？！」

「あのボロアパートは先週俺が買い取って
お前ら以外の住人は全員引っ越した！」

「はぁ？」

「どうせ取り壊す予定だったんだから
ダンプカーが突っ込んだぐらいどうってことねぇーよ！
それよりもお前ら帰るとこねぇーんだから
大人しく俺の言う事聞いてろ！」

なんかめちゃくちゃ過ぎて
どっから突っ込んでいいのか分からない

母さんも同じようで

父さん(仮)の膝に跨がり口をパクパクさせながら
怒りのあまり父さん(仮)の首を絞めている

絞めてる方はマジなんだろうけど

絞められてる方はなんだか嬉しそうで

父さん(仮)ってそっちの趣味があるのかな？

なんて思ったり

思わなかったり

まぁ

どっちにしても

二人とも

楽しそうだから

まっ、いっか！





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