Bunker 19

「仕掛けるっても‥どうやるんだ？
まだどんな奴かも分かってねぇーんだぞ？！
今の段階じゃ危険過ぎんだろ？！」

「分かってるよ。だからそれをあきら達が考えてよ。
得意でしょ？そういうの‥ふぁ～
俺、時差ぼけで眠いから後はよろしく」

中途半端なままで眠いと部屋から出て行ってしまった類

まぁ、長い付き合いだから慣れてるちゃ
慣れてるけどよ‥

仕掛けるって‥

誰にどう仕掛けるんだ？


類から仕掛けるって言葉が出た以降
ずっと黙ったまま考え込んでいる司に声を掛ける

「なぁ、司？類はああ言ってたけど
今の段階じゃリスクが大き過ぎるから無理するなよ」

「あぁ、分かってる‥
でも俺もダラダラと時間を掛けるつもりはねぇから
こっちから仕掛けてやるってのはアリじゃねぇーかと思ってる」

「気持ちは分かるけど‥大丈夫か？」

「あぁ、俺の一存では決めらんねぇけどな‥」

「分かった‥俺達も出来る限り協力するから
無茶だけはするなよ！」

いつの間にか外は夜の闇に支配されていて
閉ざされたままの窓の向こうでは
突然吹き上がった一陣の風が庭の木々を揺らしていた






こちらから仕掛ける話が出てから１ヶ月後
ＮＹの司からもしかしたら真犯人が分かったかもしれないと連絡が入り
急ぎスケジュールを変更し総二郎と二人で
再びＮＹへと降り立った

屋敷に到着すると出迎えたのは類で
聞けば前回の訪問からずっとこっちに‥

と言うより

ここに居座っているらしい

話を聞いて呆れている総二郎

「お前、仕事はいいのかよ？」

「ん、ちょうどこっちで片付けなきゃいけない仕事があったからね」

なんて簡単に言っているけれど

類と共に出迎えた司の態度からして
この１ヶ月間、ずーっと司と牧野の間で
お邪魔虫をしていただけだって事は容易に想像がつく

「類‥お前、いい加減にしといてやれよ！？」

腕を類の肩に回し呆れ気味に話す俺に対し類は

「司なんて何年も俺達を騙してたんだから
これぐらいいい方なんじゃない？
それに美亜は司より俺の方に懐いてるしさ」

こないだ生まれたばかりの司の娘は
亜門から一文字もらい美亜(みあ)と名付けられていた

「懐いてねぇ！」

類の言葉に間髪入れず返してきた司の額には
いくつもの青筋が浮かんでいるが

類はそれさえも楽しそうに笑いながら眺めているだけで
ある意味、懐かしい光景ではあるが
俺達がここに集まった理由は

そんな和やかなものじゃないから
気持ちを切り替えて司の書斎へと向かう

書斎に入るといつものようにそれぞれが好きな場所に腰を落ち着ける

「で、黒幕が分かったかもしれないってどういう事だ？」

「あぁ、これだ！」

そう言って司が投げ寄越したファイルの中に記されていた人物は
意外過ぎる人物だった

「‥マジ、か‥？」

横にいた総二郎が俺の手元にあるファイルを覗き込みながら発した言葉

「あぁ、まだ確証はねぇけどな‥
色々調べた結果、一番怪しいのはそいつだ」

ファイルに記されていた人物は

ＮＹ市警本部長

司の誘拐事件の陣頭指揮を取っていた人物だった









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