パパはおんぞうし？ 13

すっかり陽の長くなった６月の夕暮れの中を
すぐに駆け出しそうになる問題児のシャツの首を掴みながら歩く

とりあえずは学校まで

通学路を辿る

自宅から学校までの道のり

蓮にどこに寄り道した？と問いただしても明確な答えは返ってこずで
とりあえず通学路の途中にある公園なんか
思いつく限りの場所を探しながら歩くけれど見つからず
学校の前まで来てしまった


で

ここからやり直し

だけど‥

隣に立つ問題児はかなり飽きてやがる

探す気ゼロ

「とーちゃん！おなか すいた！」


「はぁ～ お前なぁ‥
お前のランドセル探してんだぞ！
ちょっと真剣に考えろって！」


「え～ でも おれ はら へりすぎてＨＰが ゼロになったから
もう あるけねぇ！とーちゃん おんぶ しろよ！」


「お前、いい加減にしとけよ！
腹減ってんだったらさっさと今日帰った道思い出せ！」

「え～ わかんねぇ！」


「即答すんな！考えろって！」


「とーちゃん！きょうのばんめしはハンバーグなんだぞ！」

今夜は蓮の大好物のハンバーグらしい

「いものやつも ついてんだぞ！」

ダメだ‥

もうこいつの頭ん中には晩飯の事しかねぇ‥


「とーちゃん！かあちゃん まだ おこってるかな？」


なんでこの状況でもう怒ってねぇって思うんだよ？！


「怒ってるに決まってんだろ！？」


「え～ 」


「え～じゃねぇっーの！
ランドセル見つかるまでかあちゃんの怒りはおさまらねぇっーの！」


「そんな～ じゃあ おれ はらへりすぎて しぬぞ！」

「だったら死ぬ前に見つけるぞ！」

「え～ でも おれ もう ＨＰがゼロだから あるけねぇ！」


結局そこにもどんのかよ‥

「はぁ～分かったよ！
ほら！」

背中を向けて少し屈んでやると
嬉しそうに飛び乗ってきた蓮をおんぶしながら
再び自宅の方へと歩き始めると

「とーちゃん！そっちじゃねぇ！
おれ きょうは あっち いったぞ！」

背中の蓮が指指したのは自宅とは逆の方角

「逆じゃねぇーかよ！」


「ぎゃく？
ぎゃくじゃねぇーぞ！
こっちからでも かえれるんだぞ！」


自信満々にそう言う蓮に呆れながらも
蓮が指指した方角へと歩き始める


自宅とは反対の方へ学校に沿って歩き
一つ目の角を曲がる

要は学校の周りをぐるりと一周し
そのまま真っ直ぐに行くとやがていつもの通学路へとぶち当たる

所謂、裏道

その道を蓮の言う通りに歩いて行くと
小さな滑り台が一台あるだけの小さな小さな公園が出てきた

「とーちゃん！あそこ！
おれ あそこの こうえん とおったぞ！」

住宅と住宅の間に埋もれるようにあった小さな公園

蓮の言葉に足を踏み入れると少し錆びついた滑り台と
並んでベンチが二つ置いてあるだけの本当に小さな公園だった

公園の入り口付近には背の低い植え込みがあり
その植え込みの根元辺りに‥


「あった！
とーちゃん！あったぞ～！」


植え込みに半分突っ込むようにあった蓮のランドセルと‥

体操服なんかを入れた手提げバッグ

「あっ！たいそうふくもあったぞ！とーちゃん！」

「お前‥手ぶらで帰って来てたのか？」

「てぶら ってなんだ？
それ うまい のか？」

「なんでも食いもんだと思うな！
手ぶらってのは何も持ってないってことだ！」

「な～んだ くえねぇ のか！
つまんねぇ！」

つまんねぇじゃねぇーよ！

どんだけ腹減ってんだよ？！

欠食児童め！

「ほら！さっさとそれ持って帰るぞ！」

「とーちゃん！おれ ＨＰがゼロだから もてねぇーし
あるけねぇーぞ！」

俺の背中から降りようとしない蓮にため息

「しょーがねぇーな！」

蓮をおぶったままランドセルと手提げバッグを拾い上げ
すっかり陽が落ちてしまった道を家路へと急ぐ

と言うか

背中の欠食児童に急かされ家路を急ぐ俺

「とーちゃん！ハンバーグ のこってるかな？」

「大丈夫だろ」

「かあちゃんが ぜんぶ くっちまってねぇーかな？」

そんなわけねぇーだろ！

「大丈夫だって！心配すんな！」

「でも かあちゃん きのう れんの チョコパイ くったぞ！
おにじゃねぇ？」

「なんでかあちゃんにおやつ抜きにされたんだよ？」

「おれ なんも してねぇーぞ！」

「なんもしてねぇのにおやつ抜きにはなんねぇーだろ？」

「きのうは あおいと おえかき してただけだぞ！」

「どこに絵描いてたんだ？」

「あおい」

「だからどこに描いたんだ？」

「あおい だって！」

「お前‥蒼に描いたんか？」

「わざとじゃねぇーぞ！
描いてたら ちょっと はみだして あおいのおなかに ついたんだ
そしたら あおいが よろこんで もっと かけって いったから
かいて やった だけだぞ！ 」

ハァ～

ちょっとはみ出しただけって‥

そもそもどこで絵描いてんだよ？！

「弟のお腹の上で絵描くな！」

「え～あおいは わらってたぞ～！」

「笑っててもダメだ！」

「かあちゃんも ダメっていってたぞ！」

「言ってたぞ！じゃねぇって‥」

「ダメっていったのに かあちゃん おれの チョコパイ 取ったんだぞ！
ひどくねぇ？！やっぱ きょうも おれの ハンバーグ くっちまってるぞ！
ピーマンしか のこって なかったら おれ マジで しぬぞ！」

「ハンバーグにピーマンなんて付いてねぇーだろ？」

「ついてるぞ！かあちゃん ピーマンのなかに ハンバーグ いれてたぞ！」

「ならそれはハンバーグじゃなくてピーマンの肉詰めだろーが！」

「おれは ピーマン なしでいいぞ！
とーちゃん！おれの ピーマンもくって いいぞ！
そのかわり とーちゃんのハンバーグは おれが くってやるぞ！」

「ピーマン食わねぇーとまたかあちゃんに叱られんぞ！
いいのか？またおやつ抜きになるぞ！」

「ダメだ！」

「だったらピーマンもちゃんと食え！」

「‥わかった がんばるぞ おれ！」

「おぅ！頑張れ！」

そんな会話を交わしながら自宅近くまでたどり着いた時

自宅前に見覚えのあるバカデカイ黒塗りの車が停まっているのが目に入った









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