月夜に 90
おはようございます。🎵
お引っ越し話です。🎶
それではどうぞ~✴
シートに深く腰を沈め目を閉じていると
向かい側に座っていた秘書が遠慮がちに口を開いた
「司様、もうあまりお時間の方が残っておりませんが・・」
閉じていた目を少しだけ開き目の前に座る秘書に視線を送る
「後、どれぐらいだ?」
「次の会議が16時からの予定ですので後、20分少々が限界でございます」
腕時計を確認すると時刻は現在、午後2時30分を少し回ったところ
櫻の病院からオフィスまでは早くても30分は掛かってしまう距離
彼女の病院までは後、信号4つ程の距離、視界にはもう入っている
幸い目の前の信号は赤
「ここで降りる!」
短くそう言い残し慌てて傘を差し出そうとする
秘書を無視して自分でドアを開け雨の中飛び出した
後ろで何やら叫んでいる秘書の声を受けながら
点滅し始めていた横断歩道を一気に渡りきった
雨を裂くように走り病院へと駆け込むとエレベータの中で
上がった息を整える
彼女の病室の前でもう一度、軽く深呼吸してからノックをすると
中からは少し間を置いて彼女の声が聞こえてきた
笑顔で病室へ一歩踏み込むとこちらを向いていた櫻と目が合った
いつもなら”よぉ!”と声を掛けると優しく微笑み返してくれる
彼女だったが今日は何処か様子がおかしい
目を見開いたまま瞬きもしないで険しい顔で俺を見つめている
そんな彼女の姿に動けなくなる
もしかして思い出しているのか?
俺の事、思い出してくれているのか?
ゆっくりとベッドに近づき彼女の頬に手を触れると
驚いたように一瞬ビクリと跳ねた
「櫻?どうしたんだ?」
なるべく優しくゆっくりと声を掛けようとするのだが
擦れて上手く声が出ない
そんな俺の顔をじっと見ていた彼女は頬に触れたままだった
俺の手を自分の両手で包み込むと目を閉じ大きく息を吐き出し
「・・やっと・・やっと見つけた・・」
吐息と共に吐き出されるように零れた言葉
「・・お、おまえ・・思い出したのか・・?俺のこと・・・」
再び櫻の口元から吐息が零れ落ち俺の手を包み込んでいた
片手を放すと今度は俺の髪にそっと触れる
「・・やっと見つけたあんたの事・・ごめんね・・長い間・・」
そう言い終えた瞬間、彼女の瞳から涙が零れ落ちた
俺は・・俺の髪に触れていた彼女の腕を掴み引き寄せると
彼女を胸の中にしまいこむ様に抱き寄せた
しばらく俺の胸の中で嗚咽を上げながら泣く彼女の背中を撫でていた・・

応援ありがとうございます。
お引っ越し話です。🎶
それではどうぞ~✴
シートに深く腰を沈め目を閉じていると
向かい側に座っていた秘書が遠慮がちに口を開いた
「司様、もうあまりお時間の方が残っておりませんが・・」
閉じていた目を少しだけ開き目の前に座る秘書に視線を送る
「後、どれぐらいだ?」
「次の会議が16時からの予定ですので後、20分少々が限界でございます」
腕時計を確認すると時刻は現在、午後2時30分を少し回ったところ
櫻の病院からオフィスまでは早くても30分は掛かってしまう距離
彼女の病院までは後、信号4つ程の距離、視界にはもう入っている
幸い目の前の信号は赤
「ここで降りる!」
短くそう言い残し慌てて傘を差し出そうとする
秘書を無視して自分でドアを開け雨の中飛び出した
後ろで何やら叫んでいる秘書の声を受けながら
点滅し始めていた横断歩道を一気に渡りきった
雨を裂くように走り病院へと駆け込むとエレベータの中で
上がった息を整える
彼女の病室の前でもう一度、軽く深呼吸してからノックをすると
中からは少し間を置いて彼女の声が聞こえてきた
笑顔で病室へ一歩踏み込むとこちらを向いていた櫻と目が合った
いつもなら”よぉ!”と声を掛けると優しく微笑み返してくれる
彼女だったが今日は何処か様子がおかしい
目を見開いたまま瞬きもしないで険しい顔で俺を見つめている
そんな彼女の姿に動けなくなる
もしかして思い出しているのか?
俺の事、思い出してくれているのか?
ゆっくりとベッドに近づき彼女の頬に手を触れると
驚いたように一瞬ビクリと跳ねた
「櫻?どうしたんだ?」
なるべく優しくゆっくりと声を掛けようとするのだが
擦れて上手く声が出ない
そんな俺の顔をじっと見ていた彼女は頬に触れたままだった
俺の手を自分の両手で包み込むと目を閉じ大きく息を吐き出し
「・・やっと・・やっと見つけた・・」
吐息と共に吐き出されるように零れた言葉
「・・お、おまえ・・思い出したのか・・?俺のこと・・・」
再び櫻の口元から吐息が零れ落ち俺の手を包み込んでいた
片手を放すと今度は俺の髪にそっと触れる
「・・やっと見つけたあんたの事・・ごめんね・・長い間・・」
そう言い終えた瞬間、彼女の瞳から涙が零れ落ちた
俺は・・俺の髪に触れていた彼女の腕を掴み引き寄せると
彼女を胸の中にしまいこむ様に抱き寄せた
しばらく俺の胸の中で嗚咽を上げながら泣く彼女の背中を撫でていた・・

応援ありがとうございます。
スポンサーサイト