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続・月夜に… 鈴ちゃん編(短編)

こんにちは。

本日は『月夜に…』の続編となるお話しです🎶

注意点がいくつか🎵
『月夜に…』は本宅で完結しておりませんので、ネタバレになります❗(´д`|||)
そんなの嫌だ~!と思われるかたはご遠慮くださいませ。m(__)m
オリキャラが登場します。
ほのぼのを目指しておりますので特段の事件は起こりません💕


いろいろ書きましたがあまり気にせず緩い目でどうぞ~✴


それではどうぞ~✴




私信です。
he○○a○○m様
こんにちは。
コメントありがとうございます。😆
考えられないくらい良好な嫁姑関係ですよね🎵
こんな関係、理想かも?☺
これかもほのぼの家族にお付き合いよろしくお願いします。\(^-^)/



☆様
こんにちは。
コメントありがとうございます。⤴
ムフフ♥司パパ分かってないですよねぇ!(笑)
どんな記者会見になるんでしょうか?💕←私も楽しみだったりしますっ❕(笑)















秋の爽やかな風が木々を揺らしながら
テラスでのんびりとアフタヌーンティーを楽しんでいた私の元まで辿り着いた

ここはNY郊外にあるお屋敷

半年程前、道明寺財閥の総裁として
再びNYで仕事をする事となった司と共に
こちらに戻ってきたばかり

8ヶ月前・・思い出すだけで溜息が零れる・・


我が家の長女の雛が突然パリに行ってしまったのだ・・

私と司が1週間の予定でNYへ行っていた隙をついて勝手にパリへと行ってしまい

F3を巻きこんでの大騒動に発展してしまった・・・

なんとか話し合いがつき

現在、雛はパリの美作のお屋敷に住み

私が一年だけ通っていた高校に通っている

どうして雛がパリに行きたかったのか・・?


司は雛が自分と一緒に居るのが嫌でパリに行ったんじゃないかって本気で考えているようだけど・・

それは違うと思う

はっきりとした事は分からないけど

一つだけはっきりと分かっている事がある

それは・・今でも年の半分以上をパリで仕事をされている美作のお父様だ

雛は未だにお父様の事を洋介君と呼んでいる

お父様は雛がパリに来る事に大賛成で彼女の強力な後ろ盾の一人

猛反対する司に再び隙があれば家出しようとする雛・・


F3が間に入っても膠着状態で話しが進まない中
パリのお父様から司へと掛かってきた一本の電話


”雛がどうしてもパリに来たいのなら
私が責任を持って面倒見るから、司君どうかね?
雛の望みを叶えてやってくれないかね?”


お父様にこう言われてしまってはさすがの司もそれ以上の反対は出来なかった

お父様はきっと雛に泣き付かれたんだろうけど…

相変わらず甘いんだから!

私は…賛成していたわけじゃないけどどうしても反対だとも思ってはいなかった


雛の性格は確かに我が儘で世間知らずのお嬢様だけど
小さな頃から好奇心が旺盛で独立心も強く何でも自分で決めてしまう

自分ひとりで決めてしまうのは私に似たのかもしれないけれど
それが思い通りに進まないとなると途端に司似の自分勝手な行動力が発揮される

それによって周りが被る迷惑なんてお構いなし・・

結局、雛はパリの高校に留学することとなりちょうどパリに出張予定だった
もう一人のおじいちゃま、花沢類のお父様と共にパリへと行ってしまった

空港で満面の笑みでパリに向かう雛と
これ以上無いってぐらいの不機嫌さを隠すことなく見送る司…

私は司が自分も雛と一緒にパリに行くって言い出さないか…

それだけが心配だった

有り得ない事を本気で考えているフシがあるから油断出来ない!

司は誰が考えても不可能な事を現実に変えてしまうパワーを持っている

いや…パワーなんて綺麗なものじゃない!

破壊力だ!

それによって周りが被る迷惑は計り知れない…

やっぱり雛は司似だ…

お茶と共に溜息を飲み干すのんびりとした休日の午後

広いお屋敷には物音一つしない静かな時間

…って思っていたのは私だけで

庭では恒例のバトルが繰り広げられていた

バトルの登場人物は我が家の末娘、3歳になったばかりの鈴と
いつの間か敷地内に住み着き広大な庭を自分の縄張りとして目を光らせ
毎日のパトロールを怠らない元ノラ猫のBoo(ブー)

彼女…

最初はオスだと思っていたのだけど…

Booが3匹の可愛い子猫を産んだ事でメスだと判明…

Booと名づけたのは鈴

Booは猫のクセにニャーとかニャンとか可愛い猫らしい鳴き方は一切せず
いつもブー、ブーと鼻を鳴らすように鳴いているから”Boo”

いつ頃から住み着いているのかは分からないが
私達がこちらに戻ってきた時は既に住み着いていた

メイドの話しでは1年程前からたまに見かけるようになり誰かしら
残り物などをエサとして与えていたらしい

彼女にとってはこのお屋敷はやっと見つけた安住の地だったのかもしれない

広大な庭を縄張りとしてエサ場もあるし
人間から危害を加えられる心配もなく車も通らない

そんなBooと我が家の暴れん坊の鈴はもっか最大のライバル!

道明寺鈴 3歳

世間では道明寺財閥の令嬢なのだけれど

この子

絵に描いたような司の縮小版

雛の時は確かに我が儘で手がかかったけど乱暴じゃなかったし

蓮にしたって同じ

いや…3人の中で一番大人しく手が掛からないし

慎重派で何をやらせてもそつなくこなしてしまう

男の子なんだからもう少し乱暴でもいいのにって思ってしまうくらい…

イヤ…出来る事なら蓮と鈴を足して2で割りたいぐらい

両極端かも…


蓮の性格は司から凶暴性を取った感じ
生意気で最近では言葉遣いがパパに似てきた所もあるけれど、
どこか私の性格が見え隠れするところがある

だけど…鈴には全く見えない!!

彼女はNY生まれだが実際にNYで生活をした事はない

私が出産の為にこちらに戻ってきただけだったから彼女は生後数ヶ月で日本へ

その鈴は9月から蓮も通っている小学校附属の幼稚園に通っている

幼稚園が決まる時だって大変だった

いくら道明寺の娘だからと言っても一応は試験というものがある

人に従うという事を知らない彼女が先生のおっしゃる事を聞くわけが無く・・

渋い顔をする理事長に司が多額の寄付金を提示してやっと入園が決まった


そんな彼女は最近Boo相手にバトルを繰り広げている

Booと鈴はライバルだが一応仲良しと言うか…

Booが鈴の子守係と言った感じ


鈴にはちゃんと人間の子守係もついてはいるのだが

なんせ彼女の運動量は凄い!

女性では簡単に振り切られてしまうので男性のSPが3人ついている


司が休みの日は彼も付いているけど

とにかく大の大人が1人と1匹に振り回されている

Booは現在、鈴の部屋を寝床としている


Booは以前、まだ野良の時は敷地内にある馬小屋を寝床にしていた


馬小屋の入り口に置いてある干草の上でよく寝ていたが

Booはそこで3匹の子供を産んだ

ミャァミャァと普段のBooからは考えられない可愛い泣き声に気付いた馬係が
見つけた時には干草のベッドの中に小さな3匹


1匹はBooそっくりの茶と黒と白のまだら模様でもう1匹は茶色
残りの1匹は茶色と白

Booがオスだと思っていたら子供を見た時はみんなびっくり

確かにお腹は大きかったけど食べ過ぎて太っているだけだと思っていた…


鈴がBooの子猫達を見て大喜びしたのは言うまでもなく

一日中、子猫たちに張り付き撫でまわしていた

Booが野良を止めて鈴の部屋へと引越しをしたのはちょうどその頃

夜中に仕事から戻った司が鈴の部屋を覗いて彼女がいない事に気がついた


その日も幼稚園から帰って子猫たちに張り付いていた鈴だったが
夜の8時にはベッドに入り私が絵本を読んでいる間に眠ってしまっていた

彼女が寝た事を確認して部屋を出たのに…

当然、大騒ぎとなり屋敷中大捜索が始まった

屋敷中を探したが見つからずかと言って外部から不審者が侵入した形跡も無い…

第一、セキュリティーが万全のこのお屋敷に侵入するだけでも至難の業だ

捜索を始めて30分、司のイライラがピークに達した頃
SPからやっと鈴を見つけたとの連絡が入った

鈴が居たのは馬小屋で

子猫たちを抱え込むようにして眠っていた

慌てて馬小屋に駆けつけると鈴と子猫たちは夢の中で
Booだけが抗議の声を上げるようにブーブーと鳴いていた

鈴が無事だった安心感でホッとしたのと同時に幸せそうに眠る1人と3匹を見た時の
妙な脱力感と、きっと鈴は明日っからも
ベッドを抜け出して子猫たちの元へと来てしまうだろうという確信

とにかくBoo親子がここに居る限り鈴は馬小屋に来てしまう

仕方が無い…

Boo親子に引っ越して来てもらおう


司も同じ考えだったらしく鈴をそっと抱き上げるとBooに向かって
”お前が引越しだ”と言っている

私は溜息と共に肩にかけていたケープを外しそれで子猫たちを包み込み抱き上げた

Booにとっては甚だ迷惑だったに違いないがブーと短く鳴くと
私達の後ろから大人しくついてきてくれた

鈴をベッドに寝かせて鈴が赤ちゃんの時に使っていた大き目のバスケットに
ブランケットをひいて子猫たちを寝かせるとBooも一緒にバスケットに入り眠り始めた

翌朝、目を覚ました鈴が自分の部屋のBoo親子がいる事に大喜びだったのは言うまでもなく
朝から叱る私の怒りなどいっこうにお構いなしで司相手に子猫たちの事を話し続けている

司は鈴に対して…
というか子供達がいたずらをしたり言う事を聞かなくても怒ったりはしない

雛に対して怒るのは自分よりも学校の友人達との予定を優先したり
お友達とは飽きずに何時間でも電話でおしゃべりをしているのに
自分に対してはロクに返事すらしてもらえないからで
単にヤキモチを妬いているだけ

鈴はまだ小さいのでパパ大好き!

まぁ~司は特に鈴には甘いのでそれは仕方がない事なんだけど、
私が叱っている時ぐらい協力してくれてもいいじゃない!

この2人ひとっつも私の話しなんて聞いていない

さっきからずーっと子猫たちの名前を決めなきゃなんて楽しそうに話している…

私、一人バカみたいじゃないのよ!!


それ以来、Booお母さんは自分の3匹の子育てと1人の子守をしてくれている

幼稚園から帰ってくると今までならすぐにおやつだったのに
最近ではまず子猫

ひとしきり子猫を撫で回した後は
今度はBooお母さんを探して庭へと飛び出して行く

Booは大抵、馬小屋の干草の上で
午後のひと時をのんびりとお昼寝をして過ごしている

子猫にミルクをあげてから庭のパトロールを済ませ
そして馬小屋での昼寝

大抵、そのお昼寝の真っ最中に鈴に起こされる

そして始まる追いかけっこ

1人と1匹のお庭の大冒険!

一応SPはついてるいるんだけど
百戦錬磨の彼らもこの1人と1匹には振り回されてしまっている

今日は土曜日、久しぶりに司がお休みで朝からずーっとお昼ごはんも食べないで
遊び回る鈴とBooの後を付いて回っている

蓮はお友達の所へ出かけちゃったし鈴は司がついてくれている
の~んびりしてたのに…

私の午後のひと時はあっさりと終わりを告げた

慌ててテラスへと飛び込んできたメイドが


"奥様、鈴様とBooちゃんが池に落ちました!"


へっ?!

池に落ちた…?!


ハァ~…


もう今さら驚かないし司とSPが一緒だから大丈夫だろう…

そう思いゆっくりと立ち上がりタオルを持って庭へと出た

鈴とBooはよく救助される

このお屋敷の広大な庭には何処から来たのか野生動物がかなり住み着いている

リスにうさぎ、そして池には数種類の野鳥

庭にある大きな池には今の時期、渡り途中のガンやカモの群れが羽を休めに来る

庭に出るとすぐに司に抱かれた鈴とSPに抱えられたBooが戻ってきた


全員びしょ濡れ…

すぐに司が鈴と一緒にお風呂に入りBooお母さんにもお風呂に入ってもらう…

どうしてこのコンビが池なんかに落ちたかって?

池には昨日から渡り途中のガンの群れが羽を休めている

庭の全てが自分の縄張りだと思っているBooお母さんは例えそれが水の上だろうと
一時だけの云わば間借りだろうが追い払わないと気が済まないらしい

のんびりと水面で羽を休めていた鳥達に果敢に戦いを挑んだBooお母さんと
躊躇する事なくBooお母さんに続いた鈴

勝敗は一瞬で付き鈴は司にBooお母さんはSPに救助された

Booお母さんにしてみれば十分に間合いを計り
タイミングを考えて飛び掛ったつもりなのだろうけど

いかんせん相手は水の中

おまけに羽まである

1人と1匹は少し鳥達を驚かせただけであっさり退却

全員ずぶ濡れでご帰還

ハァ~呆れて怒る気もしない…

お風呂から出てきた鈴を着替えさせるけど鈴に何言っても無駄だと思うから
後でBooお母さんにしっかりと言い聞かせておこう

Booお母さんはさすがに懲りたようで
綺麗にしてもらった身体を盛んに毛づくろいしている

司は今日一日、鈴の相手をしてその締めくくりが池だったので
流石に疲れたようで池を潰して埋め立てると言い始めている

「司?私はあの池を潰すの反対だからね!」

「なんでだよ!?鈴が落ちたんだぞ!危ねぇーだろーが!!」

「子守してたのはあなたでしょ?あなたが一緒だったのに落ちたってことよね?
 ちゃんと鈴を見張ってたの?」

「ちゃんと見てたよ!けど、一瞬だったんだよ!
 それにまさか鳥を狙って飛び込むなんて思わねぇーだろうが!」

「だから反対なのよ!
それにあの池には鳥達が沢山来るし池に落ちたからって埋め立ててたら
庭中の木を引っこ抜かなきゃいけなくなるわよ!
あなた忘れたの?この前はBooがリスを追いかけて木に登って
降りられなくなってそれに続いた鈴まで降りられなくなっちゃって
大変だったでしょ?!」

「忘れてねぇーよ!」

Booお母さんと鈴は根本的に戦いを挑む相手を間違えている

リスを追いかけて木登り…

それはまだいい

リスがいるのは木の上だし、Booお母さんは木登りが得意だけど
夢中になりすぎて自力ではどうしようもない所まで登ってしまう
鈴なんて問題外…
立体的に移動する相手に勝てるわけないのに
Booお母さんに出来ることは自分にも出来ると思い込んでいるフシがある

司だっていくらなんでも全部の木を引っこ抜くなんて事しないだろうし
何よりあの1人と1匹はそんな事ぐらいでは止められない

唯一の救いはBooお母さんは頭のいい猫だって事
木登りで降りられなくなってしまった日以降
リスを見つけて追いかけても相手が木に登ってしまったら
それ以上は追いかけなくなったもの
だから今回もBooお母さんは二度と水面にいる鳥を追いかけて池に飛び込んだりしないだろう
Booお母さんには学習能力がちゃんと備わっている
鈴には見えないけど…

でも…

もう少ししたらこれに子猫ちゃん達が加わるのね…

大変だわ…


Booお母さんは毛づくろいが終わると
子供たちが眠っているバスケットの中で自分も丸くなっている

司はこんな事なら仕事していた方が楽だとブツブツ言いながら遅い昼食を食べている

鈴も一緒に昼食を食べているんだけど

珍しく池に落ちたことを反省している

だけど論点がズレている

今後は落ちても大丈夫なように水泳を習いたいと言い始めた

水泳を習うのは反対しないけど
落ちてしまった後の事を考えるのではなく
落ちないことを考えて欲しい


司は鈴のやりたい事に反対しない
さっそく鈴のためのスイミングコーチを探し始めている



どうせならお茶だとかお花だとかもやって欲しいんだけどなぁ~

後2ヶ月で4歳になるんだからそろそろお稽古事も始めて欲しいんだけど

本人全くその気なし!

司も甘いから何も言わない

横にいる司を肘で突きながら

「ねぇ!鈴のやりたい事だけやらせないで他のお稽古事もするように言ってよ!」

「なんで?いいじゃねぇーかよ!
 まだ早いし、鈴がヤル気になってからでいいだろ?」


バカ!
この子がヤル気になるのを待ってたらいつまで経っても始められないわよ!
分かってないんだから!

だけど鈴も同じなんだけど…

司も私が何を言っても聞く耳なんて持っていない

子供は夫婦でのびのび育てる!

これが口癖の司は鈴どころか蓮の教育だって
本人が習いたいと言ったものしか習わせていない

ただ蓮の場合は日本で生活している時に英徳の幼稚舎に通っていて
同級生に西門さんの長男である譲君と一緒だったことが幸いして
譲君に引っ張られる形で同じお稽古事を習っていた

お茶に書道にピアノに英会話と護身術
どれも遊びの延長のようなものだったけど
それでも何とか基礎は身についている


テーブルマナーにしたって鈴はすぐに司の膝の上に座って食事をしたがる
司も怒らないからずーっと二人羽織状態で食べている

今だって鈴は司の膝の上で食べている

だけどそれもだんだんと怪しくなってきた
目がトロンとし始めプチトマトを頬張ったまま口が動いていない

遊びすぎて電池切れ

それに気付いた司は自分も食事を止め鈴を抱えて自分も少し寝ると言って
ダイニングを出て行った

その後ろ姿をタメ息で見送りながら私はある事を決心する

んだけど…それはまたの機会に…


池に落ちて1週間後の土曜日

今日から鈴のスイミングレッスンが始まる

司が鈴の為に選んだ先生はオリンピック選手を多く指導している人物で
現在もオリンピック強化選手のコーチを勤めている人物

3歳の子供にオリンピックコーチ?

何考えてるんだろう・・?

当の鈴は朝からテンションが高い

起きてパジャマからすぐに水着に着替えている

コーチが来るのはお昼過ぎてからなのに
このためにお義母様に買っていただいたピンクのフリルのついた可愛い水着を着て
朝食を食べている

私がいくら洋服に着替えなさいと言ったところで
司が怒らないから全く聞いていない

それどころか司が"かわいい"なんて褒めるもんだから益々調子に乗っちゃってる

午前中ずーっとこんな調子で遊びまわっていた鈴だったけど
いざコーチが到着した時に肝心の鈴の姿が見えない

SPがついてるはずだから連絡してすぐに鈴を連れてくるように言うと
5分ほどして鈴がBooを抱えて戻ってきた

小さな身体に抱えられているBooは明らかに迷惑顔

「鈴ちゃん?Booどうしたの?」

「Booも一緒にスイミングするって!」


ハァ~…この子は…

「Booはダメよ。離してあげて。」

「ダ~メ!Booも鈴と一緒にスイミングしたいって言ったもん!」


言うわけないでしょ!!
思わず3歳の子に大声を上げそうになる

もう!いい加減にしてよ!!
あんたは一体何時から猫と会話が出来るようになったのよ!
100歩譲ってBooと会話が出来たとしても
絶対にBooはスイミングしたいなんて言わないわよ!!


「ダメじゃないの。Booは猫ちゃんでしょ?
 猫ちゃんはお水が苦手なの。だから離してあげて。」

「え~ヤ~ダ~!Booも鈴と一緒にスイミングするって言ったもん!
 だからスイミングの先生にBooにも教えてあげてくださいってお願いするの!」

オリンピックのコーチが猫に水泳教えるの?

それ以前に猫に水泳教えてどうにかなるわけ?


ハァ~でも鈴は言い出したら聞かないし


「分かったわ…Booも一緒にプールに連れて行ってもいいけど、
 無理にBooをプールに入れちゃダメよ。お約束できる?」


「Booが入りたいって言ったらいい?」

「言ったらじゃなくて自分からプールに入ったんだったらいいけど
 嫌だって言ったら止めてあげてね。お約束できる?」

「うん、できる~!」


とりあえずのOKが出たので大喜びしている鈴と短くブーと抗議の声を上げたBoo

対照的な一人と一匹のスイミング教室が始まった


鈴は楽しそう

両腕と腰に浮き輪をつけてビート板を持って足をバタバタさせている


コーチが上手!上手!と褒めるもんだからどんどん泳いじゃってる

確かに初めてにしては上手でやっぱり司の子供

運動神経はいいのよね

ひとしきり泳いで少し休憩

鈴はプールサイドに腰かけて足を水の中につけたまま

バタバタ動かし水しぶきが上る様子に声を上げて喜んでいる


私はずっとプールサイドのデッキチェアに腰掛けて練習を見守っていた

Booも私の足元に座ってじっとしていたんだけど

Booは鈴が持っていたビート板に興味があったみたい

鈴の横でプールに浮いているビート板

そーっと気配を隠し匍匐前進でビート板に近付くBoo

そして…


狙いを定め…


勢い良くビート板にジャンプした!!


結果は…


相手はビート板…


水に浮いているだけ…

Booの体重は3キロちょっと

軽いといったって足場は悪い

あっけなくプールに落ちたBooと
Booが飛び込んだと勘違いして自分も飛び込んだ鈴

手足をバタつかせ思いっ切り溺れているBoo…

同じように手足をバタつかせている鈴…

慌てて手を伸ばすが私より一瞬早く鈴はコーチにBooはSPに…

先週に引き続き水の中から救助された

流石に目の前で落ちられるとビックリして心臓が止まりそうになる

救助されたBooはブルブルと身体を2・3回振ると
振り返りもせずにプールから出て行ってしまった


そして鈴は焦っている大人達を尻目にBooがプールに入った事を喜んでいる

「ママ~!やっぱりBooもスイミングしたいんだよ~!」


違うと思うけど

なんて言ったら分かってくれるんだろう?

Booにしても学習能力は何処に行ったの?

2週も連続で水に落ちるなんて

ハァ~どうしよう?

司はあてにならないし

「鈴ちゃん?Booがスイミングしたいかどうかはママには分からないけどね、
Booにはこのプールは大きすぎて危ないの。
だからここではBooのスイミングは止めてあげてくれる?」

「あぶないの?」


「そうよ。」


「じゃあ、パパにBooのプール使ってくれるようにおねがいするぅ~~!」


もう!諦めろって言ってんのに!

全然伝わってなくて…

全く何処の世界に猫専用のプール作るバカがいるのよ!

ってうちにはいるわね…


「ママ~、パパにおでんわしてぇ~!」


「パパはお仕事中だから邪魔しちゃダメなの。
 今夜帰ってきてからにしてね。」

「わかった~!じゃあパパにはやくかえってきてってでんわしてぇ~!」

もう!この子は…

「ママが後で電話しておいてあげるから鈴ちゃんは少しお昼寝する?」

「する~!」

鈴を寝かしつけてリビングへと戻りやっとホッと一息つく


とにかく来週までになんとかしないとね


その日の夜、司は早々に帰宅し鈴と二人羽織で食事をした後、
あっさりとBoo専用のプールを作る事を約束してしまった

もう甘いとかいう問題じゃない

呆れてものも言えない私を尻目に仲良し親子は一緒にお風呂に入っている

着替えを用意して脱衣所へ入って行くと
中からは二人の楽しそうな話し声が聞こえてきた

着替えを胸元に抱いたまま壁に凭れてしばらく二人の会話を聞いていた

話している事は大した事じゃない

幼稚園の事
Booの事
子猫たちの事
今日食べたおやつの事

やっぱりメインはスイミング

少し舌足らずでポンポンとあっちこっちに飛ぶ鈴の話しに
司は楽しそうに返事をしている

仲良し親子…

ずーっと続けばいいんだけど…

雛の時はもう大きかったから雛は一人で入りたがり
司と一緒にお風呂に入る事は無かった
蓮のときは二人目だけど初めての経験でおっかなビックリで楽しむ余裕なんて無かった

それに蓮が生まれてからはお義父様はもちろんだけど
お義母様に椿お姉さん…

連日入れ替わり立ち替わり現れて子守をして帰って行く


一時、お義父様とお義母様は本気でこのお屋敷に住む事を考えてらしたようで
ここにはお二人の書斎もある

毎日のように現れる三人に司は露骨に嫌な顔をしていたけど
そんな事を気にする方々じゃないからお屋敷の中には妙な緊迫感が漂っていた


それでも司にとってはお義父様とお義母様はまだマシだったのかも

問題だったのは椿お姉さん


幼い頃から培われた条件反射でお姉さんの気配を感じるだけで背筋が伸びる

そして当然のようにパンチが飛んでくる

その事で文句の一つでも言おうものならさらにボコボコにされてしまう

抵抗する気力を失い帰宅後、早々に書斎に逃げ込んで
やっと蓮の顔を見れるのは蓮が眠ってしまった後

そして私に八つ当たりしてくる

お義父様方をお屋敷に入れるな!とか

追い返せとか

出来るわけない無理難題を吹っかけてくる


それに私は助かっててるんだから!
ずっと一人っ子で甘えん坊の雛が弟が出来たことで
すっかり赤ちゃんかえりしてしまっていたから

弟が出来たことに最初は大喜びしていた雛だったけど

今まで自分に向いていた目が全て蓮に行ってしまい

面白くないらしく8歳にもなるのに歩けないと抱っこをせがみ

何も自分ではしなくなり食べる物だって今まで好きだった物なのに

あれは嫌だ!これも嫌だ!ととにかく一日中、目が離せない

一番、酷かったときは司の顔を見るのも嫌がり近付こうともしなかった


なるべく雛の思い通りにさせていたが
8歳の子供を抱いて移動するのは流石にキツイ

そんな状態が一年近く続いてやっと治まった



赤ちゃん返りした雛には嫌われ

赤ちゃんの蓮には眠っている時ぐらいしか顔を見ていなかったから

懐いてもらえずたまの休日に抱っこするとすぐに泣かれ

ストレスを溜めまくっていた司にやっと現れた救世主

それが鈴


もうお腹の中にいる時から猫かわいがりで蓮の時以上

蓮の時は司にとっての初体験な事ばっかりだったから

一時期、司の書斎には仕事の書類よりも育児書の方が多かったかも

蓮の時もお腹に向かってずーっと話しかけていた司だったけど

鈴のときはそれ以上で妊娠が分かった瞬間から名前を考え始めていた

まだ性別も分からないのに

そして甘甘のデレデレ親父のまま

今や鈴の忠実な僕と化している

ソファーに座り雑誌を読んでいると
仲良し親子がお風呂から出てきた

二人共髪が濡れてストレートになっている

そしてお風呂上りの一服よろしく

司はビール

その膝の上で鈴はオレンジジュースを飲んでいる

そうしてしばらくすると大抵、鈴は司に抱かれたまま眠ってしまう

全く私の出番無し

私がお風呂から出てきた頃には二人して夢の中

寝る前に寝ぞうの悪い蓮に布団をかけ直しベッドに入る

穏やかに流れる時間

ベッドサイドのランプを消して目を閉じるとすぐに眠りの淵に落ちてしまった

翌日からさっそく始まったBoo専用プールの工事

人間用プールの一角に小さな正方形の穴が作られBooが出入りしやすいように
階段まで付けられた立派なプールが完成

そしてBoo用のライフジャケットまで

私はもう呆れて見てただけ

どうせなに言ったって無駄なんだから

そしてまた土曜日が来てしまった

今朝も鈴は朝から水着姿

笑顔で迷惑そうなBooを引き摺るようにしてプールへ

鈴はコーチに手を持ってもらってバタ足の練習

そしてBooは少しだけ水を張った専用プールに
黄色いおもちゃのアヒルを浮かべて狩りの練習中

一人と一匹は充実した1時間を過ごした後は共にベッドで夢の中

私の日常はこんな感じ

司と結婚して三人の子供がいて

相変わらず気苦労は多いけど

幸せだと思える人生を過ごしている

そして今日もまた…


「奥様!鈴様とBooちゃんが!!」


ハァ~…

慌ててリビングへと飛び込んできたメイドの声に

タメ息と共にソファーから立ち上がり

庭へと出ると澄んだ空の向こう

薄い雲の張る大空めがけて渡り鳥の群れが飛び立って行った



         ~Fin~










応援ありがとうございます。
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kirakira
Posted bykirakira

Comments 9

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2018/06/16 (Sat) 14:43 | EDIT | REPLY |   

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2018/06/16 (Sat) 16:20 | EDIT | REPLY |   

kirakira  

悠○様

こんにちは。
コメントありがとうございます。😆

鈴ちゃん気に入っていただけて嬉しいです🎵😍🎵
司君なら簡単に作っちゃいそうですよね~✴
鈴ちゃん最強なのでこれからも振り回されてもらいますね🍒

2018/06/17 (Sun) 12:19 | EDIT | REPLY |   

kirakira  

瀬○様

こんにちは。
コメントありがとうございます。😆

涼しかったですねぇ🎵
過ごしやすくてよかったのですが体調管理が大変ですね…(>_<)

月夜の司君は三人の子供のパパになってました❗(笑)
雛ちゃんとの関係は微妙みたいですが…(>_<)
司君には鈴ちゃんがいるので❗(笑)

馬小屋!そうなんです❗正解です🎶←気付いてくれる人がいて良かった~✴
あの馬小屋です💕

リスに唐辛子はビックリしましたよ~!でも納得です❗
リスは災難だろうけど…(笑)

渡り鳥にリス…アメリカの定番?アニマル達が子供が成長する過程で
大きな役割を果たしてくれていると思うので鈴ちゃんとBooにはまだまだ
暴れてもらいます❗😃💕


2018/06/17 (Sun) 12:33 | EDIT | REPLY |   

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2020/04/06 (Mon) 11:05 | EDIT | REPLY |   

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2020/04/06 (Mon) 14:25 | EDIT | REPLY |   
kirakira

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は○ゆあ様

こんにちは。🎶
コメントありがとうございます。😆

お話し楽しんで頂けて嬉しいです。💕
お問い合わせ頂い件ですがkirakiraは元々fc2のHPで運営しております。
現在HPは放置中で更新は主にブログでとなっています。
そしてHPのお話しをこちらのブログにお引っ越し中なんです。
『月夜に‥』に関してはHPでもまだ完結はしておりませんが
(結末は決まっているのですがまだ私の脳内に留まったままなんです‥😅)
ブログより少し進んでいますのでHPの方でお楽しみ頂ければと思っています。
HPはブログに『本宅』としてリンクを貼ってありますがスマホ版の画面だと表示されないので
お手数ですがPC版の画面に切り替えていただければ表示されますのでそちらからHPへと飛んでください。

2020/04/06 (Mon) 16:26 | EDIT | REPLY |   

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2020/12/21 (Mon) 08:13 | EDIT | REPLY |   
kirakira

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七○様

こんにちは✨😃❗
コメントありがとうございます。😆
返事が遅くなってごめんなさいm(__)m

続き‥まだあるんです‥
まだ本宅であるHPからお引っ越しが出来てないだけなんです‥( ; ゜Д゜)
なるべく早くこちらに移す作業をしたいと思っておりますので
もうしばらくお待ちいただければ幸いです。🎶

2020/12/25 (Fri) 13:44 | EDIT | REPLY |   

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