遥か ６

「ねぇ？花沢類達はどうしてるの？」


バスタブの中

こいつを背中から包み込むように
二人で浸かる温めの湯の中

ほんのさっきまで絶頂の余韻に浸り
トロンとした目つきで俺に身体を預けていたのに

少し意識が覚醒した途端
これだ

普通ならここではピロートークだろ？

なのに甘い余韻の全てを吹き飛ばすように
一番聞きたくねぇ名前を吐く牧野


「ずっと会ってねぇから知らねぇ」


半分真実で半分は嘘を吐いた俺


あいつらとはもう何年も顔を合わせていない

一番最近会ったのはあきらで
５年前奴が出張でＮＹへ来た際に
俺のオフィスに立ち寄った時

類とはもう１０年近く会っていない


だけど幾ら顔を合わせていなくても
互いの状況は把握している

どういう状況にいるかは知っている

だから半分真実で半分は嘘

「そうなんだ。みんな忙しいんだね・・」


「だな」


「フフフッ・・」


「なに笑ってんだよ？」


「ん？・・みんな歳取っても変わらないんだろうなぁって思ったの・・
花沢類は相変わらず寝てばっかりなのかな〜とか
西門さんは千人切り達成したのかなぁとか
美作さんは変わらず年上好きなのかなぁ？
でも自分より年上って・・かなりだよね？って思って・・クスッ」


ムカつく

「あいつらのことなんてどーでもいいんだよ！
考えんな！俺のことだけ考えてろ！
お前、俺のことはどう思ってたんだよ？！」


「プッ！なにそれ？
ヤキモチ？」


「悪ぃかよ！？」


「ううん、嬉しい！
あんたの事はずっと見てきたから・・
時々、週刊誌とかに恋人発覚とか出てたし
写真もいっぱい撮られてたから
あんたが載った雑誌なんかは全部チェックしてたし・・
なによりね・・あたしが大人になった時
あんたが新しい人がいたり結婚とかしてたりしたら
その時は諦めなきゃいけないんだなぁ
とか考えてた・・」

「んなわけねぇーだろ！」


「ん？」


「俺がお前の以外の女となんてあるわけねぇーだろ！
そんな想像してたって思っただけでムカついてんぞ！」


「そ、そうなんだ・・ごめん・・
ってことは・・もしかして・・あんた・・この２０年間・・誰とも？」


「当たり前だろーが！
他の女とか気持ち悪ぃーんだよ！」

この２０年

誰ともそんな関係にはならなかった

なりたいと思わなかった

いや

なれなかった

って言った方が正しい

俺だって一応

健全な男なのだから
それなりに欲求も欲望もあったし
その気になれば後腐れない女の一人や二人
すぐに手に入ったのだろうけれど

とにかくこいつ以外の女が側に来ただけで
鳥肌が立ちとてもじゃないが
その行為にまで到達しない

そんな俺を笑う失礼な奴

「プッ！」


「笑ってるけど俺だって男なんだぞ。
それなりに欲求だってあったし
その時のオカズはお前だったんだからな！」


「ゲッ！」


「ゲッじゃねぇーよ！
これからはお前に操を立ててきた健気な俺を全力で癒やせよ！」


「・・・た、体力もつかな？」


「大丈夫だ！お前は俺より２０も若いんだからな！
とりあえずもう一回ヤラセろ！」


「ギャッ！ちょ、ちょっと待って！
あ、あたしは眠いからムリ！」


「俺は２、３日寝なくても大丈夫だ！」


「あ、あたしはダメ！
あん！ちょ、ちょっと・・ダ、ダメ・・」




バスタブからバサリと身体を持ち上げられて
再びベッドへと逆戻り

まだ身体は濡れたまま


さっきまでとは違い

今度は早急にことを進める道明寺

ベッドへと運ばれる途中で目に入ったのは
さっき道明寺が放り投げた置き時計

一度目の時、サイドボードに置かれていたその時計の針は
まだ午前０時になっていなかった

その時計を部屋の隅へと放り投げていた道明寺

壁にぶつかりバラバラになった時計は
１１時５０分で止まっていた












え～っと…次はもしかしたら鍵付きになるかも？です…（未定です！）

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