遥か 15
本日も『遥か』です。
短いですが…
それではどうぞ~😊
私信です。
☆様
こんばんは~(^^♪
コメントありがとうございます❣
返事が遅くなってごめんなさい。m(__)m
ムフフ♥このお話っておかわりにもっていこうと思えば
結構すんなりとってことに気が付いてしまいました~❣(笑)
タマの所へ向かう車中
タマにお土産だと道すがら見つけた花屋で小さなブーケを買い
タマが好きだったたい焼きも買ってご機嫌な彼女
今朝、目覚めた瞬間
やり過ぎだ!とかちょっとは手加減しろ!とか怒っていて
朝のシャワーを一緒には拒否されたが
出掛ける直前になって飛んできたお袋さんからのメールに機嫌もすっかり良くなっていた
お袋さんと親父さんは夕べめでたく和解し
その勢いのままに二人で年末年始を過ごすからと
金沢の温泉に行ってしまったらしく
置いてけぼりくらっちゃった・・とか言いながらも
パパとママが仲直りしてくれたし
あたしはずっとあんたといられるから嬉しいと笑っていた
年末年始
全然、気にしていなかったが
暦の上では今日は大晦日
再会してまだ4日しか経っていないが
たった4日だとは思えないほど濃密な時間を過ごしてきた俺達
都内の人出は多いが車はそれほどでもなく
俺の運転する車は順調にタマの元へと向け走行している
幼い頃に日本を離れそれ以降は年に数回帰国していたらしいが
ほとんど東京から出た事がないと話していた彼女は
窓の外に流れる景色に一々歓声を上げている
俺にしてもこの20年は仕事で帰国する以外は
年末の牧野の誕生日に墓参りをするだけだったから
二人して久しぶりの日本の空気を楽しんでいる
途中、高速のSAにより目に入る食いもん全てを制覇しようとする彼女に呆れながらも
こんな所は変わっていなくて・・
それが嬉しくてつい甘やかしてしまう俺
今もこのクソ寒い中
寒〜いだの冷た〜いだの言いながらも
ソフトクリームを食べている彼女の口の端に付いたクリームを拭ってやると
真っ赤になりながらありがとうと笑った彼女が愛おしくて
ソフトクリームを持ったままなのを忘れて抱き寄せる俺
とにかく全てが幸せだった
特別なことは何一つしていない
豪華な食事もプレゼントも無い
ただ二人で一緒にいるだけ
同じ時間を共有し同じ景色を見て
同じ物を食べているだけ
ただそれだけの事に泣けるほどの幸せを感じている
彼女も同じでずっと手を繋いだまま
以前の彼女ならきっと照れて怒っていたようなスキンシップも
今は自然に受け入れてくれている
午前中いっぱいを掛けてゆっくりとここまでのドライブを楽しみ
お昼は熱海市内で済ませてからタマが暮らしているホームまでやって来た
タマのホームには事前に連絡を入れてあったから
到着するとすぐにホームを運営している会社の理事長だという恰幅のいい親父が出迎えに出で来た
このホームではタマは超VIP
と言うのもタマが入居を決めてからすぐに
俺や姉ちゃんだけでなくババァまでが
多額の寄付をしている
そしてババァの手配でホームには
医師と看護師が24時間常駐していて
ババァはそれだけでは飽き足らず
ホームから一番近い総合病院を経営していた医療法人を買収し
何かあればすぐに対応出来るようにしてしまった
そんな経緯があって俺がタマを訪ねると連絡が入り
この大晦日に理事長以下総出で俺達を待ち受けていた
そんな大層な出迎えにギョッとして
俺の後ろに隠れるように立つ彼女の背中に手を回し
横に来るように促す
ホームの中は少し年季は感じさせるが綺麗に管理されていて
サロンのようなスペースの壁は一面ガラス張りで
日光が入り明るい雰囲気になっていた
俺もここに来るのは初めてで
タマと顔を合わせるのも三年ぶり
牧野を失ってからずっと一人でいる俺を心配していたタマ
いや
もっとずっと昔からタマは俺の心配ばかりしていた
そのタマに遥を合わせたらどんな顔をするか分からないが
きっとタマなら驚きながらも喜んでくれると思っている
なんせ妖怪の域に達してるからな
少々のことじゃ驚かねぇーだろ?
案内されて入ったタマの部屋は最上階にあり
日当たりもよく窓からは太平洋が見える
車椅子に座っていたタマが俺の姿を見て立ち上がろうとしたのを制し近付く
「よぉ、まだ生きてたか?」
「はい、タマはこの通りまだピンピンしております。
坊ちゃんの幸せを見届けるまではあの世には行けませんからね」
「そうか、だったらもうすぐあの世に行けるぞ!」
「あれまぁ!?
そんなお方が現れたんですかい?」
「あぁ、紹介してやろうと思って連れて来てやったぞ!」
そう言うとタマは少しだけ悲しそうな表情を浮かべると
少し間を置き
「・・・お断りしますよ、坊ちゃん。
タマは会いたくありません!」
「んでだよ!?」
「何を言われてもタマはあの子以外には会いたくありません!」
俺の幸せを願っているくせに会いたくないと言うタマ
孫のように可愛がり俺との幸せを心の底から願っていたタマもまた
この20年間ずっと
あの事件に囚われたままだった
「それから心配すんな!
俺を信じろ」
「信じろって何を信じるんですかい?」
「まぁ、とにかく会えば分かるよ!」
俺の言葉を訝しがっているタマにそう言うと
まだ廊下にいた彼女を部屋へと招き入れた
扉の端からヒョコッと顔だけを出した彼女は
タマの姿を確認するとみるみる間に目に涙を浮かべ
“先輩〜”と車椅子に座るタマに抱きついた彼女
抱きつかれたタマは驚きで固まってしまっている・・

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