遥か 18
こんばんは~(^^♪
本日も『遥か』です。❤
先にあの方と再会です。
それではどうぞ~🎶
私信です。
☆様
こんばんは~(^-^)/
コメントありがとうございます❣
ムフフ♥登っちゃってますよね~(笑)
1月4日の朝
ここに来てから本当に一歩も部屋から出ずに過ごした俺達
当然、二人ともスマホの電源も切ったままだった
三日ぶりにスマホの電源をONにする
と、同時に
一気に飛んでくるメッセージ
彼女にはお袋さんからのメールだけだったが
俺には秘書からの着信が数十件に加え
姉ちゃんからの鬼のような着信履歴とボイスメールが入っていた
秘書からは業務連絡と日本支社の仕事始めである
5日には一度出社して欲しいとの連絡だけだったが
姉ちゃんからのは・・
”司?どこにいるの?”
から始まって
”あんた、今回はつくしちゃんのところに行かなかったのね?”
”司、大丈夫なの?
なにかあったのなら連絡してきてちょうだい”
最初のころの口調はまだ穏やかで
何時でもいいから連絡をしてくれだけだったが
時間を追うごとに段々と声が大きくなり言葉が荒くなり
最後には恫喝するメッセージが残っていた
”あんたいい加減にしなさいよ!
連絡してこないなんていい根性してるじゃない!?”
”司!これ以上、お姉さまを無視するなら
どうなるか分かってるわよね?”
全てのメッセージを聞き終えて大きくため息
ハァ~
めんどくせぇ!
「どうしたの?
仕事のこと?」
「いいや、姉ちゃんだ」
「椿お姉さん?」
「あぁ、去年の暮に毎年行ってる牧野の墓参りに行かなかっただろ。
それで心配して連絡してきてたみてぇーだけど
ずっと無視してたからかなりボルテージが上がってる」
「そうなんだ・・心配かけちゃったんだね・・
じゃぁ、早く連絡入れた方がいいんじゃない?」
「あぁ・・けど後でいい」
はっきり言って面倒くさい
それにまだ邪魔されたくなかった
いずれは姉ちゃんに会わせるにしても
もう少し後だ
姉ちゃんもタマ同様
俺と牧野が幸せになることを心の底から願ってくれていた数少ない人間だが
牧野の事が大好きだった姉ちゃんを
遥に会わせたらきっと・・
どうなるか簡単に予想がつくだろう?
だからまだもう少しだけ
彼女を独り占めしてたくて
連絡を東京に戻ってからと考えていたのに・・
姉ちゃんの有言実行力を侮っていた
今まで静かだった部屋の外が騒がしい
バタバタと何人分かの足音が響いたと思ったらすぐに
言い争っているような声が聞こえてきて
部屋の外を確認しようと立ち上がったのと同時に
チャイムが鳴った
連続で鳴り続けているチャイムに嫌な予感がする
続いてドアを叩く音がして
聞き覚えのある声が響いてきた
”司!いるのは分かってるのよ!
開けなさい!開けないなら蹴破るわよ!!”
ハァ~
「椿お姉さん?」
「あぁ」
「クスッ、相変わらずパワフルだね」
「だな、いい歳なのにな・・」
マジ面倒臭ぇ!
そう思いながらもここまで来ている以上逃げられないと諦め
ため息と共にドアに手を掛けた瞬間
向こう側から凄い力で押され
体制を崩し後ろへ下がってしまった所を
姉ちゃんは“あんたこんなところで何やってんのよ?!”と言いながら強引に身体を捩じ込んできて
そのまま俺の制止を無視して
ズカズカと部屋へと上がり込んでしまった
中には当然、彼女がいて・・
彼女を見つけた姉ちゃんは一瞬だけ動きを止めたが
すぐにまだ後ろにいた俺に振り向きざま
「司?どういうことか説明しなさい!」
と詰め寄ってくる
「るせぇーな!」
「司!説明しなさい!
そちらのお嬢さんは誰なの?
随分と若そうだけど歳は幾つなの?
説明如何によってはあんた分かってるわよね?!」
姉ちゃんは昔っから変わらない
歳は取ったが見た目も性格も変わっていない
まず人の話しを冷静に聞くって事は無い
勢いだけで突っ走り
勘違いだろうとなんだろうと関係無い
思い込みだけで俺をボコボコに出来ると思っていて
恐ろしくせっかちで怒りのボルテージを長時間MAXに保つことが出来る
だから今も既に俺を一発殴っている
手加減の無いストレートが顎に入り軽く脳が揺れる
「痛ぇーよ!話しながら殴んな!」
「いいから説明しなさい!
あーもういいわ!彼女に聞くから!」
言うが早いか姉ちゃんは彼女の元へと行くと
「あなた歳はお幾つ?」
「・・えっ・・じゅ、じゅうはちです・・」
彼女が発した“じゅ”の二文字だけでまた殴りかかってくる姉ちゃんの拳を寸での所で回避する
「いちいち殴んなって!」
「殴るわよ!彼女18歳って!
あんた何考えてんのよ!?
自分の歳分かってるんでしょうね?!
20も下のお嬢さんをこんな所に連れ込んで!」
「うわっ!ちょ、ちょっと落ち着けって!」
「これが落ち着いてられるわけないでしょ!
バカ弟!なに考えてんのよ!
あんたがロリコンの変態だったなんて!」
罵詈雑言を吐きながらも殴る蹴るを忘れない姉ちゃん
「ロリコンじゃねぇーし
変態でもねぇって!」
凄い
久しぶりに見たけど相変わらずパワフル
それでいて綺麗
あの頃のままのお姉さんが
あの頃のまま道明寺をボコボコにしている
止めた方がいいわよね?
なんて思いながらも
あの頃のままの力関係の姉弟が嬉しくて
力じゃ負けないくせに絶対にお姉さんには抵抗せずただ逃げ回っているだけの道明寺が
あの頃のままで可笑しくて
思わず笑っちゃったら
その笑い声に反応したお姉さんが
殴るのを止めてこちらへと向かってきた
「あなた、何が可笑しいの?
あなたもこの男が何者なのか分かってて一緒にいるのよね?
あなたの目的は何なの?」
目の前に立つお姉さんに両腕を掴まれて
畳み掛けられて逃げ腰のあたし
「あっ・・ご、ごめんなさい!
あたし彼が何者なのかは知ってます。
笑っちゃったのは・・お姉さんが変わってなくて・・
それが嬉しくて・・つい・・でも失礼でしたよね・・ごめんなさい」
「あなた、なに言ってるの?
変わってないとか?
あなたと私は初対面のはずよね?」
険しい表情であたしの顔を覗き込むように話すお姉さん
「あっ・・っと・・初対面というか・・そうじゃないっていうか・・」
「ちょっとあなた何言ってるの?
司!どういうことなの?!
あんた頭どうかしちゃったわけ?」
「してねぇーよ!
だからちょっと落ち着けっつただろ!
たまには人の話聞けよ!」
「聞いてるわよ!
とにかくどういうことなの?!
あんた騙されてるんじゃないの!?」
「騙されてなんてねぇーよ!
とにかく説明してやるから座れって!」
そう言った道明寺がお姉さんをあたしから引き離し
椅子に座らせようと肩に手を掛けた時
腕を掴んでいたお姉さんの手が
あたしの顔を挟み込むように頬へと移動させてきた
「あなた・・まさかね・・」
少しだけ首を傾げそう言うとお姉さんは
“司!ちょっと二人だけで話したいから
こっちに来なさい!”
と言うと
道明寺の腕を掴み部屋の外へと引っ張って行ってしまった
姉ちゃんに部屋から連れ出された俺
部屋の外には支配人が汗をダラダラ流しながら立っていて
姉ちゃんはその支配人に隣の部屋を開けるよう要求した
支配人によって開けられたドアから
部屋へと引っ張り込まれた俺は
諦めや怒りや呆れの感情と共に近くにあった椅子に腰を下ろしたが
姉ちゃんはそんな俺の横に立ったままで
「あの子、つくしちゃんになんとなく似てたわよね?
背格好に黒くてストレートの髪なんて特に!
あんた、あの子とどうやって知り合ったの?!
誰かに紹介されたの?それとも何処かのパーティーで?
あの子の名前は?両親はなにをされてるの?
そもそもまだ10代の娘さんを連れ回して!
いい歳した大人がなにやってんのよ!?
あんたが今でもつくしちゃんの事を忘れてないのは分かってるけど
あの子はつくしちゃんじゃないのよ!?
つくしちゃんはもういないのよ。
いい加減諦めなさい!
それにあの子だってあんたが道明寺司だって分かっててついてきてるんでしょ?
なにが目的かも分からないお嬢さんを側に置くなんてあんた何考えてるの!?」
よくもまぁ
ツラツラと
ったく!
どこで息継ぎしてんだよ!?
睨みながら一気にそう言い切った姉ちゃん
だから言っただろ
面倒臭ぇって
いつかは会わせなきゃいけないとしても
もっと後でと思っていた
なにもかもが決まってから
結婚式ぐらいに再会で十分だと思っていたのに
今まで年末の俺の行動は知っていたようだったが
この20年お袋と一緒でとりたてて何かを言ってくることはなかったし
いい歳した弟のプライベートに干渉してくることも無かったのに
今年に限って・・
まぁ、俺がいつもと違う行動をしたってのもあるのだろうけれど
それにしても
まさかこんな所まで押しかけてくるとは思っていなかった
で
案の定
予想通りの反応
姉ちゃんの言いたい事は分かる
道明寺財閥の後継者でこのビジュアルに加えて有り余ってる金
自慢じゃねぇが
この20年だって言い寄ってくる女は数知れず
何考えてんだって?って女もいた
けれどそのどれにも反応しなかった
どんな女でも俺にとっては
道端に転がっている石ころと同じ
なんの価値もない
そんな俺が姉ちゃんからしたら
10代の小娘にすっかりヤラれてるって風にしか見えねぇんだと思う
心配してくれているのは分かるけれど
はっきり言って大きなお世話だ
あいつを一人部屋に残したままの
今のこの状況にもイラついているのに
人の話を聞かず畳み掛けてくる姉ちゃんにウンザリだ
だから
「あいつの名前は瀬戸口遥だ。
あいつが牧野に似てるのは当たり前だ!
なんせ牧野の生まれ変わりだからな!」
そう言ってやると流石に姉ちゃんの動きが止まった
「・・あんた・・自分が今、なに言っているか分かってて言ってるの?」
そう言いながら顔を覗き込んでくる姉ちゃん
「分かってるよ!
俺はずっと正気だ!」
「嘘よ!あんた騙されてるのよ!
あの子がどうやってつくしちゃんの事を知ったのかは分からないけど
つくしちゃんの事を知っていた誰かが背格好が似ている子を使って
あんたを騙そうとしてるだけでしょ?!
そんな事も分からないぐらいあの子に骨抜きにされちゃったの?」
「そう思うなら自分であいつと話して確かめてみろよ!」
「話したって向こうはちゃんと下調べしてるでしょ?!
そもそも生まれ変わりとかあり得ないでしょ!」
「あいつの情報は事件後ババァが全て封印したはずだぞ。
今さらどこを調べても名前すら出てこねぇのは知ってんだろ!」
20年前
事件の後
マスコミは大騒ぎだった
世間に牧野の情報が溢れ返り
有る事無い事面白可笑しく書き立てる週刊誌に
牧野の家族の写真や家庭の経済状況などを特定し
ネットに晒す奴ら
特にネット上では牧野の家族の経済状況を根拠に
牧野が金の為に俺に近付き
ババァからの慰謝料を狙ってわざと事件を起こしたんじゃないかと
言い出す奴らまで出て来ていた
牧野が金の為に犯人の男と共謀し
わざと刺され慰謝料を取る計画だったが
間違って死んでしまって一円にもならず
死に損だったなどとあり得ない筋書きまで飛び出してきて
誹謗中傷が続いていた
そんな中、牧野の両親は仕事を失い
弟も学校にも通えない毎日が続いていて
その状況にキレたババァがネットで誹謗中傷を続けていた奴らを特定し
名誉毀損で訴えると発表し
実際、何人かは訴えられ法外な賠償金の支払い命令が下り
慌てた出版社は記事が載った週刊誌を回収に乗り出したが既に後の祭りで
出版社が何社か消えた
その後
あの事件はマスコミにとってはタブーとなり
ネット上の書き込みも数年を掛けて削除され
20年経った今では分かる事と言えば
犯人の名前ぐらいで牧野の情報は出てこない
姉ちゃんもそれは分かっているはず
「分かったわ。
あんたがそれほど言うなら
あの子と話してみるわ。
でも話してみてちょっとでも矛盾や疑問を感じたら
すぐにお母様に報告するからね」
「あぁ、勝手にしろよ。
とにかく戻るぞ!」

応援ありがとうございます。
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☆様
こんばんは~(^-^)/
コメントありがとうございます❣
ムフフ♥登っちゃってますよね~(笑)
1月4日の朝
ここに来てから本当に一歩も部屋から出ずに過ごした俺達
当然、二人ともスマホの電源も切ったままだった
三日ぶりにスマホの電源をONにする
と、同時に
一気に飛んでくるメッセージ
彼女にはお袋さんからのメールだけだったが
俺には秘書からの着信が数十件に加え
姉ちゃんからの鬼のような着信履歴とボイスメールが入っていた
秘書からは業務連絡と日本支社の仕事始めである
5日には一度出社して欲しいとの連絡だけだったが
姉ちゃんからのは・・
”司?どこにいるの?”
から始まって
”あんた、今回はつくしちゃんのところに行かなかったのね?”
”司、大丈夫なの?
なにかあったのなら連絡してきてちょうだい”
最初のころの口調はまだ穏やかで
何時でもいいから連絡をしてくれだけだったが
時間を追うごとに段々と声が大きくなり言葉が荒くなり
最後には恫喝するメッセージが残っていた
”あんたいい加減にしなさいよ!
連絡してこないなんていい根性してるじゃない!?”
”司!これ以上、お姉さまを無視するなら
どうなるか分かってるわよね?”
全てのメッセージを聞き終えて大きくため息
ハァ~
めんどくせぇ!
「どうしたの?
仕事のこと?」
「いいや、姉ちゃんだ」
「椿お姉さん?」
「あぁ、去年の暮に毎年行ってる牧野の墓参りに行かなかっただろ。
それで心配して連絡してきてたみてぇーだけど
ずっと無視してたからかなりボルテージが上がってる」
「そうなんだ・・心配かけちゃったんだね・・
じゃぁ、早く連絡入れた方がいいんじゃない?」
「あぁ・・けど後でいい」
はっきり言って面倒くさい
それにまだ邪魔されたくなかった
いずれは姉ちゃんに会わせるにしても
もう少し後だ
姉ちゃんもタマ同様
俺と牧野が幸せになることを心の底から願ってくれていた数少ない人間だが
牧野の事が大好きだった姉ちゃんを
遥に会わせたらきっと・・
どうなるか簡単に予想がつくだろう?
だからまだもう少しだけ
彼女を独り占めしてたくて
連絡を東京に戻ってからと考えていたのに・・
姉ちゃんの有言実行力を侮っていた
今まで静かだった部屋の外が騒がしい
バタバタと何人分かの足音が響いたと思ったらすぐに
言い争っているような声が聞こえてきて
部屋の外を確認しようと立ち上がったのと同時に
チャイムが鳴った
連続で鳴り続けているチャイムに嫌な予感がする
続いてドアを叩く音がして
聞き覚えのある声が響いてきた
”司!いるのは分かってるのよ!
開けなさい!開けないなら蹴破るわよ!!”
ハァ~
「椿お姉さん?」
「あぁ」
「クスッ、相変わらずパワフルだね」
「だな、いい歳なのにな・・」
マジ面倒臭ぇ!
そう思いながらもここまで来ている以上逃げられないと諦め
ため息と共にドアに手を掛けた瞬間
向こう側から凄い力で押され
体制を崩し後ろへ下がってしまった所を
姉ちゃんは“あんたこんなところで何やってんのよ?!”と言いながら強引に身体を捩じ込んできて
そのまま俺の制止を無視して
ズカズカと部屋へと上がり込んでしまった
中には当然、彼女がいて・・
彼女を見つけた姉ちゃんは一瞬だけ動きを止めたが
すぐにまだ後ろにいた俺に振り向きざま
「司?どういうことか説明しなさい!」
と詰め寄ってくる
「るせぇーな!」
「司!説明しなさい!
そちらのお嬢さんは誰なの?
随分と若そうだけど歳は幾つなの?
説明如何によってはあんた分かってるわよね?!」
姉ちゃんは昔っから変わらない
歳は取ったが見た目も性格も変わっていない
まず人の話しを冷静に聞くって事は無い
勢いだけで突っ走り
勘違いだろうとなんだろうと関係無い
思い込みだけで俺をボコボコに出来ると思っていて
恐ろしくせっかちで怒りのボルテージを長時間MAXに保つことが出来る
だから今も既に俺を一発殴っている
手加減の無いストレートが顎に入り軽く脳が揺れる
「痛ぇーよ!話しながら殴んな!」
「いいから説明しなさい!
あーもういいわ!彼女に聞くから!」
言うが早いか姉ちゃんは彼女の元へと行くと
「あなた歳はお幾つ?」
「・・えっ・・じゅ、じゅうはちです・・」
彼女が発した“じゅ”の二文字だけでまた殴りかかってくる姉ちゃんの拳を寸での所で回避する
「いちいち殴んなって!」
「殴るわよ!彼女18歳って!
あんた何考えてんのよ!?
自分の歳分かってるんでしょうね?!
20も下のお嬢さんをこんな所に連れ込んで!」
「うわっ!ちょ、ちょっと落ち着けって!」
「これが落ち着いてられるわけないでしょ!
バカ弟!なに考えてんのよ!
あんたがロリコンの変態だったなんて!」
罵詈雑言を吐きながらも殴る蹴るを忘れない姉ちゃん
「ロリコンじゃねぇーし
変態でもねぇって!」
凄い
久しぶりに見たけど相変わらずパワフル
それでいて綺麗
あの頃のままのお姉さんが
あの頃のまま道明寺をボコボコにしている
止めた方がいいわよね?
なんて思いながらも
あの頃のままの力関係の姉弟が嬉しくて
力じゃ負けないくせに絶対にお姉さんには抵抗せずただ逃げ回っているだけの道明寺が
あの頃のままで可笑しくて
思わず笑っちゃったら
その笑い声に反応したお姉さんが
殴るのを止めてこちらへと向かってきた
「あなた、何が可笑しいの?
あなたもこの男が何者なのか分かってて一緒にいるのよね?
あなたの目的は何なの?」
目の前に立つお姉さんに両腕を掴まれて
畳み掛けられて逃げ腰のあたし
「あっ・・ご、ごめんなさい!
あたし彼が何者なのかは知ってます。
笑っちゃったのは・・お姉さんが変わってなくて・・
それが嬉しくて・・つい・・でも失礼でしたよね・・ごめんなさい」
「あなた、なに言ってるの?
変わってないとか?
あなたと私は初対面のはずよね?」
険しい表情であたしの顔を覗き込むように話すお姉さん
「あっ・・っと・・初対面というか・・そうじゃないっていうか・・」
「ちょっとあなた何言ってるの?
司!どういうことなの?!
あんた頭どうかしちゃったわけ?」
「してねぇーよ!
だからちょっと落ち着けっつただろ!
たまには人の話聞けよ!」
「聞いてるわよ!
とにかくどういうことなの?!
あんた騙されてるんじゃないの!?」
「騙されてなんてねぇーよ!
とにかく説明してやるから座れって!」
そう言った道明寺がお姉さんをあたしから引き離し
椅子に座らせようと肩に手を掛けた時
腕を掴んでいたお姉さんの手が
あたしの顔を挟み込むように頬へと移動させてきた
「あなた・・まさかね・・」
少しだけ首を傾げそう言うとお姉さんは
“司!ちょっと二人だけで話したいから
こっちに来なさい!”
と言うと
道明寺の腕を掴み部屋の外へと引っ張って行ってしまった
姉ちゃんに部屋から連れ出された俺
部屋の外には支配人が汗をダラダラ流しながら立っていて
姉ちゃんはその支配人に隣の部屋を開けるよう要求した
支配人によって開けられたドアから
部屋へと引っ張り込まれた俺は
諦めや怒りや呆れの感情と共に近くにあった椅子に腰を下ろしたが
姉ちゃんはそんな俺の横に立ったままで
「あの子、つくしちゃんになんとなく似てたわよね?
背格好に黒くてストレートの髪なんて特に!
あんた、あの子とどうやって知り合ったの?!
誰かに紹介されたの?それとも何処かのパーティーで?
あの子の名前は?両親はなにをされてるの?
そもそもまだ10代の娘さんを連れ回して!
いい歳した大人がなにやってんのよ!?
あんたが今でもつくしちゃんの事を忘れてないのは分かってるけど
あの子はつくしちゃんじゃないのよ!?
つくしちゃんはもういないのよ。
いい加減諦めなさい!
それにあの子だってあんたが道明寺司だって分かっててついてきてるんでしょ?
なにが目的かも分からないお嬢さんを側に置くなんてあんた何考えてるの!?」
よくもまぁ
ツラツラと
ったく!
どこで息継ぎしてんだよ!?
睨みながら一気にそう言い切った姉ちゃん
だから言っただろ
面倒臭ぇって
いつかは会わせなきゃいけないとしても
もっと後でと思っていた
なにもかもが決まってから
結婚式ぐらいに再会で十分だと思っていたのに
今まで年末の俺の行動は知っていたようだったが
この20年お袋と一緒でとりたてて何かを言ってくることはなかったし
いい歳した弟のプライベートに干渉してくることも無かったのに
今年に限って・・
まぁ、俺がいつもと違う行動をしたってのもあるのだろうけれど
それにしても
まさかこんな所まで押しかけてくるとは思っていなかった
で
案の定
予想通りの反応
姉ちゃんの言いたい事は分かる
道明寺財閥の後継者でこのビジュアルに加えて有り余ってる金
自慢じゃねぇが
この20年だって言い寄ってくる女は数知れず
何考えてんだって?って女もいた
けれどそのどれにも反応しなかった
どんな女でも俺にとっては
道端に転がっている石ころと同じ
なんの価値もない
そんな俺が姉ちゃんからしたら
10代の小娘にすっかりヤラれてるって風にしか見えねぇんだと思う
心配してくれているのは分かるけれど
はっきり言って大きなお世話だ
あいつを一人部屋に残したままの
今のこの状況にもイラついているのに
人の話を聞かず畳み掛けてくる姉ちゃんにウンザリだ
だから
「あいつの名前は瀬戸口遥だ。
あいつが牧野に似てるのは当たり前だ!
なんせ牧野の生まれ変わりだからな!」
そう言ってやると流石に姉ちゃんの動きが止まった
「・・あんた・・自分が今、なに言っているか分かってて言ってるの?」
そう言いながら顔を覗き込んでくる姉ちゃん
「分かってるよ!
俺はずっと正気だ!」
「嘘よ!あんた騙されてるのよ!
あの子がどうやってつくしちゃんの事を知ったのかは分からないけど
つくしちゃんの事を知っていた誰かが背格好が似ている子を使って
あんたを騙そうとしてるだけでしょ?!
そんな事も分からないぐらいあの子に骨抜きにされちゃったの?」
「そう思うなら自分であいつと話して確かめてみろよ!」
「話したって向こうはちゃんと下調べしてるでしょ?!
そもそも生まれ変わりとかあり得ないでしょ!」
「あいつの情報は事件後ババァが全て封印したはずだぞ。
今さらどこを調べても名前すら出てこねぇのは知ってんだろ!」
20年前
事件の後
マスコミは大騒ぎだった
世間に牧野の情報が溢れ返り
有る事無い事面白可笑しく書き立てる週刊誌に
牧野の家族の写真や家庭の経済状況などを特定し
ネットに晒す奴ら
特にネット上では牧野の家族の経済状況を根拠に
牧野が金の為に俺に近付き
ババァからの慰謝料を狙ってわざと事件を起こしたんじゃないかと
言い出す奴らまで出て来ていた
牧野が金の為に犯人の男と共謀し
わざと刺され慰謝料を取る計画だったが
間違って死んでしまって一円にもならず
死に損だったなどとあり得ない筋書きまで飛び出してきて
誹謗中傷が続いていた
そんな中、牧野の両親は仕事を失い
弟も学校にも通えない毎日が続いていて
その状況にキレたババァがネットで誹謗中傷を続けていた奴らを特定し
名誉毀損で訴えると発表し
実際、何人かは訴えられ法外な賠償金の支払い命令が下り
慌てた出版社は記事が載った週刊誌を回収に乗り出したが既に後の祭りで
出版社が何社か消えた
その後
あの事件はマスコミにとってはタブーとなり
ネット上の書き込みも数年を掛けて削除され
20年経った今では分かる事と言えば
犯人の名前ぐらいで牧野の情報は出てこない
姉ちゃんもそれは分かっているはず
「分かったわ。
あんたがそれほど言うなら
あの子と話してみるわ。
でも話してみてちょっとでも矛盾や疑問を感じたら
すぐにお母様に報告するからね」
「あぁ、勝手にしろよ。
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