遥か 22
こんばんは~😊
本日も『遥か』です!♪
本日はあの方です❣
それではどうぞ~🎶
RRRRRRRRRRR
RRRRRRRRRRRRR
明け方に鳴ったコール
無意識のままサイドボードに置いてあったスマホを手に取る
基本的に時差などを考慮して掛かってくることが多いが
それでも緊急の案件が発生した場合には例外で
職業柄、真夜中のコールには慣れている
だから
てっきり
仕事の電話だと思い
画面の名前を確認しないままスマホをタップしてしまい
飛び込んできた声にまだ起き切っていない脳みそが揺れた
「あきら!緊急事態よ!すぐに屋敷に来てちょうだい!」
ブツッ・・
ん?
誰だ?
ん?
緊急事態?
ん?
屋敷?
ん?
すぐ?
行くのか?
誰が?
どこに?
疑問ばかりで揺れたままの脳みそが働かない
スマホを操作し着信履歴を確認して初めて
今の電話の相手が椿姉ちゃんだったことに気が付いた
姉ちゃんから直接、連絡が入ったのなんて何十年ぶりだ?
いや・・
あの事件以来
初めてのことかも
何度かパーティーなどで顔は合わせていたが
それだけ
少し挨拶を交わしておしまい
いつの間にか昔のように親しく言葉を交わすことも無くなっていた
それなのに
いきなりの電話でそれもかなりテンションの高い姉ちゃんから
緊急事態だから今すぐ屋敷に来いとはどういう事なのだろうか?
緊急事態?
司になにかあったのか?
いや
それならもっと先に秘書から連絡が入るはず
単にまだ一切情報が外に漏れていないだけで
本当に司になにか問題が起こっているのか?
姉ちゃんが俺を呼び出した理由はさっぱりだけど
この突然の呼び出しをぶっちぎった場合の事を考えてみる
俺だって今や美作商事の副社長だ
長年、ロンドンに住んでいるが親父の元で順調にキャリアを積んでいて
早晩、親父の跡を継いで社長へと昇格するだろう
スケジュールだって司ほどじゃないにしろ
半年先一年先までびっしりだ!
だから忙しいんだ!
ガキの頃みたく”来い!”だけで
はいそうですかとは動けない
だからぶっちぎる!
と、どうなる・・・?
相手は姉ちゃんだ
あの司さえ逆らえない
ある意味、世界最強だぞ
その姉ちゃんからの呼び出しをぶっちぎる?
その勇気は俺にあるのか?
あるのか?
本当にあるのか?
いや
そもそも
そんな選択肢が有り得るのか?
有り得るか?
本当に有り得るのか?
有り得ねぇーよな・・
そう
有り得ねぇーんだ
例えアメリカ大統領かの呼び出しをぶっち切ったとしても
姉ちゃんからの呼び出しをぶっちぎるなんてこと・・
有り得ないんだ
まだ日明けきらない真冬のロンドン
窓の向こうは冷たい霧に覆われていて
快適な室内との温度差で窓には露が付いている
そんな中
ゆっくりとベッドから起き上がり秘書へと大至急、日本へ帰国すると連絡を入れ
バスルールのドアを押し開けた
突然のスケジュール変更に秘書は多少・・
いや
かなり
渋い顔をしていたが
椿ねえちゃんに呼び出されたと告げると
俺より15歳も年が上の秘書はそのまま何も言わず
スケジュールの変更に取り掛かり”緊急事態””大至急”という
不穏なワードに民間のエアラインではなくジェット機をチャーターし
空港に向かう間に掛かってきた類からの”俺も乗せて”の一言で
パリ経由での帰国となった
類から連絡が来たのも数年ぶり
元々、よほどの用件がないと電話なんて掛けてこない奴だから
不思議でもなんでもないのだがやっぱり類も・・
いや
類だけじゃなくて
俺も総二郎も滋も桜子も・・
仲間たち全てに
あの20年前の事件は
大きな影を落としている
ロンドンを飛び立ち1時間
類の待つパリへと降り立った
奴は機内に乗り込んですぐ挨拶もないまま
椅子に座り目を閉じてしまいそのまま
ずっとこんな感じだ
この20年間
類はずっとこんな感じ
牧野によって少しだけ人間らしさを発揮し始めていた矢先
牧野を失いまた元に戻ってしまった
いや
更に類の抱える闇が深くなってしまった
司がNYへと旅立ってしまってすぐ類もパリへと渡った
そして司と同じようにこの20年間ずっとパリで過ごしている
まるで牧野と過ごした日本には居られないというかのように
何度か日本への帰国を打診されていたようだったがその都度
断っている
類もまたあの事件によって人生を大きく変えられてしまった
そしてもう一人
牧野と司を島へと拉致る計画を立てた滋もまた
あの事件以降、大きく人生が変わってしまっていた
責任を感じ自身を責めていた滋はあの事件後
大河原家を出てしまった
大河原家を出て暫くは桜子の屋敷で世話になりながら猛勉強を始め
自力で国立大学の法学部に入学し司法試験を受け検事となった
犯罪被害者の無念を晴らしたい
その一心で検事となった滋
近年、実家とは和解したようだが今でも東京地方検事局で検事を勤めていて
まだ独身だ
結婚に関しては司が幸せになるまで私も絶対に結婚しないと言っていたから
未だにそれを有言実行しているのだろう
桜子に関しても事件ショックが大きすぎ暫くは部屋から一歩も出られない
引きこもりのような生活をしていたが滋が新たな目標を見つけ歩き出したように
桜子もまた新たな道へと歩き始め今ではあの包丁一つ持ったことのなかったお嬢様が
料理研究家なんてもんをやってやがる
あのビジュアルに加え毒舌も健在で庶民的な家庭料理を作るギャップが受けているのか
結構、人気者でテレビなどに引っ張りダコらしい
そして俺と総二郎は
俺は大学を卒業後はロンドンに移り親父の元で修行中
特に何かを決めてロンドンに居続けているわけじゃないが
ただ今でも時折思い出すあの時の光景と慟哭に日本からは足が遠のいているのも事実
総二郎だけは本拠地が日本だからずっと日本に居続けてはいるが
奴も大学を卒業後は京都の寺に2年間修業だと言って籠り
戻ってからは今までのように遊び歩くようなことは無くなり
ただ黙々と親父さんの元で次期家元として修業中
それぞれの胸の内を聞いたことはないから
推し量ることしか出来ないけれど
牧野を失ってから20年
あっという間だったし
長かった
そして
これがこれから先も
一生続くものだと思っていた
一年ぶりに踏む日本の地
類に至っては約5年ぶりだと言っていた
空港から迎えの車に乗り込み
懐かしい道明寺家へと向かう
その車中でも類はずっと目を閉じたまま
車は渋滞を抜け1時間ほどで屋敷へと到着した
前回来たのはいつだっただろうか?
もうそれすらも思い出せないほどに足が遠のいていた屋敷に入ると
超ご機嫌の姉ちゃんが出迎えてくれた
姉ちゃんの様子から司の身に何かが起こったような雰囲気は感じられない
むしろ怖いくらいに機嫌がいい
案内されて入った部屋はあの頃と変わっていなくて
心が一瞬であの頃へと引き戻されるような感覚に陥る
類もそうなのだろう
無言のままだったが
ドア付近で立ち止まり部屋の中を見渡し
嘗ての定位置だった窓辺に置かれているカウチに腰を下ろした
俺達が到着してすぐに着物姿のままの総二郎も到着し
続いて仕事帰りの滋と桜子まで呼び出されていて
とりあえずのメンツは揃った?
20年ぶり
牧野の葬式以来の全員集合
いや
司だけがいない
葬式以降は個々とは会っていたがこうして一同に揃うのは初めてて
皆それなりに
皆それぞれに
歳を重ね
経験を積み
皆それぞれの道を歩んできたが
こうして一同に介すると
やはり
今でもまだ
あの頃のまま
時は止まったまま

応援ありがとうございます。
本日も『遥か』です!♪
本日はあの方です❣
それではどうぞ~🎶
RRRRRRRRRRR
RRRRRRRRRRRRR
明け方に鳴ったコール
無意識のままサイドボードに置いてあったスマホを手に取る
基本的に時差などを考慮して掛かってくることが多いが
それでも緊急の案件が発生した場合には例外で
職業柄、真夜中のコールには慣れている
だから
てっきり
仕事の電話だと思い
画面の名前を確認しないままスマホをタップしてしまい
飛び込んできた声にまだ起き切っていない脳みそが揺れた
「あきら!緊急事態よ!すぐに屋敷に来てちょうだい!」
ブツッ・・
ん?
誰だ?
ん?
緊急事態?
ん?
屋敷?
ん?
すぐ?
行くのか?
誰が?
どこに?
疑問ばかりで揺れたままの脳みそが働かない
スマホを操作し着信履歴を確認して初めて
今の電話の相手が椿姉ちゃんだったことに気が付いた
姉ちゃんから直接、連絡が入ったのなんて何十年ぶりだ?
いや・・
あの事件以来
初めてのことかも
何度かパーティーなどで顔は合わせていたが
それだけ
少し挨拶を交わしておしまい
いつの間にか昔のように親しく言葉を交わすことも無くなっていた
それなのに
いきなりの電話でそれもかなりテンションの高い姉ちゃんから
緊急事態だから今すぐ屋敷に来いとはどういう事なのだろうか?
緊急事態?
司になにかあったのか?
いや
それならもっと先に秘書から連絡が入るはず
単にまだ一切情報が外に漏れていないだけで
本当に司になにか問題が起こっているのか?
姉ちゃんが俺を呼び出した理由はさっぱりだけど
この突然の呼び出しをぶっちぎった場合の事を考えてみる
俺だって今や美作商事の副社長だ
長年、ロンドンに住んでいるが親父の元で順調にキャリアを積んでいて
早晩、親父の跡を継いで社長へと昇格するだろう
スケジュールだって司ほどじゃないにしろ
半年先一年先までびっしりだ!
だから忙しいんだ!
ガキの頃みたく”来い!”だけで
はいそうですかとは動けない
だからぶっちぎる!
と、どうなる・・・?
相手は姉ちゃんだ
あの司さえ逆らえない
ある意味、世界最強だぞ
その姉ちゃんからの呼び出しをぶっちぎる?
その勇気は俺にあるのか?
あるのか?
本当にあるのか?
いや
そもそも
そんな選択肢が有り得るのか?
有り得るか?
本当に有り得るのか?
有り得ねぇーよな・・
そう
有り得ねぇーんだ
例えアメリカ大統領かの呼び出しをぶっち切ったとしても
姉ちゃんからの呼び出しをぶっちぎるなんてこと・・
有り得ないんだ
まだ日明けきらない真冬のロンドン
窓の向こうは冷たい霧に覆われていて
快適な室内との温度差で窓には露が付いている
そんな中
ゆっくりとベッドから起き上がり秘書へと大至急、日本へ帰国すると連絡を入れ
バスルールのドアを押し開けた
突然のスケジュール変更に秘書は多少・・
いや
かなり
渋い顔をしていたが
椿ねえちゃんに呼び出されたと告げると
俺より15歳も年が上の秘書はそのまま何も言わず
スケジュールの変更に取り掛かり”緊急事態””大至急”という
不穏なワードに民間のエアラインではなくジェット機をチャーターし
空港に向かう間に掛かってきた類からの”俺も乗せて”の一言で
パリ経由での帰国となった
類から連絡が来たのも数年ぶり
元々、よほどの用件がないと電話なんて掛けてこない奴だから
不思議でもなんでもないのだがやっぱり類も・・
いや
類だけじゃなくて
俺も総二郎も滋も桜子も・・
仲間たち全てに
あの20年前の事件は
大きな影を落としている
ロンドンを飛び立ち1時間
類の待つパリへと降り立った
奴は機内に乗り込んですぐ挨拶もないまま
椅子に座り目を閉じてしまいそのまま
ずっとこんな感じだ
この20年間
類はずっとこんな感じ
牧野によって少しだけ人間らしさを発揮し始めていた矢先
牧野を失いまた元に戻ってしまった
いや
更に類の抱える闇が深くなってしまった
司がNYへと旅立ってしまってすぐ類もパリへと渡った
そして司と同じようにこの20年間ずっとパリで過ごしている
まるで牧野と過ごした日本には居られないというかのように
何度か日本への帰国を打診されていたようだったがその都度
断っている
類もまたあの事件によって人生を大きく変えられてしまった
そしてもう一人
牧野と司を島へと拉致る計画を立てた滋もまた
あの事件以降、大きく人生が変わってしまっていた
責任を感じ自身を責めていた滋はあの事件後
大河原家を出てしまった
大河原家を出て暫くは桜子の屋敷で世話になりながら猛勉強を始め
自力で国立大学の法学部に入学し司法試験を受け検事となった
犯罪被害者の無念を晴らしたい
その一心で検事となった滋
近年、実家とは和解したようだが今でも東京地方検事局で検事を勤めていて
まだ独身だ
結婚に関しては司が幸せになるまで私も絶対に結婚しないと言っていたから
未だにそれを有言実行しているのだろう
桜子に関しても事件ショックが大きすぎ暫くは部屋から一歩も出られない
引きこもりのような生活をしていたが滋が新たな目標を見つけ歩き出したように
桜子もまた新たな道へと歩き始め今ではあの包丁一つ持ったことのなかったお嬢様が
料理研究家なんてもんをやってやがる
あのビジュアルに加え毒舌も健在で庶民的な家庭料理を作るギャップが受けているのか
結構、人気者でテレビなどに引っ張りダコらしい
そして俺と総二郎は
俺は大学を卒業後はロンドンに移り親父の元で修行中
特に何かを決めてロンドンに居続けているわけじゃないが
ただ今でも時折思い出すあの時の光景と慟哭に日本からは足が遠のいているのも事実
総二郎だけは本拠地が日本だからずっと日本に居続けてはいるが
奴も大学を卒業後は京都の寺に2年間修業だと言って籠り
戻ってからは今までのように遊び歩くようなことは無くなり
ただ黙々と親父さんの元で次期家元として修業中
それぞれの胸の内を聞いたことはないから
推し量ることしか出来ないけれど
牧野を失ってから20年
あっという間だったし
長かった
そして
これがこれから先も
一生続くものだと思っていた
一年ぶりに踏む日本の地
類に至っては約5年ぶりだと言っていた
空港から迎えの車に乗り込み
懐かしい道明寺家へと向かう
その車中でも類はずっと目を閉じたまま
車は渋滞を抜け1時間ほどで屋敷へと到着した
前回来たのはいつだっただろうか?
もうそれすらも思い出せないほどに足が遠のいていた屋敷に入ると
超ご機嫌の姉ちゃんが出迎えてくれた
姉ちゃんの様子から司の身に何かが起こったような雰囲気は感じられない
むしろ怖いくらいに機嫌がいい
案内されて入った部屋はあの頃と変わっていなくて
心が一瞬であの頃へと引き戻されるような感覚に陥る
類もそうなのだろう
無言のままだったが
ドア付近で立ち止まり部屋の中を見渡し
嘗ての定位置だった窓辺に置かれているカウチに腰を下ろした
俺達が到着してすぐに着物姿のままの総二郎も到着し
続いて仕事帰りの滋と桜子まで呼び出されていて
とりあえずのメンツは揃った?
20年ぶり
牧野の葬式以来の全員集合
いや
司だけがいない
葬式以降は個々とは会っていたがこうして一同に揃うのは初めてて
皆それなりに
皆それぞれに
歳を重ね
経験を積み
皆それぞれの道を歩んできたが
こうして一同に介すると
やはり
今でもまだ
あの頃のまま
時は止まったまま

応援ありがとうございます。
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