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遥か 23

こんばんは~😊
本日も『遥か』です(^^♪
それではどうぞ~🎶




私信です。
☆様
こんばんは~(^-^)/
コメントありがとうございます。❤
ハイ!同感です!
みんなが幸せに・・ヽ(≧∀≦)ノ





















全員集まったけれど誰も姉ちゃんから詳しい用件は聞いていなようで

着物姿のままやってきた総二郎はかなりイラついているのが分かる

茶道宗家の次期家元として精力的に動いている総二郎にとって
年末年始のこのクソ忙しい時に用件も聞かされないまま呼び出され
それに応じるなんて有り得ないこと

姉ちゃんだからこそ


「姉ちゃん!緊急事態だから来いって言われたから来たけど
用件は何なんだよ?!そろそろ教えてくれよ!」


「もう少し待ってちょうだい。
後20分ほどで司も来るだろうから
来たら分かるわよ!」


「緊急事態って司に何かあったわけじゃないんだな?」


「う~ん・・私としても説明が難しいのよ。
とりあえず来たら分かるからもう少し待っててちょうだい」


説明が難しいと言った姉ちゃん

その言葉に俺の中には?マークが増える一方だったが

とりあえず司の身に危険が迫っているとかじゃなくて安心している

メイドによって運ばれてきた酒とつまみで司が到着するのを待つ間も
昔のようにバカ話するわけでもなく思い出話をするでもなく
それぞれが静かなまま

そのことが未だに俺達の間にあの事件が色濃く残ったままなのを証明している



やがてメイドが”司様がご到着なさいました”と告げに来て

そのすぐ後に部屋に司とその横には・・・


少女が

司と手を繋いだまま

立っていた






夢を見ているのだろうか?

はたまた幻か?



俺の視線は・・・

いや

俺だけじゃなく

仲間たちの視線はみな

司と少女の繋がれたままの手に集中していて

総二郎なんてグラスを持ったままの手が空中で止まっている

あの司が女と手を繋いでいる

確かに非常事態だ・・

そんな中

窓際のカウチに座り目を閉じたままだった男が動いた

カウチから立ち上がると真っすぐに司達の元へと歩み寄り


少女の一歩手前で立ち止まると

少し腰を折り

少女の顔を覗き込むように首を傾げると

途端に真っ赤になる少女の顔

その顔に見覚えがあった

いや

その顔だけじゃない

その仕草も

その視線も

全てが

既視感







やがてゆっくりとポケットから手を出した類は

目の前に立つ少女を抱き寄せると
”おかえり、牧野”と言った

俺達に聞こえるかどうかの小さな声だったけれど


何故か牧野という言葉だけは
はっきりと聞き取れた

そして抱き寄せられた少女の方はいきなり抱き寄せられ
照れたように顔は赤らめてはいたが
特に慌てる様子は無く繋いだままだった司から手を離すと
ゆっくりと自身の手を類の背中へと回しこちらも聞こえるかどうかの小さな声で

”ただいま、花沢類”

と言った

類の事をこう呼ぶのは牧野だけだ


いや

待て

目の前で展開している有り得ない現象に
納得しかけている自分と全力で否定している自分がいる・・

どういうことだ?

司はというといきなり抱きついた類から少女を引き剝がし

怒鳴りながら少女を自分の元へと取り返すと間髪入れず類に蹴りを入れていて

蹴りを入れられた類が笑っている・・!!?

類が笑っているところなんて年十年ぶりに見た


で、どういうことなんだ?

牧野って言ったよな?



「オイ!類!お前・・今、牧野って・・
どういうことだよ!?」


「ん」

問いかけた総二郎に対し類の答えは一文字だけ

返事にはなっていないが

その肯定するような言葉の欠片に皆一様に
訳が分からないといった表情を浮かべている


だってそうだろ?

訳分かんねぇーだろ?


牧野って

俺達の知っている牧野って

類の口から出る牧野って

あの牧野だけだ

そしてその牧野は20年も前に亡くなっている

だから有り得ない

類が目の前の少女を牧野と呼ぶのなんて

有り得ないんだ

そしてその少女が類の事を花沢類と呼ぶなんて

有り得ないんだ

有り得ないことが目の前で起こっていて

混乱する思考が感情を掻き乱し


瞬きの多さが思考の乱れを如実に表していて

溺れているようで息が出来ない



妙な息苦しさを感じているのは俺だけじゃないはず

総二郎も滋も桜子も同じように感じているはずだが

そんな中でもまず桜子が動いた

桜子はぎこちなく立ち上がると

まるで歩き方を忘れてしまったかのように
近くのソファーに手を付きながら少女へとゆっくりと近づいて行く

少女の方は桜子を見て微笑んでいる

二人の視線が交わり

逸らされることのないまま

桜子が少女の前に立った

そして恐る恐る

でも桜子らしい物言いで


”Bの65、前よりは少しだけマシですね、先輩”

涙声の桜子がそう言うと


少女の方も少し目を潤ませながら


”失礼ね!前もBカップはあったわよ!”

と返した

すると

”いいえ、Aカップでした。今さら見栄張らないでください”

”張ってないわよ!”

と胸を少し前に突き出すような体勢で返した少女

”それに相変わらずお肌の手入れはしてないんですね。
若いからってお手入れを怠っちゃダメだって何度言えば分かるんですか?
色が白いのだけが取り柄だったのに!こんなに日焼けして!
年取ったらシミになるって言ったでしょ!?”

”え~お手入れはちゃんとしてるよ~!
色白だけが取り柄って!あんたって子は本当にもう!”


まるであの頃の牧野と桜子のような会話

牧野の事が大好きで二言目には先輩先輩と金魚のフンのように
牧野の後ろを付いて回っていたくせに口を開けば辛辣で
皮肉ばかり言っていた・・

あの頃のような会話・・

桜子ははっきりと少女の事を先輩と呼んだ

明らかに歳が下の少女を先輩と・・

そして呼ばれた方も否定するでもなく
当たり前のようにそれを受け入れている

「・・・マジ・・か・・?」

誰に言うでもなしに総二郎の口から零れ落ちた言葉

俺も同感だった

目の前で

有り得ないことが

本当に

現実として起きているのか?

そして桜子と少女の会話を聞いていた滋が徐に立ち上がり
少女に突進して行った

勢いよく走って来た滋を抱きとめた少女

「つくし~会いたかったよ~!
ごめんね、痛かったよね・・怖くて苦しかったよね・・
ほんとうにごめんね・・あたしが余計な事したから・・」

「グエッ!!滋さん!
力入れすぎ!もう・・泣かないで・・大丈夫だから・・
滋さんのせいじゃないから・・だから・・もう泣かないで・・」


泣きながら抱き合う女たち

マジであり得ないことが起こっているのか?















応援ありがとうございます。
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kirakira
Posted bykirakira

Comments 2

There are no comments yet.

オオカミ  

号泣です!!!!
「遥か」、めちゃくちゃ泣けるんですけど幸せの涙なんです〜😭  ほんとよかったー😭って泣けるんです。
悲しいストーリーの涙は鬱になっちゃうんですけど、嬉し泣きは読後が元気になります!ありがとうございます!

類はやっぱりさすがつくしの魂の一部!!
真っ先に気づいてくれて感動しました。
そして桜子とのやりとりで涙腺崩壊‥‥
毒舌ノリノリでめちゃくちゃ嬉しそう!

司たちの到着を待つ20分間、久しぶりに集まって酒を飲んでも「シーーーーン」な5人がらしくなく、それがせつなくてきゅんっとしました。つくしが帰ってきてからまたみんなで馬鹿騒ぎできるようになりますね♬

2021/11/02 (Tue) 22:01 | EDIT | REPLY |   
kirakira

kirakira  

オ〇カミ様

こんばんは~😊
コメントありがとうございます❣

楽しんでいただけて嬉しです!
泣かせちゃってばっかりですね・・💦
実は仲間達との再会の場面は私も書きながら泣いておりました!(笑)
類君の少ない言葉の中に全てが詰まっているお帰りを彼に言わせたくて
桜子ちゃんにはちょっと意地悪ででもつくしちゃん愛が詰まった
滋ちゃんには何か言う前に身体が勝手に動いていると思ったので
それぞれに三者三様の行動をして欲しくてあんな感じになりました。

再会したのでもう無敵です!(笑)

2021/11/03 (Wed) 19:36 | EDIT | REPLY |   

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