遥か ２６

「えっ！ほんと？！」

「ざけんな！類！
お前は絶対ぶっ殺す！」

重なった司と牧野の声と酒を噴いた拍子に鼻に入った俺


そして天使の微笑みを浮かべる悪魔な類


総二郎はニヤニヤしているだけ


「お前が帰ってくんならこいつは英徳には通わせない！
ＮＹの大学に通わせる！」

牧野を抱き寄せ類から隠すように言った司に対し類は
涼しい顔で

「じゅぁ、俺もＮＹにしようかな？
俺は牧野が居ればどこだって大丈夫だからね」


「こっちは大丈夫じゃねぇ！
お前は一生パリにいろ！
パリでずっと引き籠もってろ！出てくんな！」


牧野を胸元に抱き込み足で類を追い払っている司

それを余裕でかわし悪魔な笑顔を浮かべている類

ある意味、懐かしい光景ではあるが
ビジュアルがあの頃とは違う

いい歳した大人が何やってんだよ！？

「司！ちょっと落ち着け！
類だって本気じゃねぇって事ぐらい分かってるだろ？！
類に誂われてんだよ！本気にすんな！」

「俺は本気だけど」


「類！お前もいい加減にしとけって！
これ以上、司を誂うな！」


「あきらが本気にしないなら構わないけど
牧野？俺は本気だよ。
本気で牧野がいるところに俺も行くから」

「・・えっ！？・・あっ、うん・・？」


ハァ〜


類はやると言ったらなにがなんでも絶対にやる奴だ

頑固だし

ある意味、司より自己中

司のように勢いだけで周囲に迷惑はかけないが
こうだと思ったら絶対に変えず
自分が思った通りにしか動かない

司は迷惑だが単純だからある程度コントロールは出来るけれど
類は迷惑だが単純じゃないからコントロール不可能だ

こうなったら

関わらないのが一番だ！


俺は絶対に戻って来ないぞ！

酒が入ってしまいツーンとする鼻を軽く摘まみながら
密かにそう心に誓った俺に総二郎が

「司も春にはこっちに戻って来るらしいぞ！
お前もさっさと戻る準備始めろよ！」


「なんでわざわざ俺まで戻って来なきゃなんねぇーんだよ！？」

「決まってんだろ！
お前がいなきゃ始まんねぇーだろ！？」


「始まらなくていいだろ？！」

ニヤニヤしながら帰国を促してくる総二郎がムカつく！

こいつの魂胆は分かっている

司に類に彼女

この三人が帰国したら当然、揉め事が起こる

そこに桜子と滋も参戦してくる

そして間違いなくその揉め事に巻き込まれる

で、そんな面倒くさい諸々を全て俺に押し付けて
自分は高見の見物って算段だろうが

そんなの絶対にごめんだ！


わざわざ巻き込まれに帰ってくるバカがどこにいるんだよ！？


「まぁ、どうせお前が嫌がったところで戻ってくる事になるだろうから
帰国の日が決まったら連絡して来いよ！お前の為だったら忙しいスケジュールを
やりくりして出迎えに行ってやるからよ！」


「帰らねぇーし！出迎えなくていい！」


「帰ってくるって！」


拒否する俺にしつこく言ってくる総二郎


「お前、なんでそんなに俺を帰国させたいんだよ！？」


「別にさせたいんじゃねぇーよ！
ちょっと考えれば分かんだろ！あの司だぞ！
牧野が戻ってきてこれからバラ色の人生を夢見てるところに
類も戻ってくんだぞ！そうなったら司の事だからお前の親父に圧力掛けてでも
お前を帰国させんだろ？！まぁ、そうなるだろうから頑張れよ！」



嫌だ・・・

帰りたくない！

牧野とまた会えたのは嬉しい

でもたま～にでいいんだ！

一年に一回ぐらいでいいんだ！

一年に一度

仲間達と会って酒でも飲みながらバカ話しして
あ～楽しかったなぁ～また来年な！ぐらいがちょうどいいんだ！

どっぷり司と牧野と類の訳の分からない三角関係はキツイんだよ！

頑張れよ！じゃねぇーよ！総二郎！

自分は関係ないとばかりの言葉と態度にムカついて
思わず総二郎の腕をグーで殴ってやった

「痛ぇーよ！殴んな！」

「うるせぇーよ！
俺は帰らねぇーからな！」


俺は絶対にか・え・ら・な・い！
























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