Black Lilly １３

意外な展開だった


牧野の偽物が牧野を連れ去った

そしてその女がかつて司が渡米時に同行させていたあの女

司の病室で会ったあの女の顔を思い出してみるが上手く思い出せない
俺の中ではそれぐらい印象は薄かった

というより

どうでもいい女だったってことだ


司があの女をＮＹへ連れて行ったって聞いた時も
司のバカさ加減には呆れていたが女に関してはなんとも思っていなかった


俺には関係の無い女

司にしても今は執着しているがすぐに飽きるだろうと思っていたが
その通りで半年ほどでＮＹから追い返されていたのは知っていた


そして今夜
最悪の形での再会となってしまった




「司！この女の旦那を連れてこさせてどうするつもりなんだ？
旦那がなにか知ってるとは思えねぇぞ・・それよりもこの女とはもう関係は切れてんだよな？」


「当たりめぇーだろーが！気持ち悪ぃこと言うな！
女の存在自体忘れてたぐらいだ！」


「でもさこれで牧野が連れ去られた原因が
司だってはっきりしたってことだよね」



ずっと黙ったまま成り行きを見守っていた類が発した言葉


司を責めているわけじゃない・・

いや・・

ちょっと責めてるか・・


まぁどちらにせよ類の言葉は
司にとっては指摘されたくなかった事実のようで


その言葉に”クソッ！”と吐き捨てるように言うと
ドサッと音を立てて勢いよくソファーへと座り込んでしまった


今の司から感じるのは強烈な負のオーラだけ

司は今、内からこみ上げてくる怒りや苛立ちと必死で戦っている

強烈な負のオーラはやがて司の中で溜まり外へと放出される時を待っている

大噴火前の火山のように






はぁ〜〜

何回も拉致られるとため息しか出てこない

拉致されてるのになにを呑気なこと言ってんの？！
って思うかもしれないけど


なんていうのか・・


拉致慣れ？

そんな言葉ないと思うんだけど

とにかく人生で何回目？ってぐらい拉致されているとの段々と慣れてくるっていうか・・

なんとなくこの先の展開とかも分かっちゃったりして・・

勿論、犯人に対しての恐怖はあるのよ

まだ状況も把握出来てないし


これからどこに連れて行かれるのかも分からないんだから

でもね

焦る気持ちとかは無いのよね

今回は前回のストーカー事件の時とは違って
道明寺と一緒にいる時だったから
あたしの身に何が起こったのかはすぐに彼に伝わっている


絶対に道明寺が助けに来てくれるって安心感があるから


寧ろ、怒った彼が無理しなきゃいいけどって彼の心配をしている


化粧室に居たら清掃の人が大きなカートを押して入ってきて
その人にいきなりスタンガンみたいな物で襲われて
気が付いたら手足を拘束されていて頭から袋を被せられていて
周囲の状況は分からなかったけれど途中車を乗り換えたのは分かった


そして連れて来られたのは山小屋みたいなところ

なんなの？

拉致犯って山小屋好きなの？

まぁ、前の時に比べれば大分粗末な建物みたいだけど
一応、二階建てで小さいけれど暖炉もあるけど

でね

拉致した犯人とご対面で更に驚いた


だってね

男性の方は全く見覚えの無い人だったんだけど

もう一人の女性の方がね・・

あの海ちゃんだったの

びっくりでしょ？！


でね

彼女があたしを拉致した理由？って言うのかな・・

とにかく彼女が話している内容が全く意味不明で・・

例の瀧口君と同じ感じがしてゾッとした



もう一人の男性の方は中年で雰囲気的に
何処か家のパパに似ていて頼りないって感じで
海ちゃんとはそれほど親しく無いって感じがした

でね

あたしを拉致出来たからなのかご機嫌な海ちゃんが
ベラベラと話してくれたから大体の事情は分かった


彼女、昔っからおしゃべりだったけど変わってなくて助かった

その彼女が教えてくれた事って言うのがね


どうやら彼女とこの男性はかなり良くないところからお金を借りていて
返済が出来なくてあたしを拉致して道明寺からお金を取ろうって感じらしいの

まぁ、ここまでは想定内

誰だって思いつく

でもね

その後の海ちゃんの言葉は予想外だった


だってね

道明寺を幸せに出来るのは私だけなんだから

だとか

道明寺だってそれを望んでる

だとか

婚約者は自分なんだから借金なんて道明寺がすぐに返してくれる

だとか

あたしが道明寺を騙してる

だとか


ね・・・


かなりな内容にムカつくの忘れて呆れちゃった

だってね

話の中で自分は結婚してるって言ってたのよ

そして旦那さんへの不満も・・

年収一千万も無い

だとか

それだけあれば十分でしょ！？

カードの限度額が五十万しかないとか

いやいや！

それだって十分な額でしょ！？

毎月なにに使うのよ？！


それだけじゃなく

背も低いだとか

洋服のセンスも悪いだとか

真面目過ぎて面白くないだとか

だったらどうして結婚なんてしたの？


って感じの話ばかり


意味不明でしょ？

で、それがあたしを拉致する理由だって事がムカついた


言わなかったけどね


だって道明寺の話しをしている海ちゃんのウットリとした目と
その口調が彼女が正気じゃないって教えてくれているだから
何を聞いても反論はしなかった結果、それが良かったのか
あたしから否定的な言葉が無かった彼女は上機嫌で
ペラペラとあたしを拉致した理由を話してくれた


で、一緒にあたしを拉致してきたおじさんは
海ちゃんと同じ所からお金を借りていて返せなくて
困っていたおじさんらしくてオドオドしていて
こんなだいそれた犯罪を犯すような人には見えなかったから
海ちゃんが呑気に眠いからちょっと寝るねと言って
二階に上がっていた隙におじさんに話しかけてみたの


ちょっとあたしが声を掛けただけなのに
飛び上がるほどびっくりしちゃってるおじさんを見て
この人は本当はいい人でちょっと・・

ん・・

かなり道は間違えちゃってるけど

本当は犯罪なんかとは無縁のタイプなんだと
思ったから思い切って話しを続けてみた結果


重要な情報を教えてくれた

まずこの計画を立てたのは
海ちゃんとお金を借りている闇金の人らしいの

お金を返せなくなった海ちゃんが
あたしを拉致して道明寺からお金を取って
ついでにあたしを殺して山に埋めてしまえば死体も出なくて
あたしは失踪したって事になるから
その後は自分があたしの後釜に納まるって計画で
朝には闇金の人達がここに来る計画になっているって
人質のあたしに教えてくれたの


ね、いい人でしょ？


だからここから逃げるためにおじさんの良心に訴えかけてみる

え？

逃げないほうがいいんじゃないかって？

あたしもそう思ってたのよ

絶対に道明寺が助けに来てくれるって信じてるから
下手に動かない方が得策だって思ってたんだけどね

おじさんの話を聞いて考えを変えたの

朝にはここに闇金の人達が来る

おじさん曰く

か～なりヤバい人達で暴力的で
おじさんも何度も怖い目にあわされているって話していた

そんな奴ら大人しく待ってる必要ないでしょ？

だからね

夜明けまでに逃げ出すことに決めたんだけど

そのためにはおじさんの協力が不可欠だから
おじさんの人の好さを利用するようで心苦しいんだけど
今はそんな事を気にしてる場合じゃないでしょ


だからね一か八かだけど賭けに出ることにした















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