秘書の受難 1
こんばんは~😊
本日は少しブレイクタイムです!
この前まで連載しておりました『遥か』の番外編です。
登場人物は主に秘書さんです。
このお話しは『遥か』の連載を終えてからずっと頭の中にはあったのですが
『つくしちゃんBD』話と『Black Lilly』を先にと考えていたのでずっと保留にしておりました。
ですが『Black Lilly』を妄想中に展開について右往左往する事が多くなり・・
要は行き詰まり・・ストレスを発散するかのようにバァ~と秘書さんが降臨されました!(笑)
『Black Lilly』を楽しみにしていただいていた方には申し訳ありません。m(__)m
本日はちょっと『Black Lilly』をお休みして皆さんにクスッと笑っていただければと思っております。
色々と書きましたがいつも通り生暖かい目でよろしくお願いいたします。
それではどうぞ~❤
私信です。
ゆ〇様
こんばんは~😊
コメントありがとうございます。🎵
『Black Lilly』を楽しんでいただけているようで嬉しいです。❤
やっと前に進みました~💦
いよいよ司君たちの出番です!❤
☆様
こんばんは~(^^♪
コメントありがとうございます❣
連絡してくれたんですぅ~良かった良かった!
花岡さん親子は道明寺家の命の恩人なので
これから安泰ですよね~!(笑)
わたくし司様の第一秘書を勤めさせていただいております上條と申します
以後お見知りおきを
さてわたくしが司様の第一秘書となり早七年となりました
大学を卒業後、念願だった道明寺HDに就職が決まり
意気揚々と日本支社へと入社したわたくしを待ち受けておりましたのは
予想外の配属先でございました
工業大学出身で専攻は電気工学
研究職を希望しての入社でございましたが
研修期間が終わりいざふたを開けてみれば配属先は
まさかまさかの秘書課
電気工学の勉強しかしてこなかったわたくしに
秘書など勤まるとは思えず余りにも畑違いな配属先に
かなり戸惑ったのを覚えております
ですがそれも今となってはいい思い出で
今のわたくしにとって秘書という仕事は天職だと思っております
入社後すぐに秘書課に配属され
最初の二年間は先輩秘書に指導を受けながら
日本支社の重役方の秘書を務めてまいりましたが
入社三年目にNYへ移動の内示を受け
渡米後は当時、司様の秘書を務めていた西田室長の元
司様の第二秘書として司様と西田室長に付き従い
世界中をそれはもう回遊魚のごとく回っておりました
わたくしにとって司様と西田室長はスーパーマンです
多岐にわたる案件を同時進行で熟し
どのような難しい局面であっても顔色一つ変えず
淡々と処理されている場面を間近で何度も拝見し
本当に同じ人間なのだろうかと尊敬しておりました
司様のお母さまである楓社長が引退されるのを機に
西田室長も一線を退かれ西田室長に代わって今度はわたくしが
司様の秘書の第一秘書を務めることが決まった時には
武者震いが出たのを覚えております
司様は言わずと知れた日本が世界に誇る道明寺財閥の後継者で
その財力はもちろんのこと知力・気力・体力共に優れておりますが
何よりそのルックスが人目を惹き言い寄る女性の数は星の数ほど
財力、知力、気力、体力、ルックス
全てを兼ね備えられている司様はある意味完璧で
平々凡々なわたくしからすれば羨ましい限りなのですが
司様は言い寄ってくる女性には目もくれず
いつもお一人で過ごされておりました
聞くところによると司様には昔、心に決めた女性がおられましたが
その方はある事件の際に命を落とされてしまい
それ以降、司様は誰ともお付き合いどころかお仕事以外で言葉を交わされることもなく
男盛りの二十代三十代をずっとお一人でお過ごしでした
司様の日常はお仕事だけ
パーティーも会食も全てがお仕事
プライベートな一面を他人様はおろか毎日付き従っております
秘書のわたくしにさえもお見せにはなられませんでした
会話はいつも最低限
毎日を淡々と熟されておりました
そして日本には極力帰国せず
帰国してもお仕事だけ
最低限のスケジュールのみで
祖国である日本でプライベートなお時間を過ごされる事はありませんでした
西田先輩より司様には幼少の頃よりのご友人が
三人いらっしゃる事は聞いておりましたが
そのご友人達ともここ数年はほとんど交流は無く
数年前に一度、ご友人のお一人である美作様が
NYのオフィスをご訪問されたのみ
その時もお二人でお食事に出かけられるような事もなく
美作様はほんの十分ほどでオフィスを後にされておられました
そんな日常の中で唯一のプライベートは毎年年末に帰国される時ぐらいで
嘗て恋人だった女性のお誕生日にお墓参りにお一人でお出かけになり
帰京後はすぐにまたNYへご出発されるのみでございました
そんな司様が昨年の暮れ
お墓参りの為に一時帰国されてからは
わたくしにとっては青天の霹靂?
はたまた驚天動地?
どのような言葉が当てはまるのか分かりませんが
とにかく司様が変なんで~す!!!!
例年のように27日に帰国し日本支社での仕事を終え
一旦、お屋敷へと戻られたはずの司様
わたくしはその時、司様と行動を共にはしておりませんでした
少しばかり残っていた仕事を
日本支社のオフィスで片付けておりましたところ
司様についているSPの方から不思議な報告が入りました
なんでも司様が帰宅途中に女性をお車に乗せ
そのままメープルへと入られた
との事
初めての事でわたくしの頭の中には?マークが乱舞しておりました
イレギュラーな行動ではありますがそれでも秘書たる者
どんな事態にも動じない強靭なメンタルをと常日頃から心がけておりますので
最終的には司様とて健康な男盛りの成人男性なのだから
そういった事があったとしてもなんら不思議ではない
むしろ今までが何もなさ過ぎて異常事態だったのだからと結論付け
お相手の女性の身元など若干気になるところはございましたが
そのままオフィスで仕事を片付けておりました
そして28日
当然、わたくしはスケジュール通りNYへと帰る準備をしておりました
それはもう!
準備万端でございました!!
それなのに帰国当日に司様から掛かってきた一本のお電話で
事態は急展開したのでございます
”NYへ帰るのは止めた。
年末年始のスケジュールを全て変更しろ”
と言われたのでございます
初めてのことに瞬間的に言葉を返すことが出来ず
わたくしが発した言葉は・・
あれが言葉だと言えるのかどうか微妙でございますが
わたくしの口から零れ出たのは
”えっ?!”
”はぁ?!”
”うっ?!”
のみでございました
変更しろとはどのように変更するのか?
そこらへんの指示は全くないままに電話は一方的に切られてしまい
それ以降、司様はスマホの電源を落とされてしまったようで
何度掛け直しましても繋がらず
滞在されているメープルのお部屋へ直接お掛けしても出ていただけず
とうとうお部屋の電話のコードを抜かれてしまわれたようで困りました・・
ほとほと困り果てました
司様は変更と申されておりましたが
実質キャンセルでございました
時期的に年末年始でございますので
スケジュールもそれほどたてこんではございませんでしたが
それでもそれなりに・・
寧ろ繁忙期では無理な案件を中心に
スケジュールに入れておりましたので
それらを全てキャンセルさせていただきました
それにしても不思議な感覚でございます
わたくしにとっては社会人となって初めての
何も予定の入っていない年末年始でございました
何も予定がないと何をすればいいのか分かりません
なので年末年始もオフィスへと出てしまいました
完全なるワーカーホリックでございます
NY在住ですので当然、こちらに部屋はございません
例年であれば東京には一泊だけ
ホテルで十分でございました
そのホテルも念のためにリザーブはしておりましたが
ほとんど使用した事はございませんでした
ですが今年は一体、何泊すればよろしいのでしょうか?
実家は都内にございます
両親もまだ揃って健在でございます
お正月には姉一家も集まって
家族水いらずですごしております
わたくしは参加した事はごぞいませんが・・
そんなわたくしですがこの機会にと
一瞬だけ実家に・・
なんて考えも浮かびました
渡米してからはまともに帰省などしておりません
なので
一瞬だけ浮かびましたが
すぐに思い直しました
これは不測の事態なのです!
緊急事態だと言っても過言ではありません!!
わたくし以上にワーカーホリックだった司様が
休暇をお取りになり女性と過ごされている
なんて!
羨まし・・
じゃなくて!
天変地異の前触れか
はたまた世界経済の崩壊の前触れか
ぐらいの緊急事態ですから!
まずはご一緒されている女性の身辺調査を!
なんて思いましたが
なんせ情報量が少な過ぎます!
若い女性だということぐらいしか情報がございません
司様を警護しているSPも
メープルの従業員も初めて見る女性で・・
というより
司様が女性の方とご一緒の所を初めて見ました!
という情報というよりちょっと興奮した感想?のような報告ばかりで
一向に女性の正体が見えてきません
それどころか司様は年末に熱海にあります
メープル系列の高級旅館の貴賓室をリザーブしろと連絡が入って以降は
またスマホの電源を落とされたままで何度、連絡を入れてもなしのつぶて
居場所は分かっておりますので
旅館の支配人を通してご連絡をと考え支配人に連絡を入れましたが・・
こちらも司様より呼ぶまで部屋には近づくなと厳命されていて万事休す
留守電に伝言を残すぐらいしか方法がございませんでした
そしてもう一つ・・
いえ
もうお一方
年が明けた頃よりわたくしを悩ませるお方が・・
司様のお姉さまであられます椿様でございます
昨年末からの司様のイレギュラーな行動を敏感に察知なされた椿様は
幾度となく司様とコンタクトを取られようとしておいででしたが
スマホの電源を落としたままの司様からの返答が無く
業を煮やし・・
いえ
ご心配なされた椿様が乗り込んで・・
いえいえ
言葉を間違えてしまいました
ご心配なされた椿様が新年早々にご帰国なさいました
司様のお姉さまであられます椿様は
それはそれはパワフルな・・
いえいえいえ
生命力溢れまくりの素敵な女性でございます
その椿様が年始よりわたくしを
いたぶ・・
いえいえいえいえ
わたくしを・・
わたくしを・・
言葉が見つかりません
が!
とにかく
ありがたいことに時差とかその他諸々を考慮せず
わたくしにご連絡をいただきます
椿様もそれほど普段とは違った行動をおとりになられている司様の事を
ご心配なされての事だと解釈しております!
決して迷惑だなんて思ってはおりません!
昼夜を問わないお問い合わせは
椿様の司様を想うお気持ちだと理解しておりますが・・
わたくし
司様よりキツ~く口止めをされております
相手が誰であろうとも俺の邪魔をする奴はぶっ殺す!と脅迫?
いえ!
仰せつかっております!
なので
心苦しいのですが椿様の
”司がどこにいるのか今すぐ教えなさい!”
と脅さ・・
いえ!
問われましても・・
お教えすることは出来ません
なので平にご容赦にと再三に亘りお伝えしておりますが
椿様は聞く耳を持っていただけません
そしてとうとう
業を煮やした椿様がご帰国なさり万事休すでございます
司様もあの美貌に加え鋭い眼光で迫力がありますが
怒りがMAXを超えている椿様もそれはそれは・・
それ以上でございます
新年より椿様に詰め寄られ詰問されました
ですが!
わたくし
司様の秘書として頑として口は割りませんでした!
割りませんでしたが・・
軽く誘導尋問的な物には引っかかってしまい
ヒントとなるような言葉はつい言ってしまいました・・
”司様は昨年末にタマ様のホームをお訪ねになられました”
と・・
本当についポロリなんです・・
ですがそれだけで椿様は司様がお泊りになられておりまし
た熱海の温泉旅館を突き止めてしまわれそして・・
突撃されてしまわれました
その時の事は怖くて聞いておりませんので
その場がどういった状況だったのかは存じ上げませんが
仕事始めの5日の朝に司様をお迎えにあがった時には
これもまたイレギュラーな展開なのですが
道明寺が数年前に再開発を手掛けたタワーマンション
その辺一体の土地は司様がお祖父様から相続された物で
再開発に伴い司様自らが陣頭指揮を取られた一大プロジェクトでございました
そこに建てられておりますタワーマンションの最上階には
司様専用のお部屋がございます
が、今まで見向きもされませんでした
都内でも超が三つほど付く高級タワーマンションでございますが
NY在住の司様は全く興味も関心もお持ちではなかったようで
今まで司様よりそのお部屋の話を聞いた事はありませんでした
それなのに昨年の暮れから突然、そのタワーマンションを
お使いになられ始め仕事始めのお迎えもそのマンションでございました
そして玄関先でのイチャイチャ・・
いえ!
会話でございますね
単なる会話でございます!
なのでわたくしは何も聞いておりません!
聞き耳など滅相もございません!
あの司様が・・
などと決して思ってはおりません
ですが
やはり秘書として確かめねばならないことがございますので
意を決してリムジンの中でお聞きいたしました
あの女性はどなたなのか?と・・
今まで女性をプライベートな空間に招き入れることの無かった
いや
プライベートな空間どころか
パーティーはおろかプライベートでも女性の影どころか気配さえなく
密かに彼はゲイなのではないかと噂がたつほど
わたくしは司様の過去に何が起こったのか知っております
なので司様がゲイなどということは無いのは知っております
ただそれらを知るのはごく一部の人間のみで
知らない人間にとっては司様の女性嫌いは
単に女性に興味が無いからだろうという
短絡的な発想に基づくものでした
まぁ、わたくしも初めての事に些か
いえ、かなり戸惑ってはおりますが
戸惑ってばかりもいられません
確認すべきことはしておかなければ
イレギュラーな行動の数々が
司様の心境の変化が
後々、厄介な事態を引き起こすやにしれませんので
リスクマネージメントは必要でございます
一緒におられた女性はとの問いに返ってきた答えは
ある意味、予想通りではございましたが
年齢は全くの予想外で・・
思わず
わたくしの口からは
”犯罪では?”
などという物騒な言葉が飛び出してしまいましたが
眉根を上げ即座に否定なされた司様に
一安心でございます!
ですが続けて発せられた言葉の数々が
またわたくしをパニックへと導きました
“婚約者だ。
近いうちに入籍する”
出会ってからせいぜい一週間程度の女性
それも20も歳が下の女性と・・
常識的に考えれば
え〜言葉は不適切ではございますが敢えて言わせていただきますと
”いい歳した大人が若い女にどんだけ溺れてんだ!?”
でございます
そう思いませんか?
道明寺財閥の後継者ともあろうお方が
とお感じになる方もいらっしゃるやに存じます
決してわたくしはそのようには感じてはおりません!
あくまでも世間一般のでございますので
誤解なきようお願い申し上げます!
そしてその女性が春から英徳学園に通われるのに合わせてご
自身も春には日本へ帰国
などと
巫山戯た事を・・
いえ!
悪いご冗談を!
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ご冗談ではないのですね・・
薄々気付いておりましたが
出来れば冗談だと言っていただきたかった
百歩譲って
ご婚約にご結婚というのは慶事でございますので
大変喜ばしいことでございます
特にこの道明寺財閥にとっては後継者問題など
後々大きな問題となる事が予想される事案について
司様のご結婚はそれらの諸問題を一気に解決出来る
好機でございますので喜ぶべき慶事ではございますが・・
お相手の方の詳しい素性なども分からない段階では
お話を進める事は躊躇いたします
司様はすっかりその気になられておりますが
問題は山積みでございます
それなのに司様は・・
ハッ!
落ち込んでばかりはいられません!
問題も仕事も山積みでございます!!
とにもかくにも年末年始
お休みされた分はきっちりと働いていただきます!
笑っていただければ幸いです🎵

応援ありがとうございます。
本日は少しブレイクタイムです!
この前まで連載しておりました『遥か』の番外編です。
登場人物は主に秘書さんです。
このお話しは『遥か』の連載を終えてからずっと頭の中にはあったのですが
『つくしちゃんBD』話と『Black Lilly』を先にと考えていたのでずっと保留にしておりました。
ですが『Black Lilly』を妄想中に展開について右往左往する事が多くなり・・
要は行き詰まり・・ストレスを発散するかのようにバァ~と秘書さんが降臨されました!(笑)
『Black Lilly』を楽しみにしていただいていた方には申し訳ありません。m(__)m
本日はちょっと『Black Lilly』をお休みして皆さんにクスッと笑っていただければと思っております。
色々と書きましたがいつも通り生暖かい目でよろしくお願いいたします。
それではどうぞ~❤
私信です。
ゆ〇様
こんばんは~😊
コメントありがとうございます。🎵
『Black Lilly』を楽しんでいただけているようで嬉しいです。❤
やっと前に進みました~💦
いよいよ司君たちの出番です!❤
☆様
こんばんは~(^^♪
コメントありがとうございます❣
連絡してくれたんですぅ~良かった良かった!
花岡さん親子は道明寺家の命の恩人なので
これから安泰ですよね~!(笑)
わたくし司様の第一秘書を勤めさせていただいております上條と申します
以後お見知りおきを
さてわたくしが司様の第一秘書となり早七年となりました
大学を卒業後、念願だった道明寺HDに就職が決まり
意気揚々と日本支社へと入社したわたくしを待ち受けておりましたのは
予想外の配属先でございました
工業大学出身で専攻は電気工学
研究職を希望しての入社でございましたが
研修期間が終わりいざふたを開けてみれば配属先は
まさかまさかの秘書課
電気工学の勉強しかしてこなかったわたくしに
秘書など勤まるとは思えず余りにも畑違いな配属先に
かなり戸惑ったのを覚えております
ですがそれも今となってはいい思い出で
今のわたくしにとって秘書という仕事は天職だと思っております
入社後すぐに秘書課に配属され
最初の二年間は先輩秘書に指導を受けながら
日本支社の重役方の秘書を務めてまいりましたが
入社三年目にNYへ移動の内示を受け
渡米後は当時、司様の秘書を務めていた西田室長の元
司様の第二秘書として司様と西田室長に付き従い
世界中をそれはもう回遊魚のごとく回っておりました
わたくしにとって司様と西田室長はスーパーマンです
多岐にわたる案件を同時進行で熟し
どのような難しい局面であっても顔色一つ変えず
淡々と処理されている場面を間近で何度も拝見し
本当に同じ人間なのだろうかと尊敬しておりました
司様のお母さまである楓社長が引退されるのを機に
西田室長も一線を退かれ西田室長に代わって今度はわたくしが
司様の秘書の第一秘書を務めることが決まった時には
武者震いが出たのを覚えております
司様は言わずと知れた日本が世界に誇る道明寺財閥の後継者で
その財力はもちろんのこと知力・気力・体力共に優れておりますが
何よりそのルックスが人目を惹き言い寄る女性の数は星の数ほど
財力、知力、気力、体力、ルックス
全てを兼ね備えられている司様はある意味完璧で
平々凡々なわたくしからすれば羨ましい限りなのですが
司様は言い寄ってくる女性には目もくれず
いつもお一人で過ごされておりました
聞くところによると司様には昔、心に決めた女性がおられましたが
その方はある事件の際に命を落とされてしまい
それ以降、司様は誰ともお付き合いどころかお仕事以外で言葉を交わされることもなく
男盛りの二十代三十代をずっとお一人でお過ごしでした
司様の日常はお仕事だけ
パーティーも会食も全てがお仕事
プライベートな一面を他人様はおろか毎日付き従っております
秘書のわたくしにさえもお見せにはなられませんでした
会話はいつも最低限
毎日を淡々と熟されておりました
そして日本には極力帰国せず
帰国してもお仕事だけ
最低限のスケジュールのみで
祖国である日本でプライベートなお時間を過ごされる事はありませんでした
西田先輩より司様には幼少の頃よりのご友人が
三人いらっしゃる事は聞いておりましたが
そのご友人達ともここ数年はほとんど交流は無く
数年前に一度、ご友人のお一人である美作様が
NYのオフィスをご訪問されたのみ
その時もお二人でお食事に出かけられるような事もなく
美作様はほんの十分ほどでオフィスを後にされておられました
そんな日常の中で唯一のプライベートは毎年年末に帰国される時ぐらいで
嘗て恋人だった女性のお誕生日にお墓参りにお一人でお出かけになり
帰京後はすぐにまたNYへご出発されるのみでございました
そんな司様が昨年の暮れ
お墓参りの為に一時帰国されてからは
わたくしにとっては青天の霹靂?
はたまた驚天動地?
どのような言葉が当てはまるのか分かりませんが
とにかく司様が変なんで~す!!!!
例年のように27日に帰国し日本支社での仕事を終え
一旦、お屋敷へと戻られたはずの司様
わたくしはその時、司様と行動を共にはしておりませんでした
少しばかり残っていた仕事を
日本支社のオフィスで片付けておりましたところ
司様についているSPの方から不思議な報告が入りました
なんでも司様が帰宅途中に女性をお車に乗せ
そのままメープルへと入られた
との事
初めての事でわたくしの頭の中には?マークが乱舞しておりました
イレギュラーな行動ではありますがそれでも秘書たる者
どんな事態にも動じない強靭なメンタルをと常日頃から心がけておりますので
最終的には司様とて健康な男盛りの成人男性なのだから
そういった事があったとしてもなんら不思議ではない
むしろ今までが何もなさ過ぎて異常事態だったのだからと結論付け
お相手の女性の身元など若干気になるところはございましたが
そのままオフィスで仕事を片付けておりました
そして28日
当然、わたくしはスケジュール通りNYへと帰る準備をしておりました
それはもう!
準備万端でございました!!
それなのに帰国当日に司様から掛かってきた一本のお電話で
事態は急展開したのでございます
”NYへ帰るのは止めた。
年末年始のスケジュールを全て変更しろ”
と言われたのでございます
初めてのことに瞬間的に言葉を返すことが出来ず
わたくしが発した言葉は・・
あれが言葉だと言えるのかどうか微妙でございますが
わたくしの口から零れ出たのは
”えっ?!”
”はぁ?!”
”うっ?!”
のみでございました
変更しろとはどのように変更するのか?
そこらへんの指示は全くないままに電話は一方的に切られてしまい
それ以降、司様はスマホの電源を落とされてしまったようで
何度掛け直しましても繋がらず
滞在されているメープルのお部屋へ直接お掛けしても出ていただけず
とうとうお部屋の電話のコードを抜かれてしまわれたようで困りました・・
ほとほと困り果てました
司様は変更と申されておりましたが
実質キャンセルでございました
時期的に年末年始でございますので
スケジュールもそれほどたてこんではございませんでしたが
それでもそれなりに・・
寧ろ繁忙期では無理な案件を中心に
スケジュールに入れておりましたので
それらを全てキャンセルさせていただきました
それにしても不思議な感覚でございます
わたくしにとっては社会人となって初めての
何も予定の入っていない年末年始でございました
何も予定がないと何をすればいいのか分かりません
なので年末年始もオフィスへと出てしまいました
完全なるワーカーホリックでございます
NY在住ですので当然、こちらに部屋はございません
例年であれば東京には一泊だけ
ホテルで十分でございました
そのホテルも念のためにリザーブはしておりましたが
ほとんど使用した事はございませんでした
ですが今年は一体、何泊すればよろしいのでしょうか?
実家は都内にございます
両親もまだ揃って健在でございます
お正月には姉一家も集まって
家族水いらずですごしております
わたくしは参加した事はごぞいませんが・・
そんなわたくしですがこの機会にと
一瞬だけ実家に・・
なんて考えも浮かびました
渡米してからはまともに帰省などしておりません
なので
一瞬だけ浮かびましたが
すぐに思い直しました
これは不測の事態なのです!
緊急事態だと言っても過言ではありません!!
わたくし以上にワーカーホリックだった司様が
休暇をお取りになり女性と過ごされている
なんて!
羨まし・・
じゃなくて!
天変地異の前触れか
はたまた世界経済の崩壊の前触れか
ぐらいの緊急事態ですから!
まずはご一緒されている女性の身辺調査を!
なんて思いましたが
なんせ情報量が少な過ぎます!
若い女性だということぐらいしか情報がございません
司様を警護しているSPも
メープルの従業員も初めて見る女性で・・
というより
司様が女性の方とご一緒の所を初めて見ました!
という情報というよりちょっと興奮した感想?のような報告ばかりで
一向に女性の正体が見えてきません
それどころか司様は年末に熱海にあります
メープル系列の高級旅館の貴賓室をリザーブしろと連絡が入って以降は
またスマホの電源を落とされたままで何度、連絡を入れてもなしのつぶて
居場所は分かっておりますので
旅館の支配人を通してご連絡をと考え支配人に連絡を入れましたが・・
こちらも司様より呼ぶまで部屋には近づくなと厳命されていて万事休す
留守電に伝言を残すぐらいしか方法がございませんでした
そしてもう一つ・・
いえ
もうお一方
年が明けた頃よりわたくしを悩ませるお方が・・
司様のお姉さまであられます椿様でございます
昨年末からの司様のイレギュラーな行動を敏感に察知なされた椿様は
幾度となく司様とコンタクトを取られようとしておいででしたが
スマホの電源を落としたままの司様からの返答が無く
業を煮やし・・
いえ
ご心配なされた椿様が乗り込んで・・
いえいえ
言葉を間違えてしまいました
ご心配なされた椿様が新年早々にご帰国なさいました
司様のお姉さまであられます椿様は
それはそれはパワフルな・・
いえいえいえ
生命力溢れまくりの素敵な女性でございます
その椿様が年始よりわたくしを
いたぶ・・
いえいえいえいえ
わたくしを・・
わたくしを・・
言葉が見つかりません
が!
とにかく
ありがたいことに時差とかその他諸々を考慮せず
わたくしにご連絡をいただきます
椿様もそれほど普段とは違った行動をおとりになられている司様の事を
ご心配なされての事だと解釈しております!
決して迷惑だなんて思ってはおりません!
昼夜を問わないお問い合わせは
椿様の司様を想うお気持ちだと理解しておりますが・・
わたくし
司様よりキツ~く口止めをされております
相手が誰であろうとも俺の邪魔をする奴はぶっ殺す!と脅迫?
いえ!
仰せつかっております!
なので
心苦しいのですが椿様の
”司がどこにいるのか今すぐ教えなさい!”
と脅さ・・
いえ!
問われましても・・
お教えすることは出来ません
なので平にご容赦にと再三に亘りお伝えしておりますが
椿様は聞く耳を持っていただけません
そしてとうとう
業を煮やした椿様がご帰国なさり万事休すでございます
司様もあの美貌に加え鋭い眼光で迫力がありますが
怒りがMAXを超えている椿様もそれはそれは・・
それ以上でございます
新年より椿様に詰め寄られ詰問されました
ですが!
わたくし
司様の秘書として頑として口は割りませんでした!
割りませんでしたが・・
軽く誘導尋問的な物には引っかかってしまい
ヒントとなるような言葉はつい言ってしまいました・・
”司様は昨年末にタマ様のホームをお訪ねになられました”
と・・
本当についポロリなんです・・
ですがそれだけで椿様は司様がお泊りになられておりまし
た熱海の温泉旅館を突き止めてしまわれそして・・
突撃されてしまわれました
その時の事は怖くて聞いておりませんので
その場がどういった状況だったのかは存じ上げませんが
仕事始めの5日の朝に司様をお迎えにあがった時には
これもまたイレギュラーな展開なのですが
道明寺が数年前に再開発を手掛けたタワーマンション
その辺一体の土地は司様がお祖父様から相続された物で
再開発に伴い司様自らが陣頭指揮を取られた一大プロジェクトでございました
そこに建てられておりますタワーマンションの最上階には
司様専用のお部屋がございます
が、今まで見向きもされませんでした
都内でも超が三つほど付く高級タワーマンションでございますが
NY在住の司様は全く興味も関心もお持ちではなかったようで
今まで司様よりそのお部屋の話を聞いた事はありませんでした
それなのに昨年の暮れから突然、そのタワーマンションを
お使いになられ始め仕事始めのお迎えもそのマンションでございました
そして玄関先でのイチャイチャ・・
いえ!
会話でございますね
単なる会話でございます!
なのでわたくしは何も聞いておりません!
聞き耳など滅相もございません!
あの司様が・・
などと決して思ってはおりません
ですが
やはり秘書として確かめねばならないことがございますので
意を決してリムジンの中でお聞きいたしました
あの女性はどなたなのか?と・・
今まで女性をプライベートな空間に招き入れることの無かった
いや
プライベートな空間どころか
パーティーはおろかプライベートでも女性の影どころか気配さえなく
密かに彼はゲイなのではないかと噂がたつほど
わたくしは司様の過去に何が起こったのか知っております
なので司様がゲイなどということは無いのは知っております
ただそれらを知るのはごく一部の人間のみで
知らない人間にとっては司様の女性嫌いは
単に女性に興味が無いからだろうという
短絡的な発想に基づくものでした
まぁ、わたくしも初めての事に些か
いえ、かなり戸惑ってはおりますが
戸惑ってばかりもいられません
確認すべきことはしておかなければ
イレギュラーな行動の数々が
司様の心境の変化が
後々、厄介な事態を引き起こすやにしれませんので
リスクマネージメントは必要でございます
一緒におられた女性はとの問いに返ってきた答えは
ある意味、予想通りではございましたが
年齢は全くの予想外で・・
思わず
わたくしの口からは
”犯罪では?”
などという物騒な言葉が飛び出してしまいましたが
眉根を上げ即座に否定なされた司様に
一安心でございます!
ですが続けて発せられた言葉の数々が
またわたくしをパニックへと導きました
“婚約者だ。
近いうちに入籍する”
出会ってからせいぜい一週間程度の女性
それも20も歳が下の女性と・・
常識的に考えれば
え〜言葉は不適切ではございますが敢えて言わせていただきますと
”いい歳した大人が若い女にどんだけ溺れてんだ!?”
でございます
そう思いませんか?
道明寺財閥の後継者ともあろうお方が
とお感じになる方もいらっしゃるやに存じます
決してわたくしはそのようには感じてはおりません!
あくまでも世間一般のでございますので
誤解なきようお願い申し上げます!
そしてその女性が春から英徳学園に通われるのに合わせてご
自身も春には日本へ帰国
などと
巫山戯た事を・・
いえ!
悪いご冗談を!
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ご冗談ではないのですね・・
薄々気付いておりましたが
出来れば冗談だと言っていただきたかった
百歩譲って
ご婚約にご結婚というのは慶事でございますので
大変喜ばしいことでございます
特にこの道明寺財閥にとっては後継者問題など
後々大きな問題となる事が予想される事案について
司様のご結婚はそれらの諸問題を一気に解決出来る
好機でございますので喜ぶべき慶事ではございますが・・
お相手の方の詳しい素性なども分からない段階では
お話を進める事は躊躇いたします
司様はすっかりその気になられておりますが
問題は山積みでございます
それなのに司様は・・
ハッ!
落ち込んでばかりはいられません!
問題も仕事も山積みでございます!!
とにもかくにも年末年始
お休みされた分はきっちりと働いていただきます!
笑っていただければ幸いです🎵

応援ありがとうございます。
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