二度目の恋の話をしよう 37
こんにちは。
少し遅くなってしまいました…m(__)m
本日は『二度目』です🎶
愛ちゃん大暴走～❕ ＆ ストック切れ(涙)
それではどうぞ～✴
私信です。
☆様
こんにちは。
コメントありがとうございます。😆
私もそれ見てました❗😃💕
同じです～❕
あっ！また食べたくなってきた❗(笑)
司が優に掴み掛かろうとした瞬間
悲しい習性で俊敏にその事を感じ取った俺が止めにはいろうとしたその時
会場の一番後ろ
親族席で椿さんと高見の見物を決め込んでいた愛が声を上げた
「ちょっと待った！ママ！」
そう言うなり猛ダッシュでこちらへと駆け寄って来た愛は
司に肩を抱かれたままの牧野を引っ張り
「ママ！黙ってていいの？！
このままじゃママはパパと二人っきりでハワイに移住しちゃう事になるのよ！
こんなパパと二人っきりでハワイで生活なんて人生どぶに捨てるようなものじゃないの？
ママは本当にそれでいいの？」
人生をどぶに捨てる…
まな娘からの辛辣な言葉
口が悪いのがこの兄妹の特色でもあるが
流石に嫁入り前の娘がテレビで生中継もされている兄の披露宴で使っていい言葉じゃない…
それぐらいにしておけと止めに入ろうとして
一歩歩み寄った俺を押しのけるように愛が牧野に畳み掛ける
「ママ！冷静になってよ～く考えてよ！
パパよ！パパと二人っきりなのよ！そんなの有り得ないでしょ！？」
「我が儘だし横暴だし口だって悪いし！
今までだってママを泣かせてばっかりだったじゃない！」
矢継ぎ早に繰り出される愛からの口撃に
牧野も司も…いや会場中が呆然としたまま
「ママは忘れたの？！
私達がまだ中等部だった頃、一人でＮＹに居たパパが愛人作ってそれがみんなにバレて大騒ぎしたでしょ！」
生中継してんだぞ！？
分かってんのか？！
世界規模でかつての愛人の存在を愛娘に暴露されてしまった司は流石にダメージが大きいのか何も言い返せていない
かろうじて愛に腕を強く揺さぶられた牧野が”愛ちゃん…今、そんな事を言わなくても…”
なんて虫の鳴くような小声で呟いただけ
「ママはパパの浮気があの一回だけじゃないって事も分かってるでしょ？！
パパはママが何も言わないのをいいことに総二郎おじさん並にいろんな女の人と浮気してたのよ！」
「俺並って…愛！俺を引き合いに出すな！！
俺は浮気なんてした事ねぇーぞ！
そのバカと一緒にすんな！！俺のは一期一会だ！」
突然、引き合いに出された総二郎がこちらも時と場所を考えず怒鳴り返してみたが…
あっさりと愛に返されてやがる
「何が一期一会よ！単に誰にも本気じゃなかっただけじゃない！」
誰にも本気じゃない…
これが妙に的を得ていて納得してしまった
戦意喪失してんじゃねぇーよ！総二郎！
だけどいくら納得出来ても愛の暴走をこのままにしておくわけにはいかない
「愛！いい加減にしろ！いい加減にしとかぬぇーとお前でも放り出すぞ！」
流石にこれまでだと思い少し強い口調で言ったのだが…
それが大間違い…
司と牧野の気の強さを受け継いでいる愛には逆効果で
「何よ！あきらおじさんは私を脅す気？
いいわよ、追い出せるなら追い出してみなさいよ！
そんな事したらここ出てすぐに外に群がってるマスコミにおじさんが昔、
人妻好きで何人もの人妻をその気にさせて捨ててきたか全部しゃべってやるから！」
もう全部しゃべってんじゃねぇかよ…
これだって生放送されてんだぞ！
それに娘もいるんだぞ!!
「あ、愛！？お前…」
予想外の反撃にうまく言葉を返せない俺…
それぞれがばらされたくない事実を簡単に生中継に乗せられ情けないけど反撃出来ない
牧野もまだ余りの事に何も言えないままだし
類なんて一人でクスクス笑っているだけ
誰かこの状況をなんとかしてくれ！と思った瞬間
俺の隣でずっと黙ったままだった滋が口を開いた
「愛ちゃん！司の数々の浮気の事は本人はバレてないつもりなんだから言っちゃダメだよ！
それにあきら君が人妻好きだって事は有名な話しだから今さらそんなの暴露したってインパクトに欠けるよ！
後で滋ちゃんがとっておきの教えてあげる！」
「滋!!」
「サル女!!」
「滋さん!!」
滋の発言の後、俺に司と牧野が同時に叫んだ
「滋さん！これ以上、愛を焚き付けるような事言わないで下さい！
愛もいい加減にしなさい！」
「どうして？いいじゃん！どうせ本当の事だしさ。
私はこんな事ぐらいであきら君の事嫌いになったりしないし。
つくしもそうでしょ？だから何があってもずっと司と一緒に居たんでしょ？」
「それは…そうだけど…
だからって今は優と夢花ちゃんの披露宴なんですよ！
少しは状況を考えて下さい！滋さんも愛も自由すぎます！」
「まぁ確かに少し自由過ぎたかもしれないけどさぁ。
元はと言えば司じゃん！
司が引退してつくしとハワイに移住するとか言い出すから悪いんじゃない～！」
我に返った牧野に少し強い口調で注意された滋は不服そうに口を尖らせ司を指さしながら反論している
「それはそうだけど…私はまだ行くなんて一言も言ってません！
勝手に話を進めないで下さい！」
「なっ!?お前は嫌なのかよ？」
行くなんて言っていないと言った牧野に慌てて詰め寄る司
「当たり前でしょ！ママがパパなんかと行くわけないじゃない！」
「五月蝿ぇ！お前は黙ってろ！」
「偉そうに怒鳴らないでよ！」
「偉そうにじゃなくて現に俺様は偉いんだよ！つくしは俺のもんだ！
ガキのくせに親に逆らうな!!」
「ママは私のママなの！パパなんかに渡さないから！」
「二人共、そろそろいい加減にしたら？」
ヒートアップするばかりの低俗な親子喧嘩を止めに入ったのは類
類はゆっくりと牧野の横へと移動すると
フワリと真綿で包み込むように優しく牧野を抱き寄せた
牧野はもう何が何だか分かっていない様子でされるがまま…
「二人共、いい加減にしとかないと牧野は俺が貰うよ」
類のスタンスは昔からいつも変わらない
飄々と爽やかな風を纏い
俺からすればあり得ない言葉を本心から吐く
きっと類のこの言葉はこの場を納めようとして言った方便ではなく
心の底からでた本心でもし牧野が望めば…
まぁ牧野がそんな事、望むはずはないけれど…
今は話をややこしくするだけだ…
「類！テメェー！つくしに触んな！離れろ！」
慌て抱き寄せられている牧野を類から引き剥がすと
自分の腕の中に納めてしまった司
「司のケチ！」
いい歳した親父二人がガキみたく女を取り合っている
まぁ…取り合いされてる女ってのもいい歳なんだけど
だけどその光景はいつか見た…
懐かしいやり取りで…
なんて！
淡い感傷に浸ってる場合じゃねぇ！
「とにかく！今、宣言した通りだ！
俺はつくしと二人っきりでハワイに移住する！愛！邪魔すんな！」
再び高らかに宣言してしまった司
「ママ！なんとか言ってよ！
じゃないと本当にハワイに移住する事になっちゃうわよ！」
愛の言葉に会場中の視線が牧野に集まる
会場中が…
いや…
恐らくテレビを見ている世界中の人間が牧野が言葉を発するのを待っている
彼女の決断
このまま司とハワイに移住するのか否か
固唾を飲んで全員が見守る中
牧野も心を決めたのだろうか…
目を閉じ大きく息を吐き出してから
自らの身体に巻き付いたままの司の腕を離した
「あ、愛ちゃん、ママの事心配してくれてありがとう。
でもねママにとってお父様は誰にも代わりの出来ない唯一無二の存在なの。
だから心配しないでね。それにお父様はママが嫌がる事は絶対にしないから。
それから、あなた？私はハワイには行きたくありません。
私は今まで通り日本で皆と一緒に過ごしたいんです。
それにもしハワイに移住したとしても一ヶ月もしない内に
皆集まって来てしまって二人っきりなんて無理ですよ。
私の事を大切に思っていただいている気持ちは嬉しいですけど
今回ばかりはあなたに従えません！
だから…私の希望を叶えていただけませんか？」
最後は少しだけ強い口調でそう言い切った牧野が司からの言葉を待っているけれど
まさか拒否されるとは思っていなかったのか…
司の口から出た返答はどこか歯切れが悪い
「…あ、あぁ、お前の気持ちは分かったけど…」
牧野はそんな司の腕に軽く手を掛けると
柔らかく微笑み
「移住するのはご遠慮しますけど、最近はあなたも私も忙しくて休暇を取っていなかったので
優と夢花ちゃんが新婚旅行から帰ってきたら
休暇を取って二人でハワイでバカンスしませんか？
一週間ぐらいなら誰も邪魔しに来ないと思うのでそれなら喜んでお付き合いしますけど？」
ニコリと笑ってそう言い終えた牧野と
その笑顔に少し顔を赤らめた司
いい歳して女房見て照れてんじゃねぇーよ！
「…あ、あぁ…分かった…」
「それじゃあ、今おっしゃった事は撤回していただけますよね？」
「あ、あぁ…撤回する！」
「ありがとうございます」
ハァ～
一件落着か？
「ほら！まだご挨拶の途中ですよ。まずお騒がせした事を皆様にお詫びをして下さい」
そう言って再び司をマイクの前に促した牧野
司ももうそれ以上は何も言わず
予定通りにスピーチを終え
色々ありすぎた披露宴はやっとお開きとなった
その後どうしたかって？
あれだけの醜態を晒しておきながら
意外にも世間では好意的に捉えられていた
クールでダンディー
気難しくて非情
そんなイメージもぶっ飛び
女房の尻にがっつり敷かれている
意外に人間臭くて仲間内では感情を露にする
普通のオヤジと変わりないじゃん！
ってのが世間には好意的に捉えられて
披露宴直後には大手検索サイトでは
俺達の名前が検索ワード上位を占めていた
特に今まで決して前には出ずにいた牧野の注目度は高く
マスコミから取材が殺到していたが
司が全て蹴散らしていた
そんな司と牧野は宣言通り優と夢花が二週間の新婚旅行から帰った翌日には
二人だけでハワイにバカンスに出掛けていた
司の希望通り二人っきりで…
なんて…
行き先をテレビで宣言しておいて
思惑通りに進むはずはなく
道明寺財閥と繋がりを持ちたい世界中の企業のトップが続々とハワイ入りし
司達が滞在していた別荘の門前には面会希望者の高級車が列を成していた
司は押し寄せる面会希望者を蹴散らそうとしていたけれど
牧野の性格からしてそれは無理で
“態々、あなたに会う為にハワイまで来て下さった方々を無下に追い返すのは失礼ですから
時間の許す限りきちんと対応して下さい”
何を於いても牧野の言葉が一番の司は
急遽、ハワイに呼び寄せられた秘書の管理の元
連日、世界中の企業トップと面会し
最終日にはワイキキにあるメープルで盛大なパーティーまで催していた
ハワイから帰国した牧野は少し疲れた様子だったが
至って普通で帰国の翌日には我が家にお土産を届けに来ていたけれど
結局、休暇中途切れることなく続いた面会者のお陰で司の機嫌は最悪だった
最悪だったんだけど…
ここからが以前とは違う
牧野が司への対応を変化させてきた
今までの牧野は機嫌の悪い司には決して逆らわず
穏やかにそっと寄り添っている感じだったのだが
ハワイから帰って来た牧野は違っていた
穏やかにそっとってのは変わりないが機嫌が悪い司とは口を聞かないと宣言し自室に籠ってしまうようになり
その後、屋敷では牧野が籠る部屋の前で途方に暮れる司の姿が度々見られるようになった
応援ありがとうございます。
少し遅くなってしまいました…m(__)m
本日は『二度目』です🎶
愛ちゃん大暴走～❕ ＆ ストック切れ(涙)
それではどうぞ～✴
私信です。
☆様
こんにちは。
コメントありがとうございます。😆
私もそれ見てました❗😃💕
同じです～❕
あっ！また食べたくなってきた❗(笑)
司が優に掴み掛かろうとした瞬間
悲しい習性で俊敏にその事を感じ取った俺が止めにはいろうとしたその時
会場の一番後ろ
親族席で椿さんと高見の見物を決め込んでいた愛が声を上げた
「ちょっと待った！ママ！」
そう言うなり猛ダッシュでこちらへと駆け寄って来た愛は
司に肩を抱かれたままの牧野を引っ張り
「ママ！黙ってていいの？！
このままじゃママはパパと二人っきりでハワイに移住しちゃう事になるのよ！
こんなパパと二人っきりでハワイで生活なんて人生どぶに捨てるようなものじゃないの？
ママは本当にそれでいいの？」
人生をどぶに捨てる…
まな娘からの辛辣な言葉
口が悪いのがこの兄妹の特色でもあるが
流石に嫁入り前の娘がテレビで生中継もされている兄の披露宴で使っていい言葉じゃない…
それぐらいにしておけと止めに入ろうとして
一歩歩み寄った俺を押しのけるように愛が牧野に畳み掛ける
「ママ！冷静になってよ～く考えてよ！
パパよ！パパと二人っきりなのよ！そんなの有り得ないでしょ！？」
「我が儘だし横暴だし口だって悪いし！
今までだってママを泣かせてばっかりだったじゃない！」
矢継ぎ早に繰り出される愛からの口撃に
牧野も司も…いや会場中が呆然としたまま
「ママは忘れたの？！
私達がまだ中等部だった頃、一人でＮＹに居たパパが愛人作ってそれがみんなにバレて大騒ぎしたでしょ！」
生中継してんだぞ！？
分かってんのか？！
世界規模でかつての愛人の存在を愛娘に暴露されてしまった司は流石にダメージが大きいのか何も言い返せていない
かろうじて愛に腕を強く揺さぶられた牧野が”愛ちゃん…今、そんな事を言わなくても…”
なんて虫の鳴くような小声で呟いただけ
「ママはパパの浮気があの一回だけじゃないって事も分かってるでしょ？！
パパはママが何も言わないのをいいことに総二郎おじさん並にいろんな女の人と浮気してたのよ！」
「俺並って…愛！俺を引き合いに出すな！！
俺は浮気なんてした事ねぇーぞ！
そのバカと一緒にすんな！！俺のは一期一会だ！」
突然、引き合いに出された総二郎がこちらも時と場所を考えず怒鳴り返してみたが…
あっさりと愛に返されてやがる
「何が一期一会よ！単に誰にも本気じゃなかっただけじゃない！」
誰にも本気じゃない…
これが妙に的を得ていて納得してしまった
戦意喪失してんじゃねぇーよ！総二郎！
だけどいくら納得出来ても愛の暴走をこのままにしておくわけにはいかない
「愛！いい加減にしろ！いい加減にしとかぬぇーとお前でも放り出すぞ！」
流石にこれまでだと思い少し強い口調で言ったのだが…
それが大間違い…
司と牧野の気の強さを受け継いでいる愛には逆効果で
「何よ！あきらおじさんは私を脅す気？
いいわよ、追い出せるなら追い出してみなさいよ！
そんな事したらここ出てすぐに外に群がってるマスコミにおじさんが昔、
人妻好きで何人もの人妻をその気にさせて捨ててきたか全部しゃべってやるから！」
もう全部しゃべってんじゃねぇかよ…
これだって生放送されてんだぞ！
それに娘もいるんだぞ!!
「あ、愛！？お前…」
予想外の反撃にうまく言葉を返せない俺…
それぞれがばらされたくない事実を簡単に生中継に乗せられ情けないけど反撃出来ない
牧野もまだ余りの事に何も言えないままだし
類なんて一人でクスクス笑っているだけ
誰かこの状況をなんとかしてくれ！と思った瞬間
俺の隣でずっと黙ったままだった滋が口を開いた
「愛ちゃん！司の数々の浮気の事は本人はバレてないつもりなんだから言っちゃダメだよ！
それにあきら君が人妻好きだって事は有名な話しだから今さらそんなの暴露したってインパクトに欠けるよ！
後で滋ちゃんがとっておきの教えてあげる！」
「滋!!」
「サル女!!」
「滋さん!!」
滋の発言の後、俺に司と牧野が同時に叫んだ
「滋さん！これ以上、愛を焚き付けるような事言わないで下さい！
愛もいい加減にしなさい！」
「どうして？いいじゃん！どうせ本当の事だしさ。
私はこんな事ぐらいであきら君の事嫌いになったりしないし。
つくしもそうでしょ？だから何があってもずっと司と一緒に居たんでしょ？」
「それは…そうだけど…
だからって今は優と夢花ちゃんの披露宴なんですよ！
少しは状況を考えて下さい！滋さんも愛も自由すぎます！」
「まぁ確かに少し自由過ぎたかもしれないけどさぁ。
元はと言えば司じゃん！
司が引退してつくしとハワイに移住するとか言い出すから悪いんじゃない～！」
我に返った牧野に少し強い口調で注意された滋は不服そうに口を尖らせ司を指さしながら反論している
「それはそうだけど…私はまだ行くなんて一言も言ってません！
勝手に話を進めないで下さい！」
「なっ!?お前は嫌なのかよ？」
行くなんて言っていないと言った牧野に慌てて詰め寄る司
「当たり前でしょ！ママがパパなんかと行くわけないじゃない！」
「五月蝿ぇ！お前は黙ってろ！」
「偉そうに怒鳴らないでよ！」
「偉そうにじゃなくて現に俺様は偉いんだよ！つくしは俺のもんだ！
ガキのくせに親に逆らうな!!」
「ママは私のママなの！パパなんかに渡さないから！」
「二人共、そろそろいい加減にしたら？」
ヒートアップするばかりの低俗な親子喧嘩を止めに入ったのは類
類はゆっくりと牧野の横へと移動すると
フワリと真綿で包み込むように優しく牧野を抱き寄せた
牧野はもう何が何だか分かっていない様子でされるがまま…
「二人共、いい加減にしとかないと牧野は俺が貰うよ」
類のスタンスは昔からいつも変わらない
飄々と爽やかな風を纏い
俺からすればあり得ない言葉を本心から吐く
きっと類のこの言葉はこの場を納めようとして言った方便ではなく
心の底からでた本心でもし牧野が望めば…
まぁ牧野がそんな事、望むはずはないけれど…
今は話をややこしくするだけだ…
「類！テメェー！つくしに触んな！離れろ！」
慌て抱き寄せられている牧野を類から引き剥がすと
自分の腕の中に納めてしまった司
「司のケチ！」
いい歳した親父二人がガキみたく女を取り合っている
まぁ…取り合いされてる女ってのもいい歳なんだけど
だけどその光景はいつか見た…
懐かしいやり取りで…
なんて！
淡い感傷に浸ってる場合じゃねぇ！
「とにかく！今、宣言した通りだ！
俺はつくしと二人っきりでハワイに移住する！愛！邪魔すんな！」
再び高らかに宣言してしまった司
「ママ！なんとか言ってよ！
じゃないと本当にハワイに移住する事になっちゃうわよ！」
愛の言葉に会場中の視線が牧野に集まる
会場中が…
いや…
恐らくテレビを見ている世界中の人間が牧野が言葉を発するのを待っている
彼女の決断
このまま司とハワイに移住するのか否か
固唾を飲んで全員が見守る中
牧野も心を決めたのだろうか…
目を閉じ大きく息を吐き出してから
自らの身体に巻き付いたままの司の腕を離した
「あ、愛ちゃん、ママの事心配してくれてありがとう。
でもねママにとってお父様は誰にも代わりの出来ない唯一無二の存在なの。
だから心配しないでね。それにお父様はママが嫌がる事は絶対にしないから。
それから、あなた？私はハワイには行きたくありません。
私は今まで通り日本で皆と一緒に過ごしたいんです。
それにもしハワイに移住したとしても一ヶ月もしない内に
皆集まって来てしまって二人っきりなんて無理ですよ。
私の事を大切に思っていただいている気持ちは嬉しいですけど
今回ばかりはあなたに従えません！
だから…私の希望を叶えていただけませんか？」
最後は少しだけ強い口調でそう言い切った牧野が司からの言葉を待っているけれど
まさか拒否されるとは思っていなかったのか…
司の口から出た返答はどこか歯切れが悪い
「…あ、あぁ、お前の気持ちは分かったけど…」
牧野はそんな司の腕に軽く手を掛けると
柔らかく微笑み
「移住するのはご遠慮しますけど、最近はあなたも私も忙しくて休暇を取っていなかったので
優と夢花ちゃんが新婚旅行から帰ってきたら
休暇を取って二人でハワイでバカンスしませんか？
一週間ぐらいなら誰も邪魔しに来ないと思うのでそれなら喜んでお付き合いしますけど？」
ニコリと笑ってそう言い終えた牧野と
その笑顔に少し顔を赤らめた司
いい歳して女房見て照れてんじゃねぇーよ！
「…あ、あぁ…分かった…」
「それじゃあ、今おっしゃった事は撤回していただけますよね？」
「あ、あぁ…撤回する！」
「ありがとうございます」
ハァ～
一件落着か？
「ほら！まだご挨拶の途中ですよ。まずお騒がせした事を皆様にお詫びをして下さい」
そう言って再び司をマイクの前に促した牧野
司ももうそれ以上は何も言わず
予定通りにスピーチを終え
色々ありすぎた披露宴はやっとお開きとなった
その後どうしたかって？
あれだけの醜態を晒しておきながら
意外にも世間では好意的に捉えられていた
クールでダンディー
気難しくて非情
そんなイメージもぶっ飛び
女房の尻にがっつり敷かれている
意外に人間臭くて仲間内では感情を露にする
普通のオヤジと変わりないじゃん！
ってのが世間には好意的に捉えられて
披露宴直後には大手検索サイトでは
俺達の名前が検索ワード上位を占めていた
特に今まで決して前には出ずにいた牧野の注目度は高く
マスコミから取材が殺到していたが
司が全て蹴散らしていた
そんな司と牧野は宣言通り優と夢花が二週間の新婚旅行から帰った翌日には
二人だけでハワイにバカンスに出掛けていた
司の希望通り二人っきりで…
なんて…
行き先をテレビで宣言しておいて
思惑通りに進むはずはなく
道明寺財閥と繋がりを持ちたい世界中の企業のトップが続々とハワイ入りし
司達が滞在していた別荘の門前には面会希望者の高級車が列を成していた
司は押し寄せる面会希望者を蹴散らそうとしていたけれど
牧野の性格からしてそれは無理で
“態々、あなたに会う為にハワイまで来て下さった方々を無下に追い返すのは失礼ですから
時間の許す限りきちんと対応して下さい”
何を於いても牧野の言葉が一番の司は
急遽、ハワイに呼び寄せられた秘書の管理の元
連日、世界中の企業トップと面会し
最終日にはワイキキにあるメープルで盛大なパーティーまで催していた
ハワイから帰国した牧野は少し疲れた様子だったが
至って普通で帰国の翌日には我が家にお土産を届けに来ていたけれど
結局、休暇中途切れることなく続いた面会者のお陰で司の機嫌は最悪だった
最悪だったんだけど…
ここからが以前とは違う
牧野が司への対応を変化させてきた
今までの牧野は機嫌の悪い司には決して逆らわず
穏やかにそっと寄り添っている感じだったのだが
ハワイから帰って来た牧野は違っていた
穏やかにそっとってのは変わりないが機嫌が悪い司とは口を聞かないと宣言し自室に籠ってしまうようになり
その後、屋敷では牧野が籠る部屋の前で途方に暮れる司の姿が度々見られるようになった
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