吾亦紅 8(完)
本日も予約投稿です❣(^^♪
これで完結です!
最後までお付き合いありがとうございました。
それではどうぞ~❤
私信です。
☆様
こんにちは~(^^♪
コメントありがとうございます。❤
このお話しの司君・・本当にヒドイですよね💦
今回は司君の心情は描いておりませんが
彼にとっては息子さんの事やら色々な出来事が物凄くショックだったんじゃないかなぁっと・・
ご○ぎつね様
こんにちは~(#^.^#)
コメントありがとうございます。🎵
ハイ!もちろん!グーです!(笑)
バシッと乾いた音が響いた室内
まさか牧野がいきなり司を殴るなんて思っていなかったから
誰も動けず殴られた司でさえ衝撃で呆然としたまま
そんな俺達には構わず牧野は司の横に静かに腰を下ろすと
たった今、自分が殴ったばかりの司の頬に
先ほどの勢いとは真逆の動きでゆっくりと手を添えて
「あんた・・なにやってんの?
こんなにも痩せて・・こんな所で一人で・・なにやってんのよ・・」
涙声でそう呟くと司を抱き寄せた
「うるせぇよ・・お前には・・関係ねぇだろ・・」
大人しく牧野に抱きしめられたまま
ガキのような答えを返した司
まるで赤子をあやすように
ゆっくりと司の背中を撫でる牧野
やがて司は覚悟を決めたように大きく息を吐き出すと
牧野から身体を離し話し始めた
「ずっと後悔してたお前を裏切ってしまったことが後ろめたくて・・
お前から連絡が来ていることは分かっていたのに・・
お前に別れ話されるのが怖くて出来なくて・・
時間だけが過ぎてしまってあの女から妊娠したって言われて・・
お前に何も言えないままで・・でもずっとお前が恋しかったんだ・・
自分は他の女と結婚したのにお前の事が気になって調べたら・・
総二郎と一緒になっていて明日香も生まれていて・・三人で幸せそうで・・
その光景にムカついて・・ずっとお前と明日香に会いたかった・・
でも俺には息子がいたし自分のしたことも忘れてなかったから・・
あいつは褒められた奴じゃなかったけどでもずっと自分の息子だって思って育ててきて
それが間違いだって・・あの女にずっと騙されてた・・
俺は・・今まで何のために頑張ってきたのか分からなくなって・・」
「そうだったんだ・・大変だったんだね。
詳しくは聞いて無かったから知らなかったけどね
私から一言言わせてもらうと」
そこで言葉を切った牧野はニコッと笑うと
「ざけんな!一昨日来やがれ!って感じ。
あんたの事情なんて知らないわよ!
私と総二郎には関係ないし!
私や明日香に会いたいんだったら普通に会いに来ればいいでしょ?
そりゃあ総二郎は歓迎しないでしょうけど追い返したりはしないわよ!
それなのに!いきなり娘を拉致されて本当に心配で不安だったんだからね!
分かってんの?あんた?」
「・・・・・」
「まずはごめんなさいでしょ?
どうしてあんたは普通の人が当たり前に出来る事が出来ないの?!」
「・・・悪ぃ」
バツが悪そうに蚊の鳴くような声で謝った司
「はぁ?聞こえないんだけど?」
「だから俺が悪かったって謝ってんだろ!」
「偉そうに言わない!」
「・・・ごめん」
「ハァ~とりあえず今日の事は許してあげる。
でも次は絶対に許さないからね!もう二度とこんな事しないで。
それから次に会いに来るときはちゃんと前もって連絡してきてね。
それじゃぁ私たちは帰るわね。行くわよ、明日香」
言いたい事だけ言うとあっさりと帰ると告げた牧野
「・・えっ!?あっ!待って!お母さん!」
さっさと部屋から出て行きかける牧野の後を慌てて追いかける明日香は
ドア付近で一度立ち止まると振り返り司に向かって“お邪魔しました”とだけ言うと
部屋から出て行ってしまった
そして総二郎もゆっくりと立ち上がり
「スマホ弁償しろよ、司!
それから気は向かねぇけど俺のカフェに招待してやるから
落ち着いたら来い!」
そう言って総二郎も牧野と明日香の後を追って
部屋から出て行ってしまったのを追って俺と類も部屋を出た
一瞬だけ司と一緒にと思ったが
奴にとってそんな心遣い
大きなお世話だと思った
俺達はもうガキじゃない
それぞれに傷を抱えながらもここまで生きてきた
孤独な夜の過ごし方ぐらい知っている
俺にとって今日のつくしの司に対する態度は意外だった
つくしの中に司に対するもっとドロドロとした感情が
今でも残っていると思っていたから
それなのに司と対面したつくしは意外にサバサバしていて
ロビーへと下りるエレベーターの中でも俺の顔の傷を撫でながら
“イケオヤジが台無しだよ”
なんて
明日香は
“お父さん、すっごくかっこよかったよ!”
なんて言ってくれているがつくしは
“若い頃だったらパンチが当たる事も無かったのにね〜
お互い歳だね!あたしもまだ手が痛いもん!”
なんて笑ってやがる
だから俺も笑いながら
「うるせぇーよ!
ワイルドでいいだろ?」
なんて軽口を叩く
やっと地上へと舞い戻って来た俺達
ロビーでは滋に付き添われた真と香菜子が居て
香菜子は俺の姿を見つけるなり駆け寄って来て
「お父さん!香菜子、ヘリに乗ったの!
あれ?!顔、どうしたの?どこかにぶつけたの?」
と緊張感の無い言葉に身体から一気に力が抜ける
「あぁ、ぶつけた。
でも大丈夫だから、心配すんな!」
「心配はしてないけど?」
キョトンとした顔で返されて脱力・・
「ちょっとはしろよ!」
「え~ぇ~。あっ!ママ!ねぇねぇ!
せっかく札幌に来たんだから香菜子、回ってないお寿司が食べたい!」
末っ子で超マイペースで能天気な香菜子は
この状況でも不安を感じることなくどこまでもマイペース
「香菜子!我が家の寿司は回ってるんだ!」
「え~たまには回ってないのがいい~!」
「贅沢言うな!」
「え~ママ~!
ママからもなんか言ってよ!」
「ママも回ってないお寿司は緊張して食べた気がしないから
回ってる方がいいなぁ」
「もう!ママまで!
じゃぁ回ってるのでもいいから早く行こ!
あたしお腹空いてるの!」
「分かったよ!ほら!行くぞ!」
後から降りて来たあきら達に礼を言って
ホテルを出た俺達
前を行くのはつくしと明日香
並んで歩いている後ろ姿はそっくりで
そのすぐ後ろを一人で歩いているのが真之介
こいつの後ろ姿は俺にそっくり
そして俺の横には香菜子
いつもなら寄るな触るなの反抗期のクセに
こんな時だけ俺の腕にぶら下がるように歩きながら
ずっとあきらんとこのSPとヘリに乗った話しをしている
「ヘリがそんなに楽しかったのか?」
「うん!最初はフワ~ンってしてちょっと怖かったけど
景色は綺麗だったし札幌まで10分だよ!10分!
あっという間に着いちゃった!」
「だな」
「ねぇねぇ、お父さん!
帰りもヘリ乗れる?」
「帰りはお母さんの車だ!」
「え~ママの車狭いからヤダよ~!
全員で乗ったら絶対に香菜子が真ん中なんだもん!」
「心配すんな、明日香の車と二台で帰るから」
「それならちょっとだけマシだけど・・
ヘリが良かったなぁ~、ねぇ、お父さん!類君にお願いしてよ!」
「イ・ヤ・だ!」
「ケチ!」
類にとってつくしが生んだ明日香と香菜子は特別な存在
きっと香菜子が頼めばどんな願いでも叶えてしまうだろうけど
ムカつくから類に頼み事なんて死んでもしねぇ!
俺の家族はこんな感じ
俺の全て
あの頃の俺が思い描いていた未来とは大分違う
それはあの特殊な家に生まれ
特殊な世界でずっと生きて行くんだと思っていた頃の話し
きっかけはどうであれ
今の俺は北の大地でカフェをしているイケオヤジ
右腕に感じるのは大切な娘の重み
そして立ち止まり振り返り笑顔で遅れて歩く俺と香菜子を待つ三人
明日っからもまたいつもと同じ毎日の繰り返し
やがて香菜子も巣立ち
つくしと二人になったとしても
その毎日は変わらない
この場所で命を繋いでいく
俺達の物語は永遠に終わらない
~ Fin ~
最後までお付き合いありがとうございました。

応援ありがとうございます。