怜 17 -残響-(完)
本日も『怜』です。🎵
そしてこのお話し今日で完結です❣(^^♪
それではどうぞ~❤
私信です。
☆様
こんばんは~🌙🌃
コメントありがとうございます。❤
それでは遠慮なく❣(^^♪
「貴方はご自分が最後の一人だとおっしゃっていますが
滋さんと真愛さんに関しては死亡届けは出されていません。
書類上ではこの二人はまだ生きている事になっていますよね?」
「そうね、書類上ではね。
でも貴方ももう分かっていらっしゃるのよね?」
「はい、だいたいの想像は付いています」
「そう、さっきもお話ししたけれど
わたくしも道明寺さんも元々は冷酷な人間なのよ。
それを変えてくれたのが先輩だったの・・」
わたくしも道明寺さんも
先輩がいたからこその人間らしさであって
先輩がいなければ
根っこは変わらない
三つ子の魂百まで
死なばもろとも
一蓮托生
どの表現が正しいのかは分からないけれど
間違えても先輩のご家族のような
悪意の連鎖を断ち切れる程の忍耐力など持ち合わせてはいない
簡単に言えば
単純で分かりやすいタイプの人間だ
やられたらやり返す
目には目を歯には歯を
ただそれだけ
ただそれらを口にしないだけ
言葉にしないから
行動しないわけではない
あの出来事以降、道明寺さんは
少しずつだがフェイドアウトするように
一線から退かれた
最後まで道明寺財閥の総裁という地位にはいたが
椿さんの息子さんを後継に指名すると
ほとんど表舞台に出る事は無くなり
鎌倉の別宅に引きこもった生活だった
訪ねてくる人はほとんどおらず
面会を申し込んでも会えるのはほんの一握りの人間だけ
そんな道明寺さんに対して世間の声は
あんな事があったのだから人嫌いになっても仕方がない
といった反応だったが
昔からあの人を知っている者からすれば
道明寺さんの人嫌いは昔から
今に始まったことではない
それにあの人は絶望の果てに
達観してしまうような人間でもない
あの人が世捨て人のような生活をしていたのは
何ものにも邪魔されず目的を遂行するため
あの人の目的は復讐
いや
復讐などという簡単な言葉では言い表わせない
それはまるで修羅の如く
内に秘めたるその情念があの人の生きる原動力だった
その証拠にあの出来事以降
地球上から大河原の血筋が消えた
あの当時、滋さんのお父様は既に他界されていて
残っていたのはお母様だけだった
大河原家には滋さん以外の子供はいない
一応は滋さんの従兄弟にあたる方が
跡を継いでいたがカリスマ性などはなく
道明寺家の支援が無ければ
難しい状況になっていた
結婚当初とは立場が逆転していた
そのような状況下で起きたあの出来事は
大河原財閥にとどめを刺した
だから道明寺さんが何もしなくても
大河原財閥の行く末は決まっていたのだろうけれど
あの人はそんな優しい人間ではない
あっという間に大河原財閥を解体してしまい
それだけではなく滋さんのお母様の血筋に関しても
容赦がなかった
滋さんに続く全て者を闇に葬り
最後の仕上げとばかりに・・
「一番の復讐は何かご存知かしら?」
「いえ・・すぐには思いつきません・・
復讐といえば・・相手を殺すぐらいしか思いつきません・・」
「正しいわね。
復讐といえば大抵の人はそう考えるものね。
でもね本当は相手を八つ裂きにしても
何も変わらないのよ。
相手が求めている物が何なのか?
相手が一番苦痛を感じる事は何なのか?
それが分かっていればいいだけなのよ」
滋さんが一番望んでいた物は
道明寺さんの心
真愛さんが一番望んでいた物は
道明寺さんからの愛情
それが分かっているから
あの人は二人を無視し続けた
まるで最初から存在しないかのように
自身の人生から排除し
先輩を妻として
暖人を長男として
自身が住む鎌倉の別宅に霊廟を建て大切に弔った
例え相手を八つ裂きにしても復讐の気持ちは消えない
報われる事などない
それが分かっていながらも
敢えて道明寺さんは嘗て妻だった女性と
確かに自分と血の繋がっている娘を
追い詰めた
あの人は決して
最愛の先輩と息子を奪った
家族だったはずの二人を
許さなかった
許さなかったと言った三条さん
三条さんからはそれ以上の言葉は聞けなかったが
私の予想通り
あの二人も既にこの世にはいない
その現実を受け止めるのはジャーナリストとして間違っているのかもしれないが
被害者の親族の一人としては受け入れている自分がいる事に少し驚いている
今でも私は常識的な人間だと思っている
暖人さんのした事も間違っていると思っている
そして復讐も・・
間違っていると思っている
だけど
ここに来て
三条さんから話しを聞いた今
復讐という手段を否定しきれない自分がいるのも事実
こんな私を父はどう思うだろうか?
父も復讐は間違っていると言うだろうか?
そんな事を望んではいないと言うだろうか?
真実の向こうに見えたのは
また新たなる疑問
きっとこの答えをくれる人はいない
私がこれから抱えて生きていく課題だと思う
二日間に及ぶ長いインタビューの最後に三条さんは私を
村にある教会へと連れて行ってくれた
そこにあったのは・・
教会に隣接する村の共同墓地の一角にある霊廟
その中に収められていたのは
道明寺氏が三条さんに託した
道明寺氏が伯母の為に作ったペアのエタニティーリングと
暖人さんの為に作ったピンキーリングが三つ並んで収められていた
道明寺氏が亡くなる半年ほど前に突然訪ねてこられて
この指輪を三条さんに託して帰られたらしい
その指輪を目にした時
私は
初めて
伯母家族の為に
涙を流した
あのインタビューから半年
私の元に届いたのは三条さんの訃報だった
それと同時に届けられた小包の中には
私宛の手紙とあの時、教会の霊廟で見た指輪が入っていた
三条家の蝋封がされていた薄い桜色の封筒を開けると
同じ色使いの便箋が入っていて
最後に私と会えて良かったと書かれていて
この指輪を今は家族三人で眠る
鎌倉の別宅にある霊廟に収めて欲しいと書かれていた
インタビューの中で三条さんが話していた
道明寺氏が晩年を過ごしていた鎌倉の別宅
そこに建てられた霊廟には伯母と暖人さんの骨も収められていた
私が知らなかった真実がまた一つ
あの出来事の後、警察から父が持ち帰っていた
二人の遺骨はその後、分骨されていた
そこにどういった経緯があるのはかは
父も道明寺氏も亡くなってしまっている
今となっては知る由もないけれど
私はその言葉通り
指輪を携え鎌倉を訪ねた
季節はすっかり冬
高台に位置する道明寺氏の別宅には
事前に連絡を入れていた為
今もここで住み込みで管理されている
西田さんとおっしゃる初老の男性が出迎えてくれた
聞けばこの方は嘗て道明寺財閥で秘書をされていた方の甥御さんで
道明寺氏がご存命の時から
ここに住み込み道明寺氏の秘書のような仕事をされていたらしい
その男性に案内されて入った霊廟は
全く霊廟のような雰囲気ではなく
まるで家のような作りになっていて驚いた
リビングのような部屋にはソファーが置かれていて
続き部屋にはキッチンまで設えてあり
まるで家族三人で一家団欒の時を過ごす部屋のようだった
その壁には特注で作られたであろう飾り棚が取り付けられていて
三人の遺骨が入った骨壷が並べられていた
私はそこに持参した花を供え
三条さんから預かった指輪を置き
お屋敷を後にした
人が人を愛する
当たり前で普通の事が
これほどまでに困難で
愛する人と
愛する家族と
共に過ごす時間が
これほどまでに尊いことだと
改めて感じた
この想いを胸に私は
新たな一歩を踏み出した
〜FIN〜
はぁ~なんとか終わりました!
最後までお付き合いありがとうございました。😊
一度、頭の中をクリアにしてちょっとライトなお話しを挟んで
司君編をと考えております❣(^^♪

応援ありがとうございます。