３０億の女 １

ハァッ！？







訴状を持つ手が怒りでワナワナと震える




婚約中の不貞行為により慰謝料３０億円を請求する



突っ込み所が満載の訴状を手に

肺いっぱいに空気を吸い込み一気に吐き出す



ふざけんなーー！！！




デスクの前で仁王立ちの私

オフィス内に轟く叫び声に桜子が



「何を叫んでるんですか？先輩？」



「ちょっと、桜子！これ！これ見てみてよ！」



そう言って彼女に差し出した訴状

桜子はそれを受け取りながら



「誰かに訴えられたんですか？」


「そうよ！あのバカ男に訴えられたのよ！」



とりあえず桜子が訴状を確認している間にざっと説明するわね



私、牧野つくしは現在３０歳


職業は弁護士



紆余曲折あって


色々あって


現在、牧野法律事務所の経営者兼弁護士



日本だけじゃなくてＮＹとＬＡの弁護士資格も持っている

バリバリの国際弁護士です！




はい・・一応



なのでお仕事絶賛募集中です！


企業法務が専門ですが・・



なんでもやります！



小さな訴訟から離婚調停だって

なんでも親身になって懇切丁寧に対応いたします！



なので是非！



弁護士がご入用の際には是非！


牧野法律事務所にお任せ下さい！




「先輩！事務所の宣伝はいいですから！
まず紆余曲折を皆さんに説明してください！
皆さん、そちらの方が知りたいですよ！」




「そ、そうよね・・え〜っと・・まず！今ので分かってくれたと思うんだけど
桜子がパラリーガル兼事務員としてあたしの補佐をしてくれてるの」




そしてね・・




道明寺とはどうなったのかって？


それはね・・



５年前に別れました・・



きっかけ？



原因？



ん〜




それは一つじゃなくて色々と複合的な要因が混ざりあって

あたしから婚約解消を申し出たのよね



そう！

道明寺とは

５年も前に婚約は解消しているはず！



それなのに！




なんで今頃になって


あの男から訴えられなきゃいけないのよ！？




「先輩？これちゃんと読みましたか？
先輩と道明寺さんって今でも婚約中ってなってますよ」




「はぁ？？？そんなわけないでしょ！？」




「でも訴状にはそう書かれていますよ」



「あんたも知ってるでしょ！？
あたしと道明寺はとっくの昔に別れてるの」



「知ってますけど。
先輩に聞いただけですから
道明寺のお考えは違ったんじゃないんですか？」



「はぁ？！あんたあいつの味方なわけ？！」



「私は何があっても先輩の味方ですから
そんな風に取らないで下さい。
それよりさっさと相手方の先生に連絡した方がいいんじゃないですか？」




「そうよね。
そもそも婚約中って前提が間違いなんだから
訴え自体が無効よね！？」




「だと思いますけど・・なんせ相手はあの道明寺さんですからね・・
とにかくきちんと事実確認した方がいいんじゃないですか？」




「そうよね！・・ん？あれ？」




「どうしたんですか？」




「ん・・これって・・担当者さんの名前書いてないんだけど・・」




訴状のどこを見ても担当弁護士さんの名前は無くて

書いてあるのは道明寺財閥法務部ってだけ

おまけに連絡先の番号も書かれてなくて

なにこれ？状態・・



でね


訴状に貼られていた付箋に書かれていたのは




“連絡はお前が直接、俺のスマホにしてこい！
それ以外は対応しない！司”




と見慣れた字で書かれていた


「ねぇ、桜子？
あんた３０億持ってる？」



「はい、持ってますけど」




「持ってるのね・・それ貸してくれない？」




「返すあてあるんですか？
くだらない事考えてないで
さっさと道明寺さんに連絡をして下さい」





「・・・・・・電話番号、知らないもん・・」




「道明寺さんの番号は変わっていないと思いますよ」





「・・・スマホを変えた時に番号消しちゃったのよね・・
ねぇ、桜子？あんた、掛けてみてよ」




「そこに先輩が直接じゃないとって書いてあるじゃないですか！
私が掛けてもきっと道明寺さんは出てくれませんよ。
くだくだ言ってないで番号教えますからさっさと連絡してください！」




「・・・・え～～～桜子～～～！」




「さっさとしないと本当に３０億払う事になりかねませんよ！」




「日本でそんなわけないでしょ！？
それにあいつに一円だって払いたくないわよ！」



「だったらさっさと電話して終わらせてください！
いくら暇だっていっても遊んでる時間はありませんからね！」



「暇って・・本当のこと言わないでよね・・凹むじゃない」



「だったらさっさと終わらせて営業活動でもしてきてください！
ほら！これが道明寺さんの番号です」




本当の事なんだけど


地味に傷つくのよね・・


ハァ～～


桜子の言葉に諦めてデスクの上の電話の受話器を取った


なんとなく道明寺に新しい番号を知られるのが嫌で

固定電話の受話器を取った私に対して桜子は



「先輩、固定電話じゃなくてスマホから掛けてください」



「え～～・・固定じゃダメなの？
番号知られたくないんだけど・・」




「ふざけた事ばっかり言わないでください！
道明寺さんですよ？！あの道明寺さんが新しい番号を知らないわけないじゃないですか！
婚約者なんですよ！」



「婚約者じゃないわよ！」



婚約者じゃないけど・・


桜子の言っている事も一理ある


道明寺なら私がいくら番号を変えた所ですぐに調べられるだろうし


既に調べているだろう・・


だから


諦めて固定電話の受話器を戻し


自分のスマホを手に取った




















今のところこの先の展開が全く見えておりません・・💦

応援ありがとうございます。