１３０億とちょっとの女 １３ －３０億の女－

ちゃんと話さなきゃって思った




ちゃんと道明寺と向き合って話し合わなきゃって思ったのよ・・




だけどね


道明寺はあの川床での会話以外は

何も言って来なくて




あの日だって



川床での食事が終わったらそのまま帰京しただけ


帰りに土産だって言って



出町柳の有名な和菓子屋さん黒豆大福を手渡してくれて

あたしのマンションまで送ってくれただけで

あっさり帰って行ってしまった


なんだか拍子抜けな感じはしてるんだけど・・




あれから三日



とりあえず道明寺からは西田さんを通じて

約束通り訴えは取り下げるって連絡が入って一段落


あたしとしてはゆっくりと考える時間が出来て

良かったと思っている




考えるって何を考えるの？



って思ってる？



またグダグダ悩んでないで

さっさとヨリ戻しちゃいなさいよ！


イライラするわね！


もう！



とか思ってる？



そうよね・・



確かにあたしだってそう思う


思うんだけどね



そもそもなのよ



道明寺の気持ちは分かったのよ


ずっとあたしを想ってくれたんだ・・


って思う気持ちもあるのよ


だけどね


あたし自身の気持ちがね・・


追いついて行かないって言えばいいのかな？



薄情な女って思われるかもだけど



あたしのこの五年間は

すっかり道明寺とは別れたつもりで過ごしてきてたの



将来の事

結婚の事など

考えなかったわけじゃないんだけど


まずはしっかりと自分の足元を固めて

その上でいい人に出会えたらって思ってた



ん？


あれ？


まずは自分の足元を・・


って

あたし

道明寺と同じ事

言ってない？



道明寺に貰った黒豆大福を食べながら思った事は・・



京都は楽しかった


チャンスが無くて行けなかった場所に

思いがけず行けて楽しかった



昔

愚痴ったわけじゃないけれど

何気ない会話の途中で話した事を

ちゃんと覚えてくれていた事が嬉しかった



あの頃、あたしが感じていた

モヤモヤはなんだったんだろう？


確かに感じていたのよ・・


でもそれって


すっごく


独りよがりな


モヤモヤだったんじゃない？




道明寺の気持ちを疑った事はなかったけれど


彼が何を考えているのか？


彼がどう思っているのか？


彼の気持ちは二の次で・・


あたし


自分勝手にモヤモヤを解消して


自分勝手にスッキリしてただけなんじゃない？



あ〜


あたし


バカだ・・


道明寺が言っていた通り


バカ女だ・・


こんな単純な事にさえ


気が付いていなかったんだから・・




はぁ〜


反省・・


道明寺にちゃんと謝らなきゃ


そして


ちゃんと話さなきゃ


そう思った


そう思ったからね



彼に連絡しようとスマホを手に取ったと同時に

桜子が彼女にしては珍しく慌てた様子で

部屋へと飛び込んできた



「先輩！」



「な、なに？！びっくりするじゃない！
どうしたのよ？そんなに慌てて？」



「大変なんですよ！
ちょっとこれ見て下さい！」



「ちょ、ちょっと！ったく！どうし・・・」



最後まで言葉が続かなかった・・



桜子の手にはタブレット


その画面に映し出されていたのはテレビのワイドショーで




“道明寺財閥御曹司・道明寺司氏、結婚発表！
お相手は一つ下の弁護士”



“まもなくＮＹから道明寺氏が会見！”



ん？


「あいつ・・結婚するの？」




「そうみたいですね。
お相手は先輩のようですけど
いつプロポーズＯＫされたんですか？」



「へっ？・・あ、たし？」




「えぇ、一つ下の弁護士って先輩の事しか考えられませんから」




桜子がそう言った途端


いっせいに電話が鳴った




事務所の電話にあたしのスマホに桜子のスマホまで・・




着信音が鳴り響く事務所内で



フリーズ


















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