プリズム １７

途中経過ではございますが


皆様にご報告させていただきます


西田でございます



週末より不測の事態の連続で

些か混乱もいたしましたが



そこは司様を始めその他の皆さまが

淡々と処理を進めておられ

西田といたしましても


ホッと胸を撫でおろしております



牧野様を騙していた男を司様の許可を得て


美作様に引き渡した後は


あの男がどのような末路を辿るのか・・


想像には容易く皆様のご想像通りでございます


珍しく怒りを直接表現された花沢様の一撃によって



あっさりと終了してしまいましたが


その後の事は美作様の事


完璧に後処理が終了し



あの男が二度と牧野様の前に現れる事はございません



その事には一安心ではございますが


問題はまだ山積みでございます



牧野様を事実上の謹慎処分にした人事部長は


大河原様によって地球の裏側


ブラジルへの移動が決まり辞令が出されたようでございますが


ブラジルのアマゾン奥地で

無事に定年まで過ごす事は出来るでしょうか


些か疑問ではありますが


遠く地球の裏側から健闘を祈っております



そして一番の問題は例の男の妻の父親でございます


一代で現在の地位まで登りつめた人物でございます


それなりに能力も高く人望もあったのでしょうが



平家物語の有名な冒頭部分を思い浮かべていただければと思います




『ひとへに風の前の塵に同じ』



なのでございます



そうは申しましても

こちらは少し骨の折れる作業でございました



なんせ年齢の割には精力的で

普段より少し血圧は高かったようではございますが


同年代の男性に比べ健康体で

持病らしき病は無かった例の社長を


なるべく自然な形で・・


というのは些かではございますが


まぁ、後はなんとでもなりえますので


事故という形で司様にはご納得いただきました



たった一本の電話が文字通り命取りになるなどとは


夢にも思ってはいなかったのでしょうけれど


余計な事をしなければでございます


百歩譲って電話など掛けてこなければ


牧野様の事に言及などしなければ


もう一度、孫を抱けたのでしょうが・・


全ては



諸行無常でございます












“おめでとうございます”


“なるべく早いうちに役所に行って母子手帳を受け取って来て下さいね”


タマさんに付き添われて訪れた病院


到着するとそのまま特別室へと通されて

診察が始まった


診察って言っても


生理の周期を聞かれて


後は尿検査を受けただけなんだけど


結果はバッチリ陽性だった


はっきり言ってパニックです！


自分でもどう受け止めればいいのか分からなくて


戸惑いばかりで


看護婦さんの言葉も右から左だった


だけどね


先生と看護婦さんが退出した後の部屋で


タマさんと二人っきりの時


タマさんがベッドに座るあたしの手を握って


”ありがとう、つくし。
坊ちゃんのお子を抱く夢を叶えてくれて本当にありがとう”



涙ながらにそう言ってくれたのを聞いてね


なんだかスーッと心が落ち着いたというか


実感が湧いてきて


ジワジワと心の奥深い部分から


さざめくような声が聞こえてきた



沢山の笑顔に笑い声


賑やかな未来が頭の中に浮かんでは消え


また浮かぶ



あ〜あたしも相当、道明寺に毒されてるなぁ〜


なんて思いながらも


そんな未来も悪くない


なんて


思い始めちゃってるから不思議



ついこないだまで違う人と結婚を考えていたのに・・


あたしって結構、薄情？


なんて思ったりもするし


自分自身の意外な一面に驚いていたりもするけど


それより何よりも嬉しいと思っているあたしがいるのよね


あの予言めいた道明寺の言葉の全てを信じたわけじゃないけれど


道明寺の言葉の通り



あたしに似た可愛い女の子だったらいいなぁ〜



なんて



まだ性別も分からないうちから


そんな気の早い事を考えている自分にクスッと笑ってしまってから



大切な事を思い出した・・


あたし


三人産むのよね？



えっ？！



三人だけよね？





















応援ありがとうございます。