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薔薇

こんばんは~🎵
本日は『観察日記』です。
あきら君視点で時系列的には『薫風』の前日のお話しとなります。
それではどうぞ~❤







私信です。
匿名様
こんばんは~(^▽^)/
コメントありがとうございます❣(^^♪
返事が遅くなってごめんなさい。m(__)m
まだ最終的にどちらにするかは決めておりませんので
もしかしたらそっちの方向に行くかもです!🎵


☆様
こんばんは~🌙
コメントありがとうございます。❤
バッチリ椿さんのDNAも入っているので猪突猛進型ですが
そこはあきら君の年の功でなんとか収めていただきました!
だけど・・まだまだ分かりません・・💦































さっきまで降っていた雨が

庭に咲くバラの花を濡らしている



薔薇達からは匂い立つような豊潤な香りがしていて

それらは開け放たれている窓から室内に流れ込み

俺の鼻孔を刺激する


久しぶりの休日


だけど俺は忙しい


大学部に進学してから本格的に家業に関わり始め

平日は講義と家業の二足のわらじ


他の三人も同じような感じで

大学に居ても顔を合わせる事が少なくなってきた


そんな貴重な休日の昼下り


溜まりに溜まったレポートと向き合う



大学部では高等部ほど融通は効かなくて

最低限のレポートぐらいは提出しないと単位がヤバい


だから貴重な休日を削ってレポートと向き合っているのに・・



スマホの無粋な着信音が俺の邪魔をする


画面に表示されているのは猛獣の名前



もしも暇だとしても出たくない


ましてやレポートを書き上げてしまわなければいけない

このタイミングでの猛獣は絶対にムリだ!


経験上


どうせ大した用件じゃない




だから鳴り続けているスマホをスルーしているけれど


経験上


俺は知っている


あの猛獣はしつこい


こちらが相手にするまで


いつまでも吠え続けてくる




だからため息を一つ


ゆっくりと吐き出してから


今日は忙しいからムリだと断るつもりでスマホを手に取ったのに・・



“遅ぇーぞ!今すぐ来い!”



ブツ・・


き、切られた・・?



“もしもし?”さえも言えなかった・・


いや





一言も発してねぇぞ!



今すぐ来い!って・・


何処に?



って思っただろ?


俺も思った



用件以前の話し


でも一つだけ分かった事もある


経験上


猛獣は今、機嫌が悪い


それもかなり悪い


って事は・・



ハァ〜〜〜



肺が空っぽになるほどの大きな息の塊を吐き出し

レポートを諦める着替え出掛ける準備を始める



車に乗り込み司の屋敷へと向かう道中

これから俺の身に降りかかるであろう災難をシュミレーションする


司の不機嫌の理由はほぼ100%牧野絡み


牧野とケンカしたか


牧野のバイトが忙しく相手にしてもらえなかったか


の二択


で、案の定


屋敷に出向くと


呼び出した張の本人は不機嫌で


俺が部屋に入ってきた事に気が付いているのに


こちらを見るでもなく


不貞寝中


まぁ、慣れてるっちゃぁ慣れている


通常運転だから


奴を無視したまま


持ち込んだPCでレポートの続きを書いていると


同じように呼び出されたのであろう


総二郎と類がやってきた


類は相変わらず


いつもの何考えてんのか・・


何も考えてないのか・・


全く分からない


とにかくいつも一緒



部屋に入ってきて不貞寝中の司を気にする事も無く

一直線に定位置のソファーに横になると

半分しか開いてなかった目を完全に閉じてしまった



そして総二郎はちょっと不機嫌で

その不機嫌さを隠すこと無く俺の横に腰を降ろし

その長い足をテーブルの上に投げ出すように置いた



これでとりあえずいつものメンバーは揃ったけれど


呼び出した張本人は広いベッドのド真ん中うつ伏せで目を閉じたまま


なんだ?


このまったりとした時間は?


そろそろ日暮れの時間


少しずつ日暮れの時間が遅くなり

夏が近付いている事を教えてくれているが


貴重な休日にまったりするなら自室で一人がいい


四人が揃ってそろそろ一時間


窓の外もすっかり暗くなり


時計の短針が7時を指している



「司?いつまでそうしてるつもりなんだよ?
用が無いんなら帰るぞ!」



ベッドの司へと声を掛けるけれど奴からの反応は無し


「オイ!司?!
なんとか言えよ!」



反応しない司に少し語気を強めると

やっと面倒臭さそうに身体を起こし

ベッドの上で胡座をかき乱れた髪をかき上げながら

こちらに鋭い視線を送ってくる



「ごちゃごちゃうるせぇーぞ!」



やっと口を開いたかと思ったらこのセリフ・・


どう思う?


怒っていいよな?



「だったらちょっとぐらい説明しろよ!」


「うるせぇ!オイ!そろそろ行くぞ!」



不機嫌さだけを前面に押し出し


結局、なんの説明もないまま部屋から出て行ってしまった司を


ため息まじりに追いかける


そんなに嫌なら追いかけなきゃいいだろ!


って思ってるだろ?!


俺だって思ってるよ!


けどな!


追いかけなかったらどうなると思う?


分かるよな?


毎回、毎回


いい加減にしろよ!


と思ってはいるけれど


追いかけた場合と追いかけなかった場合を瞬時に天秤に掛け

追いかける方を選んでしまう


これはもう諦めの境地に達した


俺の悲しい性


総二郎と類も同じで


機嫌の悪い司に何を言っても無駄だって事は分かっているから


ため息を隠す事なく司の後を追ってリムジンに乗り込んだ



「どこ行くんだよ?
それぐらい教えろよな!?」



走り出したリムジンの車内


長い足をシートに投げ出すように座っている司に問いかけると

チッ!と短い舌打ちをしてから



「あいつの浮気現場だ!」


あいつ?


浮気現場?


頭の中には沢山の?マークが飛び交っている



「はぁ?浮気って牧野がか?」



「そーだよ!クソッ!あのバカ女!
俺様が何も気付いてねぇーと思ってんのか!?」



エキサイトしている司はとりあえず脇に置いといて


牧野が浮気?

するか?

四六時中

この嫉妬心の権化のような男に監視されてて浮気なんて出来るのか?


まぁ、こいつの場合の浮気のボーダーラインが

男と目が合っただとか

男に挨拶しただとか

ってレベルだから


牧野にとっては・・


というより


大抵の人間にとっては日常生活が浮気になってしまう


だから



「牧野が浮気って・・どうせバイト先に新しく男のバイトが入ったとかだろ?
で、その男と目が合ったとか話しをしたとかってレベルだろ?
合うだろ?目ぐらい・・話すだろ?仕事なんだから!」







すっげぇまともな事

言ってるよな?


それなのに

目の前に座っている猛獣が吠える



「そんなんじゃねぇーよ!
バイトぐらいで俺様は浮気なんて言わねぇーんだよ!」


いや!


言うだろ!?


言ってるだろ!?


お前の言う通りなら


いつも俺達が聞いてるアレはなんだ?


最近じゃ

類だけじゃなくて


俺や総二郎が話しかけただけですっげぇ眼力で睨んできてんじゃねぇーかよ!?


あれはなんだ?!



「牧野は同窓会に行ってるだけでしょ」



そんな中、声を発したのは類


今のが今日の第一声


でもって


目は開いてねぇ


最近の類はほとんど目が半開きか閉じたまま


なクセに牧野の行動は把握している


ある意味


司より怖い



司は一応、彼氏だから


彼女である牧野の行動を把握しているってのは理解出来る


ん?


理解出来る・・か?


まぁ


ここで引っ掛かっても前に進めないから

とりあえず出来るって事で!


でも類は彼氏じゃねぇ!


よな?


実は二股とかってんじゃねぇよな?


俺達が知らねぇだけとかってんじゃねぇよな?


それなのに

何故か牧野のスケジュールはばっちり把握している類


ある意味、類の方がたちが悪いんじゃねぇかと思ってしまう・・


まぁ、どっちにしろ少しだけ牧野に同情している

ほんのちょっとだけだけどな!


俺や総二郎なんかはよく牧野がいるおかげで

猛獣のお守りから解放されて助かるなんて言っているが

実際は司と牧野に何かあればこうして全面的に被害に合っているのだから

解放なんてされてはいない

だけど牧野の場合はどうだ?


それでなくても面倒臭ぇストーカー気質の男が彼氏で

その上、ソウルメイトという名の変人にロックオンされている

猛獣と王子様

字面だけを見れば後者が圧倒的に良いように思うだろうけれど・・

どっちもどっち・・


そんな二人を相手にしている牧野ってある意味、最強じゃねぇ?


俺がそんな事を考えているなんて夢にも思っていないであろう司は

類に対して吠えている



「なんでテメェがそのこと知ってんだよ!?」



「夕べ、電話で話した時に言ってたから」


「なに勝手にあいつに電話なんてしてんだよ!?」



まず思った事を言うぞ

類も類だが・・


すんだろ?

してもいいだろ?

電話ぐらい


ダチなんだから

なんか用があったんだろう

普段、俺達からの電話は簡単にスルーするけど

牧野だけには反応するようにプログラミングされてんだよ!



でもそれを言葉にして


声に出して言ったところで意味は無いのは分かっているから


わざわざそんな無駄な事はせず


余計な一言を発した類を睨んだだけ



類の牧野に対する行動や言動は・・

まぁ、色々と言いたい事はあるけれど


類には司以上に何を言っても無駄だと思うから言わない


心の中で密かに


俺達のいない所でやれよ!


って思うぐらいだ


でもって話しを元に戻すぞ!



「で?同窓会で牧野が浮気?
本当か?ただ同窓会に出席してるだけだろ?」



至極真っ当な質問だと思うが

司には通用しないのも分かっている

分かっていて敢えてしているところもある

何故かって?



それは俺が至極真っ当な人間だからだ!


面倒だからってなんでもかんでも司に同意していられない



「同窓会には野郎もいるんだぞ!」


「共学だったんだから当たり前だろ?」


「有り得ねぇだろ!?」


「何が?」



当然の疑問だよな?

至極真っ当な疑問だよな?

だけどその当然の至極真っ当な疑問が通じるような奴じゃないから



「俺様みたいな最上級な旦那がいるのに
男漁りなんて有り得ねぇだろ!?」


なんてセリフをなんの恥じらいも疑問も無く口にしやがる

突っ込みたい所は多々あるが

まず総二郎が呆れたように呟いた


「お前の同窓会のイメージってどうなってんだよ!?」


「プッ!それにまだ旦那じゃないしね」


続いて類


なんかもう色々と


疲れる・・



「お前の同窓会のイメージはまぁ・・とにかく!
同窓会に行ってるだけで浮気だとか男漁りだとか言われたら牧野だって立つ瀬がないだろ?」


ちょっとだけ同情しているから

とりあえずちょっとだけ牧野のフォローをしといてやる



「んでだよ!?同窓会だぞ!男がいんだぞ!
立派な浮気じゃねぇーかよ!
そんなとこに一人で行くなんてあわよくばとか思ってるからだろーが!」


「男がいたら浮気って・・どこまで短絡的なんだよ?」



「俺様が単純なバカみてぇーに言うな!
それにもしあいつにその気が無くても男の方は分かんねぇーだろーが!
それでなくても普段からボケェーっとしてやがるのに!
もし同窓会にお前らみてぇのがいて酒飲まされて
気がついたらホテルに連れ込まれてたりしたらどうすんだよ!?」


お前の中の俺等のイメージも大概だけど・・


俺等は相手を酔わせなきゃホテルに連れ込めねぇほど落ちぶれてねぇーんだよ!



「お前、いい加減にしとけよ!
類!笑ってんじゃねぇーよ!
俺等を酔わせなきゃ女をものに出来ねぇそこら辺の雑魚と一緒にすんな!
それに二人っきりとかって訳じゃねぇーんだし優紀ちゃんも一緒なんだろ?
だったらそんな心配必要ねぇーだろ?!
それに同窓会行ったぐらいじゃ浮気とは言わねぇんだよ!」



「クククッ、司も一緒に行きたかったんだ?」



「別に行きたかったわけじゃねぇーよ!
あいつがどうしても行くって聞かねぇからそれなら俺様も一緒に行くっつたら
付いてきたら別れるとか言いやがるから!クソッ!あのバカ女!
俺様を騙せるとでも思ってんのか?!」



別に騙してるわけじゃねぇだろ?


ただ牧野は純粋に同窓会を楽しみたかっただけだろ?


お前が居たら・・


考えるまでもなく簡単に予想出来る


現に前回の時はお前

牧野に気のあった男の首を外しただろ?

忘れたのかよ?!

そんな男を同窓会に連れて行くわけねぇーだろーが!


司だけじゃないが

俺達も同じような感じだけど

特殊な環境に生まれ育ち


俺達の交友関係ってやつは広いようで本当に狭い


世間一般の常識から隔絶されたような特殊な環境の中で

幼稚舎からずっと同じ顔触れで


この歳になってそれぞれが跡継ぎとしての道を歩き始めていて

世界は一気に広がりそれなりに知り合いってやつは増えた


だけどそれらはあくまでも仕事上の付き合いだけであって

本当の意味での交友関係とは違う


特に俺達の中でも段違いの家柄で尚且つたった一人の跡取り息子の司にとっては

ガキの頃から心を許せる人間なんて俺達ぐらいで


牧野と知り合ってから桜子や滋や優紀ちゃんと少しだけ増えてはいるが


幼稚舎からずっと一緒の同級生でさえ

顔も名前も知らない奴が大半の司にとっては

その世界は驚くほどに狭い


だから同窓会ってやつに・・


異性の同級生ってやつに・・


些か?


かなり?


の偏見を持っているようだが


それでも同窓会に行っただけで浮気ってのはなぁ・・


流石に引くし


あの牧野に限って浮気なんて・・

そんな器用な奴じゃねぇーだろ

それなのに嫉妬と束縛の権化のようなこの男は

今も牙を剥き出しずっと笑っている類に吠えている


くだらねぇ言い合いを聞きながらもリムジンは順調に夜の街を走り続け

やがてゆっくりと停まった



運転手が開けたドアから順番に出ると

目の前には何処にでもある駅前の雑居ビル


上から下まで様々なテナントの看板が

所狭しと掲げられているそのビルの一階にある居酒屋に

脇目も振らずに入って行く司の後を慌てて追い掛ける


店内に入ると司は声を掛けてきた店員を無視し

そのまま奥の座敷へと向かい


なんの躊躇も無く土足のまま座敷に上がり

向かい側に座っている男と楽しそうに話しをしている牧野の背後に立つと

男に対し鋭い眼光を向けると

無言のまま牧野を担ぎ上げ

俺達の突然の出現に唖然としている牧野の同級生達をそのままに

ついでに俺達もそのままにさっさと出て行ってしまった司


そして視界の端に捉えたのは


優紀ちゃんに手を指しだし立ち上がらせている総二郎


ハァ〜



「お騒がせして申し訳ない。
牧野と優紀ちゃんは連れて帰るので
お詫びとしてここの費用はこちらで済ませおくから楽しんで」


とだけ残して司の後を追った



店を出るとちょうど司が牧野をリムジンに放り込んだところで

リムジンの中からは牧野が何やら喚いている声が聞こえてきているが

それらには構わず司は俺達に軽く手を挙げただけで行ってしまった


そして総二郎も優紀ちゃんを送って行くからと

ちょうど通りがかったタクシーで行ってしまい


残されたのは俺と類


その類も


“散歩しながら帰る”


と行ってしまい


その背中を見送りながら


俺の口からこぼれ落ちたのは大きなため息


ハァ〜



なんだかよく分からない数時間だったが


とにかく疲れた・・



俺も通りがかったタクシーに乗り込み屋敷へと帰ると

すぐに自室のベッドへと倒れ込むと目を閉じる

鼻孔を擽る薔薇の香りと共に浮かんできたのは


レポートの続きは・・



明日でいいか









~Fin~
















『薔薇』・・初夏の季語

応援ありがとうございます。
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kirakira
Posted bykirakira

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