パパはおんぞうし？ 52

「家出？んなわけねぇだろ！？
だとしたら理由はなんだよ？！
俺は喧嘩してねぇーぞ！」



「だ、だよね・・」




「あぁ、それにまだ決まったわけじゃねぇんだから
とりあえずもう一回屋敷内を徹底的に探させろ！」



家出というワードにギョッとしたのと同時に頭に浮かんだのは

俺は喧嘩してねぇーぞ！ってこと


いや！


そもそも家出って決まったわけじゃねぇし


もし家出だとしてもその原因が俺だとも決まってねぇけど



とにかく思い当たる節はねぇ！


つくしにしても同じみたいで



家出？って言葉にした後、一瞬だけ俺を疑うような目で見たけれどつ

くしにしても心当たりが無かったのだろう

疑いの目はすぐに引っ込められた



とにかく思い当たる節はねぇし


まずは紬の姿を確認する事が先決だと

俺も屋敷内の捜索に加わろと部屋を出ようとした時に

後ろから蓮が俺のベルトを引っ張りながら声を掛けてきた




「とーちゃん！
おれ　つむが　どこいったか　しってるぞ！」



知ってんなら・・


早く言えよ！



とは思ったが


それを今、ここで蓮に言ったところでだから



「はぁ？どこだ？！
どこに行くって言ってた？！」



「つむは　がいこくって　とこに　いくって　いってたぞ！」


思いもしなかった返答をした蓮


「が、外国？どこだ？！」



「しらねぇ！ってか、がいこくって　なんだ？」



そこからかよ・・


意外な展開に慌てて蓮に詰め寄る俺に

キョトンとした表情を浮かべている蓮




「外国ってのは日本以外の国のことだ！
じいちゃんやばあちゃんがよく飛行機に乗って行ってるだろ？」



「あ〜あ、がいこくって　アメリカのことか！」



「アメリカだけじゃねぇけど。とにかく！
それ以外はなんて言ってた？」



蓮の目線に合わせるようにしゃがみ込みそう聞くと

蓮は少し思い出すような仕草を見せながら


「え〜っと　がいこくってところにはたくさん　おしろがあって・・」



「それから？」




「ん〜　あっ！おうじさまが　なんとかかんとか？
それいじょうは　わかんねぇ！
とーちゃん　おれ　はらへった！チョコパイ　たべていいか？」



そこまで言うと蓮はそれ以上は興味がねぇとばかりに

キッチンの方へと走って行ってしまった


「あっ！オイ！蓮！」



蓮の後ろ姿を見ながら考えていたことは・・



今、蓮の口から飛び出した数々のヒント

外国におしろ？これって城のことだよな・・

それにおうじさま？王子様・・

ここから導きだされたのは


類だ！



本格的に親父さんの跡を継ぐ事が視野に入った類は

この春からヨーロッパでの足場固めの為にパリに行く事になっている


花沢の拠点は一応、日本だか

親父さんはパリと東京を行ったり来たりの生活をしているから

類も親父さんの跡を継いだらその生活になるだろう


恐らく今回の渡仏では最低２年ほどはこちらに戻っては来られない


そして今日がその出発日


何時の便かは知らねぇけど・・


ハァ〜


あいつは類を追い掛けて行ったって事か？！


マジか・・？！



とりあえず類のスマホを鳴らしてみるが案の定、電源が切られていて繋がらない

ならばと秘書に類の秘書に連絡し類のスケジュールを確認するように指示を出し

内線で斎藤に紬は空港へ向かっている可能性があると伝え


俺は急いで着替え出掛ける準備をしていたところに

屋敷内の捜索に加わっていたつくしが息を切らせながら戻ってきた



「パパ！どういうこと？！」


車のキーを取ろうとしていた俺に掴みかかる勢いで迫ってきたつくし



「ちょっと落ち着けって！
蓮が昨日、紬が外国に行くって言ってたのを聞いてたんだよ！」



「そ、それで？！」



「城がどうとか王子様がどうとかも言ってたらしい」



「外国？で・・お城？で王子様？」



「あぁ、だからパリだ！」



「へっ！？パリ？・・って！あっ！もしかして、類！？
えっ！？どういうこと？つむは類と一緒にパリに行くつもりなの？！」



「恐らくそのつもりなんじゃねぇのか？！
ったく！あのバカ娘！」



「えっ！で、でもあの子・・パスポートとか持ってないわよね？」


パスポートとか・・


そもそもがそんな問題じゃねぇとは思うけれど・・



パスポートに関しては屋敷に戻ってすぐに

親父とお袋が連れ歩きやすいようにと

親父が勝手につくしや子供達の物を作っていて

つくしが纏めて預かり俺達のクローゼットに保管してあったはず


だからあることはある

まだ使ったことねぇけど


どうしてかって？


家族で海外旅行


行けないわけじゃない


だけど敢えて行かない


何故かって？


理由はほぼ１００％蓮だ！


屋敷内でさえ毎日のように何かしらやらかしているあいつを連れて


尚且、そこに蒼も連れて


家族六人で海外旅行なんて


俺の命が幾つあっても足りねぇと思わねぇか？


思うだろ？


だから家族で海外旅行は

蓮がもう少し落ち着いて

蒼がもう少し大きくなってから


手始めにハワイの別荘ぐらいからって考えていた



「パパ！大変！つむのパスポートが無い！」




クローゼットの中でパスポートを確認していたつくしが大声で叫んでいる



「ハァ〜・・ってことはとにかくあいつは空港に行ったってことだな・・」



「だね・・でもどうやって誰にも見つからずにお屋敷から出たんだろう？」



不思議がっているつくしも無理も無い


昔、つくしが使った事のある抜け道は

あの後、すぐに塞がれてしまっていて今では使えないはず



「とーちゃん！おれ　しってるぞ！」



チョコパイを食べてきたのだろう・・

口の周りがチョコ塗れの蓮が


「知ってるって抜け道をか？」



「おぅ！それを　つむに　おしえてやったぞ！」



余計なことを・・


「それどこだ？！」



「うらの　トラックとかが　はいってくる　とこの　すぐよこに　
だれにも　みつからずに　でられる　すきまがあるぞ！」


「マジか？！」



「おぅ！マジだぞ！
このまえ　おれが　みつけた　ひみつの　トンネルだぞ！」



ドヤ顔の蓮と驚いているつくし



とりあえず今の状況と蓮の言葉を組み合わせると

紬は類と一緒にパリに行くために空港に向かっている最中なのだろう



俺は心配そうな表情を浮かべているつくしに心配するなというように頭を一撫でしてから

ため息と共に空港に向うべく車のキーを手に取った




「とりあえず俺は空港に行ってみる。
今、斎藤らが駅の防犯カメラを調べてるはずだから
何か分かったら俺に連絡入れるよう言っておいてくれ」



「わ、分かった・・パパも運転気をつけてね！冷静にね！」



「分かってる！じゃあ、ちょっと行ってあのバカ娘とっ捕まえてくる！」



車まで付いてきたつくしは何度も


“パパ、冷静にね！”


“パパ、スピード出しすぎないでね！”



と繰り返していた











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