Family 44

ハァ～

やっと帰って来れた


あれから２週間


サッカーの試合の翌日

パパは子供達を英徳へと送って行き

そのままドイツへと出張に行ってしまい


２週間、あたしはずっとお屋敷で過ごしていた

体調はすこぶる良い！

悪阻はまだ思ったほど酷くはなくて食欲もあるし

お腹の赤ちゃん達も順調


世間の騒ぎも最初の一週間はまだメディアなんかで色々言われてたけど
それも藤城の会長さんが逮捕されちゃったり
政治家さんが突然引退しちゃったりで
次第にあたし達の事は何も言われなくなって
この一週間は至って平穏無事


心配していた健と翼の学校の事も
今まで通り通えているし…って

多分、パパが裏で何かしたんだろうって事は簡単に予想はつくし

何より英徳だから道明寺ってだけで
誰も何も言わないだろうしね…


そんなこんなでちょっとだけ退屈で順調な２週間が過ぎ


昨日、パパが予定通り帰国して
夜にやっとマンションへと帰ってきた


また、ここで家族四人＋赤ちゃん達との生活が始められる

いつもと同じ朝


朝５時半に起きて朝食の準備をしながら皆を起こしてながら
洗濯機を回しながら自分の準備もする

頭の中でシュミレーションしながら
動線を考え効率良く動いていく

あっ！でもね、少しだけ変化が！

三人共、最近は少しだけ寝起きが良くなってくれたのよね

今まで何回も起こしに行っていたのが一回で済むようになってくれて
あたしの朝の負担はそれだけでかなり軽減されている

今朝も一度で全員起床！


揃って朝食を食べて健と翼を送り出し
あたしも大急ぎで支度をしてパパと一緒にマンションを出た


あたしも今日から元の職場に復帰する


これはあたしの希望


パパの本心は復帰して欲しくなかったみたいだし
復帰するなら自分の目が届きやすい秘書課に移動してって考えてたみたいなんだけど

あたしがそれを拒否した

今まで通りって訳には行かないって事は分かっている

旦那様がパパだし

妊娠だってしてる

色々と弊害が出てくるって事も分かっているけれど

後数ヶ月で産休を取らなくちゃいけないし
主婦をしながら子育てしながら
妊娠中だって働いている女性は世間には沢山いる

そんな女性達とあたしは何も変わらない
だから産休に入るまでは今まで通りの部署で
ちゃんと働きたかった


パパはそんなあたしの考えを納得してくれたわけじゃないけど
理解しようと努めてくれて
今日から職場復帰が出来る


あっ！でもね…


今まで通り地下鉄で通うつもりだったあたしに
パパは自分と一緒にあの目立つリムジンに乗って行け！でちょっとした口論になって…


結果、リムジンで同伴出勤する事を約束させられてしまった


少し手前であたしだけ降ろしてって願いは聞き入れられず


デェ～ンと正面エントランス前に横付けされたリムジン


道明寺に勤める人間ならこの車に誰が乗っているのか

全員が知っている

半端ない注目度の中でまずパパがリムジンから降りると

なかなか踏ん切りの付かないあたしに向かって早く降りて来い！と

腕を中へと差し入れてくる


「さっさと降りて来い！」


簡単に言わないで欲しい…


「ほら！早くしろ！」


「ちょ、ちょっと！分かったから！引っ張らないでよ！」


腕を取られリムジンから強引に引き出され
沢山の視線が集中する中を構わずビル内へと歩を進めるパパ

一応、周囲を壁みたいなＳＰさん達に取り囲まれてるから
あたしの姿は上手く隠れられているんだろうけどね…

やっぱり慣れないものは慣れなくて
俯いたままパパに引っ張られるようにロビーを横切ってエレベーターへと乗り込んだ

乗り込んだエレベーターは一般の社員用の物

「ん？パパもこっちに乗るの？」

「あぁ、一応お前の部署に挨拶しといてやる！」


「ヘッ？エッ？！
ちょ、ちょっと！そんな事しなくていいから！
子供じゃないんだから一人で大丈夫だから！」

「遠慮すんな！俺がビシッと言ってやるからお前は黙ってついて来い！」


「い、いや！必要ないから！」


エレベーター内に響くあたしの大きな声に
五月蝿そうに顔をしかめながらも
少しだけ楽しそうなパパ


で…どうなったかって？


突然、現れた支社長にフロアー中がびっくりして固まっている中を
悠然と部長さんの前まで歩を進めたパパは
何を言い出すのかドキドキしているあたしを尻目に
デスク前に直立不動しちゃってる部長さんに向かって


“妻がまた今日から世話になる。
迷惑を掛けると思うがよろしく頼む”

だなんて…

思っていたよりまとも？


でもって…


あたしの為に部長さんに頭を下げてくれているパパにちょっと感動して

あたしも慌てて頭を下げた










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