Family 50

年が明けてパパの誕生日も過ぎ
あたしはもう本当に転がった方が早いって状態

少し動いただけでも息が苦しくなり
腰に手を当ててフゥ～って息をつく感じ


予定日まで後一週間ぐらいなんだけどね
もういつ産まれてもおかしくないって状況で
入院セットは玄関にスタンバイ済み

そんな３月半ばの夕方

子供達は来週からは春休みで
今年はあたしの出産を控えているって事もあって
春休み中は二人だけでＬＡの椿お姉さんの所でお世話になる予定になっている

今日は二人共、西門さんの所でお稽古だから
帰って来るまでに後一時間程ある

きっとお腹がすいているだろうから
帰ってきたらすぐに食べられるようにと夕食の支度をしていた時
感じたお腹の違和感

う～ん…過去に二度程経験した事のある違和感

まだ痛みって程じゃなくてあれ？ってぐらい

夕食の支度をしていた手を止め
ダイニングの椅子に座り違和感の正体を確めながら時計とにらめっこ


フゥ～と一息吐き出し


まだまだ大丈夫！


なんだけど

ここからは時間との勝負だから

まずもうほとんど出来上がりかけていた夕食を大急ぎで仕上げてしまい
ゆっくり食べている暇はないだろうから
お弁当箱に詰め病院であの子達がいつでも食べられるように準備してシャワーを浴びて
病院に行く準備を整えて１５分間隔

まだ時間はある

落ち着いて襲ってくる痛みをやり過ごしながら
まずパパに電話をした


オフィスにいたパパに産まれそうだから
もう少ししたら病院に行くねと伝えると珍しくちょっと慌てた声で
“おぉ！分かった！今すぐ帰る！”って切られちゃった…


別に病院集合でもいいのに
なんて思いながら次は西門さんに連絡


ちょうどお稽古が終わった所で
産まれそうだって伝えると西門さんも慌てて
二人を病院まで連れて来てくれると言ってくれた

フゥ～電話をしている合間にも間隔は段々と短くなってきている

パパが帰ってきたらすぐに出られるように
玄関先で靴も履いてスタンバイＯＫで待っていると
玄関ドアが開いてパパの姿が

パパは玄関先に座り込んでいたあたしを見てギョッとしたみたいだったけど
すぐに抱き起こされてリムジンで病院へ

病院には連絡してあったから準備は整っていて
後はこの子達が出て来てくれるのを待つだけ


本番はこれから

パパはあたしの手を握って一生懸命励ましてくれてるのは分かるんだけど
今のあたしははっきり言ってそれどころじゃあない！

励ます声も言葉もウザくて
痛みの合間にもあたしが吐いた言葉は
“パパ！ちょっと黙ってて！”だった

汗だくになりながら二人目の産声が聞けた時には
もう朝になっていた

一人目は女の子

産まれた瞬間からあっ！髪がパパ！ってすぐに分かっちゃうくらいパパにそっくりなクリクリ頭の可愛い女の子


そしてクリクリちゃんから遅れること３０分
次も女の子でこっちは対照的にあたしにそっくり
真っ黒ストレートな髪で目がパッチリの可愛い女の子


二人を見た西門さん達が”まんま司と牧野じゃねぇーか？！”って
ビックリしちゃうくらいパパ似とママ似の可愛い二人の女の子があたし達の家族になった

健と翼はおっかなびっくりだったけれど
パパに支えてもらいながらクリクリちゃんとパッチリちゃんを抱っこさせてもらっていて


病院に駆けつけてくれていたみんなは赤ちゃん達が眠っているにも関わらず
頬っぺをツンツンしたり指を掴んだりと落ち着かなくて

あ～あ、とうとう泣いちゃた

泣いたクリクリちゃんを慌てて抱き上げたパパ

でね

一人が泣くともう一人も泣くっていうのは健と翼で経験済み

クリクリちゃんの泣き声につられるようにパッチリちゃんも泣き出しちゃって
こっちは美作さんが抱き上げて癒してくれている

流石！双子ちゃんのお兄ちゃま！

抱っこが上手

そんな光景をベッドの上からしばらく眺めてから
疲れていたあたしはいつの間にか眠ってしまっていた



ファ～

よく寝た！って感じでパチッと目が覚めた時には外はすっかり暗くなっていて
病室にはパパしかいなくて

パパはクリクリちゃんのオムツを替えていた


「上手いじゃん！」

「おぉ、起きたか？
体はどうだ？辛くないか？」


「うん、大丈夫だけどお腹すいた！」

「食事持ってきてもらうか？」

「うん、食べたいんだけど赤ちゃん達の様子はどう？」


「問題ねぇーぞ！さっきからずっーと寝っぱなしで静かなもんだ！」

そう言いながらクリクリちゃんをあたしの所まで連れて来てくれて
自分はパッチリちゃんを抱っこしているパパ

「ねぇ？この子達の名前決めた？」


「あぁ、決めたぞ！」


我が家では子供達の名前を決めるのはパパ

どうしてかって？


ん？


どうしてだろう？


何故だかは分からないんだけど

健の時からパパが決めている


健の時は初めての事ばっかりで
パパもあたしもただ無事に健康で産まれてきてって願ってたから
パパが健康で健やかにって願って健

翼の時は産まれた翼の背中に羽が見えたんだって

背中に大きな羽を羽ばたかせながら産声を上げたから翼

今度はどんな名前にしたんだろう？

「なんて付けたの？」


「菫と桜だ！」


「菫ちゃんと桜ちゃん？
可愛いけどどうして？」

「菫も桜も春の花だろ。
小さくて可愛い花で毎年ちゃんと花を咲かせる。
菫は雑草だろ？だからお前に似てるこっちが菫だ。お前みたいに逞しく育つように。
それからそっちはこいつらを守ってくれた三条からもらった！
性格まで三条に似たらマズイけどあいつは頭のいい女だからな。どうだ？気に入ったか？」


「うん、気に入った！
ありがとうね、パパ！」


菫ちゃんに桜ちゃんかぁ…


クスッ…可愛い


これからよろしくね








応援ありがとうございます。