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チャッピー 3

こんばんは。

ペンギン部屋です。🎶

それではどうぞ~✴










お茶を淹れてくるとキッチンへ入って行った妻は

何故かでっけぇ容器に入ったアイスクリームを抱えて戻ってくると

PCの前に座る俺の横に腰を下ろした


「お前、なに喰ってんだよ?」


「うん?これはストロベリー味のアイス。」


「そんなでっけぇの抱えてたら冷めてぇーだろ?
下品な喰い方すんな!」



「こうやって独り占めして大っきなスプーンで食べるのが
子供の頃からの夢だったの!」


「貧乏くせぇー事言うな!」


「実際、貧乏だったのよ!
それより出来た?」


「ああ、こんなもんでいいだろ?」


「う~ん‥ねぇ?この番号ってどこの?」


「俺のオフィスのだよ!
お前、覚えてねぇーのかよ?!」


「覚えてない。
ねぇ、アイス食べる?」

食べる?って聞きながら俺の口に無理やりスプーン突っ込んでんじゃねぇーよ!


「どうして司のオフィスの番号書いてあるの?」

「何処の誰が見るか分かんねぇーもんにここの番号載せたら危ねぇーだろ!?」

「そっか‥司もいろいろ考えてるんだね。」



司も‥って言うな!

「これぐらい常識だ!」

「へぇ~司にも常識ってあったんだ?」


「お前はさっきから喧嘩売ってんのか?!」


「怒らない!怒らない!
はい、クールダウン!」


怒る俺を軽くかわしながら再びアイスクリームを
俺の口に放り込んでくる妻に怒る気力を削がれる


「これで保存しとくから後はお前がプリントアウトして適当に配って来い!」


「うん、ありがと。」


翌日から妻はプリントアウトしたチラシを持って近所を回っている

近所の店や動物病院、動物愛護センターなどなど

あらゆる場所にチラシを掲示してもらっているが

飼い主だと名乗り出てくる者はいない

そんな中で犬と妻の間に切実な問題が起きていた

犬が全くエサを食べようとしない

ミルクは飲むのに妻が用意していたドッグフードには一切口を付けない


妻曰く‥

涙を溜め少し潤んだ瞳でなにやら訴えかけてくるらしいのだが


幸い(?)妻にも俺様にも犬語は分からないから


こいつがエサを食べない理由はさっぱり見当がつかない

最初の二日ほどは獣医に相談しても

環境が変わってストレスを感じているかもしれないので

少し様子を見てくださいと言われただけで

妻もそれ程、深刻には考えていなかったが

3日目、4日目になると流石に心配になり

俺が仕事から戻ってもまだあの手この手で食べさせようと頑張っている

ペットショップで取り扱っている全てのドッグフードを取り寄せ
試してみたがダメだったと落ち込む妻

犬がメシ喰わねぇってだけで自らも食欲が湧かないようで

妻の全神経が犬に向かってしまっている

昔っから一つの事が気になると俺の存在なんて綺麗さっぱり忘れるのが
得意技の妻は今回もやっぱり俺の事など眼中になく

ずっとどうすれば犬にエサを食べさせることが出来るか独り言を言っている


「オイ!メシ喰ってる時ぐらい犬から離れろよ!」


「ん?なに?」

聞いてねぇーのかよ?!

「だから!今は犬から離れろって言ってんだよ!」


「あっ‥ごめんね‥」


「なんで泣くんだよ!?」


クソッ!まただよ!


「だってチャッピーはご飯食べてくれないし‥
私の事が嫌いなのかなって‥思って‥」


ハァ~面倒くせぇ~な!


「そんなわけねぇーだろ!
こいつはお前の事嫌ってなんてねぇーよ!」


「本当に?」


「ああ、もし嫌ってたらお前に付いてこねぇーだろうし
ミルクだって飲ねぇーだろ!?」


「そうだね‥」


「ああ、お前は踏まれても踏まれても伸びる雑草なんだろ?
まだ4日目なんだからこれぐらいで諦めるな!」


なんで俺はこんな事で真剣に妻を慰めてるんだって?

疑問も湧いてくるけど

とにかく妻の涙はヤバイ!


「そうだね‥私は雑草つくしなんだから頑張らないとね。
ありがとう、司!」


「もう泣くな。」

目尻に浮かぶ涙を指で拭ってやると笑顔になった妻

その妻の足元には部屋の隅で眠っていた犬がくぅ~んと小さく鳴きながら
まるで泣いている妻を慰めるように擦り寄ってきた











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kirakira
Posted bykirakira

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