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Day Light 1

こんばんは。

現在の私のPC環境が悪く、HPの方を思うように更新出来ていません。
こちらの方が簡単なので今日もこちらで!

メモ代わりの第二弾は中編ぐらいの長さになると思います。

タイトルはDayLightです。
CPはつかつくですが全体的に暗い感じで進んでいきます。
そして文中には死や女性にとってデリケートな文言が出てきます。
最終的にはHappyEndを目指しておりますが甘々ラブラブな展開ではありません。
それらを踏まえ大丈夫だと思われる方はどうぞ🎶









Day Light 1





あの日からもう二年の時が流れた


この二年間に幾度となく足を運んだこの地



俺だけではなくあきらも総二郎も


ほんの少しの時間を見つけては


まるでそうする事が当たり前のように


ふらりと散歩にでも出掛けるかのように飛行機に乗り海を越え



故郷から遠いこの地で眠り続ける彼女と


その彼女に寄り添い続ける親友の元へと足を運び続けていた



けれどもようやくそんな待ち続ける日々も今日で終わる


二年前のあの夜の事は今でも鮮烈に覚えている


仕事中に突然飛び込んできた

親友の絞り出すような助けを求める声に

後先考えず全てを放り出し飛行機に飛び乗った


『類・・・牧野が・・・助けてくれ・・・・・・』


尋常ではない司のその声に

なんと答えたのかは今でも思い出せないけど

すぐに総二郎と連絡を取り

共に司と牧野が住むNYへと旅立った


話しは三年前まで遡る・・・


三年前の夏の暑い日だった


アスファルトに立つ陽炎が

地下鉄の通気口から吹き上げられる風でユラユラと

揺らめくNYの街角で俺達は

十年ぶりに牧野と再会した


司が彼女の事だけ忘れ

二人が別々の人生を歩き始めてから十年もの月日が経ってしまっていた


十年・・・

言葉にして口に出してしまえば一瞬だけど


十代から二十代へと

人生の中で一番輝かしい時期に

互いの意志とは無関係に運命に翻弄され続けた人にとってのこの十年は

その一生を賭けても決して癒えぬような傷を残してしまった


運命の再会は劇的で・・・

それでいて呆気ないものだった


司の記憶はその二年程前に戻っていた


その事を知っていたのは俺達F3だけ


司は記憶を取り戻した事を俺達以外には内緒にしたままで

仕事の合間の僅かな時間を縫って

牧野の行方を探していた



今さら探して何になるのか?


たどり着いた現実に更に傷口を広げるだけじゃないのか?



幾度となく逡巡を繰り返したけども・・・


例え傷口を広げるだけの現実が横たわっていたとしても


知りたかった


どうしても彼女の今を知りたかった・・・



道明寺の力を使えば牧野の居場所を調べるのなんて簡単な事だけど

司はそれをせず自分の力だけで調べようとしていた



それには理由がある


体調を崩て以来屋敷で療養を続ける父親に代わり

道明寺財閥を取り仕切っている母親の楓が

未だに司の監視の手を緩めていなかったから


楓は司に牧野の記憶が無いのをいいことに

退院後すぐに渡米させ

厳重な監督下に置き道明寺財閥の跡取りとして鍛え上げていた


渡米した当初は俺達でさえ

まともに司と連絡が取れない状況が続いていた



大学に通いながら仕事を叩き込まれ

四六時中SPに監視され

息苦しい毎日を過ごす中で司の凶暴性は増し


時折ストレスを発散させるように誰かれ構わず暴力を振るい

大学の四年間だけで病院送りになったSPの数は20人を超えている

暴力を振るう相手がSPだけなら楓にとってもまだそれほど痛手ではなかったが

一度、婚約者だと言って連れて来られた女性にも暴力を振るい

鼻の骨を折る重傷を負わせ大変な騒ぎになった事もある



司の暴力性が増す一方で

監視の手を緩めようとしない母親


繰り返えされる悪循環のさなかに司の記憶が戻った


過ぎてしまった時間と自身の行いに

自責の念にかられながらも

日々募る牧野への憧憬と

未だ監視の手を緩めない楓との関係


楓は自分の人間性など重要視してはいない

彼女にとって重要なのは司が道明寺にとって有益となる人間かどうかだけ

ほんの少し気を緩めると

楓は自分の思い通りに一気に事を進めてくるだろう

その中には当然、政略結婚も入っている


もし記憶が戻った事が楓に知られてしまえば

今の楓なら牧野にも危害を加えかねないと考えた司は


記憶が戻っている事を俺達以外には知らせず

誰にも悟られないように慎重に行動していた



いくら鉄の女と言えども

今さら牧野に対しそこまで警戒心を持っているとは考え難いが

親子関係はそこまで冷え込み修復不可能な程こじれていた


俺達の内の誰かの名前を使えば

牧野を探し出す事なんて簡単なのだろうけど

それはせずに司の意志を尊重し自力での牧野探しに協力していた



二年掛かって分かった事は

牧野の家族の居場所と牧野は大学時代にシカゴに留学した事ぐらい


それも総二郎が牧野の友人の元に足しげく通い

やっと教えて貰った情報だった


幼い頃より慣れ親しんだ名前を使わずに

人一人を探し出す事も容易じゃない

この二年は自分達の無力さを感じる時間だった


誰もが

今さら探し出して何になる?

今さら牧野にとっては迷惑なだけじゃないのか?

そんな思いを幾度となく胸に抱きながら

定期的に時間を見つけてNYに情報を持ち寄り

まだ見えぬ彼女の影を探していた



次第に俺達の間には焦燥感と閉塞感が漂い始めていた

彼女を見つけたのはそんな時だった


その日も総二郎は西門流NY支部主催のお茶会に出席する為

あきらはボストンでの商談

俺はイタリアでの視察の帰りにNYに立ち寄っていた



待ち合わせは午後9時

花沢名義になっているアパートのペントハウス




人目につかない場所に集まるのは


表向きは静かな場所で誰にも邪魔されずに

親友達と飲みたいという理由だったけど本当は違う・・・



静かな場所ならメープルでもいいし

司がマンハッタンに所有しているアパートでも十分静かだ


だけど以前、司のアパートから盗聴器が見つかり

司のオフィスにも盗聴器が仕掛けられていた


人の出入りが厳重に制限されている場所に

盗聴器なんて仕掛けられる人物はそうそういない


恐らく楓の指示で仕掛けられた物なのだろう


楓の目を欺く為に未だ盗聴器はそのままにされている室内で

呑気に牧野の話しは出来ないので

四人だけで集まる時はいつもこの部屋に決めている


夕方にはイタリアから到着した俺を皮切りに

午後9時を前に総二郎と司も到着し

あきらを待っていた


男同士長い付き合いなので

それぞれが思い思いにあきらが到着するのを待っていたけれど

あの夜はいつも時間に正確なあきらが約束の時間を過ぎても現れなかった


律儀な奴だから遅れる時には必ず連絡があるのに

その時は誰の携帯も鳴る事は無く


あきらが現れたのは日付が変わる直前だった


壁際に置かれている時計の針は12時を指そうとしている


相変わらず連絡が無いままだったけれど

仕事でトラブルでも起きて連絡出来ない状況で

あきらはもう来ないのだろうと思い始めていた


帰りにNYに立ち寄る為イタリアでの視察がかなりハードだったので

そろそろベッドに移動しようかと腰を上げかけた所にあきらが到着した

俺達の前に立ったあきらの表情は少し疲れているみたいで

厳しい表情で額にはうっすらと汗も浮かんでいた


「よぉ!遅かったな!
今夜はもう来ないのかと思ってたぞ!」


「あぁ・・・連絡出来なくて悪かったな」


「そんなの構わねぇーよ!
お前もこっち来て飲めよ!やっと揃ったんだからまずは乾杯しようぜ!」


「あぁ・・・」


それぞれのグラスにワインが注がれ

総二郎が乾杯の音頭を取ろうとグラスを少し掲げた時

あきらがそれを制した


「ちょっと待ってくれ・・・
お前らに話さなきゃいけない事がある」

「なんかあったのか?」


「あぁ・・・実はここに来る途中で牧野に会ったんだ・・・」


思いがけないあきらの言葉に部屋に沈黙が下りてくる

突然の事に状況を上手く理解出来なくて司も総二郎も固まったまま

「どういう事?ちゃんと分かるように説明して」


「あぁ・・・」


あきらの説明よると


ボストンから到着しここに向かっている途中に

反対車線でタクシーを捕まえようとしていた牧野を見つけ

慌てて車をUターンさせ牧野が乗り込んだタクシーの後を追いかけたらしい


「なんですぐ連絡してこねぇーんだよ!?」


「牧野だって確証がなかったから・・・
あいつの事を見間違うわけないとは思ったけど
反対車線からだったし走る車の中からだったからちゃんと確認してからって思ったんだ」


「それでどうだったの?」


「牧野だった・・・
牧野だったけど一人じゃなかった」


「一緒に居たのは誰だ?!男なのか?!
声は掛けたのかよ?!」


「あぁ・・・一緒に居たのは男で二、三分だけど話しもした」


「回りくどい言い方してねぇーではっきり答えろよ!」


「司!落ち着け!」

興奮し始めた司を総二郎が制する


「突然だったから牧野も戸惑ってるみたいでちゃんと話しは出来なかった・・・
けどなんとか連絡先だけは聞き出してきた」


「じゃあさっさとその連絡先寄越せ!
それから牧野がタクシーを降りたのはどの辺だ?!」


思いがけない報せに興奮して司はあきらに詰め寄っている


「ちゃんと落ち着け!司!」

「あいつが見つかったのに落ち着いてられるか?!
いいからさっさと連絡先寄越せ!」


「ダメだ!今はまだダメだ!」

「なんでダメなんだよ?!」

「牧野は俺に会ってすっげえ動揺してたし
連絡先を聞い時だって最初は断られたんだ
だけど俺が食い下がったから渋々教えてくれたけど
牧野は俺達には会いたくないみたいだった・・・
だからまず俺が一人で話してくるから少し待ってくれ」


「会いたくないかどうかなんてそんなのあいつに直接聞いたわけじゃねぇーんだろ?!」


「あぁ・・・そうだけど・・・」


「だったら分からねぇーじゃねぇかよ!」


「だからそれを確かめる為に少し時間をくれって言ってるんだよ!」


「じゃあ今すぐ電話しろよ!
あいつに連絡して確かめろよ!」

「司!いいからちょっと落ち着けって!
あきらは時間をくれって言っただろ!?
今はまだ牧野がどういう状況なのか分からないし
今すぐったって真夜中なんだぞ!」


「そんな事分かってんだよ!
・・・けどやっと見つかったんぞ!?」


「分かってるよ!
けど今まで慎重にやってきたんだ軽はずみな行動して
それが台なしになったら元もこうもないだろ!?」


「司?あきらを信じてもう少しだけ待ってみようよ」


「・・・分かったよ
けどあいつの事で何か分かったらすぐに知らせろよ!?」

「あぁ、知らせる」


その夜はなんとか司を落ち着かせ

牧野の事はあきらに任せると話しはついた


やっと動き出した運命の歯車が

やがて俺達を底知れない絶望へと導き始める


~Akira~

どれだけ時間が経とうとも

どれだけ忘れたくとも

消えない記憶がある

あの夜の事は今でもはっきりと覚えている

シカゴでの商談を無事に終えニューアークに到着した

約束の時間は午後9時

二時間遅れで到着した飛行機のせいで約束の時間には間に合いそうにない


車内から少し遅れると連絡を入れようとした時

反対車線でちょうどタクシーを停めようとしているカップルが目に入った


男の方は白人で髪はブラウン

女の方は東洋人で髪は黒

最近では無意識の内に東洋系で黒髪の女に目がいくようになっていた


たいていは牧野には似ても似つかない容姿なのだが

あの夜、見かけた女性は記憶の中にある彼女そっくりだった


瞬時に牧野だと思った

だけど確証はなかった

電話しようとしていた事も忘れ

慌てて二人が乗り込んだタクシーの後を追う


前を行くタクシーはブルックリン橋を渡り

30分程走った住宅街で停まった


この辺りはマンハッタン島で働く人達が多く住む住宅街で交通の便も良く治安も良い


その住宅街の一角にあるアパートの前でタクシーを降りた二人は

そのまま寄り添いながら目の前のアパートへと入って行こうとしている


カップルの女性の方が牧野だと確信はある

ここが自宅なのかは分からないが

彼女に繋がる重要な手掛かりは手に入れた


だからこのまま声は掛けず黙って立ち去る事も出来る

声を掛けるべきか否か・・・

迷っていた


だけど結果、俺は彼女に声を掛けた


牧野が突然現れた俺にどんな反応をするのか知りたかったからだ


だから車から出てアパートのドアを開けようとしていた彼女に声を掛けた・・・


牧野・・・と呼び掛けた俺の声に

二人が同時に振り返った

「牧野?」


「・・・・・・・・・」


呼び掛けに振り返ったけれど何も答えない彼女


彼女の瞳は大きく見開かれ

そして外灯の明かりに反射して揺れていた

「牧野だよな?」


もう一度呼び掛けてみる


「・・・美作さん・・・?」


消え入るような声でやっと俺の名前を口にした彼女


この時の俺は正直、彼女に声を掛けたけれど

何を話せばいいのか分からず

次に続く言葉を探していた

「・・・どうして・・・?」


「仕事でこっちに来てたんだ。
さっき姿見かけて追い掛けたんだ」

「つけて来たって事・・・?」


「あぁ・・・悪いと思ったけど
どうしても牧野に会いたかったから
驚かせてごめんな」

正直に話した俺に微妙に視線を反らせた牧野

そんな彼女の様子を見て

俺は歓迎されざる突然の訪問者だって事が分かった

戸惑いを隠そうとしない彼女


突然現れ驚かせてしまったのは事実だし

やっと見つけた彼女を追い詰めるような事もしたくない


だからなんとか連絡先だけ聞き出して

この場から立ち去ろうと思った


「牧野、驚かせて悪かったな。
一度ゆっくりと話しがしたいから連絡先だけ教えてくれないか?」

「ごめんなさい、急いでるから・・・」


反らせれたままの視線で

口早にそう言ってアパートの中へ入ろうとする彼女に食い下がる


「牧野!ちょっと待ってくれ!」

思わず伸ばした手

後少しで彼女へと届きそうな瞬間

今まで黙って見守ってきた連れの男が

彼女を守るように俺と牧野の間に身体を入れてきた

「彼女は嫌がってるだろ!」

「分かってる無理強いするつもりは無いけど
彼女とは古い友人でずっと連絡を取りたいと思ってたんだ!
だから彼女と話しをさせてくれないか」

「ジャック、大丈夫だから」

俺の思いが伝わったのか・・・

牧野は連れの男の腕に軽く手を掛けるとジャックと呼ばれた男は

少しだけ身体を横へとずらしてくれた

「牧野・・・お前を困らせるつもりは無いんだ
だけどずっと探してたってのも本当なんだ
だから連絡先だけでも教えてくれないか?迷惑は掛けないから」


「・・・けど・・・私は・・・」

「頼む牧野!お前の気持ちは尊重するから!」

伸ばしたまま手が軽く牧野の左腕に触れた

牧野は沈黙したまま

迷い戸惑う彼女の心情をそのまま表しているかのように

視線が宙を漂っている


こんな彼女を俺は知らない

俺達の知る牧野は多少煮え切らない態度は見せていたけれど

それでも八方塞がりのあのどうしようも無い状況の中でも

歯を食いしばりしっかりと前を向き

生命力が溢れる少女だったのに・・・

この10年の間に彼女に一体何があったのだろうか?


外見はすっかり大人の女に変貌している彼女は

どんな10年を過ごしてきたのだろうか・・・?


30秒程、沈黙を続けていた彼女だったけれど

やがてバッグから名刺を一枚取り出した


「私の名刺。
携帯の番号書いてあるから」

「ありがとう。
今夜は突然驚かせて悪かったな。
近い内に連絡するよ」



「・・・分かった」

会話はそこで終わった

牧野は俺が名刺を受け取るとすぐに

逃げるように男と一緒にアパートの中へと入ってしまった


その後ろ姿を見送りしばらくその場からアパートを見上げていた

三階の真ん中の部屋に明かりが点ったのを確認して車へと戻った


すぐにその場から立ち去り

司達が待つ部屋へと向かってもよかったのだが

一緒に部屋へと入って行った男が気になり

車を反対車線に移動させ部屋の様子を伺っていた


時間にして30分程だったと思う

やがて男は一人でアパートから出て来てタクシーに乗り込み立ち去って行った


俺はそれを見届けやっと車を司達の待つ部屋へと向かわせた


待ち焦がれていた牧野との再会は呆気ないものだった

涙の再会を期待していたつもりは無いけれど

会えなかった10年という時間が

予想以上に俺達と牧野の間に暗い影を落としている事を実感させられた再会だった・・・


翌日、総二郎は朝一番の飛行機でロスへと向かい

類も昼前には東京へと帰って行った


俺も今夜の飛行機で東京へと帰らなければならない

その前にどうしても牧野にもう一度会っておきたかった


夕べの今朝で連絡するのも早過ぎるかと思ったけど

帰国する前に会っておきたい気持ちと

夕べの司の切羽詰まった表情が背中を押した


牧野は俺から連絡がある事を覚悟していたのだろう

電話の向こうから聞こえてくる声は

夕べとは違い幾分しっかりとした物だった


空港に向かう前の慌ただしい一時だけど

どうにか牧野と会う約束を取り付け

待ち合わせの場所へと向かった


待ち合わせたのはセントラル駅の構内にあるカフェ

仕事中に抜けて来たと言った牧野はグレーのパンツスタイルだった

会話の中で牧野はあまり自分の事を話したがらなかった

俺もあまり根掘り葉掘りしつこく聞き出す事はせず


みんな元気でそれぞれ忙しくしている事と

皆、牧野に会いたがっている事

そして一番重要な司の記憶が戻りずっと探していた事だけを正直に告げた

最後まで牧野の口から司の名前が出る事はなかったし

俺も敢えて司の事は深く話さなかった


理由はやっと会えた牧野を追い詰めたくなかったから

この10年で牧野に何があったのかは分からないけど

彼女が俺達を避けているのは明らかだったから

カフェで話しが出来たのは30分程

仕事があるからと席を立った牧野の背中を見送り

ゆっくりと席を立ち駅の建物から出ると

スッーと目の前に見慣れたリムジンが滑り込んで来た

リムジンのドアを自分で開け素早く乗り込む

中に居たのは司一人だった


司と向かい合わせるように座ると

リムジンは静かに走り出した

「空港まで送ってく」

「あぁ、頼む」


司には今日、駅で牧野に会う事は告げてあった

「牧野と話してきた」

「あぁ、さっき駅から出て来たあいつを見た」

「そうか」

「あいつ・・・綺麗になってたな・・・」

「そうだな・・・英徳の頃からはえらい違いだな・・・」


牧野の姿をその視界に捉えていたのに

声を掛ける事も追い掛ける事も無く見送った司


「司・・・よく我慢したな・・・」


「・・・思わず追い掛けそうになったけど
お前らの言う通りここで急いだら全てが台なしになるだろ・・・」

「そうだな・・・とりあえずあいつにはお前の記憶の事や
探してたって事は話しておいたけど返事はなかった。
それに自分の事もあんまり話したがらなかったから突っ込んで聞いてない」


「そうか・・・」


「なぁ、司?
やっと会えたんだから焦らずゆっくり行こうぜ!」


最後はなるべく明るくそう言った


牧野から聞き出せた事は

牧野は大学を卒業後NYに移り

それ以降ずっとこっちで働いていて独身だって事ぐらい

空港に着いてリムジンから降り際に司に

いつも使っているボイスレコーダーを手渡した


牧野がカフェに姿を現した時、

彼女には悪いと思ったが咄嗟にポケットに入れたままだった

ボイスレコーダーの録音ボタンを押していた

牧野の声を聞きたいだろうと思い司に渡してやった

俺は日本に帰ってからも時間を見つけて頻繁に牧野に連絡を取っていた


電話の回数を重ねる事に電話口の牧野の声から

緊張や戸惑いが少しづつ取れていくのが分かる

あれから2ヶ月

牧野との電話は10回を数えていた


10回目の電話の最後に

来週またそっちに行く事を告げた


金曜日、季節はすっかり秋へと変わり

落ち葉の絨毯が敷き詰められたセントラルパークで牧野と待ち合わせしていた


薄手のコートの裾を風に遊ばせながら待ち合わせ場所に現れた彼女の表情は

二ヶ月前に再会した頃に比べて明るくなっていた


今まで敢えて避けてきた司の話しも

今日なら大丈夫なように思えた


だから木のベンチに並んで座り

近くのコーヒーショップで買ったコーヒーを飲みながらの会話の途中に

司達と会ってみないかと持ち掛けてみた

牧野は両手で挟み込むようにして持っていたコーヒーカップを

しばらく無言で見つめた後

覚悟を決めたように顔を上げると少しだけ微笑んだ

「美作さん?ずっとありがとう」


「何が?」

「ずっと待ってくれてありがとう。
私もいつまでもごまかしてばっかりいられないもんね・・・」

「会ってくれるのか?」


「うん・・・だけど道明寺と会っても何も変わらないかもしれないけど・・・
みんなに心配かけたからちゃんと話さないとね・・・」


「司との事は俺が口を挟む問題じゃないけど
司が何と言おうとも俺は牧野の意志を尊重する
類や総二郎も同じ気持ちだと思う」

司は出来れば・・・

いや・・・

また牧野とよりを戻せると思っている


男と女の事はどうなるか先の事なんて分からないけど

牧野にその気が無いのはずっと彼女と話してきて感じていたし

何より10年という時間を経て

事情はあの頃より複雑になっているから

俺は牧野の気持ちを最優先に考えたいと思った

「大丈夫だ!司の事は俺達に任せとけよ!
暴走したら息の根止めてやるから!」

牧野がもう一度少しだけ微笑んだのを確認し

夜にまた迎えに来るからと告げて別れた








応援ありがとうございます。♪

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kirakira
Posted bykirakira

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