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ミッションインポッシブル 2

こんにちは。🎵

ミッションインポッシブルです。♥


それではどうぞ~✴









両親と共に降り立ったNYは快晴

気温も30℃を超えている

兄貴への大量のお土産が入っている両親のトランクと自分の荷物をカートに乗せ

タクシー乗り場を探す

兄貴は個展の準備で忙しく迎えに来られないので自力でホテルまで行かなければならない

初めての場所で心細いことこの上ないけれど

なんとかタクシーでホテルまでは辿り着けた

今回は両親を連れての旅行だから
奮発してメープルに部屋を取っている

ここだと日本語が通じるしマンハッタンの一等地にあり交通の便もいい

部屋に入り窓から眼下を見渡すと
目の前には広大なセントラルパークが広がっていて
その向こうには国連本部のビルも見えている

経済にカルチャーにとありとあらゆる物が混在する刺激的な街で
高級ホテルに宿泊しロケーションは最高


恋人と一緒だったら楽しめただろうけど
(恋人なんていないけど・・・)


現実は・・・


振り返ると早速トランクから兄貴へと土産を引っ張り出している両親

小さなため息を一つ

両親には気付かれないように零すと

なんとなく萎えそうになる気持ちを奮い立たせるように気合いを入れる

今日の予定は今夜、兄貴の個展が催されるギャラリーで
プレオープンのパーティーがあり
それに出席する事になっている

日本を経つ前に日頃、世話になっている人達を招いてのパーティーを開くので
出席して欲しいと言ってきていた


初めての海外旅行で初めてのパーティー

初物づくしで両親はすっかり舞い上がってしまっているけれど
どうしても心の底から楽しめない俺が居る

上手くは説明出来ないけれど
なんとなく嫌な予感がする

その予感の正体がいよいよ今夜のパーティーで姿を現す事となる

今になってあの時の事を思い返してみて

自分でもよくあの状況を無事に乗り越える事が出来たと思う

あれを乗り越える事が出来た俺は
この先、サラリーマンとしてどんな困難な状況でも
笑いながら突き進んでいけそうな気がする


スーパーサラリーマン・・・


我ながらだっさいネーミングに笑ってしまうけど


スーパーサラリーマンのミッションインポッシブルが始まる



NY-SOHO

多くのギャラリーが軒を連ねる一角

兄貴が個展を催す画廊は
かつて倉庫として使用されていた建物を
外観はそのままに現在は中を改装してギャラリーとして使っている

床は板張りで壁は真っ白なシンプルな造りで
高い天井からは無数の小さなライトがぶら下がっていた

通りに面した窓は天井まである大きな一枚ガラスで
外からでも展示作品がよく見えるようになっていて

日本人がイメージしがちな堅苦しい画廊のイメージは感じさせず
明るく開放的で散歩の途中でもぶらりと立ち寄り
誰でも気軽にアートに触れられるようになっている


ギャラリーに着いたのは午後7時を少し回った頃だった

自由の女神を間近で見学しブロードウェイの町並みをブラブラした後
チャイナタウンで軽く食事をしてからギャラリーへと向かった


午後8時から始まるパーティーより少し早めに到着し


すっかり準備の整ったギャラリーで

約10年ぶりに兄貴と再会した


久しぶりに会った兄貴は日に焼けヒゲを生やし
以前より痩せてはいたが元気そうだった

肩辺りまで伸びた髪を一つに纏め
ノーネクタイで黒のスーツ姿で俺達を出迎えてくれた

10年ぶりの再会の喜びもそこそこにギャラリーのオーナーを紹介され

パーティーが始まるまでの時間に

自分の作品を見てくれとギャラリーの中を案内し始めた


一つ一つ熱心に作品のコンセプトを説明してくれるけれど
正直、俺にはさっぱりだ

鉄を主な材料に使用している兄貴の作品は
俺には単なる鉄屑の固まりにしか見えない

作品一つ一つに希望だとか宇宙の誕生だとか大袈裟なタイトルが付けられているけれど

そんな事より俺は説明の間中ずっとこんなでっかい鉄の塊が売れるのか?って
余計な心配をしていた・・・

同じように説明されている親父とお袋は感心したように
いちいち相槌を打っているけれど絶対に理解してないと思う!

兄貴の作品を見て回っているといつの間にか招待客が集まり始めていた

パーティが始まってしばらくはシャンパングラスを片手に一人で
招待客の応対に追われている兄貴をぼんやりと眺めていた

アメリカ・・・特にNYという街を表現する時に
人種の坩堝と言う言葉を使う事が多いけれど
続々と集まってくる招待客の顔ぶれを見ていると
まさにその言葉がピッタリだった

ここはNYのギャラリーで意味不明な鉄の塊に囲まれ
ガキの頃から糸の切れたタコみたいにフラフラとしていた兄貴が
今や将来有望な新進気鋭のアーティストに変身している

今さらだけれど・・・

どうも現実味が湧かなくて夢の中にいるような感覚を覚え
焦点の定まらない視線を招待客の間を漂わせていた


そんな時だった・・・


ちょうどギャラリーに入って来たばかりのカップルが視界に入った

二人共アジア系のようだけど男の方は身長は180㎝を有に超えていて
大柄なアメリカ人の中に入っても見劣りしない

髪は特徴的なウェーブがかかっていて
顔は彫りが深くまるでモデルのような顔立ちをしている

女性の方は俺の居る位置からは男性の影に隠れていて顔は見えないけれど
軽く巻いている艶のある綺麗な黒髪がライトに反射してキラキラ光っている

ほんやりとしたままの頭で
なんとなく男性の方を見た事があると感じていた

男の俺から見ても無条件に格好いいと感じるほど整った顔立ちで
スーツの上からでも分かる引き締まった上半身に
何より羨ましいのはその脚の長さだ

完璧なその外見は人目を引き

彼等がギャラリーに入ってきた瞬間から
他の招待客も彼等に注目している

そんな様子にきっと有名なモデルか俳優なのだろうと思っていた


だから何処かで見た事があるんだと判断し

彼等から視線を外し
再び宙へと視線を漂わせていた

しばらくそんな風に過ごしていると

兄貴のスピーチが始まり本格的にパーティーが始まった

両親はさっきから積極的にパーティーに参加していて

他の招待客と身振り手振りで話しをしているけれど

そこまで積極的になれない俺のポジションは変化無し


壁の花じゃないけれど・・・

ほとんど兄貴の作品と一体化していたと思う

楽しくないわけじゃないし

英語が分からないわけでもないけれど
普段、俺が生きている世界とはあまりにも掛け離れていて
こんな場所でどんな風に振る舞えばいいのかが分からない

そんな俺の元へ兄貴が命の恩人を紹介したいから来いとやって来た


命の恩人?

その大袈裟な言葉に少し戸惑いながら後について行くと
兄貴は先程、俺が見ていた男性に後ろから声を掛けた












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kirakira
Posted bykirakira

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