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ミッションインポッシブル 4

こんにちは。🎵

ミッションインポッシブルです。♥

それではどうぞ~✴









ハリケーンが頭の中を通過して行ったみたいだった…

全部がぐちゃぐちゃで何がなんなのか分からない…

外国で自分の兄貴が個展を開いたってだけで
俺には十分、異常事態なのに
こんな所で牧野先輩に会って
おまけに兄貴と知り合いで
もう一つおまけに牧野先輩が既婚者でその相手があの道明寺氏だったなんて…

確かに現実に起こった事なんだけれど
ずっと夢を見ているような感じがしている

ダメだ俺…


頭の中を整理しようにも何から手をつけていいのか分からないし
それに今頃になって足が震えてきた

兄貴は道明寺さんが怒って帰ってしまった事を
気にしている様子は無く
すぐに違う人との会話を楽しんでいる…

その後、頭の整理も心の整理もつかないまま夜も更けてパーティーは盛り上がっていたけれど
俺は日付が変わる頃に両親を連れてホテルへと引き上げてきた


いい歳して盛り上がりまくっていた両親は
部屋に戻った途端に二人共スイッチが切れたようにベッドへと倒れ込み
5分もしない内に親父は大音量でイビキをかき始めた

俺はそんな両親を横目にシャワーを浴びて
備え付けの冷蔵庫からビールを一本取り出した


時計は午前1時を少し回っている

時折、15階の部屋までパトカーのサイレンが響いてくる

窓際に置かれているソファーに腰を下ろし眠らない街を見下ろしながらビールを飲む

ここはNY-マンハッタンのど真ん中の高級ホテル

バスローブ姿でビールを飲む俺

完璧なシチュエーションじゃねぇ?

背中に摩天楼を背負いバスローブ姿で手にはビール

これでBGMにジャズでも流れていれば言う事ないんだけど…

実際、部屋に鳴り響いているのは親父のイビキ…

それでも窓に写る自分の姿に少しだけ酔い始めた時

ガラステーブルの上に置いていたバイブにしたままだった携帯電話が

着信を告げるランプが点滅しテーブルの上を横滑りし始めた

画面に表示されているのは見覚えの無いナンバーだったけど

仕事関係だと思い出ると

耳に飛び込んで来た第一声は


”オイ!弟!迎えを寄越すから今すぐ来い!”


だった…

聞き覚えの無い声で
これ以上無いってぐらい高圧的な物言いに
瞬時に返事が出来ず黙ってしまった俺


何も答えない俺に電話の向こうの相手は
かなりイラついているのか…


再び飛び込んで来た声には高圧的な態度の中に怒気が含まれていた


”オイ!聞いてんのか?!”


「は、はい!…聞こえてますが…どちら様でしょうか…?」


”テメェ!舐めてんのか?!俺だ!道明寺司様だ!!”

「ひぇ!?」

ど、道明寺さん…?!!!

自分でもびっくりするぐらい間抜けな声が出てしまい誰にも見られていないのに
恥ずかしさに思わず赤面してしまう

だけど…

電話の向こうの道明寺さんは
俺のそんな恥ずかしさには気付く様子も気にする様子も無いまま
更に苛立ちを増幅させているようで

声に含まれる怒気が益々、強くなる


”オイ!分かったら、さっさと来い!!”


「は、は…」


慌てて返事を返したけれど…

たったニ文字の返事を返す前に切られてしまった電話…


一瞬だけ切れてしまった電話を握りしめたまま呆然としていたけれど
すぐに道明寺さんの言葉を思い出し

脱ぎ捨てたままだった服を拾い集めた

焦って足がズボンに引っ掛かり上手く履けないで四苦八苦していると
少し控え目なノックの音がした

なんとか足を通しボタンを閉めながらドアを開けると

ドアの前に立っていたのは
髪は七三分けでを皺一つ無い黒のスーツをパリッと着こなした初老の男性だった

男性は俺が姿を見せたのを確認すると

お辞儀の見本のように綺麗に身体を45度に傾け一礼した

「浦添様でございますか?」


「は、はい…」


「司様より申し付かってまいりました。
 ご案内いたしますのでご一緒願います。」


「は、はい…よろしくお願いします…」


慌ててスリッパから靴へと履き換え
まだ髪は生乾きのまま男性の後に続く


案内されたのは

エレベーターで一度ロビー階まで降りて
フロントの前を横切り
ロビーの一番奥…


一番人目に付きにくい場所にある重厚なオーク材の一枚板を使用したドアの前だった

その扉の横には目立たないように電子式のロックがついていて

男性は馴れた手つきで暗証番号を押すと
ガチャリと小さくロックが解除された音が鳴った


扉が開き後に続いて中に入ると

まず目に付いたのが天井に取り付けられている監視カメラ

真っすぐに俺へと向けられているカメラに

思わず軽くお辞儀をしてしまう…


そして廊下の一番奥に見えるのは一基だけのエレベーター

そのエレベーターの前にはドラマや映画の中でよく見かける

まさしくこれがボディーガードです!と言わんばかりに分かりやすくがたいのデカイ男が二人

こちらを睨んでいた

エレベーターの前までくると男性がボディーガードに何やら告げると…

(話している言葉が何だったのかは英語だったし小声で早口だったので聞き取れなかった…)

ボディーガードの一人がエレベーターのボタンを押した

このエレベーターにも電子式のロックがついていて
暗証番号とカードキーがないとエレベーターが動かない仕組みになっているようだ


ロックが解除されエレベーターのドアが開き

物凄い威圧感を発してくるボディーガードの横を小さくなりながら通り過ぎエレベーターへと乗り込んだ


てっきりここまで案内してくれた男性も一緒に乗り込むものだと思っていたのに
エレベーターに乗ったのは俺一人だけ


扉が閉まる前に男性は

”私はここまででございます。上に着きましたら別の者がご案内いたしますので”


と恭しく一礼した


声を発する間も無く閉まってしまった扉…


俺は一体どこへ向かっているんだ?


ホテルからは出ていないからホテル内のどこかだって事は分かるけれど


何重にも掛けられているガードにボディーガード…


厳重すぎるセキュリティの向こうには何が待っているのだろう?

俺が乗ったエレベーターは回数表示のボタンが2つしかなく
ボタンには何も書かれていない


扉が閉まってすぐボタンを押していないのに上昇し始めたエレベーター

中は重厚で落ち着いた雰囲気の作りで
壁には姿見がはめ込まれていて
革張りの小さなソファーが置かれている

不安感いっぱいの俺を乗せたエレベーターは音も立てずに高速で上昇を続けている


時間にして30秒程だろうか?

チーンと高い鐘の音が響いてエレベーターが停止した

扉が開くと先程と同じように髪を綺麗に整え黒のスーツをきっちりと着こなした


初老の男性と…


やっぱりここにも威圧感バッチリのボディーガードが二人…


「お待ちいたしておりました。ここからは私がご案内いたします」

「は、はぁ…よろしくお願いします」

扉が開いたらまた別の男性が待っていた事に驚いていたけれど
それよりも目の前に広がっている空間の豪華さに意識を奪われていた

長い廊下の向こうの方に大きなドアが見えている
全体的に木材が使われていて
落ち着いた雰囲気なんだけれど

壁には絵画が掛けられているし
床にはフカフカの絨毯が敷かれていて
足音が全く響かない

所々、高そうな花瓶なんかも置かれていて

まるでヨーロッパの古い宮殿にでも迷い込んだみたいだった




あまりにも豪華すぎて視線が定まらずキョロキョロしてしまう…

思い切って前を歩く案内の男性に声を掛けた


「あの…ここは一体何処なんでしょうか?」


「こちらは司様と奥様のプライベートスペースでございます。
 この奥で司様がお待ちでございます。」


「はぁ…」

俺からは返事ともため息ともつかない声が出ただけ…

ドアの前までたどり着くと男性が小さくノックしてから扉を開けた

今までだって十分すぎるほど豪華だったのに

扉の向こうは更に豪華で

もう俺みたいな庶民のボキャブラリでは表現しきれない空間が広がっていた…

ただ馬鹿みたいにポカンと口を開けたまま男性の後ろをついていくだけの俺
道明寺さんは100畳以上ある部屋の真ん中に置かれているソファーに
一人で座っていて部屋に牧野先輩の姿は見えない

男性に促されて道明寺さんの前のソファーに腰を下ろした俺

「遅ぇーんだよ!」

「す、すみません…」


夜中に訳も分からずいきなり呼び出されて
顔を見るなり怒鳴られて
条件反射でソファーから立ち上がり謝ってしまった俺…

情けない気もするけれど
目の前の道明寺さんには人を有無を言わせず従わせてしまうようなオーラがある

ギャラリーで会った時は他にも人が居たから
今、感じているような威圧感は感じなかった

威圧感ならさっきボディーガードからも感じていたけれど
ボディーガードから感じていたのは肉体的な物で

道明寺さんから感じるのはさっきのそれとは段違いに違い
得体の知れない物に飲み込まれるような感覚で
精神的に来る…

背中に嫌な汗が伝い
喉が異常に渇く

「つくしなら時差ボケで寝てる!なんか飲むか?」

「そ、そうですか…」

なんでも好きな物をそいつに言え
と道明寺さんに言われたけれど
この喉の渇きが少しでも解消されれば何でもよかったし
何より咄嗟に飲みたい物が出てこなくて


「それじゃあ…あの…道明寺さんと同じ物でお願いします」


道明寺さんの前にはワイングラスが置かれていて
中には少し赤ワインが残っていた


ワインの銘柄なんて分からないけど
きっと彼が飲むぐらいだから
あの一本は俺の一ヶ月分の給料では買えないぐらい高価な物なのだろう

案内してくれた男性は俺の前に赤ワインが入ったワイングラスを静かに置くと
一礼してそのまま部屋から出て行ってしまった









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kirakira
Posted bykirakira

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