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続・ミッションインポッシブル 7

こんばんは。🎵

スーパーサラリーマンシリーズのミッションインポッシブルの続編です。🎶

それではどうぞ~✴







頭の中が真っ白で呆然と立ち尽くす俺を尻目に

美作専務は牧野先輩のデスクの引き出しを開けると

中の私物を秘書が持っていた箱に投げ入れ始めた

その光景を俺だけじゃなく


営業部の全員が仕事の手を止め固唾を飲んで見守っている


そんな中、美作専務は気にする様子無く黙々と作業を続けていたが

デスクの片付けが一段落すると

おもむろに振り向き後ろで箱を抱えたままの秘書に


”牧野のロッカーの中にある物を全部出してきてくれ!”


と小さな鍵を秘書に投げ渡した


「あの・・・専務?牧野君は一体何をしたのでしょうか?」


恐る恐るそう声を掛けたのはさっき怒鳴られた部長だった

完全に腰が引けていて自分の息子程の年齢の上司にビビっているのがバレバレで

美作専務に一喝された影響かさっきよりも老けて見える・・・


「牧野は今日付けで退職した」


美作専務の言葉にザワザワとし始める


「ま、牧野君が退職なんて私は聞いておりませんが・・・牧野君が何か問題でも・・・」


ここで牧野先輩と一緒に働いていた誰もが知らない先輩のとんでもない秘密

もちろん部長も知らされていなかったみたいで

専務自らが資料を持ってきたり

牧野先輩のデスクを片付けたりと

その行動は傍目には奇異に映る

だから部長は牧野先輩が何かとんでもないを問題を起こして

クビになったと考えたのだろう


けどその前に俺もクビだとか辞表を書けとか散々言われてたじゃねぇかよ!

俺の時はスルーしたくせに!


「あいつがここに居る事自体、俺にとっては大問題なんだよ!」


「も、申し訳ございません!部下の監督不行き届きです!・・・
 が私は何も存じておりませんでして・・・
 あ!いえ!決して私に責任が無いとかそのような事は申しておりませんですが・・・」



勝手に早合点して一人汗だくで焦ってしどろもどろになりながら

必死で自己弁護を始めている部長

俺だけじゃなく周りの冷たい視線が目に入らないのだろうか・・・?


「牧野は問題を起こしたわけじゃねぇしあんたには関係ない!ちょっと黙ってろ!」


自己弁護ばかり続ける部長をそう一喝して黙らせた美作専務は

仕事の手を止め事の推移を見守っている営業部を見渡し

髪をかきあげながら大きなため息を一つ零すと


「まぁそうは言っても黙っててもすぐに分かる事だからな・・・」


独り言のように呟いて言葉を切った美作専務は

もう一度と営業部の面々を見回してから言葉を続けた

「あいつは元々、俺のダチで牧野ってのは旧姓で今は道明寺つくしだ!」

美作専務の告白に今までザワザワしていた部内は

シーンと水を打ったように静まり返っていて

みんな息をするのも忘れたかのように誰一人として声も発しない・・・

そんな中で美作専務の携帯が鳴った

着信相手を知らせる画面を見てからゆっくりと電話に出た美作専務は

電話を出た途端に耳に飛び込んできた大声に

少し携帯を離し顔をしかめた・・・


「そんなでっかい声出さなくても聞こえてるよ!」


『▲○×□△・・・!』


携帯から漏れ聞こえてくるのは牧野先輩の怒鳴り声・・・

何を言っているのか分からないけれど

とにかく凄く興奮して怒っているのは分かる・・・


「そんな事言ったってお前はもうこっちには帰って来られないだろ!?
 それに無断欠勤だからお前はクビにした!」


『帰る△×・・・勝手に決めな○◇■▽!!』


「帰ってくんな!」


「おぉ!司か?
 あぁ、分かった」


携帯から漏れ聞こえてくる声が止んで

電話の相手は道明寺さんに変わったようだ


「オイ!弟!司がお前に代われってよ!」

「お、俺ですか?!」

「そうだよ!さっさと出ろ!」

「は、はい!」


美作専務に差し出された携帯を受け取り

恐る恐る電話に出てみると

耳に飛び込んできた道明寺さんは怒ってるんだけど

どことなく楽しそうな弾んだ声だった・・・


『オイ!弟!』


すっかり弟で定着してしまっている俺・・・


「は、はい!浦添です。
 せ、先日はありがとうございました!・・・
 それから・・・あの・・・申し訳ありません!」

思わず携帯を握ったままその場で頭を下げた俺


『その事はもうどうでもいい!』


てっきり酔っ払って牧野先輩に全部話してしまった事を

怒鳴られるのを覚悟していたのに

思いがけない道明寺さんの言葉に

気付かないうちに入っていた肩の力が少しだけ抜けホッとしたけれど

それも一瞬で続けて発せられた言葉に

この絶体絶命な状況が何一つ改善されたわけじゃないって事が証明された


『お前、クビだからな!』


やっぱり・・・


「あ、あの・・・クビだけはなんとかなりませんでしょうか・・・?」


無駄だとは分かっているけれど

このまま黙ってクビになるのはどうしても納得出来ない

向こうは俺が納得しようがしまいが関係ないだろうけど

これは俺の気持ちの問題で

僅かばかりの抵抗かもしれないけれど

出来る限りの事はしなきゃと思った・・・


そう思ったから勇気を振り絞ったのに

あっさりと一言で終わってしまった・・・


『ならねぇ!』


端的な一言で終了


いよいよ思考は停止し頭の中は真っ白で何も言えない俺・・・


『お前はクビなんだからさっさとこっちにつくしの物持って来い!』


クビなのは分かりましたからそう何度もクビだって言わないで下さい・・・

あれ?!その後、何て言ったんだ?!

牧野先輩の物をこっちに持って来い!って言ったよな?

こっちってどっちだ???

なんてボケてる場合じゃない!

こっちってNYか?


「あの・・・こっちってNYですか?」


『それ以外にどこがあるんだよ?!さっさと持って来い!』


「・・・ハハハ、そうですよね・・・無いですよね・・・」

思わず出てしまった乾いた笑い・・・


『後はあきらに聞け!』

その一言を最後に電話は一方的に切れてしまった


通話を終え美作専務に携帯を返すと同時に


俺の空いた両手には牧野先輩のデスクとロッカーにあった私物が入った箱が置かれ


そして美作専務はスーツの内ポケットから横長の封筒を取り出し


俺が抱えている箱の上にポンと放り投げた


「NYまでの航空券だ!
 片道だけだから奮発してファーストにしといてやったぞ!」


お気遣いありがとうございます・・・

なんて言うわけないだろ!

片道って何だよ?

帰りは自腹で帰って来い!ってか?!

たった今、失業したんだぞ俺は!


「ファーストじゃ不服なのか?
 じゃあ司に言って自家用飛ばしてやろうか?」


ファーストが不服なんじゃないし自家用機なんて乗りたくありません!


「いえ!自家用機なんて結構です!
 ファーストで十分なんですけど・・・」


「じゃあ何が不服なんだよ?!」


何が不服って・・・

この状況全部がですよ!

もうどうせクビになったんだから

不満を全部ぶちまけてもいいと思うんだけど

どうしても開き直りきれない小心者の俺・・・


「いえ・・・その・・・どうせなら片道だけじゃなくて
 帰りのチケットもいただけると有り難いと言いますか・・・
 俺、失業しちゃったんで・・・」


俺の言葉に美作専務の右の眉毛だけが少し上がった・・・

「あっ!いえ!いいんです!帰りは自分でなんとかします!」


美作専務の片眉が少し上がっただけで

すぐに前言を翻してしまう情けないぞ俺・・・!


「お前、いい度胸してんな?!
 牧野が気にかけるわけだ!」

前髪をかき揚げながらそう言った美作専務は

”まぁ、生きて無事に帰って来られたらまた雇ってやるから!
 とにかくそれ持って急げ!”


そう言って俺の左肩を掴み前へと促した・・・

いや・・・そうじゃなくて!

ちょ、ちょっと待って下さい!

俺まだ行くとも何とか言ってないというか・・・

心の準備が何も・・・

軽く促されただけなのに

俺の足はさしたる抵抗をするわけでもなく

あっさりと前へ進んでしまう・・・

この状況を助けてくれる同僚は皆無で

さっき泣きついてきた後輩には眼を逸らされるし

部長は部下がクビになっているのに

全く頼りになりそうにないし・・・

名残惜し気に振り返るけど

眼を合わせてくれる奴は無く

美作専務の秘書に”空港までお送りいたします”

なんて言われ万事休す!

大人しく地獄へのご送船へと乗り込んでしまった俺・・・

俺の未来はどっちだ?!







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kirakira
Posted bykirakira

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