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螺旋 8

こんばんは🌙😃❗

本日も久々の『螺旋』です。🎶

こちらは少しだけ前に進んでるかしら?♥


それではどうぞ~✴



私信です
☆様
こんばんは😃🌃
コメントありがとうございます。😆
二度目のつくしちゃんはどうやらかなり戸惑っているようです❗(笑)









病院に着いたのが10時過ぎ

駐車場に車を止めて入り口へと歩き始めてすぐに異様な雰囲気に気付いた

入り口までは数十メートルの距離‥

ゲッ!

ここからでもはっきりと判る

もの凄い怒りのオーラを身に纏い殺気を帯びた鋭い視線をこちらに向けている男が一人

病院の入り口で腕組みをしたまま仁王立ちしている

思わず足が止まるけど

頭の中は妙に冷静で

“あんな所に立ってたら迷惑でしょ!”

なんて考えていた

ゆっくりと近づくにつれて回れ右をしたくなるけど
向こうも私に気付いているから後戻りは出来ない

やがて目の前までくると

「遅せぇ!何やってたんだよ!?」

朝一番の怒鳴り声

「これでも大急ぎで来たのよ!」

「うそつけ!のんびり歩いて来てたじゃねぇーかよ!」


私が来るのが遅いって怒ってるのは分かるんだけどね‥

第一声がこれじゃあ先が思いやられる


第一そんなとこに立ってたら迷惑なのよ!


色んな感情が浮かんでくるんだけど
昨日のお姉さんの言葉を思い出し
全て振り払いゆっくりと穏やかに彼の腕に手を掛けた


「もう退院して大丈夫なの?」


「あぁ、大丈夫だ!
それよかお前、一人で来たのかよ?」

私が一人で来た事に落胆している‥


「う、うん、莉緒はバイオリンのレッスンに行っちゃったし、
駿は約束があったみたいで朝早くから出かけちゃったの。
あっ!でも二人ともお父さんによろしくって言ってたわよ。」


「そ、そうか!なら、いい!
それよりも行くぞ!」



ん?ちょっと機嫌が良くなったの?

クスッ‥意外と単純なのかも?


「行くぞ!早く来い!」


「あっ!うん!
ちょっと待って!」

先を行きかけている彼の後を慌てて追い掛ける



でね‥


車で連れて来られたのは‥


LAに住んで15年以上経つけれど
初めて来た‥


サンセット大通り沿いにある特徴的な門をくぐり抜けると広がる別世界


LAだけじゃなくてアメリカ屈指の超が5個ぐらい付いちゃう高級住宅地ベル・エア

住宅の値段がアメリカの中でも比較的高額なLAにあって
その中でもここに建つ住宅はずば抜けて高額で
一軒の値段が何億とかってレベルじゃないのよ!
普通に何十億ってレベルで!
中には100億を超えるのもある
当然、ここに居を構える人達って桁外れのお金持ちばかり
アーティストや俳優さんなんかが多い


ベル・エア‥聞いたことはあるけど
普通に暮らしていたら一生縁の無い場所


私達の乗るリムジンはあっさりとゲートをくぐり

曲がりくねった山道を進んでいく

一軒の家?の広さが考えられないくらい広大だから
建物が見えない‥


やがてリムジンは一際大きな黒い鉄製のゲートの前で一旦停止した

音も無く開いたゲート

ゆっくりとその中に吸い込まれるように進むリムジン


ゆっくりと進むリムジンの車窓に流れる風景に目を奪われていると
やっと建物が見えてきた


「ちょ、ちょっと!な、なにここ?」

リムジンの窓から覗き見た建物は
お屋敷?って言うよりも宮殿?みたいで
思わず腰が引ける‥

「俺達の新しい家だ。」

そんなあっさりと‥


い、家?


これが?


宮殿でしょ?


こ、こんな所に住むの?


ってか!


これが個人の邸宅なの?!


犬の散歩終わりのジーンズとスニーカーでフラっと来るような場所じゃない!


「ちょ、ちょっと!待って!」


リムジンから降りて宮殿のような建物を唖然と眺めていた私とは対照的に
彼は当たり前のように歩を進め中へと入っていく


「ん?どうした?早く来い!」


どうした?って聞く?

それ聞いちゃう?


「ここが家って?家‥なの?
もしかして買った?!」


「あぁ、それがどうかしたか?」


どうかしたか?ですって?!


「ほら!行くぞ!」


私の戸惑いなんて無視したまま
繋いだ手を引き当たり前のように宮殿の中に入って行く彼


私は引っ張られているから歩を進めているだけで
瞬きするのも忘れている


中に入って最初に目に飛び込んできた物は‥

物じゃなくて人物だった


「お待ちいたしておりました。
私、道明寺家で執事を務めさせていただいております、武山と申します。
今後、こちらのお屋敷にて皆様方のお世話をさせていただく事になりましたので
よろしくお願いいたします。」

恭しく挨拶されて思わず仰け反りそうになるのをなんとか堪える

「つ、つくしです。
こちらこそよろしくお願いします。」



広いエントランスホール


壁に沿うように螺旋状に階段が取り付けられていて

手すりにも綺麗な彫刻が施されている


全体的に白を基調としていて

床に敷き詰められている大理石にも
金で模様が埋め込まれている


正面には大きな一枚ガラスの扉があり
その向こうには青々とした芝生が広がっている


まずこっちだ!と彼に手を引かれて連れて行かれた部屋は
ダイニングみたいで10人程が座れるテーブルが置かれていて

その奥にはキッチンみたいなんだけどね‥


キッチンっていうより‥


厨房って感じだし


何より執事の武山さんから紹介されたのはメイド頭の森さん以下

7名のメイドさんと料理長の清水さん以下

和食に中華にフレンチにイタリアンにとそれぞれ担当の料理人さんに

挙げ句の果てにパティシエさんに和菓子の職人さんにと至れり尽くせり

ズラリと並んで挨拶をされて‥


彼は慣れているだろうけど私はすべてが初体験で


挨拶を返すので精一杯

その後も庭師さんだとか警備担当者さんだとか
色々と紹介されたんだけど‥


ダメ‥


全部は覚えきれない‥


とりあえず自己紹介が終わって次は部屋を案内してやる!なんて
2階へと連れて来られたんだけどね‥


俺達の部屋だと言って案内された部屋はとにかく凄かった

広さは勿論なんだけど一枚ガラスの窓の向こうには
一面青々とした芝生の庭が広がっていて
その向こうにはLAの街並みが見下ろすように広がっていた

室内に置かれている調度品の数は少ないけれど
どれもセンスが良く一流の物だって事が分かるし
何より部屋続きになっているウォークインクローゼットには
彼だけではなく私の洋服やらバッグに靴にアクセサリーまで
何から何まで全て揃えられていた

平地の少ない高台にある住宅地にあって一際広大な敷地面積を誇り
LAの街を見渡せる場所に建つお屋敷


ベル・エアにあっても恐らくトップクラスの物件だと思うんだけど

バルコニーから見下ろした庭には
どこか不釣り合いなブランコやジャングルジムなど
小さな子供が喜びそうな遊具が置かれている

ここって一体いつ買ったの?


「ねぇ?」


「ん?」


ガラス戸を開けバルコニーからLAの街並みを眺めていた私を
ベッドの端に腰を下ろし見ている彼の方へと振り返る


「ここっていつから準備してたの?」


「‥‥」


何も答えようとしない彼の横に移動して
私もベッドに腰を下ろしす

「ねぇ?」


「いつだっていいだろ!」


「私、怒ってるんじゃないの。
ただこれだけの物を準備するのって
いくらあなたでも昨日今日じゃ無理でしょ?
だから‥もしかしてずっと以前からって思ったんだけど‥違った?」


「‥離婚してすぐだ」

小さな声で告げられた真実


「それって‥」


「あぁ、あの時だ‥
お前達を迎えに行った時‥
俺はお前は絶対に俺の所に戻ってきてくれるって‥
子供もいるしお前はまた俺を選んでくれるって思い込んでた‥」


「ごめんね‥」

初めて知ったあの時の彼の想い


「謝んな‥俺が悪いんだから‥
俺の考えが甘かっただけなんだから‥」


小さな声で吐き出された彼の想い


NYが拠点なのにわざわざここにこんなにも豪華なお屋敷を準備したって事は
彼なりに私達の事を色々考えてくれていた証なのだろう

なのにあの時、私はそんな彼の想いなど何一つ知らず背を向けてしまった

過去は変えられないけれど
今ならまだ間に合うはず

何度もすれ違ってしまったけれど
とりあえずなんて事じゃなくて
ちゃんと覚悟を決めて彼と向き合うと思った


「ねぇ?ジャングルジムやブランコじゃなくて
バスケットゴールを置いた方が駿は喜ぶと思うわよ。
それから莉緒が時間に関係無くバイオリンの練習が出来る部屋が欲しいって言ってたけど‥」


「好きなとこで練習すればいいだろ?
それとも、音響のちゃんとした部屋がいいのか?」


確かにここだとバイオリンの練習音が近所迷惑になるなんて事はないだろう
そう思って音響のちゃんとした部屋なんて言い出した彼に慌てて首を横に振った

「特別に作らなくても大丈夫だと思う!
あの子も近所迷惑にさえならなければいいんだと思うし!」


実際、今の家だと住宅街のど真ん中だったから
練習音にはかなり気を使っていた


だけどここはね‥


お隣さんなんて見えないくらいだし


これだけ広いお屋敷だからきっと私達でさえ
気にならないと思う


「後はなんか欲しいもんとかあるか?」


「ん?今すぐには思い付かないけど‥」


二人で寝室から庭が見渡せるリビングに移動しながらの会話


「あっ!とりあえず叔母には状況を説明してあるから仕事は大丈夫なんだけど‥
すぐに代わりの人が見つからなくて‥どうしようかと思って」


「それなら大丈夫だ!
代わりの人間は手配しといた!」


「ん?あなた‥叔母と話したの?」


「あぁ、夕べ‥電話で少しだけだけどな‥ダメだったか?」


不安気な瞳を向けてくる彼

また先回りして‥

勝手な事しないで‥


きっと若い頃の私ならそう言って彼を責めただろう‥

だけど今はしない

このバカみたいに大きなお屋敷にしても
私の仕事にしても

これは彼の不安の裏返しなのかもしれないと思ったから

離婚して私を迎え入れる為に準備されていたお屋敷


本来であれば私が彼を拒絶した時点で用済みだったはず

処分されていてもおかしくなかったこのお屋敷を
彼はずっと維持していた

このお屋敷を維持管理していくだけでも
年間相当な額が必要だったはずなのに

綺麗に手入れされている庭が

彼がここを大切にしてきたって事が伺える

その場所にやっと一緒に過ごせるようなったのだから
彼が私の仕事の事で先走ってしまう気持ちも理解出来る

だから今回だけは大目に見てあげよう


「ん~大丈夫‥だけど、次からは家族なんだから
ちゃんと話し合って決めない?」


「あぁ、分かった‥家族なんだよな?俺達‥」


「そう!だから勝手に決めないでね。」



私の仕事は‥

今は大した仕事はしていない

以前は叔母が経営しているレストランの一つを任されていたけれど
今はLAにある5つの店舗の統括マネージャーをしている

叔母が経営しているレストランはLAに5店舗
ラスベガスに3店舗
そしてサンフランシスコにも3店舗ある


各店舗にはそれぞれの店舗を任されているマネージャーが居て
従業員の管理や日々の営業を管理している

私はLA市内にある5店舗の売り上げの管理や問題などがあれば対処していて
実際に店舗に出向くのは週に一度程度だから
売り上げの管理さえしっかりしていれば
わざわざ出向かなくても特には問題はない


彼の話しによれば昨夜、叔母と電話で話し
私とやり直したい事や休暇を取った経緯などを話したらしい

「ちゃんと信頼出来る奴を送っといたから心配すんな!」


「心配はしてないけど‥信頼出来る人って私も知ってる人?」


「あぁ、西田を送っといた!」


「へっ?!西田さんってあんたの秘書さんの?」


「あぁ、これ以上信頼出来る奴はいねぇだろ!?」


「いや‥信頼って意味ではそうだけど‥
わざわざ集金の為に西田さんをって‥
人材の無駄遣いじゃない?
ってか!あんたがお休みなんだから西田さんもそうなんじゃないの?」


「そんな訳ねぇーだろ!
休みは俺だけだ!西田はLA市内に家があるから
毎日、そこからここへ通う事になってるから心配すんな!」


心配すんな!なんて言い切っちゃってるけど
私としてはたかだかレストランの売り上げ管理に‥

って‥

売り上げ管理も大切な仕事なんだけどね

あのスーパー秘書さんにって‥

なんだか恐れ多いというか恐縮しちゃうじゃない!


そんな私の考えが顔に出ていたのだろうか
隣に座る彼が私を抱き寄せた


「なぁ‥ずっととは言わねぇから‥
俺と居る時は俺の事だけを考えてくれよ‥
他の男の事は考えんな!」


だなんて‥


「クスッ‥ワガママなんだから‥」


「あぁ‥俺はワガママな男なんだ‥
だから何一つ諦められないから‥
今度こそ全部手に入れて一生離さないからな!」


「うん‥」


彼に抱きしめられて私が感じているのは安心感だと思う

この腕の中は私にこの上ない幸福感と安心感を与えてくれている

もう一人で頑張らなくていいんだって教えてくれている気がする


だけど彼が私を抱きしめながら感じているのはまだ安心感なんかじゃないと思う

まだ何処か不安定で不安な気持ちを落ち着ける為に私に触れている気がする


この3ヶ月でその不安感を今、私が感じているような安心感に変えられればいいのだけど‥








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kirakira
Posted bykirakira

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