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恋は盲目? 4

こんにちは✨😃❗

『恋は盲目?』の続きです。🎶

それではどうぞ~✴







「ちょっとなんであんたが付いてくんのよ!?」


「あぁん?!送ってくって言ってんだろ!」


「いらないわよ!一人で帰れるから付いてこないでよ!!」


「うるせぇー!俺様が送っててやるって言ってんだから素直に喜べ!!」


「嬉しくなんてないわよ!!」


牧野が帰るからと一人で出て行ってしまったのを慌てて追いかけエレベーターの前で捕まえた


送って行くという
普通の女なら泣いて喜ぶような言葉をあっさりと拒否し
ホテルを出て駅の方へと歩く後を追う


「待てって言ってんだろ!!」


「うるさいわね!いい加減にしてよ!!
 付いてこないでって言ってんでしょ!」


付いてこないでって言われてはいそうですかって俺様が諦めると思ってんのかよ?


何処までも何時までも俺を拒否し続ける牧野・・・


日本に戻って3年

一度として牧野がちゃんと俺を見てくれたことは無い

総二郎達が言うようにマジでもうダメなのかもしんねぇーけど


諦めらんねぇーんだよ!!

だから今夜も虚しい言い争いの末に俺は牧野と共に電車に乗る

「なんであんたまで電車に乗ってんのよ?」


「俺も屋敷に帰るんだよ!」


「あんたんちって逆方向じゃん。
 それに普段は電車なんて乗らないでしょ?」


「うるせぇー!お前を送ってから帰んだよ!」


平日の午後9時過ぎ

中途半端な時間帯の電車は座席は全て埋まっていて

つり革を持って立っている乗客がチラホラ

牧野はドア近くに立って車窓に流れる景色を眺めている

黒いストレートの髪を綺麗に結い上げ

化粧している綺麗な横顔に見入ってしまう・・

俺がこいつを捨てた時はまだ化粧なんてしてなくて

Tシャツにジーンズといういつもラフないでたちで

忙しそうに走り回っていたのに

いつの間にか幼さはすっかり抜けて

大人の女に変身している・・・

ポールを握り締めている手

指先は綺麗に整えられ桜色のネイルが施されている

触れたい・・

彼女に触れたい・・・

無意識のうちにその手に自分の手を重ねていた

俺の手が触れた瞬間、ギョッとしたように動いた身体・・

そんな大げさに反応する事ねぇーだろーが・・!


だけどそんな彼女の反応に負けずに彼女の手を掴んだ手に力をこめる

彼女に許されていない事も

認められていない事も分かっている


八方塞りだけど

もしかしたら一生このままかもしんねぇーけど

だけど・・


それでも彼女の側にいられるならそれでいいと思っている

いや・・絶対に彼女の側から離れない


だからいい加減、諦めろよ!!


「何を諦めるのよ?」


やべ・・俺、今声に出てたか・・?


「さっきからブツブツ独り言言って・・気持ち悪いわね!手離してよ!変態!!」


変態って何だよ・・・


考えていた事をうっかり口に出しそれをしっかり牧野に聞かれていた恥ずかしさと

変態と言われたことのショックで思わず牧野の手を掴んでいた手の力が抜けてしまった


すかさず引き抜かれる手

遠ざかる牧野のぬくもりと背中


「お、おい!どこ行く・・あっ!駅か・・」


いつの間にか電車はホームに滑り込んでいて開いたドアから先に降りてしまった牧野を追いかける

改札を通り抜け再び強引に牧野の手を掴み歩き始める

諦めたのか抵抗しない牧野


しばらく互いになにも話さないまま歩き続ける


駅から牧野の住むアパートまでは徒歩約15分

彼女はいつも途中のコンビニに立ちより


ビールとアイスクリームを買って帰る

部屋に帰りつくと着替えまずビールを飲む

アイスクリームは風呂上りのお楽しみらしい・・

これがこいつの日課

こんな些細な事まで

牧野の事ならなんでも知っているのに


虚しい独り相撲が続いている


秋の夜道を手を繋ぎ二人並んで歩く


住宅街のど真ん中、人通りも少ない裏道

アスファルトに響く足音

会話は無いけれど牧野と二人っきりでいられる俺にとっては貴重な時間

俺の右手には牧野の左手

そして左手にはコンビニの袋


「あっ!またサイレン・・」


ふいに牧野が呟いた・・


「ん?サイレン?」


「うん・・パトカーのサイレンが聞こえるでしょ?」


「ああ・・」


確かに牧野が言うように遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる


「サイレンがどうかしたのか?」


「この前も駅の反対側で引ったくりがあったみたいでその時は凄い数のパトカーが走ってたの・・
 最近はこの辺りも治安が悪くなってきたみたい・・痴漢も出たみたいだし・・嫌だなぁ・・」


最後は独り言のように呟いた彼女だけど・・


引ったくりに痴漢だと!


「引っ越すか?」


「そんなお金ないわよ!」


「けど、物騒じゃねぇーかよ!」


「都内に住んでたら何処だって同じようなもんだろうし、
 それに気をつけてるから大丈夫よ!」


今、嫌だなって言ったばっかじゃねぇーかよ!


それに気をつけるから大丈夫っつったって相手は痴漢に引ったくりだぞ!

っつっても・・こいつが俺の言葉に素直に耳を傾けるわけねぇーし・・


何より牧野と二人っきりで過ごせる貴重な時間を喧嘩で終わらせたくない


心配だからこっそりSPつけとくか・・


そんな結論に達した俺は牧野には


"お前だって一応は女なんだから気をつけろよ!"


だけで終わらせた


牧野は


"一応って何よ!失礼ね!"


とブツブツ言っていたがちょうどアパートの前まで帰りついてしまったので
それ以上は何も言わずさっさと俺の手を振りほどくと


"送ってくれてありがと。"


だけを言い残し振り返りもせずにアパートの階段を昇って行ってしまった

軽やかにアパートの階段を駆け上がって行く彼女の後ろ姿を見送り
部屋に明かりがついたのを確認してからその場を離れた・・

胸ポケットから煙草を取り出し火をつける

ジッポ特有の音と匂いと共に一瞬だけ照らし出される自分の手元

ほんの少し前まで右手に感じていた彼女の温もりが逃げないように
手をポケットに突っ込み大通りへと歩き始める


この3年間、幾度となくあきら達に言われてきた言葉が胸を過ぎる・・

いくら言葉を尽くしてもこの想いが彼女に届かないのは俺自身が彼女に信頼されていないから

高等部の頃のように強引に彼女を振り向かせる事はもう出来ない


だけど俺は類のように牧野の幸せを祈ってやる事も出来ないんだ・・

そんな自分に嫌気が差すときだってあるけど
彼女を諦めることがどうしても出来ない










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kirakira
Posted bykirakira

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