恋は盲目? 6
こんにちは✨😃❗
『恋は盲目?』の続きです。🎶
それではどうぞ~✴
赤色灯が点る夜間救急入口と書かれたドアから中へ入るとすぐに
司んちのSPの姿が目に入った
俺達の前を行っていた司はすでにSPの胸倉を掴んで怒鳴ってやがる
「おめぇらが付いててなんでこんな事になんだよ!?」
「申し訳ございません」
胸倉を掴まれているSPも手に包帯を巻いている
「牧野に怪我させやがっておめぇら全員クビにしてやるからな覚えてろよ!」
「司!そんな事より牧野の怪我の具合を確かめるのが先だろ!」
とりあえずSPから司を引き離し話しを聞く
「牧野の怪我は酷いの?」
「いえ、軽傷です。引っ張られた時にバランスを崩し
倒れ込まれたので足首を捻挫されてしまいましたが大きな怪我はそれぐらいで
後は犯人と少し揉み合いになった時に出来た掠り傷程度で済みました」
「そう、牧野はまだ治療中?」
激情のままにSPを怒鳴りつけている司とは対照的に冷静な類
とりあえず牧野の怪我が大したことなくて良かった・・
落ち着かない男が若干一名腹を空かせた熊のようにウロウロと歩き回ってはいるが
俺達は診察室の前に置かれているベンチへと腰を下ろした
ベンチに座る俺達の目の前をウロウロとうっとおしい事このうえないが
診察室に押し入り治療の邪魔をしていないだけマシなのだろう
病院に到着して20分程で類から連絡を受けた桜子と滋が到着した
現在、牧野は念の為に検査を受けていると診察室に出入りしていた看護婦が教えてくれていた
病院に到着して1時間程で検査も終わり
異常無しと診断された牧野が車椅子に乗ったまま診察室から出てきた
牧野の姿を見るなり駆け寄り抱き寄せている司
抱き寄せられている方は俺達がここに居る事にびっくりしている
「牧野!大丈夫か?」
駆け寄るメンバーに牧野は
「ど、どうしてみんなここに居るの?」
今の牧野は自分に絡み付くように抱きついている司に神経が回っていないのだろう
普段の彼女からは考えられないほど大人しく司に抱かれている
「お前が怪我したって連絡受けて駆け付けたんだよ」
「そうですよ先輩!」
「つくしが痴漢に襲われて怪我したって類君から連絡貰ってびっくりしたんだよ~!」
「そっか・・心配かけてごめんね、滋さん、桜子。それにみんなも・・ありがと・・」
「お前が無事で良かったよ」
軽く牧野の頭を撫でると今まで気を張っていたのだろう・・
牧野の瞳からボロボロと涙が零れ落ちた
「オイ!大丈夫か?どっか痛ぇのか?」
牧野の頬を流れ落ちる涙を司は優しくキスするように拭っている
抵抗もせずされるがままの牧野
「・・大丈夫・・あ、あの・・道明寺?」
「ん?どうした?」
「・・私を助けてくれた人達って道明寺のSPさん達なんでしよ?」
「・・あ、あぁ・・ごめんなお前に内緒でSPなんか付けてて」
「ううん・・ありがと守ってくれて・・
私が最近物騒だって言ったから気にしてくれてたんでしょ?」
ありがとうと言われた司は照れたように少し目線を下へ向けると
「いや・・お前襲った痴漢野郎にはぶっ殺してやりてぇぐらい腹が立ってるけど
とりあえずお前が無事で良かった」
「・・うん」
棚からぼたもち?
瓢箪から独楽?
とにかく司にとっては願ってない千載一遇のチャンス到来か?
「俺は決めたからな!」
何を決めたのかは分からないがどうせロクな事じゃないのは分かる
「これ以上お前を一人にしておくことは出来ねぇから結婚するぞ!」
突っ込みどころが満載のバカ男の一大決心だが何から突っ込んだらいいのか分からない・・
とにかく何をどう決めれば結婚に結び付くのだろう・・?
いや・・それより先にちょうどここは病院だから一度診てもらえ!
理解不能な決断に仲間達が唖然としていたが牧野だけは違った
「なんで私があんたと結婚しなきゃいけないのよ!?」
「俺はお前が心配なんだよ!?それにどうせお前は俺と一緒になる運命なんだから
ちょっと時期が早まるだけで問題無いだろう?!」
「冗談じゃないわよ!どうして私とあんたが結婚する事が運命なのよ!?
今回の事は感謝してるけど私はあんたと4年も前に別れてるのよ!
今さら変な事言わないでよね!」
千載一遇のチャンス・・あっさり終了・・
誰かあのバカ男に正しい女の口説き方ってやつを教えてやってくれ・・
普通このタイミングでプロポーズするか?
それも何年もフラれ続けてる女に
別れて4年・・
何万回と振られ続けている男のプロポーズはあっさりと玉砕したのに・・
玉砕した事に気付いていないバカ男がブレーキの壊れた車のようにどんどん暴走を始める
「とにかくお前は今夜から俺の屋敷に一緒に住むからな!」
結婚も同棲も相手がいてこそだと思うぞ・・司!
「どうして私があんたのお屋敷に住まなきゃいけないのよ!
もう!いい加減にしてよ!」
「じゃあ、お前怪我してんのにどうすんだよ?!そんな足でアパートの階段昇れんのかよ?
それにあんな物騒な場所にこれからも住み続けてられんのかよ?!
お前は襲われたんだぞ!ちっとは考えろ!」
う~ん・・司の言ってる事も一理あるな・・
珍しいけど司の意見には賛成だ
但し・・今の部分だけだけど・・
牧野もそう思ったのだろう司に返す言葉が少しだけ緩くなった
「・・だ、だからって・・ヤダよ!あんたんちに行ったって気を使うだけだし・・
メイドさん達に迷惑になるからヤダ!」
「迷惑なんかじゃねぇーよ!俺はお前が心配なんだ」
牧野の口調が落ち着いたからだろう司の口調もさっきまでとは打って変わって
優しく諭すような言い方に変化した
だけどどんなに司の口調が変化しても牧野は司の屋敷に行くつもりはないらしく
俺達に目線だけで助けを求めている
助けてやりたいのは山々なんだけどよ
この場合ヘタに口出したりするととばっちりが何百倍にもなって返ってくるんだよな・・
牧野には悪いが助け舟を出すのを躊躇していると桜子が口を開いた
「道明寺さん?今夜のところは私が先輩を連れて帰ります」
流石!桜子!
男前だなぁお前・・
そう言った桜子にマジでホッとした表情に変わる牧野も分かりやすいけど・・
なにがなんでも牧野を屋敷へ連れ帰りたい司が抵抗を始める
「関係ねぇ奴が口出しすんな!」
慣れているとはいえ司の怒鳴り声にも顔色一つ変えない桜子も凄いと思う・・
「関係なくないですよ。先輩は男性に襲われて怪我したんです。
身体的なダメージは軽傷で済みましたけど精神的なダメージは
まだまだこれから出てくるんです。それなのに道明寺さんのお屋敷なんて行ったら
安心して休めないじゃないですか?!」
「俺が怖がらせてるっていいてぇのか?!」
仲間相手に凄むなバカ!
「ええ、そうです。だけどこの場合は道明寺さんだからって言うわけじゃありません。
世の中の男性全てにです。相手がであろうと関係ないんです。
だから今夜は同性である私と滋さんが先輩と一緒に過ごします」
いいぞ!桜子!
いつの間にか心の中で桜子を応援している俺がいる・・
俺は桜子の言う通りだと思う
牧野の精神的なダメージはこれから出てくるだろうし一人でトイレに行くのも
不自由な状態なのだから気心の知れている桜子達と一緒のほうがいいだろう
「司?今夜は滋ちゃんも桜子んちに泊めて貰うからさぁつくしの事は任せてよ!」
「・・あ、あの・・私も今夜はあの部屋に帰るのはやっぱり怖いし・・
泊めて貰うんだったら桜子んちがいいんだけど・・」
桜子と滋にタッグを組まれ牧野にもこう言われてはさすがの司もそれ以上抵抗しようがない
だけど最後に
「分かったよ!だけど牧野は俺の車で送って行くからな!
それと明日の夜には迎えに行くからな!」
「分かりました。それで結構ですよ」
明日には迎えに行くからなの司の言葉に牧野が反論しようとしたが
それを押さえ込むように桜子が返事を返してしまった
けどよ・・
最後に桜子が浮かべた笑みが気になる
何かを企んでいる時の顔だ・・
司は気付いてねぇみたいだけど
ハァ~なんでもいいけどこっちにとばっちりだけはごめんだぞ!お前ら!
「行くぞ!」
そう言った司は車椅子に座る牧野を軽々と横抱きに抱き上げると
出口へと向かって歩き始めた
その後ろからついて行く俺達
赤色灯が点る夜間救急入口を出たのは午前二時過ぎ
牧野の怪我が大した事なくてホッとした類はすでに意識が半分以上ユメの中で
その足どりは夢遊病者のようにフラフラしていて危なっかしい
結局、こんな時間に大勢で桜子んちに押し掛けるのは迷惑だって事で
総二郎が迎えに来ていた車に類を押し込み先に帰ってしまった
残された俺の役割と言えば
きっと桜子んちでゴネるであろう司を強制退場させる事なんだろうな
やっぱりこんな損な役割りなんだな俺って・・
案の定、牧野から離れたくないとガキみてぇーにゴネ始めた司を
無理やり車に押し込み帰宅したのは朝の五時
徹夜じゃねぇかよ!
今さらベッドに入ったところですぐに起きなければならない
シャワーを浴び汚れと共に疲れも洗い流し出社した
欠伸を噛み殺しながら朝一の会議を終えオフィスへ戻ったタイミングで
デスクの上に置きっぱなしになっていた携帯が鳴った
ディスプレイに表示されている着信相手は桜子
いや~な予感を抱きつつもボタンを押すと響いてきたのは滋の声
「もっしも~し!あきらく~ん?」
滋のハイトーンボイスが寝不足の脳みそを直撃する
携帯電話・・・
何時どこに居ても相手と繋がれる文明の利器だけど
今の俺は携帯電話どころか電話なんて物を発明した奴の首絞めたい気分だ!
「・・あ、ああ・・滋か?どうしたんだ?」
「今、ちょっとだけ大丈夫~?」
全ての語尾が伸びる滋特有の話し方
「ああ、ちょっとだけならな。
で?牧野は元気か?」
「うん、つくしなら大丈夫だよ~!
桜子と滋ちゃんが付いてるから元気!元気!」
「そうか、良かった。
で?どうしたんだよ?」
「うん、あのねつくしもしばらく仕事お休みだから三人で旅行に行く事にしたの。
だからあきら君、後はよろしくね!」
一気に用件だけを告げるとそれじゃあねぇ~と一方的に電話を終えようとする滋を
慌てて呼び止める
「オ、オイ!ちょっと待て!
旅行ってどこ行くんだよ!?」
「それは内緒だよ~!あきら君に話したら司に言っちゃうでしょ?!」
いや・・だから教えて欲しいんだよ!
「お前ら今夜、司が牧野を迎えに行くのOKしてたじゃねぇーかよ!?
旅行に行くのはいいけど司の事ちゃんとしてから行けよ!」
「やだなぁ~あきら君!司がつくしを奪いに来ちゃうからその前に逃げるんじゃな~い!」
逃げないでくれよ・・・
「世界中どこに逃げたって司にはすぐにバレるだろ?!」
「大丈夫だよ~!絶対に司にはバレない所に逃げるから!」
「そんな事、不可能なんだから止めろよ!」
旅行を阻止する事なんて俺には不可能だろうから
何とか行き先だけでも聞き出そうと必死に言葉を繋ぐが
電話口の向こうから桜子の声が聞こえてきた
"滋さん!いつまで話してるんですか?迎えが来ましたから行きますよ!"
「あっ!迎えが来たから切るね~!
じゃ後はヨロシク~!」
「あっ!オイ!・・ちょ・・」
ブッツッーツッーツッー・・・
切られた・・・
マジかよ・・・?
俺・・今夜も徹夜かもしんねぇ・・

応援ありがとうございます。
『恋は盲目?』の続きです。🎶
それではどうぞ~✴
赤色灯が点る夜間救急入口と書かれたドアから中へ入るとすぐに
司んちのSPの姿が目に入った
俺達の前を行っていた司はすでにSPの胸倉を掴んで怒鳴ってやがる
「おめぇらが付いててなんでこんな事になんだよ!?」
「申し訳ございません」
胸倉を掴まれているSPも手に包帯を巻いている
「牧野に怪我させやがっておめぇら全員クビにしてやるからな覚えてろよ!」
「司!そんな事より牧野の怪我の具合を確かめるのが先だろ!」
とりあえずSPから司を引き離し話しを聞く
「牧野の怪我は酷いの?」
「いえ、軽傷です。引っ張られた時にバランスを崩し
倒れ込まれたので足首を捻挫されてしまいましたが大きな怪我はそれぐらいで
後は犯人と少し揉み合いになった時に出来た掠り傷程度で済みました」
「そう、牧野はまだ治療中?」
激情のままにSPを怒鳴りつけている司とは対照的に冷静な類
とりあえず牧野の怪我が大したことなくて良かった・・
落ち着かない男が若干一名腹を空かせた熊のようにウロウロと歩き回ってはいるが
俺達は診察室の前に置かれているベンチへと腰を下ろした
ベンチに座る俺達の目の前をウロウロとうっとおしい事このうえないが
診察室に押し入り治療の邪魔をしていないだけマシなのだろう
病院に到着して20分程で類から連絡を受けた桜子と滋が到着した
現在、牧野は念の為に検査を受けていると診察室に出入りしていた看護婦が教えてくれていた
病院に到着して1時間程で検査も終わり
異常無しと診断された牧野が車椅子に乗ったまま診察室から出てきた
牧野の姿を見るなり駆け寄り抱き寄せている司
抱き寄せられている方は俺達がここに居る事にびっくりしている
「牧野!大丈夫か?」
駆け寄るメンバーに牧野は
「ど、どうしてみんなここに居るの?」
今の牧野は自分に絡み付くように抱きついている司に神経が回っていないのだろう
普段の彼女からは考えられないほど大人しく司に抱かれている
「お前が怪我したって連絡受けて駆け付けたんだよ」
「そうですよ先輩!」
「つくしが痴漢に襲われて怪我したって類君から連絡貰ってびっくりしたんだよ~!」
「そっか・・心配かけてごめんね、滋さん、桜子。それにみんなも・・ありがと・・」
「お前が無事で良かったよ」
軽く牧野の頭を撫でると今まで気を張っていたのだろう・・
牧野の瞳からボロボロと涙が零れ落ちた
「オイ!大丈夫か?どっか痛ぇのか?」
牧野の頬を流れ落ちる涙を司は優しくキスするように拭っている
抵抗もせずされるがままの牧野
「・・大丈夫・・あ、あの・・道明寺?」
「ん?どうした?」
「・・私を助けてくれた人達って道明寺のSPさん達なんでしよ?」
「・・あ、あぁ・・ごめんなお前に内緒でSPなんか付けてて」
「ううん・・ありがと守ってくれて・・
私が最近物騒だって言ったから気にしてくれてたんでしょ?」
ありがとうと言われた司は照れたように少し目線を下へ向けると
「いや・・お前襲った痴漢野郎にはぶっ殺してやりてぇぐらい腹が立ってるけど
とりあえずお前が無事で良かった」
「・・うん」
棚からぼたもち?
瓢箪から独楽?
とにかく司にとっては願ってない千載一遇のチャンス到来か?
「俺は決めたからな!」
何を決めたのかは分からないがどうせロクな事じゃないのは分かる
「これ以上お前を一人にしておくことは出来ねぇから結婚するぞ!」
突っ込みどころが満載のバカ男の一大決心だが何から突っ込んだらいいのか分からない・・
とにかく何をどう決めれば結婚に結び付くのだろう・・?
いや・・それより先にちょうどここは病院だから一度診てもらえ!
理解不能な決断に仲間達が唖然としていたが牧野だけは違った
「なんで私があんたと結婚しなきゃいけないのよ!?」
「俺はお前が心配なんだよ!?それにどうせお前は俺と一緒になる運命なんだから
ちょっと時期が早まるだけで問題無いだろう?!」
「冗談じゃないわよ!どうして私とあんたが結婚する事が運命なのよ!?
今回の事は感謝してるけど私はあんたと4年も前に別れてるのよ!
今さら変な事言わないでよね!」
千載一遇のチャンス・・あっさり終了・・
誰かあのバカ男に正しい女の口説き方ってやつを教えてやってくれ・・
普通このタイミングでプロポーズするか?
それも何年もフラれ続けてる女に
別れて4年・・
何万回と振られ続けている男のプロポーズはあっさりと玉砕したのに・・
玉砕した事に気付いていないバカ男がブレーキの壊れた車のようにどんどん暴走を始める
「とにかくお前は今夜から俺の屋敷に一緒に住むからな!」
結婚も同棲も相手がいてこそだと思うぞ・・司!
「どうして私があんたのお屋敷に住まなきゃいけないのよ!
もう!いい加減にしてよ!」
「じゃあ、お前怪我してんのにどうすんだよ?!そんな足でアパートの階段昇れんのかよ?
それにあんな物騒な場所にこれからも住み続けてられんのかよ?!
お前は襲われたんだぞ!ちっとは考えろ!」
う~ん・・司の言ってる事も一理あるな・・
珍しいけど司の意見には賛成だ
但し・・今の部分だけだけど・・
牧野もそう思ったのだろう司に返す言葉が少しだけ緩くなった
「・・だ、だからって・・ヤダよ!あんたんちに行ったって気を使うだけだし・・
メイドさん達に迷惑になるからヤダ!」
「迷惑なんかじゃねぇーよ!俺はお前が心配なんだ」
牧野の口調が落ち着いたからだろう司の口調もさっきまでとは打って変わって
優しく諭すような言い方に変化した
だけどどんなに司の口調が変化しても牧野は司の屋敷に行くつもりはないらしく
俺達に目線だけで助けを求めている
助けてやりたいのは山々なんだけどよ
この場合ヘタに口出したりするととばっちりが何百倍にもなって返ってくるんだよな・・
牧野には悪いが助け舟を出すのを躊躇していると桜子が口を開いた
「道明寺さん?今夜のところは私が先輩を連れて帰ります」
流石!桜子!
男前だなぁお前・・
そう言った桜子にマジでホッとした表情に変わる牧野も分かりやすいけど・・
なにがなんでも牧野を屋敷へ連れ帰りたい司が抵抗を始める
「関係ねぇ奴が口出しすんな!」
慣れているとはいえ司の怒鳴り声にも顔色一つ変えない桜子も凄いと思う・・
「関係なくないですよ。先輩は男性に襲われて怪我したんです。
身体的なダメージは軽傷で済みましたけど精神的なダメージは
まだまだこれから出てくるんです。それなのに道明寺さんのお屋敷なんて行ったら
安心して休めないじゃないですか?!」
「俺が怖がらせてるっていいてぇのか?!」
仲間相手に凄むなバカ!
「ええ、そうです。だけどこの場合は道明寺さんだからって言うわけじゃありません。
世の中の男性全てにです。相手がであろうと関係ないんです。
だから今夜は同性である私と滋さんが先輩と一緒に過ごします」
いいぞ!桜子!
いつの間にか心の中で桜子を応援している俺がいる・・
俺は桜子の言う通りだと思う
牧野の精神的なダメージはこれから出てくるだろうし一人でトイレに行くのも
不自由な状態なのだから気心の知れている桜子達と一緒のほうがいいだろう
「司?今夜は滋ちゃんも桜子んちに泊めて貰うからさぁつくしの事は任せてよ!」
「・・あ、あの・・私も今夜はあの部屋に帰るのはやっぱり怖いし・・
泊めて貰うんだったら桜子んちがいいんだけど・・」
桜子と滋にタッグを組まれ牧野にもこう言われてはさすがの司もそれ以上抵抗しようがない
だけど最後に
「分かったよ!だけど牧野は俺の車で送って行くからな!
それと明日の夜には迎えに行くからな!」
「分かりました。それで結構ですよ」
明日には迎えに行くからなの司の言葉に牧野が反論しようとしたが
それを押さえ込むように桜子が返事を返してしまった
けどよ・・
最後に桜子が浮かべた笑みが気になる
何かを企んでいる時の顔だ・・
司は気付いてねぇみたいだけど
ハァ~なんでもいいけどこっちにとばっちりだけはごめんだぞ!お前ら!
「行くぞ!」
そう言った司は車椅子に座る牧野を軽々と横抱きに抱き上げると
出口へと向かって歩き始めた
その後ろからついて行く俺達
赤色灯が点る夜間救急入口を出たのは午前二時過ぎ
牧野の怪我が大した事なくてホッとした類はすでに意識が半分以上ユメの中で
その足どりは夢遊病者のようにフラフラしていて危なっかしい
結局、こんな時間に大勢で桜子んちに押し掛けるのは迷惑だって事で
総二郎が迎えに来ていた車に類を押し込み先に帰ってしまった
残された俺の役割と言えば
きっと桜子んちでゴネるであろう司を強制退場させる事なんだろうな
やっぱりこんな損な役割りなんだな俺って・・
案の定、牧野から離れたくないとガキみてぇーにゴネ始めた司を
無理やり車に押し込み帰宅したのは朝の五時
徹夜じゃねぇかよ!
今さらベッドに入ったところですぐに起きなければならない
シャワーを浴び汚れと共に疲れも洗い流し出社した
欠伸を噛み殺しながら朝一の会議を終えオフィスへ戻ったタイミングで
デスクの上に置きっぱなしになっていた携帯が鳴った
ディスプレイに表示されている着信相手は桜子
いや~な予感を抱きつつもボタンを押すと響いてきたのは滋の声
「もっしも~し!あきらく~ん?」
滋のハイトーンボイスが寝不足の脳みそを直撃する
携帯電話・・・
何時どこに居ても相手と繋がれる文明の利器だけど
今の俺は携帯電話どころか電話なんて物を発明した奴の首絞めたい気分だ!
「・・あ、ああ・・滋か?どうしたんだ?」
「今、ちょっとだけ大丈夫~?」
全ての語尾が伸びる滋特有の話し方
「ああ、ちょっとだけならな。
で?牧野は元気か?」
「うん、つくしなら大丈夫だよ~!
桜子と滋ちゃんが付いてるから元気!元気!」
「そうか、良かった。
で?どうしたんだよ?」
「うん、あのねつくしもしばらく仕事お休みだから三人で旅行に行く事にしたの。
だからあきら君、後はよろしくね!」
一気に用件だけを告げるとそれじゃあねぇ~と一方的に電話を終えようとする滋を
慌てて呼び止める
「オ、オイ!ちょっと待て!
旅行ってどこ行くんだよ!?」
「それは内緒だよ~!あきら君に話したら司に言っちゃうでしょ?!」
いや・・だから教えて欲しいんだよ!
「お前ら今夜、司が牧野を迎えに行くのOKしてたじゃねぇーかよ!?
旅行に行くのはいいけど司の事ちゃんとしてから行けよ!」
「やだなぁ~あきら君!司がつくしを奪いに来ちゃうからその前に逃げるんじゃな~い!」
逃げないでくれよ・・・
「世界中どこに逃げたって司にはすぐにバレるだろ?!」
「大丈夫だよ~!絶対に司にはバレない所に逃げるから!」
「そんな事、不可能なんだから止めろよ!」
旅行を阻止する事なんて俺には不可能だろうから
何とか行き先だけでも聞き出そうと必死に言葉を繋ぐが
電話口の向こうから桜子の声が聞こえてきた
"滋さん!いつまで話してるんですか?迎えが来ましたから行きますよ!"
「あっ!迎えが来たから切るね~!
じゃ後はヨロシク~!」
「あっ!オイ!・・ちょ・・」
ブッツッーツッーツッー・・・
切られた・・・
マジかよ・・・?
俺・・今夜も徹夜かもしんねぇ・・

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