2009 ホワイトデー 2
こんにちは。❤
2009年ホワイトデーの続きです。
それではどうぞ~✴
チャレンジャーな奴は意外と近くに居た
と言うか‥
チャレンジャーな奴の方から超~不機嫌な面で俺の所へやってきた
奴は俺の顔を見るなり
前置き無しにいきなり話しを切り出す
「なんであきらが出てくんの?」
面倒臭そうにぞんざいな話し方で切り出したチャレンジャーな奴
「いきなりなんの話しだよ?」
「分かってんでしょ。」
話すのも面倒臭いなら帰れよ‥!
「分からねぇから聞いてんだろ!
ちゃんと説明しろよ!」
「牧野の会社。」
牧野の会社?
「どういう事?ちゃんと説明して。」
お前かよ‥
チャレンジャーな奴って‥!
「説明してくれないなら俺にも考えがあるけど」
不機嫌なのは分かるけど
いきなり脅しかよ‥!?
「考えってどんな考えだよ?」
「それはまだ内緒。
それより説明してくんない?」
「俺はあのバカに無理やり押し付けられただけだ!
お前こそなんで司の邪魔してんだよ?」
「自分の物が取られようとしてるのを黙って見てる馬鹿いないでしょ。」
ん?
今なんて言った?
「類?今なんて言った?」
「自分の物って言ったんだよ。」
「どういう事だ?」
「あそこは牧野が就職する為に俺が作った会社なんだよね。」
サラリとすっげぇ事言ったぞ‥
「ちょ、ちょっと待て類!
一から分かるように説明してくれ!」
そんなマジ面倒臭いって顔しなくていいだろ‥
「あそこは牧野が英徳の大学部に進学した時に
将来、牧野が就職に困らないようにと思って作った会社の内の一つなんだよね。」
「一つ?ほ、他にもあんのかよ?!」
「あるよ。」
「全部で幾つあんだよ?」
「全部で5つぐらいかな?
牧野が将来、どんな職種を希望するか分からなかったからね。」
「その事は当然牧野は知らねぇんだよな?」
「当たり前だろ。本当は花沢に就職してくれるのが一番だったけど
牧野の性格じゃ俺達の息の掛かった企業は避けようとするでしょ。
けど日本で道明寺も花沢も美作も大河原とも全く関係無い企業探すのって不可能に近いでしょ。」
だから作ったのかよ‥
そんな理由で‥
まぁ‥こいつならやりかねないかな‥
なんて‥
妙に納得してしまう自分が怖いけど
「だから手引いてくんない?」
「お前が屈折してるのはよ~く分かったけど
そこまで牧野に惚れてんならこんなまどろっこしい事してねぇで
今までいくらでも時間はあっただろ?」
「俺は司じゃないからね
あきらには分からないと思うけど」
分かりたくねぇよ!
「とにかくあきらは手引いて」
それだけ言うと類は帰って行ってしまった
チャレンジャーな奴は見つかったけど
どっちにも引けない状況
どうする俺?
って‥
俺だってそんな暇じゃねぇんだし
当初の目的でもあるチャレンジャーな奴を見つけるって事は達成出来たんだから
もう何もしない!
もうこれ以上関わらねぇからな!!
そう固く心に決めていたのに
13日の金曜日
殺人鬼の活動日の早朝に
チャレンジャーな奴が再び枕元に立った
「あきら、ちょっと付き合って」
時計はまだ6時前
窓の外も薄っすらと白じんている
こんな時間に付き合ってなんて‥
どんな美女に言われても嬉しくない
ましてや相手が類だなんて
悪夢以外の何物でも無いぞ!
「なんなんだよ?こんな時間に‥?」
「あきらにも関係あるんだから付き合って」
何が関係あるのか分かんねぇけど
きっとこいつは俺が起きるまで
ここで俺を見下ろしてるだろうから
睡眠を諦め大人しく類に従った
類に連れて来られたのは司の屋敷
朝のこんな時間に連絡もせず
突然現れた俺と類を
俺達がガキだった頃からすでにばぁさんで
未だに使用人頭として使えねぇ若い使用人を次々とクビにしまくってる
妖怪ばぁさんが出迎えてくれた
こちらに向かって歩いてくる姿は心無しか更に腰が曲がったように感じるけれど
俺達の目の前までたどり着くと
杖を支えにスクッと背筋を伸ばした
「これはこれは花沢の坊ちゃまに美作の坊ちゃまおはようございます。
こんな朝早くからお二人揃って一体何の騒ぎでございますか?」
「司は居る?」
「坊ちゃんでしたらまだお部屋でお休みでございますよ。」
「そう、じゃあ起こしてきて」
「なんと!坊ちゃま方はこの老いぼれに司坊ちゃんを起こして来いと仰せになるのか?!
道明寺に仕えて早半世紀使用人頭といたしまして
坊ちゃま方が起こして来いと仰せになられるのなら
先代からこの屋敷の事は全てタマに一任すると有り難いお言葉を頂いた
このタマが責任を持って寝起きの悪い‥」
「分かった!分かったから!タマさん、俺らが起こして来るから!」
全く面倒臭ぇばぁさんだ‥
「それでは坊ちゃま方、よろしくお願いしましたよ。
タマはお飲み物のご用意をしてまいりますので」
どいつもこいつも面倒臭ぇ~!!
司の部屋に入るとバカ男はまだぐっすりと眠っていた
「あきら、起こして」
「な、なんで俺なんだよ?!
お前が起こせよ!」
「さっきあのおばあさんに自分が起こすって言ったじゃん」
「あ、あれは面倒臭えからつい‥言っちまっただけだろ!?
司に用があるのはお前だろーが!?」
「早く起こして」
人の話し聞けよ!
俺が起こすのが当たり前みたいに
さっさとソファーに座ってしまった類
クソッ!
どうやってこいつ起こせばいいんだよ?!
声を掛けながら軽く揺すってみるけど全く反応無し
もう一度、今度は少し力を込めてみるけど同じ
全く起きる気配の無いバカ男に最後の手段
「オイ、司!起きろ!
牧野だぞ!」
「牧野?!」
牧野の名前を出した途端
今までピクリともしなかった男の目がバチッと開き
ベッドから慌てて跳ね起き部屋を見回してやがる
面白れぇ~こいつ!
「牧野はどこだ?!
な、なんでお前らがいんだよ?!」
「おはよ、司。
これ10億で売ってあげる。
もちろんキャッシュでだよ」
司が跳び起きたのを見た類の第一声がこれ‥
だから前置きとかねぇーのかよ?!
ベッドの上にポンと投げられたファイル
流石の司も唐突な類の行動に呆気に取られポカンとバカ面を曝している
「なんだよこれ?」
俺は司の邪魔してるチャレンジャーな奴が類だって知っているから
類が無造作にベッドの上に放り投げたファイルの中身は容易に想像はつくけれど
何も知らない司はファイルの内容を確認すると
見る見る内に額には青筋が浮かび眉間には皺が寄り始めた
「なんでお前がこれ持ってんだよ?!」
「元々、俺が作った会社だから」
「んだと!?」
見事に影までも隠し通し
司にその片鱗さえも掴ませなかったチャレンジャーな奴は
少し得意気な表情を浮かべ
ベッドの上で胡座をかいて座っている司を見下ろしている
「ここは俺が牧野の為に作っておいた会社で
牧野は何も知らずに試験受けて就職しただけ。
まだ小さい会社だけどそこそこ利益は上げてたし経営だって順調だったのに
司やあきらが妙な横槍入れてくるから最近やりにくいんだよね。
だから責任取って10億で買い取って」
なんか軽~く俺もこのバカ男と同列に扱われてるような気がするけど
朝っぱらからキャッシュで10億って‥!
類!
お前も凄げぇ事言ってるぞ!
自覚ねぇだろうけど‥
「どうする?嫌なら別にいいけど
そのかわり今後一切この会社と牧野には手出さないでね」
ファイルを手にしたまま何も言葉を発しない司
類も司の言葉を待たずに言いたい事だけ言っている
「嫌だなんて一言も言ってねぇだろ?!
10億だろうと100億だろうと払ってやるけど
お前こそ後になって泣き言言うんじゃねぇーぞ!」
「俺は司じゃないから言わないよ」
最近、類の発する言葉の中には司に対する苛立ちにも似た感情が含まれているように感じる
「類?お前この間は俺んとこに来て手引けて言ってただろ?
それなのになんで急に司に売ってやるんだ?」
「言ったでしょ?俺は司じゃないって。
俺は牧野が幸せならそれでいいんだ」
「そうか‥」
類の答えに納得したわけじゃないけれど
だからといって類に簡単に間違っていると言えるほどガキでもない
自分じゃない誰かを想う気持ちに正解も不正解も無いのだから
それぞれの形があっていいと思う
正直、俺はどっちも御免だけどな!
バカ男はサイドテーブルに置かれていた携帯を手に取ると
誰かに”今すぐキャッシュで10億用意しろ!”と怒鳴っている
俺‥こんな朝っぱらから10億の商談に立ち会ったんだよな?
まぁ‥これが商談と呼べるもんかは疑問だけど
その後すっかり目の覚めてしまったバカ男に朝食に付き合わされている時に
秘書の西田が銀色のジェラルミンケースを持った男を引き連れ姿を現した
10億のキャッシュって一体ジェラルミンが幾つ必要なんだ?
無造作に台車に乗せられて運ばれてきた現金
西田がその内の一つを手に取りこちらへと運んでくると
司は乱暴な手つきでテーブルの上に並べられていた食器を横へと押し退け
そこへジュラルミンのケースを置くように指示した
西田の手によってジュラルミンの蓋が開けられ
中から顔を現したのはビッシリと隙間無しに列べられた一万円札の束
綺麗に並んでいる諭吉に食事をしている手が止まる
「中を全てご確認されますか?」
「いや、信用してるからいいよ。
これ後で花沢の屋敷に運んどいて」
「承知いたしました」
西田は類の言葉にそう答えるとジェラルミンの蓋を閉め後ろに控えていた男に手渡すと
男達はそのままジェラルミンケースを乗せた台車を押しダイニングから出て行った
西田も先程、司が類から受け取ったファイルを手にダイニングから出て行った
ハァ~これで商談成立か‥?
俺の役目‥
って元々、俺の役目が何だったのかはよく分かっていないけれど‥
とにかくこれで俺の役目も終わりだな
「じゃあ俺はそろそろ仕事に行くわ」
そう言って水を一口だけ飲み席を立った
後は知らねぇ!
牧野がこの後どうなろうと!
知ったこっちゃねぇ!
この先は絶対にあいつらには関わらないぞ!
と決意を胸に司の屋敷を後にした

応援ありがとうございます。
2009年ホワイトデーの続きです。
それではどうぞ~✴
チャレンジャーな奴は意外と近くに居た
と言うか‥
チャレンジャーな奴の方から超~不機嫌な面で俺の所へやってきた
奴は俺の顔を見るなり
前置き無しにいきなり話しを切り出す
「なんであきらが出てくんの?」
面倒臭そうにぞんざいな話し方で切り出したチャレンジャーな奴
「いきなりなんの話しだよ?」
「分かってんでしょ。」
話すのも面倒臭いなら帰れよ‥!
「分からねぇから聞いてんだろ!
ちゃんと説明しろよ!」
「牧野の会社。」
牧野の会社?
「どういう事?ちゃんと説明して。」
お前かよ‥
チャレンジャーな奴って‥!
「説明してくれないなら俺にも考えがあるけど」
不機嫌なのは分かるけど
いきなり脅しかよ‥!?
「考えってどんな考えだよ?」
「それはまだ内緒。
それより説明してくんない?」
「俺はあのバカに無理やり押し付けられただけだ!
お前こそなんで司の邪魔してんだよ?」
「自分の物が取られようとしてるのを黙って見てる馬鹿いないでしょ。」
ん?
今なんて言った?
「類?今なんて言った?」
「自分の物って言ったんだよ。」
「どういう事だ?」
「あそこは牧野が就職する為に俺が作った会社なんだよね。」
サラリとすっげぇ事言ったぞ‥
「ちょ、ちょっと待て類!
一から分かるように説明してくれ!」
そんなマジ面倒臭いって顔しなくていいだろ‥
「あそこは牧野が英徳の大学部に進学した時に
将来、牧野が就職に困らないようにと思って作った会社の内の一つなんだよね。」
「一つ?ほ、他にもあんのかよ?!」
「あるよ。」
「全部で幾つあんだよ?」
「全部で5つぐらいかな?
牧野が将来、どんな職種を希望するか分からなかったからね。」
「その事は当然牧野は知らねぇんだよな?」
「当たり前だろ。本当は花沢に就職してくれるのが一番だったけど
牧野の性格じゃ俺達の息の掛かった企業は避けようとするでしょ。
けど日本で道明寺も花沢も美作も大河原とも全く関係無い企業探すのって不可能に近いでしょ。」
だから作ったのかよ‥
そんな理由で‥
まぁ‥こいつならやりかねないかな‥
なんて‥
妙に納得してしまう自分が怖いけど
「だから手引いてくんない?」
「お前が屈折してるのはよ~く分かったけど
そこまで牧野に惚れてんならこんなまどろっこしい事してねぇで
今までいくらでも時間はあっただろ?」
「俺は司じゃないからね
あきらには分からないと思うけど」
分かりたくねぇよ!
「とにかくあきらは手引いて」
それだけ言うと類は帰って行ってしまった
チャレンジャーな奴は見つかったけど
どっちにも引けない状況
どうする俺?
って‥
俺だってそんな暇じゃねぇんだし
当初の目的でもあるチャレンジャーな奴を見つけるって事は達成出来たんだから
もう何もしない!
もうこれ以上関わらねぇからな!!
そう固く心に決めていたのに
13日の金曜日
殺人鬼の活動日の早朝に
チャレンジャーな奴が再び枕元に立った
「あきら、ちょっと付き合って」
時計はまだ6時前
窓の外も薄っすらと白じんている
こんな時間に付き合ってなんて‥
どんな美女に言われても嬉しくない
ましてや相手が類だなんて
悪夢以外の何物でも無いぞ!
「なんなんだよ?こんな時間に‥?」
「あきらにも関係あるんだから付き合って」
何が関係あるのか分かんねぇけど
きっとこいつは俺が起きるまで
ここで俺を見下ろしてるだろうから
睡眠を諦め大人しく類に従った
類に連れて来られたのは司の屋敷
朝のこんな時間に連絡もせず
突然現れた俺と類を
俺達がガキだった頃からすでにばぁさんで
未だに使用人頭として使えねぇ若い使用人を次々とクビにしまくってる
妖怪ばぁさんが出迎えてくれた
こちらに向かって歩いてくる姿は心無しか更に腰が曲がったように感じるけれど
俺達の目の前までたどり着くと
杖を支えにスクッと背筋を伸ばした
「これはこれは花沢の坊ちゃまに美作の坊ちゃまおはようございます。
こんな朝早くからお二人揃って一体何の騒ぎでございますか?」
「司は居る?」
「坊ちゃんでしたらまだお部屋でお休みでございますよ。」
「そう、じゃあ起こしてきて」
「なんと!坊ちゃま方はこの老いぼれに司坊ちゃんを起こして来いと仰せになるのか?!
道明寺に仕えて早半世紀使用人頭といたしまして
坊ちゃま方が起こして来いと仰せになられるのなら
先代からこの屋敷の事は全てタマに一任すると有り難いお言葉を頂いた
このタマが責任を持って寝起きの悪い‥」
「分かった!分かったから!タマさん、俺らが起こして来るから!」
全く面倒臭ぇばぁさんだ‥
「それでは坊ちゃま方、よろしくお願いしましたよ。
タマはお飲み物のご用意をしてまいりますので」
どいつもこいつも面倒臭ぇ~!!
司の部屋に入るとバカ男はまだぐっすりと眠っていた
「あきら、起こして」
「な、なんで俺なんだよ?!
お前が起こせよ!」
「さっきあのおばあさんに自分が起こすって言ったじゃん」
「あ、あれは面倒臭えからつい‥言っちまっただけだろ!?
司に用があるのはお前だろーが!?」
「早く起こして」
人の話し聞けよ!
俺が起こすのが当たり前みたいに
さっさとソファーに座ってしまった類
クソッ!
どうやってこいつ起こせばいいんだよ?!
声を掛けながら軽く揺すってみるけど全く反応無し
もう一度、今度は少し力を込めてみるけど同じ
全く起きる気配の無いバカ男に最後の手段
「オイ、司!起きろ!
牧野だぞ!」
「牧野?!」
牧野の名前を出した途端
今までピクリともしなかった男の目がバチッと開き
ベッドから慌てて跳ね起き部屋を見回してやがる
面白れぇ~こいつ!
「牧野はどこだ?!
な、なんでお前らがいんだよ?!」
「おはよ、司。
これ10億で売ってあげる。
もちろんキャッシュでだよ」
司が跳び起きたのを見た類の第一声がこれ‥
だから前置きとかねぇーのかよ?!
ベッドの上にポンと投げられたファイル
流石の司も唐突な類の行動に呆気に取られポカンとバカ面を曝している
「なんだよこれ?」
俺は司の邪魔してるチャレンジャーな奴が類だって知っているから
類が無造作にベッドの上に放り投げたファイルの中身は容易に想像はつくけれど
何も知らない司はファイルの内容を確認すると
見る見る内に額には青筋が浮かび眉間には皺が寄り始めた
「なんでお前がこれ持ってんだよ?!」
「元々、俺が作った会社だから」
「んだと!?」
見事に影までも隠し通し
司にその片鱗さえも掴ませなかったチャレンジャーな奴は
少し得意気な表情を浮かべ
ベッドの上で胡座をかいて座っている司を見下ろしている
「ここは俺が牧野の為に作っておいた会社で
牧野は何も知らずに試験受けて就職しただけ。
まだ小さい会社だけどそこそこ利益は上げてたし経営だって順調だったのに
司やあきらが妙な横槍入れてくるから最近やりにくいんだよね。
だから責任取って10億で買い取って」
なんか軽~く俺もこのバカ男と同列に扱われてるような気がするけど
朝っぱらからキャッシュで10億って‥!
類!
お前も凄げぇ事言ってるぞ!
自覚ねぇだろうけど‥
「どうする?嫌なら別にいいけど
そのかわり今後一切この会社と牧野には手出さないでね」
ファイルを手にしたまま何も言葉を発しない司
類も司の言葉を待たずに言いたい事だけ言っている
「嫌だなんて一言も言ってねぇだろ?!
10億だろうと100億だろうと払ってやるけど
お前こそ後になって泣き言言うんじゃねぇーぞ!」
「俺は司じゃないから言わないよ」
最近、類の発する言葉の中には司に対する苛立ちにも似た感情が含まれているように感じる
「類?お前この間は俺んとこに来て手引けて言ってただろ?
それなのになんで急に司に売ってやるんだ?」
「言ったでしょ?俺は司じゃないって。
俺は牧野が幸せならそれでいいんだ」
「そうか‥」
類の答えに納得したわけじゃないけれど
だからといって類に簡単に間違っていると言えるほどガキでもない
自分じゃない誰かを想う気持ちに正解も不正解も無いのだから
それぞれの形があっていいと思う
正直、俺はどっちも御免だけどな!
バカ男はサイドテーブルに置かれていた携帯を手に取ると
誰かに”今すぐキャッシュで10億用意しろ!”と怒鳴っている
俺‥こんな朝っぱらから10億の商談に立ち会ったんだよな?
まぁ‥これが商談と呼べるもんかは疑問だけど
その後すっかり目の覚めてしまったバカ男に朝食に付き合わされている時に
秘書の西田が銀色のジェラルミンケースを持った男を引き連れ姿を現した
10億のキャッシュって一体ジェラルミンが幾つ必要なんだ?
無造作に台車に乗せられて運ばれてきた現金
西田がその内の一つを手に取りこちらへと運んでくると
司は乱暴な手つきでテーブルの上に並べられていた食器を横へと押し退け
そこへジュラルミンのケースを置くように指示した
西田の手によってジュラルミンの蓋が開けられ
中から顔を現したのはビッシリと隙間無しに列べられた一万円札の束
綺麗に並んでいる諭吉に食事をしている手が止まる
「中を全てご確認されますか?」
「いや、信用してるからいいよ。
これ後で花沢の屋敷に運んどいて」
「承知いたしました」
西田は類の言葉にそう答えるとジェラルミンの蓋を閉め後ろに控えていた男に手渡すと
男達はそのままジェラルミンケースを乗せた台車を押しダイニングから出て行った
西田も先程、司が類から受け取ったファイルを手にダイニングから出て行った
ハァ~これで商談成立か‥?
俺の役目‥
って元々、俺の役目が何だったのかはよく分かっていないけれど‥
とにかくこれで俺の役目も終わりだな
「じゃあ俺はそろそろ仕事に行くわ」
そう言って水を一口だけ飲み席を立った
後は知らねぇ!
牧野がこの後どうなろうと!
知ったこっちゃねぇ!
この先は絶対にあいつらには関わらないぞ!
と決意を胸に司の屋敷を後にした

応援ありがとうございます。
スポンサーサイト