Family 93

高等部の入学式の朝

進学と言っても中等部からの持ち上がりだから
校舎が変わるぐらいで特に変化なんてないけれど
今年から新たに創設された特別入学制度なる物もあるらしく
例年より外部からの編入組も多い

どうやらその新制度には父さん達が一枚噛んでいるみたいで
父さんをはじめあの変な三人組も来賓として招待されているからみんな居る


父さん+変な三人組=Ｆ４

って呼ばれているらしい

そこに母さんに桜子ちゃん

そして学校は違ったけれど父さんと肩を並べる問題児の滋ちゃんと
今は遠い異国の地で困っている人達を助けている優紀ちゃん

個性のぶつかり合いみたいな８人が出会った場所

今も昔もこの学園での道明寺の影響力は絶大で
あのＦ４のリーダーである道明寺司と
英徳のジャンヌダルクと異名を取る牧野つくしの息子として
俺はこの学園内で一目置かれている

でもそれは俺自身がって訳じゃなくて
父さんと母さんがって話で
俺自身が何かを成し遂げたわけじゃないのに
誰もが俺に気を使い友達になるのではなく家来になろうとする

そんな状況にうんざりしていた

母さんは俺にベタベタしてくるけれど特別扱いはしない
あの変な三人組も俺を単なるガキとして扱ってくれている
父さんも俺を長男だから=後継者だなんて思っていないみたいだし

“お前はこの俺様の息子なんだから
もっと堂々としてろ！”


とは言うけれどそれは後継者としてではなく
単に男として
一人の人間としての父さんの自信の表れだと思う


初等部の頃から仲のいい奴はいるけれど
ほんの数人でそいつらとは遊びに出かけたりもするけれど
変わった奴ばっかりなので群れる事は無い俺にはいい距離感だ

同級生でもほとんどの奴


特に女とは話しをしたことも無い奴ばっかりで

はっきり言って名前どころか顔さえ覚えていない


来賓席に陣取っている父さん達

オーダーメイドのスーツをビシッ！と着こなし
式場内の注目を一身に浴びながら菫を膝に乗せジャレている父さんと
桜の取り合いをしている変な三人組

四人が四人共に普段のポーカーフェイスを宇宙の彼方に忘れてきたような
デレデレっぷりに式場内のあちらこちらから悲鳴が聞こえてくる


母さんは来賓席から双子を引き取ろうとしているけれど
父さん達が離さず諦めて翼と保護者席に座っている

そして何故か関係無いのに滋ちゃんも保護者に座っていて
さっきからまるでアイドルのように俺の顔写真入りのうちわを振って応援？していて
その横で桜子ちゃんが不意に立ち上がる滋ちゃんを呆れたように引っ張り椅子に座らせている

“健～！頑張れ～！”

って‥

恥ずかしいっつーの！

大声で名前呼ぶなって！

立ち上がんなって！

うちわ振んなって！

何を頑張るんだよ！？

新入生代表として挨拶に立った俺の背後から聞こえてくる声援に
ため息と共に壇上に上がった


ガキの頃から不思議と人前に立つ事には抵抗は無く

最近では声まで父さんそっくりになってきて
電話だと母さんでさえ聞き間違える程

父さんに似て低くよく通る声が式場内に響き渡る

予め準備されていた原稿を読み終え
壇上から降りる時

見つけてしまった


外部からの編入生の中に


俺は運命のたった一人を見つけた

まるで彼女にだけピンスポットが当たっているかのように
周囲から浮かび上がっている姿に目を奪われて離せない

見つけた！

俺の‥

俺だけの女神を‥

意志の強そうな大きな瞳で真っ直ぐ前を向いている彼女は
まだ俺の視線に気付いていない

退屈なだけだと思っていた学園生活が
楽しくなりそうだった







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