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月夜に 5

こんばんは。(#^.^#)

お引越しです。🎶

それではどうぞ~✴









牧野が目を覚ましたのはそれから3日後の事だった
その間、俺は学校には行っていたがまだ牧野が居なくなったことには
誰も気付いていなかった

牧野が目を覚ました日

その日からが本当のスタート

否応なしに俺の人生が動き始めた

その日、大学から戻ると牧野は意識を取り戻し今野医師が呼ばれていた

リビングで診察が終わるのを待っている俺を慌てた様子のメイドが呼びに来た

牧野の部屋に入ると何故か牧野が興奮して泣きじゃくっていて
その横ではお袋も泣きながら必死で牧野を落ち着かせようとしていた

その普通じゃない状況に慌てて牧野の元に駆け寄る俺に今野医師が言った言葉は…

ハンマーで頭をおもいっきり殴られたような衝撃だった

今野医師の言っている事が上手く理解できなかった

「あきら君、どうやら彼女は全ての記憶を失ってしまっているらしい。
こうなると私の手には負えないのでちゃんとした専門医を紹介するよ。
きちんと診察を受けて判断した方がいい。
ただ今は彼女自身がかなり混乱している状態だからとにかく落ち着かせて
子供の事もあるので早い方がいい」

何・・??

今、記憶が無いって言ったよな?

何言ってんだ?

記憶が無いのは司だろ?

それにどういう事だよ?

全ての記憶が無いって?

自分が誰なのかも分からないってことか?

どうしてこいつばっかりこんな目にあうんだ?

どうしてこいつばっかりこんな辛い思いしなくちゃいけないんだ?

泣きじゃくっているあいつを見てたらたまらなくなって
気がつくと抱きしめていた

ずっと『大丈夫だから』って言ってたような気がする

そうだ俺がしっかりしないと

なにがあっても俺が守るから

だからもう泣かないでくれ

俺が側にいるから

だからもう傷つかないでくれ

しばらくして泣きつかれたのか牧野は眠ってしまった










眠ってしまった牧野をメイドに頼み
詳しい診断結果を聞くためにリビングへと場所を移した

これから先、問題は山積みだった

頭の中ではさっきの今野医師の言葉がこだましている

「先生!一体どういうことなんですか?!」

「まぁまぁ、あきら君、少し落ち着いてくれないか。
まず、牧野さんの体だが熱も下がったし、意識もハッキリしているのでもう問題はないだろう。
後は栄養のある物をきちんと取って体力を回復させるだけだ。
そして、記憶のほうだがね・・」

そう言うと今野医師は少し表情を曇らせた

「こちらの方がやっかいかもしれない。私も専門外なので迂闊に判断出来ないが
 この記憶喪失は一過性の物かもしれないしそうじゃないかもしれない・・」

「それは…このまま記憶が戻らない可能性もあるということでしょうか?」

「専門医に診察してもらわないと分からんがね。記憶の方は彼女次第だと思う。
 もしかしたら次に目覚めたら思い出してるかもしれんしね。
 とにかく今、君がしなきゃいけないことは一刻も早く専門医に見せることだ」

「はい・・」

「それからこれは、もし彼女が記憶を失ったままだと仮定しての話だが
彼女は今、普通の体じゃない。
自分の名前すら覚えていない彼女が妊娠している事を覚えているとは考えにくいんだ。
君はまず彼女に妊娠している事をしっかりと自覚させて絶対にムリはさせない事だ、いいかね?」

「わかりました」

「よければ少し彼女の事を教えてくれないかね?
 話の内容によっては紹介する医師を考えなおさなければならないからね」

俺はここ数ヶ月、彼女の身に起こった事をすべて今野医師に話した

「牧野つくしは現在、英徳学園の2年生で17歳です」

「英徳学園・・じゃぁ彼女もどこかのお嬢様なのかね?」

「違います。牧野は両親と弟の4人家族で、父親は普通のサラリーマンです。
 牧野は普段、アルバイトで生計を立てていました。
 それから牧野のお腹の子供の父親は道明寺司です」

「道明寺・・って、あの財閥のかね?」

「そうです」

「はぁ~、またすごい名前が出てきたもんだな」

今野医師は俺から道明寺の名前を聞くと顎に手を当てて少し考え込んでしまったが

俺はそんな今野医師に構わず話しを続けた

ここからが本題だった

「先生は司が刺された事件はご存知ですよね?」

「ああ、知ってるよ。
 TVなんかでも大きく報道されていたからね」

「司は現在、刺された後遺症で記憶の一部を失っています。
正確には牧野つくしの事だけ忘れてしまっています。
それに現在、司は別の女性と付き合っていて牧野が妊娠している事は知りません。
それどころか司は彼女が同じ部屋にいることすら許していません。
牧野が近付けば口汚く罵って追い返してしまうような状態です。」

「お互いが覚えていないのか・・悲しい事だ・・な・・」

「はい・・、それから、もう一つこれが一番の問題なのですが、
司のお袋さん道明寺楓は牧野の事を快く思ってはいません。
以前からあらゆる手を使って二人を別れさせようとしています」

「そうか。だとしたら何としても彼女の事は知られてはいけないな。
分かった。だがね、あきら君、産婦人科の方は往診でもなんとかなると思うが、
記憶の方は検査が必要だろうからどうしても一度は病院に出向かなくてはならないと思うんだ。
私の大学時代の同期の男で個人病院を経営している男がいるんだがね、
人柄も誠実で信頼出来るし道明寺家との繋がりもないはずだから人目に付かないよう
診察が受けられるように手配しておくがそれで構わないかね」

「はい、よろしくお願いします」

あきらは再度頭を下げた

「うむ、分かった。あきら君、これからが大変だよ。
 しっかり彼女を支えてあげてくれ」


「はい」

今野医師は牧野には最低限の情報を伝えるようにと言い残し帰っていった

はぁ~

お袋が今野医師を見送るためにリビングを出て行った

俺はその後姿を見送りながら堂々巡りを繰り返す思考と戦っていた

これからどうすればいい?

俺に何が出来るんだ?








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kirakira
Posted bykirakira

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