月夜に 7
こんにちは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
部屋に入ると牧野は上体を起こしベッドの背にもたれ掛かり
ぼんやりと金色の月明かりに照らされるている窓の外を眺めていた
そんな彼女の横顔を本当に綺麗だと思った
牧野を驚かせないようにゆっくりと彼女に近付きやさしく声を掛ける
「大丈夫か?」
俺の声に少しだけ肩をビクッと反応させてこちらに振り向いた
牧野の瞳には不安の色が色濃く浮かんでいた
「あ、あの・・わたし・・?」
今の一言で牧野の記憶が戻っていないことが分かった
俺はゆっくりとベッドサイドに置かれていた椅子に腰を降ろした
「少し話ししようか?」
「は、はい・・・・。」
真っ直ぐに瞳を見つめながら少しづつ
牧野が混乱しないように言葉を繋いでいく
「まず俺の名前は美作あきら、そして君は牧野つくし」
「私の名前・・牧野つくし・・?」
「そうだ。そして俺達は友達だった…っていうか今もそうだけど」
「ともだち・・・?私とあなたが・・・?
ご、ごめんなさい、私、何も覚えてなくて・・・
私、どうしてここに居るんですか?教えてください!お願いします!」
話をしながら牧野がまた興奮し始める
体調が万全でない彼女は少し話をしただけですぐに息が荒くなり
肩が大きく上下に揺れて表情は苦しそうで瞳には一杯に涙を溜めている
「分かった!今から説明するから、落ち着け!
そんなに興奮するな!大丈夫だから。
頼むから興奮しないでくれ・・」
彼女を抱きしめながら俺は今から彼女に告げなくてはいけない事を整理していた
少し牧野が落ち着きを取り戻したのを確認すると
俺は牧野からの質問をゆっくりと彼女がちゃんと理解出来るよう説明する
「まず道端にうずくまってたお前をここに連れてきたのは俺だ、
雨に打たれたみたいでびしょ濡れで熱を出して4日間意識がなかった。
それから家族の事だけどちゃんと居るよ、両親と弟がね。
お前の両親には家で預かってるって事は伝えてある。
でも、まだ意識が戻った事は伝えてない。
最後の質問だけどな、何でこんな事になったかって
だいたいは俺にも分かってるけど、俺の口からは説明出来ないんだ
この事はお前自身が思い出さないと何も解決しないからな。
但し、ムリに思い出そうとはするなよ絶対に!」
「それから今から話す事が一番重要だから
落ち着いてちゃんと聞い欲しい」
「は・い・・」
彼女は小さくコクリと頷いた
「お前、妊娠しているんだ」
「へっ‥!?」
妊娠してるって‥
赤ちゃんがいるってことよね‥?
つくしは無意識の内にお腹に手をあてていた
「今、だいたい6~7週目ぐらいだって先生は言ってた。
だから、一度産婦人科の先生に診てもらおうな」
「あの・・妊娠してるって・・・本当なんですか・・・?
私・・・何も覚えてなくて・・・相手の人って誰なんですか?
美作さんは知ってるんですか?」
「知ってるよ。だけど俺から教えるわけにはいかないんだ。
記憶はお前自身が思い出さないと意味が無いから。
だからって焦って無理に思い出そうとするなよ、
お腹の子供に障るといけないからな」
「あ、相手の人は・・知ってるんですか・・私が妊娠してるって事・・?」
「いや、知らない。
お前が妊娠してる事も今ここに居ることも知ってるは俺だけだから」
「そ、そうですか・・あの・・美作さん」
「あきらでいいよ、なんかかた苦しいし」
「・・あきらさん、私、明日ここから出て行きます。
これ以上あなたに迷惑をかけるわけにはいかないから。」
「オ、オイ!何言ってんだよ、お前、今の俺の話聞いてたのか?
それに、記憶の無いお前がここを出ていったいどこに行くんだよ。
腹には子供だっているんだぞ!」
「それは・・・私には両親もいるし・・それに・・
これ以上、迷惑を掛けるわけにもいかないし。
それに、あきらさんは私の事を友達だって言ったけど
私、何も覚えてなくて、ごめんなさい・・」
彼女の目から涙が零れ落ちた
「いいか、俺にとってお前はすごく大切な存在だったんだ。
お前が俺達みんなを変えてくれた、だから記憶が無いくらい
なんてこと無い、ゆっくり思い出していけばいいんだ。
記憶が戻るまででいいから、俺の為にここに居てくれないか?」
「あきらさんの為に・・?」
「そうだ、俺のために・・だ、どうだ、ダメか?」
「・・い、いいえ・・ダメじゃないんですけど、本当にいいんですか?」
「ああ、俺がそうして欲しいんだ」
そう言うと牧野は少しホッとしたように微笑んだ
俺は微笑んだ彼女を見て安心した
「ありがとう、さぁ、今日はこれぐらいにしてもう休め。
明日、産婦人科の先生が来てくれるからちゃんと見てもらって、
体力が回復したら記憶の方も専門の先生に診察してもらおうな」
「・・・・・はい。あきらさん・・・ありがとう・・」
「どういたしまして。
眠るまで側にいるから、安心して・・・」
ゆっくりと目を閉じた牧野の頭をなでながら明日からの事を考えていた
牧野は薬のせいかすぐに眠りに落ちてしまった
寝顔だけ見てると記憶が無いようには見えない穏やかな寝顔だった
これから先の事を考えると気が遠くなる
やっと長い一日が終わる
だけどそれはこれから始まる長い長い道のりの最初の一日が終わったに過ぎなかった
翌日からも俺はちゃんと大学に行き
怪しまれないように注意しながら
なるべく普段どおりの生活を心がけていた
幸い類達はまだ牧野の事には気付いていない
だけど授業中でも食事中でもいつでも頭の中にあるのは牧野の事ばかり
最近の俺は司の顔を…
いや司と同じ空間にいるだけでムカついていて
いっこうに見えてこない解決策にイライラだけが募っていく・・・・
そんな俺を見て総二郎が少し眉を顰めて
大げさな動きで俺の肩に腕を回し顔を覗きこんでくる
「どうしたんだ、あきら?欲求不満か?」
その能天気な問いかけに思わずキレそうになるのをグッと堪えて平静を装う
「いや、どうしてだ?」
「何か、お前最近イライラしてるみたいだからよー。
マダムと上手く行ってねぇーのかなぁ~って思ってよ」
「別にイライラなんてしてねぇよ!」
「そうか?だったらいいんだけどよ~。なぁ、今夜クラブでも行かねぇーか?
お前、最近全然顔出してないだろ?たまには付き合えよ!」
「ああ、そうだな」
クラブ?そんな気分じゃナイ!今だって一刻も早く家に帰りたい気分なのに…
つい1週間程前まで3日とあけずに通っていた
俺にとって居心地の良かった空間も今では何の魅力も感じない…
自分がその場所でどんな風に振舞っていたのかさえもよく分らなくなっていた
数日がたち牧野は食欲も徐々に戻り始め顔色も良くなっていていたが
悪阻がきつくなり始めまだ一日の大半をベッドの中で過ごす生活だった
牧野が意識を取り戻してから一週間後
精神状態も安定してきた頃を見計らって
今野医師に紹介された病院に連れて行った
牧野の記憶は相変わらず戻らないままだったが検査の結果
脳波などには異常は見られず
精神的なストレスからくる記憶障害だと診断された
診察した医師が俺に告げた言葉
“牧野さんの記憶が戻るという保証はありません。
ですがこの様な患者さんで何年か後に突然記憶が戻ったという例もありますので
焦らずにゆっくりとがんばってください”
“それから絶対にムリに思い出そうとはしないでください。
妊娠中は精神的にも不安定になりがちですから充分注意してあげてください”
牧野の記憶が戻る保証は無い
確かにそうだ、現に司はまだ牧野の事を思い出していない
だとしたらどうすればいい?
牧野が安全に子供を産み育てられる環境にするには・・
どうすればいいんだ?
もし、司のお袋さんが牧野が記憶喪失で司の子供を出産したと知ったらどうする?
おそらく彼女は牧野から子供を取り上げようとするだろう
道明寺家のそれも司の血を引く子供をあのお袋さんが見逃すわけがない
だけどそんな事は絶対に阻止しなければならない
だったらもう俺がやるべき事は一つしかない
牧野が安心して子供を育てていける環境にするには‥
この時点で俺は覚悟を決めた
だけど俺一人の力では無理だ・・
受話器を取りパリに電話をする
「もしもし、あきらです」
『ああ、どうしたんだ?何かあったのか?』
「はい、ご相談したい事がありますのでお時間を作っていただけないでしょうか?」
『それは構わないが、お前はこっちに来れるのか?』
「はい」
『そうか、では予定を確認して折り返し連絡する。
いいか。』
「分かりました、それではお待ちしております」
そう言って電話を切った
電話の相手は俺の父親・・・
親父からは1時間ほどで電話が掛かってきた
俺は週末にパリの親父に会いに行く

応援ありがとうございます。
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
部屋に入ると牧野は上体を起こしベッドの背にもたれ掛かり
ぼんやりと金色の月明かりに照らされるている窓の外を眺めていた
そんな彼女の横顔を本当に綺麗だと思った
牧野を驚かせないようにゆっくりと彼女に近付きやさしく声を掛ける
「大丈夫か?」
俺の声に少しだけ肩をビクッと反応させてこちらに振り向いた
牧野の瞳には不安の色が色濃く浮かんでいた
「あ、あの・・わたし・・?」
今の一言で牧野の記憶が戻っていないことが分かった
俺はゆっくりとベッドサイドに置かれていた椅子に腰を降ろした
「少し話ししようか?」
「は、はい・・・・。」
真っ直ぐに瞳を見つめながら少しづつ
牧野が混乱しないように言葉を繋いでいく
「まず俺の名前は美作あきら、そして君は牧野つくし」
「私の名前・・牧野つくし・・?」
「そうだ。そして俺達は友達だった…っていうか今もそうだけど」
「ともだち・・・?私とあなたが・・・?
ご、ごめんなさい、私、何も覚えてなくて・・・
私、どうしてここに居るんですか?教えてください!お願いします!」
話をしながら牧野がまた興奮し始める
体調が万全でない彼女は少し話をしただけですぐに息が荒くなり
肩が大きく上下に揺れて表情は苦しそうで瞳には一杯に涙を溜めている
「分かった!今から説明するから、落ち着け!
そんなに興奮するな!大丈夫だから。
頼むから興奮しないでくれ・・」
彼女を抱きしめながら俺は今から彼女に告げなくてはいけない事を整理していた
少し牧野が落ち着きを取り戻したのを確認すると
俺は牧野からの質問をゆっくりと彼女がちゃんと理解出来るよう説明する
「まず道端にうずくまってたお前をここに連れてきたのは俺だ、
雨に打たれたみたいでびしょ濡れで熱を出して4日間意識がなかった。
それから家族の事だけどちゃんと居るよ、両親と弟がね。
お前の両親には家で預かってるって事は伝えてある。
でも、まだ意識が戻った事は伝えてない。
最後の質問だけどな、何でこんな事になったかって
だいたいは俺にも分かってるけど、俺の口からは説明出来ないんだ
この事はお前自身が思い出さないと何も解決しないからな。
但し、ムリに思い出そうとはするなよ絶対に!」
「それから今から話す事が一番重要だから
落ち着いてちゃんと聞い欲しい」
「は・い・・」
彼女は小さくコクリと頷いた
「お前、妊娠しているんだ」
「へっ‥!?」
妊娠してるって‥
赤ちゃんがいるってことよね‥?
つくしは無意識の内にお腹に手をあてていた
「今、だいたい6~7週目ぐらいだって先生は言ってた。
だから、一度産婦人科の先生に診てもらおうな」
「あの・・妊娠してるって・・・本当なんですか・・・?
私・・・何も覚えてなくて・・・相手の人って誰なんですか?
美作さんは知ってるんですか?」
「知ってるよ。だけど俺から教えるわけにはいかないんだ。
記憶はお前自身が思い出さないと意味が無いから。
だからって焦って無理に思い出そうとするなよ、
お腹の子供に障るといけないからな」
「あ、相手の人は・・知ってるんですか・・私が妊娠してるって事・・?」
「いや、知らない。
お前が妊娠してる事も今ここに居ることも知ってるは俺だけだから」
「そ、そうですか・・あの・・美作さん」
「あきらでいいよ、なんかかた苦しいし」
「・・あきらさん、私、明日ここから出て行きます。
これ以上あなたに迷惑をかけるわけにはいかないから。」
「オ、オイ!何言ってんだよ、お前、今の俺の話聞いてたのか?
それに、記憶の無いお前がここを出ていったいどこに行くんだよ。
腹には子供だっているんだぞ!」
「それは・・・私には両親もいるし・・それに・・
これ以上、迷惑を掛けるわけにもいかないし。
それに、あきらさんは私の事を友達だって言ったけど
私、何も覚えてなくて、ごめんなさい・・」
彼女の目から涙が零れ落ちた
「いいか、俺にとってお前はすごく大切な存在だったんだ。
お前が俺達みんなを変えてくれた、だから記憶が無いくらい
なんてこと無い、ゆっくり思い出していけばいいんだ。
記憶が戻るまででいいから、俺の為にここに居てくれないか?」
「あきらさんの為に・・?」
「そうだ、俺のために・・だ、どうだ、ダメか?」
「・・い、いいえ・・ダメじゃないんですけど、本当にいいんですか?」
「ああ、俺がそうして欲しいんだ」
そう言うと牧野は少しホッとしたように微笑んだ
俺は微笑んだ彼女を見て安心した
「ありがとう、さぁ、今日はこれぐらいにしてもう休め。
明日、産婦人科の先生が来てくれるからちゃんと見てもらって、
体力が回復したら記憶の方も専門の先生に診察してもらおうな」
「・・・・・はい。あきらさん・・・ありがとう・・」
「どういたしまして。
眠るまで側にいるから、安心して・・・」
ゆっくりと目を閉じた牧野の頭をなでながら明日からの事を考えていた
牧野は薬のせいかすぐに眠りに落ちてしまった
寝顔だけ見てると記憶が無いようには見えない穏やかな寝顔だった
これから先の事を考えると気が遠くなる
やっと長い一日が終わる
だけどそれはこれから始まる長い長い道のりの最初の一日が終わったに過ぎなかった
翌日からも俺はちゃんと大学に行き
怪しまれないように注意しながら
なるべく普段どおりの生活を心がけていた
幸い類達はまだ牧野の事には気付いていない
だけど授業中でも食事中でもいつでも頭の中にあるのは牧野の事ばかり
最近の俺は司の顔を…
いや司と同じ空間にいるだけでムカついていて
いっこうに見えてこない解決策にイライラだけが募っていく・・・・
そんな俺を見て総二郎が少し眉を顰めて
大げさな動きで俺の肩に腕を回し顔を覗きこんでくる
「どうしたんだ、あきら?欲求不満か?」
その能天気な問いかけに思わずキレそうになるのをグッと堪えて平静を装う
「いや、どうしてだ?」
「何か、お前最近イライラしてるみたいだからよー。
マダムと上手く行ってねぇーのかなぁ~って思ってよ」
「別にイライラなんてしてねぇよ!」
「そうか?だったらいいんだけどよ~。なぁ、今夜クラブでも行かねぇーか?
お前、最近全然顔出してないだろ?たまには付き合えよ!」
「ああ、そうだな」
クラブ?そんな気分じゃナイ!今だって一刻も早く家に帰りたい気分なのに…
つい1週間程前まで3日とあけずに通っていた
俺にとって居心地の良かった空間も今では何の魅力も感じない…
自分がその場所でどんな風に振舞っていたのかさえもよく分らなくなっていた
数日がたち牧野は食欲も徐々に戻り始め顔色も良くなっていていたが
悪阻がきつくなり始めまだ一日の大半をベッドの中で過ごす生活だった
牧野が意識を取り戻してから一週間後
精神状態も安定してきた頃を見計らって
今野医師に紹介された病院に連れて行った
牧野の記憶は相変わらず戻らないままだったが検査の結果
脳波などには異常は見られず
精神的なストレスからくる記憶障害だと診断された
診察した医師が俺に告げた言葉
“牧野さんの記憶が戻るという保証はありません。
ですがこの様な患者さんで何年か後に突然記憶が戻ったという例もありますので
焦らずにゆっくりとがんばってください”
“それから絶対にムリに思い出そうとはしないでください。
妊娠中は精神的にも不安定になりがちですから充分注意してあげてください”
牧野の記憶が戻る保証は無い
確かにそうだ、現に司はまだ牧野の事を思い出していない
だとしたらどうすればいい?
牧野が安全に子供を産み育てられる環境にするには・・
どうすればいいんだ?
もし、司のお袋さんが牧野が記憶喪失で司の子供を出産したと知ったらどうする?
おそらく彼女は牧野から子供を取り上げようとするだろう
道明寺家のそれも司の血を引く子供をあのお袋さんが見逃すわけがない
だけどそんな事は絶対に阻止しなければならない
だったらもう俺がやるべき事は一つしかない
牧野が安心して子供を育てていける環境にするには‥
この時点で俺は覚悟を決めた
だけど俺一人の力では無理だ・・
受話器を取りパリに電話をする
「もしもし、あきらです」
『ああ、どうしたんだ?何かあったのか?』
「はい、ご相談したい事がありますのでお時間を作っていただけないでしょうか?」
『それは構わないが、お前はこっちに来れるのか?』
「はい」
『そうか、では予定を確認して折り返し連絡する。
いいか。』
「分かりました、それではお待ちしております」
そう言って電話を切った
電話の相手は俺の父親・・・
親父からは1時間ほどで電話が掛かってきた
俺は週末にパリの親父に会いに行く

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