Family 105

「つくし！」


画面の中の光景に電話を握りしめたまま
立ち尽くしていたあたしの背後から響いてきたあたしを呼ぶ声に
振り向くと慌てた様子のパパと健がこちらへと駆け寄ってきた


二人の姿を見た途端、視界がグラリと歪み
足に力が入らなくて立っていられなくて
その場にへたり込んでしまった


慌てて駆け寄った二人に助け起こされる


「パパ！
優紀は？！優紀は大丈夫よね？！」

助け起こしてくれたパパの両腕を掴む手に力が入る

「あぁ、分かってる！
今、状況を調べさせてるから
お前は健と双子を連れて屋敷に行ってろ！」

大丈夫だと言わなかったパパの言葉に
息苦しさみたいな物を感じて上手く立っていられない


「ヤ、ヤダ！パパと一緒にいたい！」


きっとお屋敷に居ても落ち着かないし
少しでも早く情報が入る場所にいたかった


そんなあたしの気持ちを察してくれたのか
パパは後ろに居る健と西田さんに

「健！双子連れて屋敷に行ってろ！
西田！翼に屋敷に行ってるよう連絡しとけ！」

と指示を出した


「分かった」

「畏まりました」


「つくし！とりあえず俺のオフィスに行くぞ！
歩けるか？」


「う、うん、大丈夫。
歩ける‥けど‥どうしよう？
もし優紀だったら‥どうしよう‥パパ！」


「あいつも俺達の仲間だ！
どんなことをしても必ず助け出してやるから！
とりあえず上に行くぞ！」


パパに支えられながらパパのオフィスへと入った


ソファに座らされたけれど心配と不安に押し潰されそうで
隣に腰を降ろしたパパの手を握ったままだったあたし


東京の街にゆっくりと夜が降りてくる





ロンドンのオフィスに入ってすぐに
パリに居るはずの類から連絡が入った


スマホの画面に表示されている名前は類

類の方から掛けてくるなんて年に一度あるかないかの事

珍しい事もあるもんだと思いながら電話に出ると
これまた珍しくちょっと緊迫感を漂わせた類の声が耳に飛び込んできた


「もしもし、類か？」


『あきら？！
今すぐテレビ付けて！』


「ん？なんだよ？いきなり？
なんかあったのか？」


『いいから！早く、ＢＢＣ見て！』


「分かったよ、ちょっと待て」


類に促されるままオフィスに置かれているモニターをオンにして
ちゃんとをＢＢＣに合わせた所で
動きが止まった


「類！これっていつからやってる？！」


『まだ２、３分くらい。
ここって牧野の友達が居るどころだよね？』


「あぁ、そうだ！」


画面には地図も映し出されている

類の言う通り優紀ちゃんが活動している地域だった


スマホを繋いだまま視線は画面に向けたまま
内線で秘書を呼んだ


事件発生から半日以上が経過しているがまだ詳細は不明

襲撃犯の正確な人数すら分かっていない状況で
辛うじて難を逃れてきた村人の証言も曖昧で
状況が全く見えない状態だから


オフィスに入ってきた秘書に最優先で情報を集めるよう指示を出した


『ここって旧イギリス領でしょ？』


「あぁ‥」


『だったらあきらの方が色々と融通が効くでしょ？
俺も手伝える事があればなんでもするからさ
牧野の友達の安否確認してよ』


「あぁ、指示は出した。
また連絡する！」


『分かった』


類との電話はそこで終わり
直ぐに日本に居る司に連絡を入れたが
生憎、会議中だとかで電話口に出たのは西田だった


西田にはグダグダと説明する必要はないから
簡潔に現在分かっている事だけを伝えると
電話口の西田も一瞬だけ息を飲んだのが分かったが
すぐにいつもの冷静な声で”すぐに対処いたします”とだけ告げ通話を終え
そのまま総二郎と牧野にも連絡を入れた


アフリカの小国の国境付近で起きた襲撃事件が
遠く離れた地に居る俺達に暗い影を落として行く








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