箱根で一泊しませんか？ 2

「で、結局、お前が泣かされてんじゃねぇーかよ！？」


「うるせぇ！
泣いてねぇーし！泣かされてもねぇ！」


「だったらなんで俺らを呼び出すんだよ？！」

「そーだぞ！俺らだって忙しいんだから
気安く夫婦喧嘩に巻き込むなよな！」


「喧嘩じゃねぇーし！
巻き込んでねぇーし！
お前らこそ首突っ込んでくんじゃねぇーよ！？」


「いきなり電話してきてこっちの予定も聞かずに
集合掛けて来たじゃねぇーかよ？！
いい加減にしとかねぇーとダチやめんぞ！」


「うるせぇ！とにかく喧嘩じゃねぇ！
あいつが一方的に俺様を怒らせただけだ！
甘い顔したらつけあがりやがって！
最近、我が儘が過ぎんだよ！
そろそろ俺様も我慢の限界なんだよ！
オイ！お前ら！なんかあいつをギャフンと言わせる方法を考えろよ！」


「ギャフンって‥」

「お前、仲直りしたいんじゃなくて
マウント取りてぇーのか？！」


「あいつが素直に自分の非を認めて謝ってきたら
許してやらねぇ事もねぇけど
あいつは素直じゃねぇからな！」


「素直じゃねぇーのを承知で惚れたんだろ？
悪いこと言わねぇからくだらねぇ事考えずに
同窓会ぐらい笑って送り出してやれって！」


「そーだぞ！ここはデン！と構えて
器の大きなとこ見せつけてやったら
あいつも惚れ直すんじゃねぇーか？」

「俺様は器だけじゃなく全部がでけぇんだよ！
ったく！お前らは使えねぇーな！」

「使えねぇとか言うな！
そもそもが協力してやるなんて一言も言ってねぇし！」


「ダチなんだから協力すんのは当たりめぇだろーが！？」



「仲直りの協力だったらしてやるけどよ‥
お前がマウント取りたいだけっつーのはちょっとなぁ‥」


「だからさっさと謝って帰ってきてもらえって！
そんでもって笑って送り出してやれって！
それで万事上手く行くだろーが？！」


「うるせぇ！温泉で泊まりの同窓会なんて
死んでも行かせられっか！」


「泊まりなんか？」


「そーだよ！
担任が定年で退職するからそのお祝いも兼ねて
箱根で１泊とかふざけんな！
挙げ句に温泉入るから跡付けんなとか言いやがって！
ムカつくから跡付けまくってやったら
殴る蹴るの暴力でおまけに同窓会が終わるまでおあずけだとか言いやがって！
ふざけんなってんだ！俺は夫なんだぞ！？
なんで温泉なんかの為におあずけにされなきゃなんねぇーんだよ？！
そんなに温泉に入りたきゃ俺が好きなだけ入らせてやるっつーの！」


「俺、一緒に行こうかな～温泉」


「はぁ？ざけんな！なんでお前が一緒に行くんだよ？！」


「だって牧野は一緒に来ていいって言ってたんだろ？
だから俺も行こうかなと思っただけだよ。
司も行く？一緒に」


「お前は誘われてねぇ！
ついてくんな！」


「誘われたら行っていいの？
じゃあ、聞いてみる」


『もしもし？俺だけど。
同窓会、俺も行っていい？』


『うん、分かった』


「他も家族連れて来る人達もいるからいいってさ。
だからＯＫでしょ？」


「ざけんな！お前は家族じゃねぇ！」


「確かに、でもさ俺って牧野の魂の一部みたいなもんだからさ
ある意味、司よりも近い関係かもね」


「あっ！でもそうなると俺の一部が司と結婚してるって事になるよね？
それはヤダなぁ、なんか気持ち悪い」


「それはこっちの台詞だ！
ざけんな！俺は絶対、認めねぇからな！
あいつに指一本でも触れてみろ！ぶっ殺してやるからな！
あークソッ！やっぱあの女、監禁してやる！」


「監禁する前に帰って来てもらえよ！」


「るせぇ！」


「あ～行っちゃったね、司。
結局、俺達を呼び出したのって
一人で寂しかったからなんじゃない？」


「あぁ、そうだな‥
でも、あいつ今、家出してんだろ？
居場所知ってんのか？」


「ＳＰから連絡行ってるでしょ」


「お前、知ってんのか？」


「知ってるよ、さっき教えてくれたから」

「あいつ、どこにいるんだ？」


「ん？あきらんち」


「ゲッ！マジか？！
なんでそれを先に言わねぇーんだよ？！
俺も帰る！お前らも一緒に来い！」


「めんどくさいから、ヤダ」


「うるせぇ！さっさと来い！」








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