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月夜に 15

こんにちは。(#^.^#)
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴

本日は
『Family 115』
『Fly High 14,15』
『月夜に‥14,15』
の5本立てです。🎵






その夜、俺は親父に櫻のスケッチブックを見せた

親父が興味を示したのは言うまでも無い

「これは本当に櫻が一人で描いたものなんだな?」

「はい、櫻に確認しましたし、櫻が嘘をつくとは考えられません」

「そうか・・で、お前はこれをどうしたいんだ?」

「出来れば櫻を当社のデザイナーに採用したいと思っていますが、
 いかがでしょうか?」

「お前はそれがどういう事か分かっているのか?」

「はい、分かっているつもりです。ですが、私は櫻の才能に掛けてみたいんです。
 私が責任を持ってバックアップします」

「櫻をデザイナーにするという事は世間に櫻の存在が知れる事にもなるんだぞ。
 もし櫻の事が公になればいずれ雛の事も知られるだろうし、
 櫻の過去も詮索されるかもしれない。そうなった場合、お前はどうするつもりだ?」

親父の言うとおりかもしれない、もし櫻がデザイナーとして成功すれば
その存在を隠し通すことは難しくなるだろうし顔も世間に知られてしまう

だが、俺には考えがあった

櫻が記憶を無くしてもうすぐ6年になるがいまだに何も思い出せていない

櫻は口に出しては言わないが、思い出したいと思っているのは明らかだ
いつも身近で櫻を感じているあきらにはそれが痛い程分かっていた

牧野は本来、活動的で働く事が好きな女性だった
だから社会に出て働く事でそれがいい刺激になればと思っている

「そうならないように私が責任を持ちたいと思っています。
 お許しいただけないでしょうか」

「お前の考えは分かった。だがな、櫻と雛の事はやはり私の一存では決められないのだ。
 私個人の意見としては櫻が社会に出て働く事はいい事だと思うがね。
 それにもう6年だ、そろそろ私達もお前も覚悟を決める時が来たのかもしれないな」

親父達も櫻の書いたデザイン画を見て
櫻をデザイナーにという俺の意見に賛成してくれたようだった

社内では早速、デザイン部門の人間が召集され
櫻のデザイン画についてのミーティングが執り行われた

その結果、櫻は芸術大学の学生のままデザイン部門のデザイナーとして働くことになった

櫻は当初、デザイナーの仕事をする事に戸惑っていた

「ねぇ、絶対にムリだよ!デザイナーなんて出来るわけないでしょ!?」

「どうして?そんなのやってみなきゃ分かんねぇだろ?」

「だって私はただ雛の為にかわいい洋服を作ってあげたいって思っただけなのに
 それがどうしてデザイナーって話になるのよ?」

「お前が雛の為にって考えたものだからこそ愛情がこもってて
 そのやさしさが洋服を通して人に伝わるんだと思ってるよ」

「・・本当にそう思ってる?」

「あぁ、思ってるよ、櫻なら大丈夫だ!
 俺もついてるし一度挑戦してみないか?」

「挑戦・・か、う~ん・・それもいいかもね。分かった・・がんばってみる」

「そうだ、がんばれ!櫻」

こうしてデザイナー 美作櫻が誕生した

櫻の雛を思う気持ちが新しい人生の扉を押し開いた





櫻がデザイナーとしてスタートを切ってから半年ほど経った

仕事を始めてすぐの時は社内の人間の櫻を見る目には厳しい物もあったけど
それも元来の性格の良さと根性で乗り切っていた

身内という贔屓目で見ても櫻は本当によくやっていた

試験的に発表した櫻デザインの子供服は予想以上の反響があり新たに

『sakura』

というブランド名で展開していく事が正式に決まった

こうなると俺も櫻も学校どころか休日もないほどの忙しさで
しばらくは仕事に没頭していた

結局、俺はパリに来てから一度も日本に帰っていない

何度か類と総二朗がパリまで会いに来てくれたが
NYに居る司とはプロムで別れたあと一度も話してなかった

総二郎からは定期的に連絡はあるが話の内容はいつも櫻の事で
司も類も必死で行方を探しているようだった

俺は心に罪悪感を抱きながらも櫻と雛の居るパリでの生活が当たり前になっていた

そんな中で一つ問題がおこった

事の始まりは類から掛かってきた電話だった

『あきら?』

「類か?どうしたんだ?お前が電話してくるなんて珍しいな」

『うん。昨日、静から連絡があったんだけど
 静がパリで牧野らしい女性を見かけたらしいんだ・・』

「・・えっ・・・・・!?」

静に見られた・・・・?

「静が見たのって本当に牧野だったのか?
 パリのどこら辺で見かけたんだ?」

『静も一瞬だったけどとにかく似てたって、
 道の向こう側だったから声は掛けられなかったみたいだけど。
 場所があきらの会社の近くみたいなんだ』

会社の近く・・・だったら恐らく静が見たのは櫻に間違いないだろう・・・・

「・・・そうか・・・パリで・・・
 で、司には話したのか?」

『まだだよ、静が見たのが牧野だっていう確証は無いしね。
 司に話したらあいつすぐにでもパリに行って探し回るだろうし。
 そんな闇雲に探しても見つからないだろうし・・だからまずあきらに電話したんだ』


「そうか、分かった。俺の方でも調べてみるよ。」

『お願いね』

「ああ、ところでみんな元気か?」

『元気だよ、あきらも一度帰ってくれば?
 みんな会いたがってるよ。』

「そうだな、俺もみんなに会いたいよから
近いうちに時間作って帰るよ。」

みんなに会いたいという気持ちは本心だ

「なぁ、類?司の様子はどうだ?あいつ、大丈夫なのか?」

『司は相変わらずNYで忙しいみたいだけど、元気だよ。
 でも、牧野の事かなり限界かもしれない』

「・・限界?」

『うん、牧野を探してる事は間違いないし今でも気持ちは変わってないけど、
 全然笑わなくなったしいつも辛そうな顔してる』

「・・そうか・・」

『それにね俺たちがこれだけ探してるのに何の情報も無いのっておかしい気がするんだ。
司もおかしいと思ってるみたいで、誰かが意図的に牧野の情報を隠してるんじゃないかって・・・』

「そうだな・・分かった、俺もそれを考慮して調べてみるよ・・」

『待ってる、じゃぁ牧野の事よろしくね』

「ああ、分かった、じゃぁな。」

類からの電話を切ると背中に冷や汗が流れている事に気づいた

一気に現実の世界に引き戻される

どうする・・・?

このまま何も分からなかった事にしておこうか・・

それであいつらが納得するだろうか?

やっと見つけた小さな手がかりを追って

あいつらがパリに来たら俺はごまかしきれるだろうか・・・・?

自信はナイ

それに櫻の事は俺の一存では決められない

仕方がない・・・・・俺は親父の元へ

社長室へと向かった




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kirakira
Posted bykirakira

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