Family 117

こっちに来て３日目

今夜は屋敷で楓さん主催のパーティーがあるらしく
俺達も出席するようにと厳命が下っている


はっきり言って面倒くさい


道明寺司の息子というバックボーンに加えて
父さん譲りのこのビジュアルのお陰で
ケバい女がまとわりついてくる


露出の多いドレスで殊更に作り物の胸やお尻を強調させ
箒か？！っつぐらいの長さの付け睫をバサバサしながら
お前はウルバリンか？！っつうぐらいの長い爪で
吐きそうな程、香水の匂いをプンプンさせて
“健様”なんて呼ばれた日には気持ち悪過ぎて目の前の女をバズーカでぶっ飛ばしたくなる


父さんにしても同じような状況なのに
どうして平然としていられるのか不思議で
以前、聞いた事があったが返ってきた答えは



“お前はまだまだ修行が足りねぇーんだよ！”


だけだったけれど


俺が思うにきっと父さんは表情は１ミリも動かさず
頭の中ではすり寄ってくる女たちを大量虐殺していると思っている


表現は悪いけど父さんにとっては母さん以外の女なんて
全員が犬かネコ

そもそも人間ですらない

俺も同じで望以外は大根にしか見えない


あ～あ‥今頃、望はなにしてっかな～？

会いたいなぁ‥

やっぱ無理やりにでも連れて来れば良かった


何に遠慮してんだろ俺

父さんの言う通りやっぱ小さく纏まりすぎてんのかな？


パーティーの準備の為に昼過ぎには屋敷に戻ってきた俺と父さん


父さんは書斎で仕事してるみたいだけど
俺はとりあえずやる事も無くて
自室のベッドに寝っ転がり
頭の下に手を入れぼんやりと天井とにらめっこしているだけ

こんな時は無性に望に逢いたくなる


声だけでも聞きたいけれど
東京は真夜中
さすがにこの時間じゃ寝てるよな‥


ベッドのサイドボードの上に置いていた携帯を手に取り
画面に望の番号を呼び出したけれど
掛けるのは躊躇して
保存されている望の写真を眺めていたら
ノックもせずドアが開いて母さんが部屋に入ってきた


「コラ！健！」

かなりご立腹の様子の母さん

父さんが電話で母さんを呼んだ時から
こうなる事は予想済みだったから
大して驚きもせずベッドの上で身体を起こした


「ん？」


「ん？じゃないっつーの！
もう少しまともな返事出来ないの？！」


「ん」


「もぅ！心配するんだから勝手に国境を越えるな！」


「国境じゃなきゃいいの？」


「もぅ！屁理屈言うな！」


「ごめん。
今度からは越えるのは県ぐらいにしとく！イテッ！」


母さんに頭を叩かれた‥


「もぅ！そんな可愛くない事ばっかり言うんだったら
望ちゃんに会わせてあげない！
せっかく連れて来てあげたのに！」


「ん？母さん？
今、なんて言った？」


「望ちゃんを連れて来てあげたの！
でも可愛くないから会わせてあげない！って言ったの！」


望を？


母さんが？


連れて来た？

ＮＹに？


「マ、マジ？」


「マジだよ～ん」

って言いながらピースサインしてくる母さんにちょっと脱力

「母さん！」


「ちょ、ちょっと！痛いって！健！」


ベッドの上で向かい合わせに座っている母さんの両腕を掴んだ俺


「望はどこ？
屋敷に居るの？それともホテル？」



「可愛くないから教えてあげな～い！」


「母さん！面倒くさいってそれ！」


「面倒くさくなんかないも～ん！」


すっかり臍を曲げてしまった母さんにお手上げ


思春期真っ只中の息子を捕まえて
少し頬を膨らませ可愛くないを連呼する母さん


面倒臭くないわけないじゃん！


かなり面倒臭いっつーの！







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