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月夜に 19

こんばんは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴







「類達が牧野が居なくなったって騒いでいた時、俺もその場にいたんだ。
 そしてその時すでに牧野は俺の所に居た‥俺は牧野の居場所を知ってて
 知らない振りして類達と一緒に探すフリしてた・・最低だよな・・」

「そうするしかなかったんでしょ?」

「そうだな、その時の状況を考えればそうするしかなかった。
 だから後悔はしてないよ。
 だけどそれが正しかったのかは分からない」

牧野が俺の妹になった経緯は全て話し終えた

俺が話した内容は静にとってもさすがにショックだったようで
しばらく考え込んでいたが・・

「じゃぁ、つくしちゃんは今でも記憶が無いの?」

「ああ・・今でも自分の名前すら思い出してない。
 牧野つくしって名前だった事は俺が教えたから知ってるけど、
 知ってるのと思い出すのでは全然違うだろ?」

「でも、司の子供がいるんでしょ?
 司は自分の子供が居る事も知らないでつくしちゃんを探してるのね・・?」

「そうだな、だけど言えなかったんだ‥
櫻の事を覚えていない司に子供の事を、話したらどうなってたと思う?
もし、司のお袋さんに知られたら櫻と雛はどうなってたと思う?」

「まさか・・いくらおば様だってご自分の孫を・・」

「俺は常に最悪の状況を考えて行動してきた」

「でも、今は司の記憶は戻ってるわよ?」

「あぁ、だけど櫻の記憶が戻っていない。
 俺も司の事があるから櫻だって案外早くに思いだすんじゃないかと思っていた。
 まさか、6年たった今でもこの状態が続いているとは思ってなかったよ。
 なぁ、自分が誰なのかも分かっていない櫻に司を会わせて上手く行くと思うか?」

「お互い傷つけ合うだけになりかねないわね・・」

「司のことだから何とかして櫻に自分の事を受け入れさせようとするだろう、
 だから会わせなかった…それに、教えられた記憶は単なる情報でしかない。
 櫻が自分で思い出さないと意味が無いんだ」

「だけど、つくしちゃん・・全部忘れてしまうほどショックな事ってなんだったのかしら?」

「さぁな、それは櫻にしか分からない。
でも、あいつだって思い出したいと思ってるんだ。
あまり口にはしないけど雛の父親のことは気になってるみたいだしな」

「そう。でも、何があったにせよ、一番大切なのは雛ちゃんよね?
 それにしてもおじ様達が4人揃ってガードなさってるんじゃ
 いくら司達が探してもどうしようもないはずよね・・」

「そうだな・・」

「・・・分かったわ。明日にでも類に電話して私が見たのは
 つくしちゃんじゃなかったって言っておくわ、それでいいんでしょ?」

「すまない・・・・」

「大丈夫よ、自分で決めた事なんだから。
 上手くやるから、まかせておいて」

「あぁ、頼む」

「それで櫻ちゃんと雛ちゃんにはいつ会わせてくれるの?」

「櫻は今からでもいいぜ、多分まだ部屋で仕事してると思うから
 雛はお袋が双子と一緒にスイスの別荘に連れて行ってて今は居ないんだ」

「雛ちゃんって今、幼稚園に通ってるの?」

「あぁ、来年、小学校に上がる」

「一つ聞いていい?」

「なんだ?」

「もし、櫻ちゃんの記憶がこのまま戻らなかったら
 あなたはどうするつもりなの?」

「どうするって?」

「私が気付かないとでも思ったの?
 あなた、櫻ちゃんと結婚したいと思わないの?
 それとも一生、兄のままでいるつもりなの?」

「・・・・・」

「このまま記憶が戻らない事だってあるんでしょ?
 あなただってずっと独身ってわけにはいかないのよ」

「そうだな・・」

「二人を司に返せるの?」

「返せるよ」

「ウソつきね」

「ウソじゃないよ。最初っからそのつもりだし親父も言ってたけど
 そろそろ覚悟を決める時が来たのかもしれないって」

「それって櫻ちゃんを美作家の娘として世間に公表するって事?」

「多分な、どういう形になるのかは分からないけど
親父達は考えてるみたいだ」

「そう、そうなると大変ね、類達が心配よ。
 特に司がね‥急に現れたつくしちゃんが記憶喪失で自分の子供がいて
 ずっとあなたと一緒だったって知ったら、どんな行動に出るか分らないわね・・」

「俺は殴られるぐらいじゃ済まないかもな・・」

「そうかもね・・でも、裏切りついでに一つ言っておくわ。
 もし、櫻ちゃんの記憶が戻って司達の事を思い出した時は
 ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃダメよ」

「あいつは俺の事そんな風に見てないよ」

「だとしてもよ。この6年間、あなたは櫻ちゃんだけを見てきたんでしょ?」

「そうだな・・」

「だったら、ちゃんと伝えなきゃ。たとえどんな結果になったとしてもね
 そうしないと、今度はあなたが前に進めなくなるわよ」

「分かった・・・・」

「じゃぁ、櫻ちゃんに会わせてくれる?」

「あぁ、呼んでくるよ」

あきらに連れられて部屋に入ってきた彼女は少し戸惑っているようだった

数年ぶりに会った彼女は昔の面影を残したまま驚くほど美しい女性に成長していた

私はなるべく彼女を混乱させないように、自己紹介をし友人だった事を伝えた

彼女との再会は最初のうちはぎこちなかったが
少しずつ固さもとれ短い間だったけど楽しい時間を過ごす事ができた


1時間程話していたけど
彼女はまだ仕事が残っているからと自室に引き上げていった

再びあきらと二人っきりになったリビングで

「ねぇ、櫻ちゃん記憶が無いようには見えないわね?」

「そうだな、あいつずっと記憶が無い事を隠してきたからな。
 そのせいじゃないか?」

「そう、櫻ちゃん、どんな気持ちだったんだろう?
 雛ちゃんの父親の事だって不安よね」

「あいつの性格は記憶が無くなる前と大して変わってないから
 一人で考え込んでることがあるよ。でも、俺はそんな櫻の姿を見ても、
 無理するなとしか言えないんだ・・全てを話してやれたらどんなにいいかと思うけどな‥
 でもそれじゃダメなんだ・・何の解決にもならないんだ」


「どうしてこんな事になってしまったのかしら?
 唯一の救いは彼女の顔に笑顔があることよ、
 それにあきらがちゃんと彼女を守ってあげてるって事。
 これからもちゃんと彼女の事支えてあげてね」

「ああ、悪かったな、静まで巻き込むことになってしまって」

「いいのよ、自分で決めた事よ気にしないで。
 じゃぁ、私はそろそろ帰るわね」

「送らせるよ」

「ありがとう」

その日から私は櫻ちゃんとなるべく時間を作って食事やショッピングを楽しんでいた

そして、類は私が電話で別人だったと伝えるとがっかりしていたが

疑問には感じていないようだった

類に嘘を付く罪悪感はあったが

あきらと櫻ちゃんの為、そうする事が一番だと感じていたから

私の決断が正しい事なのかは分からない・・

だけど、ずっと一人でがんばってきたあきらの力になりたかった





応援ありがとうございます。
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kirakira
Posted bykirakira

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