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月夜に 20

こんにちは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴




東京 メープルホテルのティーラウンジ

桜子が滋を待っていた

待ち合わせ相手の滋は約束の時間より30分程遅れているが

いつもの事・・・

滋が約束の時間通りに来たためしはない・・

慣れっこの桜子は優雅にお茶を飲みながら送られてくる視線を適当に交わしていたが
それにも飽きてきたころやっと滋の姿がラウンジの入り口に見えた

「あ~あ、やっと見つかったと思ったのに…!」

どっかりと桜子の前に座った滋の第一声がコレ

だけど動じない

遅かったですね?とか・・

何やってたんですか?とか・・

聞いても無駄な事・・

嫌味だって通じないから

何も無かったようにサラッと受け流す

長い付き合いの桜子が身につけた滋の操縦法・・・

「本当に先輩どこ行っちゃったんでしょうね?」

「よっ!二人してシケタ面して何やってんだ?」

聞きなれた声に振り向くと総二郎が立っていた

ただそれだけなのに・・・

ラウンジ中の女性の視線が彼に集まっている
彼も当然そのことには気づいているが
いつものことだと全く気にしていない

送られてくる視線を軽くかわしながら総二郎は桜子と滋のテーブルに座った

「あっ!!ニッシ―、久しぶり~!」

「西門さんこそどうしたんですか?」

「俺はデートだよ。
 で、お前らは女二人で何やってんの?」

「お茶してるだけですよ」

「ねぇニッシー?つくしの事で何か分かった事ある?」

滋がテーブルから身を乗り出すようにして総二郎に迫っている
総二郎はその迫力に少し体を後ろに反らしながら・・

「いいや、パリの方も空振りだったしな・・」

「本当?!本当に間違いだったの?」

「あぁ、静から別人だったって連絡があった後
 あきらからも別人だって返事が来た」

「あきら?あきら君も調べてたの?」

「類が電話で頼んでたんだ。
 俺もあきらと話したけどこの6年間にフランスに牧野が入国した記録もなかったってさ」

「もしかして、先輩・・名前が変わっちゃってるって事ないですよね?」

「桜子・・何言ってんのよ!」

「だってもう6年ですよ、それだけ時間がたってたら先輩だって・・」

「そうだな・・・それにしても俺達がこれだけ探してて
何も出てこないのって異常だよな」

「ちょ、ちょっと!ニッシーまで何言ってんのよ!」

「それって、誰かが先輩の情報を隠してるって事ですか?」

「確証はないけどな、最近では司も類もそう思い始めてる」

「でも、誰がそんな事で出来るんですか?
 道明寺さん達から隠すのってよほどの人じゃないと出来ないですよ」

「!!!・・まさか・・司のお母さんじゃないわよね?!」

「椿姉ちゃんの情報ではそれは無いらしい
 むしろその逆でお袋さんも牧野の事探してるみたいだってよ」

「それって・・司のお母さんがつくしとの事認めたって事・・?」

「まぁ、そういう事になるかな・・」

「どう言う事ですか?何か歯切れが悪いですけど」

「あぁ、認めたって言うか・・認めざるを得ないと言うか・・・
 とにかくお袋さんは司には牧野じゃないとダメだって事にようやく気が付いたんだよ」

「そんな…司って今どんな状態なの?」

「見た目は元気で普通だけど、笑わねぇし・・仕事以外の事では口もきかない。
 屋敷でも急に暴れ出したりして、使用人も怖がって誰も司に近付けねぇから
 今、あいつの部屋に入れるのはタマさんぐらいだ!」

「・・・それはまたすごいですね」

「桜子、関心してる場合じゃないでしょ!
 あんたはどうしてそんなに冷静でいられるのよ!」

「滋さんがここで興奮しても何も解決しませんよ。
 とにかく私達が一刻も早く先輩を見つけ出すしかありませんよ」

「そうだな・・・でもどうするかだ・・・
 もう、偶然か奇跡でもおきない限り見つけられない気がしてきたぜ」

「・・・・そうですね」

「桜子、あんた一体どっちなのよ!」

「滋、そんなに興奮するって!とにかく近いうちにあきらも戻ってくるから
 そん時みんなで集まって対策を練ろうぜ!いいな?」

「う・・・・ん・・・分かった・・・」

総二郎が泣いている滋の頭を撫でながらなぐさめている
その光景を見ていた桜子がおもむろに席を立つと

「それじゃぁ、私、これからデートなんで西門さん、滋さんをお願いしますね。」

それだけ言うとさっさと店を出て行ってしまった

「あっ!オイ!桜子・・・俺もデートなんだよ!
・・って・・・聞いてない・・・ったく!」


滋はまだ泣いている


ハァ~・・


総二郎は携帯を取り出しどこかにメールをしている

「これでOK!っと、ほら、滋!もう泣くな!飲みにでも行くか?」

「・・ニッシー、デートなんでしょ?」

「いいよ、キャンセルした。それより行くのか?どうする?」

「行く~~」

パッと顔を上げた滋が笑顔で言うと

「そっか、だったらほら涙ふけ!
 行くぞ!」

「うん」





翌朝、メープルホテルのスウィートルーム

閉じられているカーテンの隙間から微かに朝陽が射し込んできている

ゆっくりと意識が覚醒してくるが
目がまだ光に慣れていない

光に目を顰めながら
頭はすでに動き始め今の状況を確認し始めている

えっーと、ここは?

・・・・・・・!

総二郎は自分がベッドに裸で寝ている事に気付いた

横を見ると・・


誰かいる?!

ハァーーー!!?

マ、マジかよ・・・

夕べ、一緒に飲んでた


かなり飲んだよなぁ・・?


隣で滋が眠ってる・・・

軽く寝返りを打った滋の体から身に纏っていた
シーツが少しずれ白い肩が覗いている・・・・・

恐る恐るシーツを少しめくって中を覗いて見る・・・

やっぱり・・・・

俺・・・よく覚えていない・・・けど・・・この状況は・・・?

やっぱ・・そういう事だよな・・・?

ハァ~どうする・・総二郎・・??

どうするんだ?!

不覚だ・・英徳一のプレイボーイと言われた俺が
酔っ払って何も覚えていないなんて・・

軽くパニックになりながら隣で眠っている滋を見ていると
目を覚ました滋と目が合った

部屋には気まずい沈黙が流れる

「お、おはよう・・・」

「あっ・・おはよう・・・・」

「ねぇ?私・・夕べ・・・よく、覚えてないんだけど・・・?」

「えっ!あっ・・ごめん・・・!」

「・・どうして・・ごめん・・なの?」

「あっ・・いや・・俺もよく覚えてなくて・・・その~・・
 あの・・なんだ・・やっぱ、そういう事だよな・・・?」

「う・・・ん・・たぶん・・・」

「なぁ 俺達、このまま付き合っちまおうか!」

初めてだぞ、俺から女にコクったのなんて

なのに・・・

「へっ…!何言ってんの?」

「・・い、嫌か?」

「ヤダよ!」

即答すんなよ!

傷つくだろ!!

「・・・俺じゃ不服なのか?」

「そうじゃないけど・・・ニッシーって付き合ってる女の人沢山いるでしょ?」

「あーそんな事か」

「・・そんな事って・・私には大切な事なのよ!」

「大丈夫だ!お前と付き合うんだったら全部切るから!
 だから、なぁ、いいだろう?」

「…全部、切る…の?」

「そう、だから俺じゃ嫌か?」

「嫌…じゃ…ない…」

「そっか、じゃぁ決まりな!」

そう言うと総二郎は滋に覆い被さってくる

「ちょ、ちょっと、ニッシー、何してんのよ!」

「何してるって、決まってんだろ!夕べの事、あんまよく覚えてないから。
 とりあえずもう一回ヤッとこうかなって思って、ダメ?」

「ダ、ダメ・・って・・ダメじゃない・・けど・・・」

「そっ、じゃぁ!」

意外なカップルが東京で誕生していたその頃、パリでは・・・






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kirakira
Posted bykirakira

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