月夜に 21
こんにちは。(#^.^#)
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
パリ 美作家のダイニングルーム
櫻の仕事もようやく一段落がついてきた
「おはよう」
「おはよう」
「ママ~、おはよう~」
「お前今日は大学に行くんだろ?」
あきらが読んでいた新聞から顔だけ上げて聞いている
「うん。行ける時に行っとかないとね。
このままだと留年しちゃう」
「そっか。
俺も今日は一日大学に居るから終わったら迎えに行くよ」
「え~~いいよ!一人で大丈夫だよ」
「何だよ?俺が迎えに行ったら何か都合の悪い事でもあるのか?」
「・・・無いけど・・・でも、ヤダ!」
「じゃあ、いいだろ。
迎えに行くから、ちゃんと待ってろよ!」
「だから、いいって言ってるでしょ!
私の話、聞いてる?」
「聞いてるよ。だったら迎えを嫌がる理由を言えよ!」
「・・・だって、あきらが来たら大学のみんながうるさいんだもん!
前にあきらが校門の前で待ってた事があったでしょ?
その時だってみんな、あの人ダレ?って大騒ぎになったんだから!
兄だって言ったら紹介してって言われて断るの大変だったんだからね。」
「まぁ、俺の美しさは万国共通だからな」
私の抗議の声もあっさり無視してサラッと背中が痒くなるような事を言っている・・
「ふ~ん、自分で言ってて恥ずかしくならない?」
「ならないよ。真実だから」
「はい、はい。だから、大学には来ないでね。」
「行くよ」
「ヤダ!」
「お前も本当に頑固だよな!じゃぁ、近くのカフェで待ってるよ。
それならいいだろう?」
「・・・それだったら、いいけど・・」
近くのカフェでと言う言葉に渋々OKするとあきらは勝ち誇ったような表情で
「決まりだな。ホラ、さっさとメシ食わないと遅刻するぞ!」
「分かったわよ!」
「雛も早く食べちゃいなさい」
「あきらも新聞ばっかり読んでないで早くしないと遅刻するわよ」
「分かってるよ」
あきらは手にしていた新聞を折りたたみながら苦笑いしている
慌ただしい毎朝の光景・・・・・
この数年間、ずっと続いている彼と私と雛の三人だけが知っている風景・・・・
「それじゃぁ、私、先に出るわね」
「ああ、気をつけてな」
「うん、行ってきます」
明るい声で櫻がダイニングから出て行ったが、すぐに玄関の方で大声を出している
『ひな~、早くしなさい~』
『ママ、先に行くわよ~』
『は~い、ちょっと待って~』
俺はカフェオレの入ったカップを口に運び、騒々しい二人の声を聞きながら
ダイニングのドアが開くのを待っていた
ほどなくしてドアが開き
雛が顔だけを出す
「あきら~、行ってきます~」
「ああ、気をつけてな」
「うん。じゃぁね~~」
また玄関から声が聞こえてくる・・・
『ひな~~』
「ママが呼んでるぞ」
「は~い!!」
一度に俺と櫻の両方に返事をして雛が元気よく駆け出して行った
まったく騒がしい・・・
毎朝の日課・・・・
俺達はいつまでこの朝を続けていられるのだろうか?
この頃、ふとそんな事を考えてしまう。
この生活が永遠に続けばいいと思ってしまう・・・・事は罪なのだろうか?
だとしたら俺は喜んでその罰を受けよう・・・
だからもう少しだけ・・・こんな朝が続く事を・・・神にでも祈ろうか・・
櫻を大学まで迎えに行ったその日の夜、
三人で夕食を食べ終えた時、突然雛が言い始めた言葉が
俺と櫻の間にあるどうしても埋めることの出来ない溝を浮き彫りにする
「ねぇ~、あきら~お願いがあるの」
雛は俺の事をあきらと呼び捨てにしている
その事を櫻がいくら注意しても治らない…
俺は別にかまわないのだが…
我が家のかわいい悪魔は完璧な笑顔で俺を見ている
たった5歳のその笑顔に俺は弱い…
「何か欲しい物でもあるのか?」
「違うよ、あのね、雛もママみたいにあきらにお迎えに来て欲しいの。」
「なんだそんな事か、いいよ。いつでもお迎え行くよ。」
「本当に?!ヤッタ~!」
「ダ~メ!雛、あきらお兄ちゃまは忙しいのよ。
だから雛のお迎えに行ってる時間は無いのよ」
「え~ヤダ~!今、あきらはいいって言ったよ。」
「ダメ!それにあきらじゃないでしょ?あきらお兄ちゃまでしょ?
いい加減にしないさい。」
「や~だッ!雛もあきらにお迎えに来てもらうの!」
こうなったら雛は誰にも止められない
自分の願いが聞き入れられるまで言い続けるだろう・・
「櫻、もういいよ。そんなにキツく言わなくてもいいだろ?
それに俺がいいって言ってんだから。
でも、雛はどうして俺に迎えに来て欲しいんだ?」
「う~んとね、あきらがお迎えに来てくれるとお友達がね
み~んな雛ちゃんのパパってかっこいいねって言ってくれるの。
だから雛、あきらにお迎えに来て欲しいの!」
『ブッ!』
櫻が飲んでいたワインを吹き出した…
「ちょ、ちょっと雛、何言ってるのよ…」
雛の言葉を聞いて櫻がさらに怒っている
ったく・・・櫻は無視して
「そうか、そうか。雛はママと違って素直だな。
じゃぁ、さっそく明日、迎えに行くよ。」
雛の頭を撫でながら話すと雛は満面の笑みを浮かべている
「もう、それどういう意味よ!あきらはパパじゃないのよ!
雛、幼稚園でお友達にあきらの事、パパなんて言ってないわよね?」
「う~ん、分かんない…」
「ちょっと、雛!いつも言ってるでしょ!ウソ付いちゃダメって!
どうしてそんなウソつくの?」
「だって……」
「櫻、もういいだろう?そんなにきつく言わなくてもいいよ。」
「ダメよ!あきらはパパじゃないのよ、分かってるでしょ?」
俺だって分かってるよ…
だけどそんなに何度も否定するなよ…
その言葉を聞いた雛の瞳に涙が浮かんでいる
「じゃぁ、雛のパパはどこに居るの?
みんなにはパパがいるのに、どうして雛には居ないの?
雛もパパが欲しいの!」
今度は櫻の瞳が潤み始めた
いつかはこんな風に聞かれる時が来るとは予測していたが
あまりにも突然の事でどう答えていいのか分からなかった…
「…雛……ごめんね」
「…それはママにも分からないの」
雛の言葉を聞いた櫻はどう答えればいいのか分からないようだ
雛が自分の父親について知りたいと思うのは当たり前の事だが
櫻自身にも分からない父親についてどう説明すればいいのだろうか?

応援ありがとうございます。
ポチッとしていただければ嬉しいです🎵😍🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
パリ 美作家のダイニングルーム
櫻の仕事もようやく一段落がついてきた
「おはよう」
「おはよう」
「ママ~、おはよう~」
「お前今日は大学に行くんだろ?」
あきらが読んでいた新聞から顔だけ上げて聞いている
「うん。行ける時に行っとかないとね。
このままだと留年しちゃう」
「そっか。
俺も今日は一日大学に居るから終わったら迎えに行くよ」
「え~~いいよ!一人で大丈夫だよ」
「何だよ?俺が迎えに行ったら何か都合の悪い事でもあるのか?」
「・・・無いけど・・・でも、ヤダ!」
「じゃあ、いいだろ。
迎えに行くから、ちゃんと待ってろよ!」
「だから、いいって言ってるでしょ!
私の話、聞いてる?」
「聞いてるよ。だったら迎えを嫌がる理由を言えよ!」
「・・・だって、あきらが来たら大学のみんながうるさいんだもん!
前にあきらが校門の前で待ってた事があったでしょ?
その時だってみんな、あの人ダレ?って大騒ぎになったんだから!
兄だって言ったら紹介してって言われて断るの大変だったんだからね。」
「まぁ、俺の美しさは万国共通だからな」
私の抗議の声もあっさり無視してサラッと背中が痒くなるような事を言っている・・
「ふ~ん、自分で言ってて恥ずかしくならない?」
「ならないよ。真実だから」
「はい、はい。だから、大学には来ないでね。」
「行くよ」
「ヤダ!」
「お前も本当に頑固だよな!じゃぁ、近くのカフェで待ってるよ。
それならいいだろう?」
「・・・それだったら、いいけど・・」
近くのカフェでと言う言葉に渋々OKするとあきらは勝ち誇ったような表情で
「決まりだな。ホラ、さっさとメシ食わないと遅刻するぞ!」
「分かったわよ!」
「雛も早く食べちゃいなさい」
「あきらも新聞ばっかり読んでないで早くしないと遅刻するわよ」
「分かってるよ」
あきらは手にしていた新聞を折りたたみながら苦笑いしている
慌ただしい毎朝の光景・・・・・
この数年間、ずっと続いている彼と私と雛の三人だけが知っている風景・・・・
「それじゃぁ、私、先に出るわね」
「ああ、気をつけてな」
「うん、行ってきます」
明るい声で櫻がダイニングから出て行ったが、すぐに玄関の方で大声を出している
『ひな~、早くしなさい~』
『ママ、先に行くわよ~』
『は~い、ちょっと待って~』
俺はカフェオレの入ったカップを口に運び、騒々しい二人の声を聞きながら
ダイニングのドアが開くのを待っていた
ほどなくしてドアが開き
雛が顔だけを出す
「あきら~、行ってきます~」
「ああ、気をつけてな」
「うん。じゃぁね~~」
また玄関から声が聞こえてくる・・・
『ひな~~』
「ママが呼んでるぞ」
「は~い!!」
一度に俺と櫻の両方に返事をして雛が元気よく駆け出して行った
まったく騒がしい・・・
毎朝の日課・・・・
俺達はいつまでこの朝を続けていられるのだろうか?
この頃、ふとそんな事を考えてしまう。
この生活が永遠に続けばいいと思ってしまう・・・・事は罪なのだろうか?
だとしたら俺は喜んでその罰を受けよう・・・
だからもう少しだけ・・・こんな朝が続く事を・・・神にでも祈ろうか・・
櫻を大学まで迎えに行ったその日の夜、
三人で夕食を食べ終えた時、突然雛が言い始めた言葉が
俺と櫻の間にあるどうしても埋めることの出来ない溝を浮き彫りにする
「ねぇ~、あきら~お願いがあるの」
雛は俺の事をあきらと呼び捨てにしている
その事を櫻がいくら注意しても治らない…
俺は別にかまわないのだが…
我が家のかわいい悪魔は完璧な笑顔で俺を見ている
たった5歳のその笑顔に俺は弱い…
「何か欲しい物でもあるのか?」
「違うよ、あのね、雛もママみたいにあきらにお迎えに来て欲しいの。」
「なんだそんな事か、いいよ。いつでもお迎え行くよ。」
「本当に?!ヤッタ~!」
「ダ~メ!雛、あきらお兄ちゃまは忙しいのよ。
だから雛のお迎えに行ってる時間は無いのよ」
「え~ヤダ~!今、あきらはいいって言ったよ。」
「ダメ!それにあきらじゃないでしょ?あきらお兄ちゃまでしょ?
いい加減にしないさい。」
「や~だッ!雛もあきらにお迎えに来てもらうの!」
こうなったら雛は誰にも止められない
自分の願いが聞き入れられるまで言い続けるだろう・・
「櫻、もういいよ。そんなにキツく言わなくてもいいだろ?
それに俺がいいって言ってんだから。
でも、雛はどうして俺に迎えに来て欲しいんだ?」
「う~んとね、あきらがお迎えに来てくれるとお友達がね
み~んな雛ちゃんのパパってかっこいいねって言ってくれるの。
だから雛、あきらにお迎えに来て欲しいの!」
『ブッ!』
櫻が飲んでいたワインを吹き出した…
「ちょ、ちょっと雛、何言ってるのよ…」
雛の言葉を聞いて櫻がさらに怒っている
ったく・・・櫻は無視して
「そうか、そうか。雛はママと違って素直だな。
じゃぁ、さっそく明日、迎えに行くよ。」
雛の頭を撫でながら話すと雛は満面の笑みを浮かべている
「もう、それどういう意味よ!あきらはパパじゃないのよ!
雛、幼稚園でお友達にあきらの事、パパなんて言ってないわよね?」
「う~ん、分かんない…」
「ちょっと、雛!いつも言ってるでしょ!ウソ付いちゃダメって!
どうしてそんなウソつくの?」
「だって……」
「櫻、もういいだろう?そんなにきつく言わなくてもいいよ。」
「ダメよ!あきらはパパじゃないのよ、分かってるでしょ?」
俺だって分かってるよ…
だけどそんなに何度も否定するなよ…
その言葉を聞いた雛の瞳に涙が浮かんでいる
「じゃぁ、雛のパパはどこに居るの?
みんなにはパパがいるのに、どうして雛には居ないの?
雛もパパが欲しいの!」
今度は櫻の瞳が潤み始めた
いつかはこんな風に聞かれる時が来るとは予測していたが
あまりにも突然の事でどう答えていいのか分からなかった…
「…雛……ごめんね」
「…それはママにも分からないの」
雛の言葉を聞いた櫻はどう答えればいいのか分からないようだ
雛が自分の父親について知りたいと思うのは当たり前の事だが
櫻自身にも分からない父親についてどう説明すればいいのだろうか?

応援ありがとうございます。
ポチッとしていただければ嬉しいです🎵😍🎵
スポンサーサイト