月夜に 22
こんにちは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
黙ってしまった櫻の代わりに俺が口を開いた
「雛、パパの事知りたいのか?」
「知りたいよ」
「そうか・・でもな、ママにも分からないんだ」
俯いたままだった雛が顔をあげて俺を見ている
「どうして?」
「ママはね、雛が生まれる前に病気になっちゃったんだ。
その時、ママはいろんな事忘れちゃったんだ」
「忘れちゃったの?
ママ、病気なの?」
「そうだよ、今はもう大丈夫だけど。
忘れちゃった事まだ思い出せてないんだ」
「だから、ママが思い出すまでもう少し待っててあげてくれないかな?」
「う~ん・・分かった・・
雛、ママが思い出すまで待ってる・・」
「でもね、雛もパパが欲しいの。」
「そっか。じゃぁ、ママが本当のパパの事を思い出すまで俺が臨時のパパじゃダメか?」
「あきら、何言ってるの?」
ずっと黙って俺と雛の会話を聞いていた櫻が険しい顔で俺を見ている
「本当!いいの?雛、ずっとあきらがパパだったらいいなぁ~って思ってたの。
だから、うれしい~!」
雛は無邪気に喜んでいるが櫻は違う
「雛、ダメよ!あきらはパパじゃないんだから‥」
「え~っ、ヤダ!」
「櫻、いいよ。俺がいいって言ってんだから」
「あきら、甘やかさないで!」
櫻の怒りは収まりそうにないので俺は強引に話を終わらせる
このまま話していても平行線のままなのだから
「雛、明日も幼稚園だろ?今日はもう寝ておいで。
ちゃんと明日、お迎えに行くからな!」
「うん、ありがとう、パパ!!」
「もう、雛、いい加減にしなさい。」
「パパ、ママ、おやすみなさい~」
雛は櫻の怒りなど全く気にしている様子はなく
無邪気に手を振ってダイニングから出て行った
雛が自分の部屋に戻ると櫻の怒りは当然、俺に向けられる・・
「あきら、どういうつもりなの?」
「どういうつもりって、何が?」
「雛にパパって呼んでもいいって?」
「いいじゃん、別に。雛も寂しいんだよ」
「だからって・・あの子きっと幼稚園でもどこでもあきらの事を
私のパパはって言って歩くわよ?」
「あなたは本当の父親じゃないのに、誤解されたら困るでしょ?」
だから・・何回も言うなよ・・・パパじゃないって・・
分かってるよそんな事ぐらい・・・
「構わないよ。実際、父親みたいなもんなんだから。
今さら何言ってんだよ!?雛が産まれた時だって俺が立ち会ったんだぞ!」
「そうだけど・・た、立ち会ってくれって頼んだわけじゃないでしょ!」
櫻が雛を出産した時、俺は病院まで付き添っていた
病院の看護婦さん達は俺を父親だと勝手に勘違いして
強引に分娩室まで付き添わせ産まれたばかりの雛を俺に手渡した
「雛を一番最初に抱いたのは俺だろ」
「だから、そんな事を言ってるんじゃないでしょ?」
「美作あきらに隠し子がいるっ言われたらどうするの?」
「そんなの、言いたい奴には言わせておけばいいよ」
「そういう問題じゃないでしょ?」
「じゃぁどういう問題なんだ?
なぁ、櫻?やっぱり雛には父親が必要なんだよ」
「分かってるわよ。分かってるけど、思い出せないのよ…」
「だからだよ、お前が思い出すまでの間だけ俺が雛の父親役を引き受けるって言ってんだよ」
「もし、私がこのまま一生何も思い出さなかったら?」
「その時は、時期を見て俺が雛に父親の事を話すよ」
「そんな…もし、雛が会いたいって言ったらどうするの?
向こうは急に雛が現れたら迷惑なだけかもしれないじゃない?
そんな事になったら雛が傷つくだけでしょ?」
「大丈夫だよ。あいつは絶対に雛の事を迷惑に思ったりしないよ。
そんな事、俺が絶対にさせないから心配しなくていい」
俺の言葉を聞いた櫻は一度ゆっくりと目を閉じ深く息をつくと
悲しそうな表情のままで俺を見つめている
「あきらは私の事なんでも知ってるのよね…
なのに私は自分の事を何も知らない…」
「あんまり気にするな。俺は好きでやってるんだから
俺が何のためにお前と一緒にいるか分かってるだろう?
俺はお前を悲しませる為に一緒にいるんじゃないんだ、
だからもうそんな顔しないでくれ、頼むから。」
「うん、分かってる。ありがとう・・・
一つだけ聞いてもいい?さっき言った事って本当?」
「なにが?」
「雛の父親の事、その人は本当に雛の事を迷惑だって思ったりしないの?
私が勝手に雛を産んだ事、怒ったりしないの?」
「ああ、大丈夫だよ。むしろ喜ぶと思うよ、
あんなかわいい娘を産んでくれたお前に感謝するよ」
「ありがとう、あきら」
「どういたしまして」
そう言って微笑むとやっと櫻の顔にも笑顔が戻った
さっき言った事は本当だ
司が雛の事を迷惑に思うなんてありえない・・
もし・・司が雛の事を知ったら・・どんな行動に出るだろうか?
雛の父親の事はずっと気になっている・・
この6年間、記憶の事は思い出そうとすればするほど
どうして?という疑問ばかりが湧いてきて
何も思い出せない苛立ちと不安で前に進めなくなる
思い出したのに思い出せない
考えすぎると日常が立ち行かなくなる
だからなるべく自然に任せてと思い大学に通い仕事も始めた
だけど今度は忙しい日常に忙殺されて
一番大切な物を置き忘れたままになる・・
どちらに傾いてもペースが掴めない
堂々巡りが続いている・・・
あきらの事は信じている・・・
彼が雛の事は大丈夫だと言っているのだから本当にそうなのだろう・・
だけど・・将来、雛が父親の事で傷つくことだけは何としても避けたい

応援ありがとうございます。
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
黙ってしまった櫻の代わりに俺が口を開いた
「雛、パパの事知りたいのか?」
「知りたいよ」
「そうか・・でもな、ママにも分からないんだ」
俯いたままだった雛が顔をあげて俺を見ている
「どうして?」
「ママはね、雛が生まれる前に病気になっちゃったんだ。
その時、ママはいろんな事忘れちゃったんだ」
「忘れちゃったの?
ママ、病気なの?」
「そうだよ、今はもう大丈夫だけど。
忘れちゃった事まだ思い出せてないんだ」
「だから、ママが思い出すまでもう少し待っててあげてくれないかな?」
「う~ん・・分かった・・
雛、ママが思い出すまで待ってる・・」
「でもね、雛もパパが欲しいの。」
「そっか。じゃぁ、ママが本当のパパの事を思い出すまで俺が臨時のパパじゃダメか?」
「あきら、何言ってるの?」
ずっと黙って俺と雛の会話を聞いていた櫻が険しい顔で俺を見ている
「本当!いいの?雛、ずっとあきらがパパだったらいいなぁ~って思ってたの。
だから、うれしい~!」
雛は無邪気に喜んでいるが櫻は違う
「雛、ダメよ!あきらはパパじゃないんだから‥」
「え~っ、ヤダ!」
「櫻、いいよ。俺がいいって言ってんだから」
「あきら、甘やかさないで!」
櫻の怒りは収まりそうにないので俺は強引に話を終わらせる
このまま話していても平行線のままなのだから
「雛、明日も幼稚園だろ?今日はもう寝ておいで。
ちゃんと明日、お迎えに行くからな!」
「うん、ありがとう、パパ!!」
「もう、雛、いい加減にしなさい。」
「パパ、ママ、おやすみなさい~」
雛は櫻の怒りなど全く気にしている様子はなく
無邪気に手を振ってダイニングから出て行った
雛が自分の部屋に戻ると櫻の怒りは当然、俺に向けられる・・
「あきら、どういうつもりなの?」
「どういうつもりって、何が?」
「雛にパパって呼んでもいいって?」
「いいじゃん、別に。雛も寂しいんだよ」
「だからって・・あの子きっと幼稚園でもどこでもあきらの事を
私のパパはって言って歩くわよ?」
「あなたは本当の父親じゃないのに、誤解されたら困るでしょ?」
だから・・何回も言うなよ・・・パパじゃないって・・
分かってるよそんな事ぐらい・・・
「構わないよ。実際、父親みたいなもんなんだから。
今さら何言ってんだよ!?雛が産まれた時だって俺が立ち会ったんだぞ!」
「そうだけど・・た、立ち会ってくれって頼んだわけじゃないでしょ!」
櫻が雛を出産した時、俺は病院まで付き添っていた
病院の看護婦さん達は俺を父親だと勝手に勘違いして
強引に分娩室まで付き添わせ産まれたばかりの雛を俺に手渡した
「雛を一番最初に抱いたのは俺だろ」
「だから、そんな事を言ってるんじゃないでしょ?」
「美作あきらに隠し子がいるっ言われたらどうするの?」
「そんなの、言いたい奴には言わせておけばいいよ」
「そういう問題じゃないでしょ?」
「じゃぁどういう問題なんだ?
なぁ、櫻?やっぱり雛には父親が必要なんだよ」
「分かってるわよ。分かってるけど、思い出せないのよ…」
「だからだよ、お前が思い出すまでの間だけ俺が雛の父親役を引き受けるって言ってんだよ」
「もし、私がこのまま一生何も思い出さなかったら?」
「その時は、時期を見て俺が雛に父親の事を話すよ」
「そんな…もし、雛が会いたいって言ったらどうするの?
向こうは急に雛が現れたら迷惑なだけかもしれないじゃない?
そんな事になったら雛が傷つくだけでしょ?」
「大丈夫だよ。あいつは絶対に雛の事を迷惑に思ったりしないよ。
そんな事、俺が絶対にさせないから心配しなくていい」
俺の言葉を聞いた櫻は一度ゆっくりと目を閉じ深く息をつくと
悲しそうな表情のままで俺を見つめている
「あきらは私の事なんでも知ってるのよね…
なのに私は自分の事を何も知らない…」
「あんまり気にするな。俺は好きでやってるんだから
俺が何のためにお前と一緒にいるか分かってるだろう?
俺はお前を悲しませる為に一緒にいるんじゃないんだ、
だからもうそんな顔しないでくれ、頼むから。」
「うん、分かってる。ありがとう・・・
一つだけ聞いてもいい?さっき言った事って本当?」
「なにが?」
「雛の父親の事、その人は本当に雛の事を迷惑だって思ったりしないの?
私が勝手に雛を産んだ事、怒ったりしないの?」
「ああ、大丈夫だよ。むしろ喜ぶと思うよ、
あんなかわいい娘を産んでくれたお前に感謝するよ」
「ありがとう、あきら」
「どういたしまして」
そう言って微笑むとやっと櫻の顔にも笑顔が戻った
さっき言った事は本当だ
司が雛の事を迷惑に思うなんてありえない・・
もし・・司が雛の事を知ったら・・どんな行動に出るだろうか?
雛の父親の事はずっと気になっている・・
この6年間、記憶の事は思い出そうとすればするほど
どうして?という疑問ばかりが湧いてきて
何も思い出せない苛立ちと不安で前に進めなくなる
思い出したのに思い出せない
考えすぎると日常が立ち行かなくなる
だからなるべく自然に任せてと思い大学に通い仕事も始めた
だけど今度は忙しい日常に忙殺されて
一番大切な物を置き忘れたままになる・・
どちらに傾いてもペースが掴めない
堂々巡りが続いている・・・
あきらの事は信じている・・・
彼が雛の事は大丈夫だと言っているのだから本当にそうなのだろう・・
だけど・・将来、雛が父親の事で傷つくことだけは何としても避けたい

応援ありがとうございます。
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