月夜に 23
こんにちは。♥
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
パリ 大学のキャンパス
今日の講義を全て終え、あきらと待ち合わせをしているカフェに向おうと構内を歩いていると
『・・・さくら~・・!』
聞きなれた声に気付いて振り返ると歩美さんがこちらに駆け寄ってきた
「歩美さん!」
彼女は日本人留学生の橘歩美、私と同じカメラを専攻している
歳は私より一つ上で日本の大学で経済を勉強した後、
この大学へ再び通い始めた変わり者だ
「櫻、久しぶり~」
「久しぶり」
「本当、もう櫻が来ないからつまんなくて!」
「ごめんね!でも、仕事の方も落ち着いてきたからこれからは
ちゃんと来れるよ。いい加減真面目に通わなきゃ進級出来ないもの。」
「本当?よかった~!!
ねぇ、今から時間ある?」
「う~ん、あきらと待ち合わせしてるけど」
最近、彼は毎日のように私と雛を交代で迎えに来ている
大丈夫なのだろうか・・?
「えっ!?あきらさん来てるの?」
「う、うん・・」
つい本当の事言っちゃったけど、彼女もあきらのファンの一人だったんだ‥
「ね~ぇ~、櫻ちゃ~ん…」
「気持ち悪い言い方しないでよぉ!
ハイ、ハイ!分かってますよ!会いたいんでしょ?
いいですよ、ついて来ても。でも、何か予定があったんじゃないの?」
「いいの、いいの!
あきらさんに会えるんだったらデートの一つや二つどうって事ないわよ!」
「なにソレ・・・?」
「いいから、いいから!
さぁ、行くよ!」
そう言うと自分だけさっさと歩いて行ってしまう
「ちょ、ちょっと、待ってよ!もう・・!」
あきらが待っているカフェまで二人で歩いて行く
「ねぇ櫻、仕事うまく行ってる?」
「うん、大分落ち着いてきた」
「そう、よかったね」
「ありがとう。で、歩美さんの用件って何?」
「あっ、それはカフェについたら話すよ」
「OK!」
そんな会話をしているとカフェが見えてきた
あきらは窓際の席に座り通りを眺めながらゆっくりとタバコをふかしている
珍しい‥あきらがタバコを吸っている‥
彼がタバコを吸う事は知っているけど
私や雛の前では絶対にタバコを手に取ることはなかった
だから私は彼がタバコを吸っている姿をあまり見た事は無い
彼の横顔が見える
普段、私には見せない表情・・・・何を考えているのだろう?
憂いを帯びたその横顔をただ純粋にキレイだと思った
あきらがこちらに気付いて軽く手を挙げてタバコの火を消した
「お待たせ~!ごめんね、遅くなっちゃって」
あきらの前に座りながら声をかけると彼はまず私を確認してから
私の後ろにいた歩美さんに視線を移し柔らかく微笑んだ
「いや、いいよ」
「こんにちは」
「校門のところでつまかっちゃったの」
「構わないよ。
たしか歩美ちゃんだったよね?」
「う~感激!私の名前覚えててくれたんですね!?」
「こんな素敵な女性の名前を忘れる男なんていないよ。」
「はぁ~よく言うわね・・・」
「なんだよ、本当のことだろ?」
「本当、あきらさんて素敵ですよね。私の憧れなんです!」
歩美さんまで・・・
本当によく言うわよ
この人たちはどうしてこんな恥ずかしい会話を堂々と出来るんだろう?
私には絶対ムリだ!
「歩美ちゃんて素直でいいね。
櫻にもちょっと見習って欲しいよ」
「何よ、私はいつでも素直でしょ?
歩美さん、あきらをあんまりおだてないで下さいね。
ますます調子に乗っちゃうんだから!聞いてるこっちの方が恥ずかしくなってくる」
「あら、いいじゃない!
本当にそう思ってるんだから」
「もう・・歩美さんまで!」
私と歩美さんはあきらの前に腰を下ろした
腰を下ろしてすぐに歩美さんが
「あの・・一つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「あきらさんと櫻ちゃんって本当に兄妹なんですか?」
歩美さんの言葉に思わずドキッとしてしまった
やっぱりそうようね・・・
あきらと私ってどう見たって兄妹には見えないわよね
あ~あ、でもこうやって聞かれるのって何回目だろう?
そして・・・この質問をされる度に聞くあきらの答えも・・
きっと今回も同じ・・・・
私もあきらも黙っていると
「・・・あっ・・!ごめんなさい。私、失礼な事聞いてますよね?
今の忘れてください!」
「ハハハハッ・・いいよ。よく聞かれる事だからね。
でも、やっぱり歩美ちゃんには嘘は付けないよなー」
ホラ!やっぱり始まった・・・
もぅ!この次に続く言葉・・
あきらは歩美さんの方へと身体を傾け声を潜めながら彼女の耳元で囁いた
「歩美ちゃんだから教えるけど、ここだけの話俺たちって本当は兄妹じゃないんだ。
実は俺たち夫婦なんだ、世間には内緒だけどね」
「へっ……??」
予想外の発言に歩美さんは目を丸くしている
もぅ!バカ!
歩美さん固まっちゃってるじゃない!
いつも同じ答え・・・
実は夫婦なんだ・・・
「もう!いい加減にしてよ!歩美さん困ってるじゃないの!
歩美さん、ごめんね。今のは嘘だから。私たちよく今みたいな事聞かれるの。
彼って人をからかう癖があるから、こうやって聞かれたびに同じように答えてるの」
「ハハハハッ…今のは冗談、本当に兄妹だよ。
なんだったら戸籍でも見せようか?」
「そ、そうですよね?よかったぁ~!
私、櫻には勝てないもの」
「へぇ~歩美ちゃん、今のは俺への愛の告白?」
「そうですね」
軽くウインクをして歩美が答える
「ちょ、ちょっと、そんな事は私がいないところでやってよね!」
「何?櫻ちゃんは妬いてるのかな~?」
あきらが私をからかい始める・・
もう!毎日毎日・・
いい加減にしてほしい・・んだけど・・
「妬いてなんかないわよ!もうバカ!
私、お邪魔みたいだから消えるわよ」
「ごめん~!櫻、邪魔じゃないから、お願いここに居て!
実はね私、あきらさんにお願いしたい事があるんです」
「なに?僕に出来る事だったら協力するよ」
「ハイ!あきらさん、私の作品のモデルになってもらえませんか?」
「へっ・・?!」
歩美ちゃんの言葉を聞いた櫻が俺の横でマヌケな声を出している・・・
「なんだ、そんな事ならいつでもOKだよ」
「ありがとうございます!」
「ねぇ、歩美さん?本当にいいの?あきらなんかがモデルで」
「お前なぁ~自分の兄貴つかまえてなんかってなんだよ!」
「だって~歩美さんは大学でも成績はトップクラスだし、
写真の腕前だってすごいんだよ!
そんなすごい人のモデルなんて、本当に出来るの?大丈夫?
歩美さんの写真台無しにならない?」
櫻も焦るとよく喋る・・
息つく間もなく一気に捲くし立てている
「櫻、私の事かいかぶり過ぎだよ。
それに私は是非あきらさんにお願いしたいのよ」
「本当に大丈夫?」
櫻はまだ不安そうな顔をしている
「もう、心配性なんだから!大丈夫よ。
まかせといて下さい!ばっちり素敵に撮りますから!」
「それじゃぁ、俺はいつからモデルをすればいいのかな?」
「それはあきらさんの都合のいい時で結構です」
「そっか、じゃぁスケジュール確認して連絡するね」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそ。それから俺たち同い年なんだからあきらって呼び捨てでいいよ。
なんかあきらさんってよばれるのくすぐったくてね」
そう言ってあきらはウインクしている…
「じゃぁ、あきらも私の事、歩美って呼び捨てにしてくれる?」
「了解!」
「それじゃ、私、これからデートなんでそろそろ行きますね。
お邪魔しました、櫻、またね~」
「うん、バイバイ、またね~」
そう言うと歩美さんは手を振り急ぎ足で地下鉄の入り口へと向かって歩き始めた

応援ありがとうございます。
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴
パリ 大学のキャンパス
今日の講義を全て終え、あきらと待ち合わせをしているカフェに向おうと構内を歩いていると
『・・・さくら~・・!』
聞きなれた声に気付いて振り返ると歩美さんがこちらに駆け寄ってきた
「歩美さん!」
彼女は日本人留学生の橘歩美、私と同じカメラを専攻している
歳は私より一つ上で日本の大学で経済を勉強した後、
この大学へ再び通い始めた変わり者だ
「櫻、久しぶり~」
「久しぶり」
「本当、もう櫻が来ないからつまんなくて!」
「ごめんね!でも、仕事の方も落ち着いてきたからこれからは
ちゃんと来れるよ。いい加減真面目に通わなきゃ進級出来ないもの。」
「本当?よかった~!!
ねぇ、今から時間ある?」
「う~ん、あきらと待ち合わせしてるけど」
最近、彼は毎日のように私と雛を交代で迎えに来ている
大丈夫なのだろうか・・?
「えっ!?あきらさん来てるの?」
「う、うん・・」
つい本当の事言っちゃったけど、彼女もあきらのファンの一人だったんだ‥
「ね~ぇ~、櫻ちゃ~ん…」
「気持ち悪い言い方しないでよぉ!
ハイ、ハイ!分かってますよ!会いたいんでしょ?
いいですよ、ついて来ても。でも、何か予定があったんじゃないの?」
「いいの、いいの!
あきらさんに会えるんだったらデートの一つや二つどうって事ないわよ!」
「なにソレ・・・?」
「いいから、いいから!
さぁ、行くよ!」
そう言うと自分だけさっさと歩いて行ってしまう
「ちょ、ちょっと、待ってよ!もう・・!」
あきらが待っているカフェまで二人で歩いて行く
「ねぇ櫻、仕事うまく行ってる?」
「うん、大分落ち着いてきた」
「そう、よかったね」
「ありがとう。で、歩美さんの用件って何?」
「あっ、それはカフェについたら話すよ」
「OK!」
そんな会話をしているとカフェが見えてきた
あきらは窓際の席に座り通りを眺めながらゆっくりとタバコをふかしている
珍しい‥あきらがタバコを吸っている‥
彼がタバコを吸う事は知っているけど
私や雛の前では絶対にタバコを手に取ることはなかった
だから私は彼がタバコを吸っている姿をあまり見た事は無い
彼の横顔が見える
普段、私には見せない表情・・・・何を考えているのだろう?
憂いを帯びたその横顔をただ純粋にキレイだと思った
あきらがこちらに気付いて軽く手を挙げてタバコの火を消した
「お待たせ~!ごめんね、遅くなっちゃって」
あきらの前に座りながら声をかけると彼はまず私を確認してから
私の後ろにいた歩美さんに視線を移し柔らかく微笑んだ
「いや、いいよ」
「こんにちは」
「校門のところでつまかっちゃったの」
「構わないよ。
たしか歩美ちゃんだったよね?」
「う~感激!私の名前覚えててくれたんですね!?」
「こんな素敵な女性の名前を忘れる男なんていないよ。」
「はぁ~よく言うわね・・・」
「なんだよ、本当のことだろ?」
「本当、あきらさんて素敵ですよね。私の憧れなんです!」
歩美さんまで・・・
本当によく言うわよ
この人たちはどうしてこんな恥ずかしい会話を堂々と出来るんだろう?
私には絶対ムリだ!
「歩美ちゃんて素直でいいね。
櫻にもちょっと見習って欲しいよ」
「何よ、私はいつでも素直でしょ?
歩美さん、あきらをあんまりおだてないで下さいね。
ますます調子に乗っちゃうんだから!聞いてるこっちの方が恥ずかしくなってくる」
「あら、いいじゃない!
本当にそう思ってるんだから」
「もう・・歩美さんまで!」
私と歩美さんはあきらの前に腰を下ろした
腰を下ろしてすぐに歩美さんが
「あの・・一つ聞いてもいいですか?」
「なに?」
「あきらさんと櫻ちゃんって本当に兄妹なんですか?」
歩美さんの言葉に思わずドキッとしてしまった
やっぱりそうようね・・・
あきらと私ってどう見たって兄妹には見えないわよね
あ~あ、でもこうやって聞かれるのって何回目だろう?
そして・・・この質問をされる度に聞くあきらの答えも・・
きっと今回も同じ・・・・
私もあきらも黙っていると
「・・・あっ・・!ごめんなさい。私、失礼な事聞いてますよね?
今の忘れてください!」
「ハハハハッ・・いいよ。よく聞かれる事だからね。
でも、やっぱり歩美ちゃんには嘘は付けないよなー」
ホラ!やっぱり始まった・・・
もぅ!この次に続く言葉・・
あきらは歩美さんの方へと身体を傾け声を潜めながら彼女の耳元で囁いた
「歩美ちゃんだから教えるけど、ここだけの話俺たちって本当は兄妹じゃないんだ。
実は俺たち夫婦なんだ、世間には内緒だけどね」
「へっ……??」
予想外の発言に歩美さんは目を丸くしている
もぅ!バカ!
歩美さん固まっちゃってるじゃない!
いつも同じ答え・・・
実は夫婦なんだ・・・
「もう!いい加減にしてよ!歩美さん困ってるじゃないの!
歩美さん、ごめんね。今のは嘘だから。私たちよく今みたいな事聞かれるの。
彼って人をからかう癖があるから、こうやって聞かれたびに同じように答えてるの」
「ハハハハッ…今のは冗談、本当に兄妹だよ。
なんだったら戸籍でも見せようか?」
「そ、そうですよね?よかったぁ~!
私、櫻には勝てないもの」
「へぇ~歩美ちゃん、今のは俺への愛の告白?」
「そうですね」
軽くウインクをして歩美が答える
「ちょ、ちょっと、そんな事は私がいないところでやってよね!」
「何?櫻ちゃんは妬いてるのかな~?」
あきらが私をからかい始める・・
もう!毎日毎日・・
いい加減にしてほしい・・んだけど・・
「妬いてなんかないわよ!もうバカ!
私、お邪魔みたいだから消えるわよ」
「ごめん~!櫻、邪魔じゃないから、お願いここに居て!
実はね私、あきらさんにお願いしたい事があるんです」
「なに?僕に出来る事だったら協力するよ」
「ハイ!あきらさん、私の作品のモデルになってもらえませんか?」
「へっ・・?!」
歩美ちゃんの言葉を聞いた櫻が俺の横でマヌケな声を出している・・・
「なんだ、そんな事ならいつでもOKだよ」
「ありがとうございます!」
「ねぇ、歩美さん?本当にいいの?あきらなんかがモデルで」
「お前なぁ~自分の兄貴つかまえてなんかってなんだよ!」
「だって~歩美さんは大学でも成績はトップクラスだし、
写真の腕前だってすごいんだよ!
そんなすごい人のモデルなんて、本当に出来るの?大丈夫?
歩美さんの写真台無しにならない?」
櫻も焦るとよく喋る・・
息つく間もなく一気に捲くし立てている
「櫻、私の事かいかぶり過ぎだよ。
それに私は是非あきらさんにお願いしたいのよ」
「本当に大丈夫?」
櫻はまだ不安そうな顔をしている
「もう、心配性なんだから!大丈夫よ。
まかせといて下さい!ばっちり素敵に撮りますから!」
「それじゃぁ、俺はいつからモデルをすればいいのかな?」
「それはあきらさんの都合のいい時で結構です」
「そっか、じゃぁスケジュール確認して連絡するね」
「はい、よろしくお願いします」
「こちらこそ。それから俺たち同い年なんだからあきらって呼び捨てでいいよ。
なんかあきらさんってよばれるのくすぐったくてね」
そう言ってあきらはウインクしている…
「じゃぁ、あきらも私の事、歩美って呼び捨てにしてくれる?」
「了解!」
「それじゃ、私、これからデートなんでそろそろ行きますね。
お邪魔しました、櫻、またね~」
「うん、バイバイ、またね~」
そう言うと歩美さんは手を振り急ぎ足で地下鉄の入り口へと向かって歩き始めた

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