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月夜に 30

こんばんは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴






ロビーに到着するとお父様方がソファーに座っていらっしゃるのが見えた

お父様方の姿を見つけた雛があきらと繋いでいた手を離し駆け寄って行く

「おじぃちゃま~」

また・・

大きな声で・・・

雛の声に気付いたお父様方がソファーから立ち上がり手招きされている

「雛、元気だったか?」

「うん!」

「そうか、そうか、雛はいい子だな」

お父様方は雛と目線を合わせるように少しかがみ込んで頭を撫でられていて
先にたどり着いたあきらがお父様方に挨拶をしている

「おはようございます」

「あきら君、おはよう。
 君も来てくれたのかね」

「はい。今日は雛をよろしくお願いします」

「大丈夫だよ、仲良くやるから」

少し遅れて私もたどり着いた

「おはようございます。
 今日は雛のためにありがとうございます」

「櫻、おはよう。
 私達も雛に会えるのを楽しみにしていたんだから気にしなくていいよ」

「よろしくお願いします」

「ねぇ~おじぃちゃま~、早く行こうよ~」

雛が花沢のお父様の袖口を引っ張っている

「おぉ、分かってるよ。
 じゃぁそろそろ行くとしましょうか」

「行こう~」

雛は今にも走り出しそうな勢い・・

そんな雛の前にしゃがみ込んで目線を合わせる

「雛、おじい様方のおっしゃる事ちゃんと聞いてね。
 いい?我がまま言っちゃダメよ」

お父様方は雛の我がままを我がままだと思っていないのだから
こんな事言ったって無駄だと分かっているが
一応言っておかないと気がすまなかった

「は~い!パパ~、ママ~行ってきま~す!」

いつも返事だけはいいのよね・・

あ~あ、また大きな声でパパって呼んで・・

パパと呼ばれたあきらは満足そうな顔して軽く手を上げて応えている

「いってらっしゃい。
 気をつけてね」

お父様方と手を繋いで・・

というか・・・

引っ張っている彼女はまるで飛んでいるよう

楽しそうな雛の後姿をしばらく見送っていた

だけど・・

「ハァ~」

私の口から零れ落ちたため息が一つ
すっかりパパの顔で横に立っている彼を睨む

「なんだよ!?」

「なんだよじゃないわよ!もう!またあの子大きな声でパパなんて呼んじゃって!
 あなたも嬉しそうな顔して!ここは日本なのよ誰が見てるか分からないのに!!」

「俺がいいって言ってんだからいいだろ!
 それより雛は何処に行ったんだ?」

「雛の行きたい所って言ったら一つしかないでしょ!」

「あぁ、そうか。さっそく行ったのか」

「そうよ!」

「で、ママはまだ怒ってんの?」

「怒ってるわよ!それにママなんて呼ばないで!
 私にはあなたみたいな大きな息子はいないの!」

「そんなに怒んなくてもいいだろ?
 ブスになるぞ!」

まだ睨んでいる櫻の腰に手を回しこちらに引き寄せる

「もうブスブス言わないで!」

「分かったからいい加減機嫌直せよ。
 お昼までまだ少し時間あるけどママはどこ行きたい?」

「ディズニーランド以外なら何処だっていいわよ!」

「じゃぁ、俺がいいとこ連れてってやるよ!」

「いいとこって何処?」

腰に手を回していた為俺の言葉に怪訝な顔を向けた櫻と至近距離で視線がぶつかった

ぶつかった視線に一瞬言葉を忘れた

目の前にある大きな黒い瞳と柔らかそうな頬とぷっくりとしたおいしそうな唇

血液が沸騰しているんじゃないかと思うくらいあっという間に体中が熱くなる
繋ぐべき言葉を見失い咄嗟に俺の口からついて出たのは今朝、雛が言った言葉

「ナイショ!行けば分かるよ!」

心の動揺を誤魔化すために俺は櫻の鼻頭に軽くキスをした

とたんに櫻の顔が真っ赤になる

顔だけじゃない・・

耳も首筋も・・

真っ赤だ

「ちょ、ちょっとこんな人前で何やってんのよ!バカ!
 それに内緒って・・雛と同じじゃない!?」

「ぷっくっくっくっ・・・・何、慌ててんだよ!バ~カ!
 ほら、そろそろ行くぞ!」

真っ赤なまま俺を睨んでいる櫻の腰から手を離し

そっと差し出すと頬を膨らませたまま柔らかい手の感触・・

俺の手の中にすっぽりと納まってしまう櫻の小さな手
細くて白い指先を自分の指先でしっかりと絡めとるように手を繋ぐ

腰に回されたあきらの手の感触が洋服を通してリアルに肌に感じる

至近距離でぶつかった彼から視線が離せないまま次の言葉を待っていると
一瞬の間を置いて返ってきた答えは雛と同じ

内緒って・・・

何よ!

それに・・なんでキスなのよ・・!?

もう!

バカにして!

私で遊ばないでよね!!

一言言い返してやんないと気がすまない

だから・・・

真正面から文句を言ったところで通用しないのはわかってるから
からかうつもりで・・

ほんの軽い気持ちだったんだけど

彼の反応は予想外だった

「は~い、パパ~!」

「ゲッ!・・お前・・な、なに言ってんだよ!?」

あきらの顔が真っ赤・・・・

予想外の反応

「えっ!?やだ!何、赤くなってんのよ!?
 もしかして、照れてるの?」

真っ赤なあきらの顔が可笑しくて少し俯き加減の彼の顔を覗き込む

「照れてなんかねぇよ!どうして俺が照れなきゃいけないんだよ!」

真っ赤なままで慌てて怒鳴り返してくるあきらを見ていると
可笑しさがこみ上げて来て止められない

「じゃぁ、どうして顔が赤いの?」

「あ、赤くなんかねぇよ!」

「真っ赤だよ」

「そんなんじゃねぇって言ってんだろ!
 ほら、行くぞ!!」

話をしていても相変わらずあきらの顔は赤いまんま
妙に焦っている彼がかわいい

「やっぱり照れてるじゃん!」

「照れてねぇーよ!」

「クスクスクスクス・・・・」

「今度は何だよ!」

「だってあきらのこんな顔見るのって初めてなんだもん!
 カメラ持って来ればよかったって思って!」

「性格わるっ!」

地下の駐車場につくまでずっとこんな調子で言い合いを続けていた

助手席のドアを開けてまだ笑っている櫻の背中を押して中へと促し

俺も運転席側へと回り込んだ

エンジンを掛け櫻の勝ち誇ったような軽く優越感を含んだ視線を横目で感じながら

俺は英徳へと向けて車を発進させた
6年ぶりに俺達が出逢ったあの場所へ・・・・・





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kirakira
Posted bykirakira

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