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月夜に 32

こんにちは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴




地下の駐車場に止めてあった車に乗り込むと車を英徳へと走らせた

俺達が出逢った場所へ・・

櫻がここへ来なくなってもう7年が経つ

英徳に着くと学園の許可を貰い校舎へと入る

「ねぇ、ここ何処?」

「ここは英徳の高等部の校舎。
 俺とお前はここで出会ったんだ」

俺が櫻を連れて行ったのは牧野つくしが類とよく一緒に居た非常階段

非常階段に腰を下ろし自分の横をポンポンと叩きながら
櫻も座るように促すと櫻は戸惑ったような表情を浮かべている

「ほら、お前もここに座ってみろよ!」

「洋服が汚れるからヤダよ・・・」

「ハハハハ・・お前、よく授業さぼってここで昼寝してたんだぜ」

「私が・・ここで・・?」

本当に信じられないという顔でそう広くもない非常階段を見渡している

「そうだよ、だから座ってみろよ!」

俺の隣にしぶしぶ腰を下ろした櫻としばらくぼんやりとしていた

「どうだ?何か感じたか?」

「う~ん・・特には・・だけど、此処でこうしてるのって
 嫌じゃない気がする・・」

「そっか。じゃあ、次行くぞ!」

俺は立ち上がりズボンに付いた埃を払うと隣でまだ座ったままの櫻に手を差し出した

櫻は俺の手に掴まり立ち上がると自分もスカートに付いた埃を払っている

俺はそのまま櫻と手を繋いだまま次は大学のカフェへと足を向けた

「此処は?」

「大学部のカフェだ。俺達は高等部の頃からよくここに来てた。
 ここで待ってろ、コーヒー取ってくる」

カフェは今、講義中なのか人影はまばらだった

空いてる席に櫻を座らせるコーヒーを取り行く

「ほら、コーヒー」

そう言って昔よく飲んでいたコーヒーを手渡したが一口飲んだ櫻が

「う~まずい・・」

「ハハハハ・・お前、だいぶ味覚が変わったな?
 昔は俺達がまずいって言ったら贅沢だって怒ってたのに」

「そうなの?
 でも本当にまずいわよ、このコーヒー」

カップをソーサーに置きながら俺を見ている

「そうだな・・確かにまずいな・・」

そう言いながら俺も少し顔を顰める

「ねぇ、私ってそんなに変わった?」

「ああ、変わったよ。でもそれは悪い意味じゃなくて成長したって事だ。
 中身もそうだけど外見だってすっげぇ綺麗になったしな、それに俺だって昔とは違うだろ?」

「////なっ・・い、いきなり何言ってんのよ!?」

綺麗になったと言われて途端に真っ赤になってうつむいている櫻に

「お前、もっと自分に自信持ったほうがいいぞ」

「・・・そ、そんな事、言われても・・」

「まぁ、そんな所がお前のいいところなんだけどな。
 で、俺の変わったところ教えてくれよ?」

テーブルに頬杖つきながら真っ直ぐに俺を見つめている櫻に問い掛けると
彼女は少し微笑みながら俺の髪に手を伸ばした

「う~ん、そうね・・髪が短くなった・・かな」

反則だ・・

その顔・・

今言ったとこだろ・・

自覚しろよな!

お前今、自分がどんな顔してるか分かってんのかよ!

ドギマギしている俺に気付く様子もなく櫻はすぐに手を引っ込めてしまった

少し触れられただけで中学生のガキみたいにドキドキしている自分に苦笑してしまう

「お前なぁ・・それだけかよ?
 俺が変わったところって?」

心のドキドキを誤魔化すように少し怒った口調で言葉を返すと

笑ってやがる!

「クスクスクス・・そんなに怒んないでよ、冗談よ!
 でもね、あきらにはそのままでいて欲しいの。
 ずっとそのままがいいの」

「それは昔っからいい男だって事だな?」

「そうよ、私はあなたのその前向きな考え方が好きなの」

好きなの・・と言われて息が止まる・・

俺、どうしたんだ?

別に愛の告白されたわけじゃないのに
たったその一言に即座に反応して

もう誰か止めてくれ!!

「・・・お前、俺をからかってるだろ?」

「からかってないわよ。
 褒めてるの」

妙に余裕の櫻と一杯一杯の俺・・

「褒められてるようには聞こえないけどな」

「それはあなたがひねくれてるからじゃない?」

「俺がひねくれてる?俺ほど素直な奴はいないだろ?
 ひねくれてるのはお前の方だろ?」

「違うわよ、私が素直なのよ‥クスクスクス・・・」

突然笑い出した櫻につられて俺も笑い出してしまった

「ハハハハ・・」

互いに顔を見合わせて笑っていると

「ねぇ?さっきからすごーく視線を感じるんだけど、気のせい?」

「いいや、気のせいじゃないよ。
 でも鈍感なお前がよく気付いたな?」

「鈍感は余計でしょ!
 で、どうして見られてるの?」

「それは俺が有名だからだよ」

「何?また始まったの?」

「違うよ、本当に俺はここで有名なんだよ!」

「どうして?何かしたの?」

「何もしてないよ、俺がF4の一員だからだよ!」

「F4・・何それ?」

「F4っていうのは俺と他の三人の事をまとめてF4って呼んでたんだよ。
 雛の父親もF4の一人だよ」

俺の口から雛の父親の話が出てきて櫻の表情が一瞬、険しくなったが・・

「で、そのF4がどうして有名なの?何かしたの?」

「何もしてねぇよ!だけど俺たちってホラ完璧だから
 やっぱり注目されるんだよ」

「ふ~ん完璧ねぇ~、とにかくあきら達はF4って呼ばれてて
 学校ですっごく目立ってて、私はその人達とも友達だったって事ね・・?」

「そうだよ」

それにしても俺がここに来なくなってもう6年以上も経つのに
相変わらずF4の名前は健在らしい

さっきから小さな声で

“ねぇ、あの人ってF4よね?”

などと言っている話し声が聞こえてくる

何となく居心地が悪い・・・・・

時計を見ると11:30を少し回ったところだった

「そろそろ行くか?
 仕事の前に昼飯食って行かないとな。お前は何食べたい?」

「う~ん、ひさしぶりの日本だから和食がいいな」

「そっか、じゃぁ行くぞ!」

いつもの様に手を櫻に差し出すと
ゆっくりと握り返される手の感触が今日はやけにリアルに感じた




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kirakira
Posted bykirakira

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