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月夜に 33

こんにちは。🎵
お引越しです。🎶
それではどうぞ~✴


ため息と共に携帯を取り出しあきらの携帯にダイヤルしてみるが電源が切られていて繋がらない

「ダメだ、繋がんねぇ!」

そう言って携帯を閉じると俺が電話しているのを息を呑んで見つめていた滋に即答される

「じゃあ、オフィスに電話してみてよ!」

・・ってやっぱ俺かよ!?

いつから俺が電話するって決まりになったんだ?

疑問は感じつつも仲間達の視線を受けて今度はオフィスへとダイヤルしてみる

「今日は昼から仕事らしいけど外回りで夕方にならないと戻らねぇーって!」

「そっか・・じゅあ、どうする?」

「どうするって・・いきなりオフィスに押しかけるのはマズイだろ・・?」

「そうだね・・じゃぁ、また後で電話してみてよ!
 夜にでも会えればいいし」

「ハァ~、わかったよ・・」

やっぱ電話するのって俺なんだよなぁ・・?

ため息と重苦しい空気に支配され沈んだまま

誰も口を聞かない俺達の背後から女性が声をかけてきた

「滋?」

名前を呼ばれ驚いた表情で顔を上げた滋だったが
相手の女性を確認するとすぐに笑顔に変わった

「歩美~」

椅子から立ち上がり女性に抱きついている

「久しぶり~どうしたの?こんなところで偶然だね~
 ねぇねぇ、いつこっちに帰って来たの?」

滋の質問攻めに歩美と呼ばれた女性は少し押され気味ながらも
表情は笑顔で興奮している滋の様子を楽しそうに見ている

「久しぶりだね~?
 滋、変わってないね~?!」

「本当だね~、ねぇ歩美、ここ座って!」

手招きして自分の横の席を叩いている

「えっ・・いいの?」

「うん、平気、平気!!」

滋は俺達の存在など全く無視で
勝手に答えている

まぁいいけど・・・

座ってと言われた方は少し戸惑っているようで俺達の方に視線を向けてきたので
OKのしるしに軽く微笑むと軽く会釈をして滋の隣に腰を下ろした


「それじゃぁ、少しだけ失礼します」

「紹介するね!彼女は私の永林の同級生で橘歩美さん!」

「こんにちは、橘です」

「「「こんにちは」」」

「歩美、紹介するね。私の隣が三条桜子でその前が花沢類、
 そしてその隣が私の彼で西門総二郎、みんな英徳の友達なの!」

「英徳の・・?」

「そうだよ!で、歩美はどしたの?いつ帰ってきたの?
 こっちに居るんだったら連絡してくれればいいのに!」

「ごめんね、先週帰ってきたんだけど、忙しくてなかなか連絡出来なかったんだ。
 今日は久しぶりに両親とランチの約束してるんだけど少し時間が出来たからお茶でもしようと思って」

「へぇ~でも、こんな所で偶然会えるなんてすっごく嬉しい~!!」

「私も!」

再び俺達そっちのけ

ムカついてきたので強引に二人の会話に参加してみる

「ねぇ、橘さんはどこか旅行にでも行ってたの?」

「えっ・・?」

「だって今、滋がいつ帰って来たの?って言ってたから。」

「あっ・・私、今パリに留学してるんです。
 パリの芸大の2年生なんです。」

「2年生・・?俺達と同い年だよね?」

「はい、私、日本で大学を卒業してから留学したんです」

「そうだったんだ、で、芸大って専攻は何?」

「カメラです、一応カメラマン志望なんです」

「ねぇ、すごいでしょ!彼女、永林の時から美術の成績すっごく良かったし。
 よく写真撮ってたしね」

「そんなにすごくないわよ。
みなさんは英徳出身なんですよね?」

「そうだよ」

「私も最近パリで知り合った人が英徳出身なので
 みなさんもご存知なんじゃないかなと思って?」

「知り合い・・・?」

「えぇ、正確には大学の同級生のお兄さんなんですけど」

「なんて名前なの?」

「美作あきらさんって言うんですけど・・
 ご存知ですか?」

「ハハハハ・・・ご存知もなにもあきらは俺達の幼馴染だよ」

「え~~そうだったんですか!!」

そう言って大げさなリアクションで驚いている

さすが滋の友達だけある・・・

「あの・・」

桜子だった・・・

みんなの視線が桜子に集中する

「あの・・今、同級生のお兄さんが美作さんっておっしゃいましたよね?
 美作さんの妹って双子ちゃん達ですよね?
 双子ちゃんってまだ小学生じゃありませんでしたか?」

桜子に言われて気付いた!

「あ・・!そうだ・・・あいつに大学生の妹なんていねぇ・・・・」

「えっ・・!でも櫻ちゃんは兄妹だって言ってましたよ」

「その同級生って櫻って言うの?」

「はい、美作櫻って名前で年は一つ下です」

歩美がにこやかにそう言い終えた瞬間、総二郎がいきなり立ち上がった

立ち上がった拍子に椅子が後ろへと倒れ大きな音が上がった

『ガタッ!!』

「ちょ、ちょっとどうしたの、急に?!」

滋の驚いた声は無視して

「オイ!類!」

「そんな大きな声出さなくても聞こえてるよ」

「なぁ・・・・その櫻って一つ下で・・・って、ま、まさか・・だよなぁ?」

「多分ね、そうだと思うよ」

「恐らく・・・」

桜子も俺達のこの会話で理解出来たようだ

ただ、滋だけが理解出来ていない・・・・

「えっ・・!?な、何がそうなの?」

「もう、滋さんも先輩と一緒で鈍いですよね。
 西門さん達はその櫻ちゃんって言うのが先輩じゃないかって
 言ってるんですよ」

「えーーーーーー!!」

遅い・・・・

「橘さんその櫻ちゃんって女性の事、詳しく教えてくれない?」

いきなり俺達が身を乗り出し始めたので彼女は驚いて少し体を後ろに引き気味になっている

「えっ・・!?いいですけど・・」

俺達の方に困惑したような表情を浮かべながらも
彼女は美作櫻と言う女性の事を話してくれた

「彼女も私と同じカメラ専攻で、それに今はデザイナーの仕事もしてますよ」

「もしかしてそのデザイナーって『sakura』の事ですか?」

「えぇ、その『sakura』って彼女がデザイナーなの」

「何・・?その『sakura』って?桜子、知ってるの?」

「ええ、この前雑誌で見ましたよ。
 結構、評判になってるみたいですけど・・
 『sakura』ってメインは子供服じゃなかったですか?」

「・・つくしって子供服のデザイナーしてるの?」

「えぇ、でも滋?さっきから先輩とかつくしとか言ってるけどそれって櫻ちゃんの事?」

「う・・・ん・・後でちゃんと説明するから・・」


「分かった・・彼女の洋服が来月から日本のデパートでも販売が始まるから
あきらさんと一緒に日本に帰ってきてるわよ。
ねぇ、櫻ちゃんとあきらさんって本当の兄妹じゃないの?」

「う~ん・・私達が考えてる事が当たってたら多分ね・・・兄妹じゃナイ」

「それって本当?」

「う・・ん」

「やっぱりね~」

歩美がため息をついている

「どうしたの?ため息ついて」

「だって櫻ちゃんがライバルじゃ私、勝ち目ないもの!
 まぁ、最初っからあきらさんは私なんて相手にしてないけどね」

「歩美、もしかしてあきら君の事が好きなの?」

「う~ん、いいな~って思ってたけどね。
優しいしよく気がつくしいい人だな~ってね。
でもやさしくしてくれてたのは私が櫻ちゃんの友達だからなのよね。
でも、兄妹じゃないんならあの仲のよさは納得できるかな。
彼って櫻ちゃん以外の女性って全然眼中に無いって感じだし」

「二人ってそんなに仲いいの?」

「うん、あきらさんはしょっちゅう櫻ちゃんを迎えに大学に来てるし、
 いつも何処に行くのも一緒って感じだしね」

「ふ~ん、そんなに仲がいいんだあの二人って」

ずっと黙って話しを聞いていた類が少し怒った口調でぶっきらぼうに言った

類・・お前やっぱりまだ・・・

牧野の事・・・・

「あっ・・!そうだ忘れてた。私、彼女の写真持ってるわよ。
 こないだあきらさんに写真のモデルをお願いした時に撮った物なんだけど、
 今日、彼女に会うから渡そうと思って持ってきたの」

「見せて!歩美!早く見せて、お願い!」


滋にせかされて歩美は慌ててバッグからアルバムを取り出した

「櫻ちゃんってカメラ専攻なのに自分が写真撮られるのって嫌がるのよね。
 だからこれは貴重な1枚なの」

そう言って俺達の前に出した写真に写っている女性は間違いなく

牧野つくし

だった

「つくし!」

「先輩!」

滋と桜子が同時に声を上げた

牧野だった・・・・

やっぱり俺達の考えは間違っていなかった

だとしたら何故・・・?

牧野があきらと一緒なんだ・・・・?

あの二人は仲間だったからよく一緒にいたが

特に仲が良かったといわけじゃない・・・

単なる友達だ・・・・

二人の接点が分からない・・・

あの頃・・

一体何があったんだ?

それにあの子はあきらの子供なのか・・

だとしたら司はどうなる・・・?

牧野はいつ子供を産んだんだ・・・?

あの子・・・

見た感じ年齢は5~6歳ぐらいだよな・・・・?

・・・・・・・!!

もしかして・・・・・・!?

自分の行き着いた答えに息が詰まる・・

だとしたらどうして牧野はあきらと一緒にいるんだよ?!

ダメだ!!

頭の中?マークだらけで考えがまとまらない


「ねぇ滋、さっきから言ってるつくしって誰の事?
 写真に写ってるのは櫻ちゃんだよ」

「あっ、うん・・・彼女がどうしてあきらと兄妹になったのかは
 分からないんだけど彼女の本当の名前は牧野つくしって言って私たちの仲間だったの。
 彼女、6年程前から行方不明で私達みんな彼女の事を探してたの」

「・・牧野つくし・・?彼女を探してた・・の?」

「うん・・」

「ねぇ歩美ちゃん、牧野に子供がいるのって知ってる?」

「・・会った事はないですけど・・・」

「その子の父親の事って聞いた事ある?」

「ううん、聞いた事はない。
向こうでは結婚しないまま子供を産むシングルマザーなんて
珍しくないし、櫻ちゃんはあまり自分の事は話してくれないし」

「そっか・・・」


「なぁ、類・・・・・あの子供の父親って誰だと思う?
 まさか・・・だよな・・・?」


「そうだね、でもそれは本人に直接確かめたほうがいいと思うけど。
 ねぇ、さっき今日、彼女と会う約束してるって言ったよね?」


「はい。彼女の仕事が終わったら連絡が来る事になってますけど」


「僕たちも一緒に行っていい?」


「えっ・・!?いいと思いますけど・・一応、彼女に聞いてみないと・・・」


「そう、じゃぁ彼女に聞いてみてくれる?」


「は、はい・・分かりました。じゃぁ、私そろそろ時間なんで行きますね。
 彼女から連絡があったら電話します」


「お願いね、歩美」


「うん、じゃぁまた後で!」






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kirakira
Posted bykirakira

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